終末日誌   作:木刀超好き

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九月八日

 今日は六階と七階の探索を終わらせた。

 今回は珍しいものが見つかった。と言いたいところだが先日のトカレフより珍しいものはまず見つからないだろうなどとタカをくくっていた矢先のことだ。見つかったのは狩猟用のクロスボウである。クロスボウの矢はボルトというのだがなぜボルトなんだろうなと鈴木も僕も首を顔を見合わせて不思議がっていた。クロスボウが見つかった部屋のPCを鈴木が専用器具でハッキングしたところ、どうも彼は大手動画サイトで中二病的動画を投稿することを趣味としていたらしい。男の部屋はメリケンサックだとかカランビットナイフのような品々で埋もれていた。

 

 鈴木も僕も、ゾンビ相手にカランビットナイフで接近戦を仕掛けるほど命知らずではない。が万が一の容易に、動画投稿者と思しき男の部屋で見つけた中型ナイフを右の腰に馬手差しに差すことにした。

 余談だが、もし僕が死んだあとに、この日記を拾った生存者が何かの役に立てることができればいいなという思いで、僕は下らない雑学を書き込んでいる。字が汚い?これでも綺麗に書いているんだ……。

 ともかく馬手差しに話を戻そう。馬手差しはもともと甲冑を着た武者が、組み伏せた相手に短刀を突き刺す、そういった状態を想定して考案された差し方だ。差し方というのは要はあれです、刀を差すというでしょう?あれと同じ意味です。

それで肝心の差し方なんだけれども、西部劇で拳銃を腰に吊るしている画を想像すれば分かりやすい。柄が上で刃が下だ。そして馬手差しは右手(まあ利き手と同じ腰に差す)で、逆手に持ってナイフを抜き滅多やたらに何度も相手に刺す。武士は通常左腰に刀を差すのだけれども、つかみ合いになった場合は右手を左腰に回すなどという悠長なこはやっていられないから、右手で右腰にある刃物を抜いてぱぱっとやるのだ。

 ただし、これはゾンビに組み付かれた際に一矢報いる最終手段の話だ。というか味方のために一匹でも減らすという考えが根底にある。自分がゾンビに組まれているような状況だと相方も他のゾンビとやり合っているだろう。そうすると助けは期待できないし下手に助けようとすれば相方も死ぬ可能性もある。そういえば鈴木にも指摘されたが右手が使えない時のために、左腰にも下げておくべきだろう。

 

 話が右に左に逸れた。クロスボウの話に移ろう。このクロスボウだけれど、対ゾンビにどれほど役に立つのだろうか?良い点と悪い点を分けてみよう。

 

 良い点。

 音がしない。棍棒を振り回すのに比べて間合いが広い。操作が簡単。狙いがつけやすい。

 

 悪い点。

 装填が遅い。故に複数を相手にすると弱い。一撃ですぐに殺せるかは分からない。もちろん急所に当てれば、脳に酸素が行かなくなって徐々に死ぬのは分かっているのだけれども、しかし銃弾が、着弾時に潰れて音速飛行の衝撃で人体に大穴を空けるのに比べていささか心もとない。痛覚のないゾンビにはあまり即効性はないだろう。

 

 いまだに生きているインターネット上の投稿を参考にすると、ゾンビに対して即効性のある攻撃は限られていることが分かる。

 まず脳を一撃で完全破壊すること。次に急激な大量出血によるショック死を狙う方法だ。そして手足の切断なども有効であるという。

 このクロスボウの使いどころは狭いが、世紀末族及び鹿熊野犬対策に持っておくに越したことはないだろう。

 世紀末族に関して言えば人体を矢が貫通しているという視覚的な恐怖で威圧可能だ。動物は……まあ小型動物を捕まえる程度に役に立つだろう。

 

 野生の獣は厄介だ。午後に二時間ほど国道を歩いてみたが、明らかに人間にはできないようなやり方で、ゾンビが破壊された痕跡があった。野生の獣が人肉の味を覚えたら、恐るべきことである。

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