鈴木との作戦会議を行ったが方針が分かれた。鈴木は、一冬は残された資源をやりくりして過ごしてみるべきだという。というのも鈴木の見立てによれば、意思を奪われた人間と言うべきゾンビは飢餓で死ぬ可能性があるとの仮説による。そのため食料の保つ一冬程度は、ゾンビの様子を見るという意味でもあまり活動範囲を広げない方がいい。よしんばゾンビ達が飢餓を切り抜けたとしても、冬が明ければ低体温症で大部分のゾンビが死ぬかもしれない。なので活動範囲はあまり広げずに、例えば一日に近隣の部屋、家を幾つか探索し一冬分の食料を確保する。もちろんゾンビがいれば殺す。といった地道な活動をしていくべきだと、彼は主張した。
確かに、その主張は僕の出した意見よりも良いもののように感じられた。今はまだ夏の温かさが残っているが、この先どんどん気温が下がっていく。そんな時期にやれ農耕だと、始めたところで初心者もいいところの二人では作業が滞るのは必定だろう。今回の件に関しては鈴木が正しい。暫くは様子を見るべきだ。そうだな、とりあえず一カ月単位で侵入予定の施設を偵察して行くことにする。
ちなみに僕の主張は各地に形成されつつあるコミュニティーに、早期に合流しメンバーの中核に食い込むよう活動するというもので、一カ月程度の間にこちらで旅用の資源を集めて埼玉のコミュニティーに移住するというものだった。それをやるなら一人でやれと断られた。
この計画の欠点はというと、まず移動手段に車がつかえない。次に生身で運べる物資に限界があるため、物資の補給が不安定になるという点。ゾンビハザード以前なら親切な道路沿いの住人から水くらいは分けて貰えたかもしれないが、一ヶ月後にまだ上下水道が生きているかどうかというと分からないのである。
ほんとうに移動手段に車がつかえないのはとても辛いことだ。ならばバイクはどうだろうか。バイクならば小回りが利くから事故車両の残骸を避けながらそれなりに走れるかもしれない。この冬は自由時間をバイクの練習に当てようか。
差し当たって、バイクのマニュアルを入手することから始めたいが、書店もまだゾンビだらけだろう。あとは古物商の店を訪ねて何か旧時代的な武器を入手するのもいいかもしれない。日本刀、槍、長刀、そういった類の得物の心得はまるでない。しかし、持っているだけで十分は示威効果を発揮すると思いたい。誰に対して?もちろん世紀末族に対してだ。実際の戦闘になったら手ごろな長さの棒と、それから石でも投げるつもりだ。
とりあえず探索する資源について書きだしておく。
食料。じゃがいも、玉ねぎの類。干物、缶詰、ジュース類、酒類。菓子類も持つだろうから出来るだけ集めておくといいだろう。紙皿。
医療品。消毒液。ガーゼ。絆創膏。目薬。防塵用のマスク。うがい薬。石鹸。歯ブラシの類。ティッシュ。コンドーム。コンドームは軍隊でも応急処置に活躍するとのことなので、何かしら本来の用途を超えた使い道を見つけられるだろうと思う。
衣料品。タオル。下着。防寒着。作業着(いい男が着ているようなツナギ)。同系統の靴。ゴム長。ヘルメット。手袋。
その他。天幕。バイク。地図の類。ポケットに収まる程度の刃物類。電池。ライト。ポリタンク。石油ストーブ。ポリタンクは重要だ。水道が生きているうちに水を出来るだけ貯蓄しておきたい。大八車(あるのか?)
二人いるだけでかなり行動に自由が出るように思う。なにより重荷を背負っての運ぶ係と周囲に警戒する係を手分けできるのは強い。いずれは警察署に行き銃火器も手に入れたい。そのうち熊が降りてくる可能性も否めない。