終末日誌   作:木刀超好き

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九月七日

 今日は鈴木の住むマンションの最上階から探索を始めた。ドアを開けるのに必要なカギは、既に鈴木が一回ロビーの管理室から入手してあったようだ。ゾンビの数はそれほど多くないが、何分狭い室内での行動なので油断できない。室内ので得物を振り回すのは難しいからだ。

 説明しよう。例えば、かの有名な新選組の戦法は鎖帷子で日本刀に対する防御を固め脇差を持った複数人で一人を刺す、である。京都の旅籠などに討ち入った際、新選組も志士たちも道場剣術の癖で上段に構えたところ鴨居に、あるいは天井に刀を打ちつけてしまいその隙に不覚を取ったという話がある。

 刀でさえそうなのだ。まして僕と鈴木の武器は斧とスレッジハンマーである。この二つの道具を得物とした際の共通項は振りかぶらないと威力が出ず、また日本刀に比べてリーチが短いことだ。一つ目の欠点は既に述べたが二つ目のリーチに関して言えば、まず前提として、日本刀とは白兵戦の基本単位であることは言うまでもない。

 竹刀の刃渡り三尺に対して、日本刀の刃渡りは二尺そこそこ。勝手の違いに戸惑う武士も幕末にはいたという。まあつまり何が言いたいかというと、日本刀でさえ超接近戦になるのに、それよりも短い斧はさらに相手に接近せざるを得ず、そうした場合怪力に任せて組んでくるゾンビの方が圧倒的に有利であると言うことだ。

 鈴木と僕が徘徊する野良ゾンビで検証を重ねた結果、彼らの感知範囲は半径五メートル前後。大きな物音への反応はその四倍。

 

 結論、僕らは部屋に入らなかった。まずドアを開けてから生存者に呼びかけ、呼びかけに釣られて現れたゾンビを共用の廊下で一人ずつ殺していった。

 801から807号室までの生存者はいなかった。鈴木がお気に入りにゾンビをレイプしている間に、僕は煙草を片手に共用廊下の隅で空を見ていた。煙草なんてこれまで吸ったことがなかったけれども、アンニュイな気分にはこの香りが合う。鈴木にゾンビレイプを勧められたが流石にそれは出来ない。というか僕は三次元では勃起しないし、血なまぐさいのは嫌いなのだ。ひょっとしたら、煙草の臭いで血の臭いを消しているのかもしれない。

 

 ともあれ八階は最上階だけあって、いいものがそろっていた。恐らく家賃も一番高いのではないだろうか?

 しかし、こうして他人の部屋に入るとそこにいる人物が生々しく浮かび上がってくる。男の服しかないのに本格的な調理器具と食材が豊富な、料理好きの部屋とか。なぜかトカレフが棚に入っていた部屋もあれば、四人家族で住んでいたと思わしき部屋に、老夫婦の部屋もある。生活臭というべきものもまだ十分残っていた。僕はきっと、このにおいを一生忘れることはできないだろう。

 

 午後、五階まで下ろしてきた戦利品を仕分け、日の当たらない504の一室に貯蓄として放り込む。荷物を持って階段を何往復もしたせいで全身筋肉痛だ。鈴木も腰を揉んでいた。そういえば死体の処理だが、どこかに穴を掘ってまとめて燃やす他ないだろう。レイプしたゾンビは鈴木に運ばせるとして。

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