今日はホームセンターに行こうと思ったが止めて、近所の薪割りおじさんの家に行くことにした。そもスーパーマーケットの様子を踏まえて考えるに、ホームセンターにもゾンビが群れている可能性が高い。薪割おじさんの家は静かな住宅街にある。車の通りが少ないそこは事故による火災が起きているとも考えにくい。またゾンビの知能からすると自分の家のドアを開けて家の外に出られるかも怪しい。というか不可能だろう。
それでなぜ薪割おじさんの家に行くのかというと斧が欲しいからだ。先日の日記にも書いたがゾンビを一撃で殺せる武器が欲しい。それには金属バットではいささか心もとないわけで、ならば何が手ごろかと記憶を頼ったところ、バイキングも愛用しローマ教皇から禁止命令も出された斧が手ごろであると考えたのだった。
意外にも安全な住宅街で目当ての家にたどり着くと、果たして薪割おじさんはそこにいた。ランニングに短パンで姿で、足元に薪割り用の斧が落ちている。予想通り作業中にゾンビ化したものと思われた。
手順はそれほど難しくない。薪割り台の替わりに使われてる丸太を挟んでおじさんの前に回り込むだけである。狙い通り見事にこけたので、頸椎に鍬を振り下ろして止めを刺した。止めを刺すことに躊躇いがなかったかと言うと嘘になるが、罪悪感も何も感じないことにするのは僕の得意なことだ。
……やはり人に遭うのが怖い。こういうモラルもへったくれもない弱肉強食の世界では単純に力が強くて倫理観のない奴が生き残るに決まっている。という風に考えると出会う人間は皆、屑である可能性が高いわけだ。ついでに言えば僕自信が出会う人間にとって厄介なタイプである可能性も否めない。いや、大いにある。例えば、僕は薪割おじさんの家に窓ガラスを割って侵入し、ゾンビ化したおじさんの奥さんと思しき人を殺した後、薪ストーブに火を灯し、そして風呂にお湯をためて久々に入浴を楽しんだ。その上で包丁や食料、水道の水をポリタンクなどに詰めて、服も着替えまた廃ビルに戻ってきている。そしてそのことにそれほど罪悪感を感じていないのだ。
それは一回目のおじさんを殺した時とは明らかに違う感覚だった。
気分が沈んでくるのでいまだに息のあるSNSの話をしよう。僕の近所、というわけではないが少なくとも僕の住む市内に生存者がいることが確認できた。ただし悪質な悪戯の可能性もある。会うべきか会わざるべきか分からない。分からないというのはつまり、移動のリスクと出会ったことによって得られるリターンが釣り合うかどうかの問題だった。
まあいい。気に食わなければ別れてしまえばいいのだ。幸いこの市は広い。
コンビニで入手した数冊の地図、そのうちの一つを確認する。そうすると同じ市内にいる生存者のいる場所までの距離が分かる。とりあえずその人をフォローして、軽く自己紹介を送った後に眠ることにする。僕のアカウントは結構な頻度でエッチな画や写真、言動を垂れ流しているのだが大丈夫だろうか。
今は九月だが冬をどう乗り切ればいいのか不安だ。チェーンソー、鋸、灯油、そういったものもこれから必要になってくるだろう。それよりなにより、道路に事故車両の残骸が転がっているのも問題だ。こんなものがあったのでは車を使うこともできない。
食料問題もあるどこかの畑を早々に確保しておくべきだろう。とりあえず新しい住処を見つけるべきだ。地理条件としてはゾンビ化した人間が少なそうな山間で畑と湧き水と川があって魚が取れるような場所を探すことにしよう。