Fate/Grand Order ~Guardian of History~ 作:沖田侑士
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
3ずつ渡された虹色の石をそれぞれアークス達が投げ入れた後にオルガマリーの言う通りに手を翳し、召喚の義を行った。
召喚サークルが光だし、知っていないはずの詠唱呪文が頭脳に流れ込み、無意識に口にする。
オキ、ハヤマ、クロノスの詠唱とは別にシンキ、アインス、ミケが少しだけ違った。
「我は常世総ての悪を敷く者。されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」
一節だけ増えている3人の詠唱呪文。オキは何か間違えただろうかと思ったが、元より知らない言葉が勝手に口から出ている事を踏まえて何も気にすることないと判断した。
「本来はいらないんだけど…まぁいいわ。」
ボソリと誰も聞こえない声でつぶやくオルガマリー。
カルデアの召喚システムは聖杯戦争を経験したオルガマリーの父によって作られた召喚式。英霊とマスターの双方の合意が合って初めて召喚できるものだ。つまり、オキ達の事を知って合意した英霊が召喚されることになる。
そして、詠唱呪文は全てマシュの盾を触媒にカルデアにある『守護英霊召喚システム・フェイト』により、詠唱呪文は省くことが可能だ。
とはいえオキ達はそのことを知らない。よって頭に流れてきた言葉を口ずさんでいる。
光は強くなり、オキ達それぞれの前に人影が生れ、召喚サークルの光が強く回転を始める。
「お? アサシンか。ん? でもこれ女神って見えるぞ?」
まず初めにオキの前に一つの人影がより強く表れる。
召喚された英霊と思われる少女の姿を見て、その少女がどのような英霊なのかが強制的に名前が浮かんできた。
「ふふ、女神を顕現させるなんて。愚かで面白い人ね。あなた、お名前は?」
紫髪を長いツインテールに結び、白きドレスを羽織った優しい笑みを浮かべた小さな少女がオキの前に立つ。
「女神…女神ステンノ、でいいのか?」
「ええ。ただ、名を聞く前にあなたの名前を教えてほしいわ。」
しまったと眉を歪め、オキは女神の名をもつ少女に手を出した。
「オキ。アークスが一人。守護輝士のリーダー。オキだ。これからよろしく頼む。」
ステンノはオキの出された手をじっと見つめ、そしてオキの顔を覗きこみ微笑みながらオキの手を取った。
「ええ、女神である私が来たからには、ただ召喚しただけじゃ済ませないわ。楽しませなさい。」
「まかせろ。少なくとも退屈はさせねぇし、するメンバーじゃねぇ。っと、ハヤマん達も召喚が終わりそうだな…って隊長とハヤマんの光むっちゃ虹色に光ってんだけど、大丈夫か?」
ミケ、クロノス、そしてシンキの召喚が終わって尚、光り輝くアインスとハヤマの召喚の光は虹色に強く光っている。
「…?」
立香が心配そうに大丈夫なの?とオルガマリーに質問したが、オルガマリーは目を見開き驚いたまま固まっている。
「い、いま女神…ステンノって…え?」
光り輝くアインスの召喚サークルが先に落ち着いてきた。それと同時に二つの影が現れる。
「新撰組一番隊隊長、沖田総司推参! あなたが私のマスターですか?」
薄い桜色の肩まであるショートへアで同じ桜色の袴を身にまとった刀を持った少女が凛とした顔立ちでアインスに問いを投げる。
新撰組。アインスはその言葉を聞いてある一人を思い浮かべる。惑星スレアで起きた事件。その際に巻き込まれたオキ達と共に戦ってくれた、その惑星の住人、ゲームのプレイヤー達。仲間となってくれたメンバー。その一人に沖田の名を持つ人物がいた。
彼は元気だろうか…。そう思いつつ目の前に立ち問の答えを待っている少女に答えた。
「ああ、私がマスターだ。共にいこう。今後とも、よろしく頼む。そちらは…。」
沖田総司と一緒にもう一人、黒いマントを羽織った大きな男性が召喚された。
アインスは目を見開いた。跪き状態で召喚された男性がゆっくりと立ち上がる。
その顔をみて、その英霊の情報が脳裏に入り込んできた瞬間、アインスは衝撃を受けた。
アインスは、かつての惑星スレアでの戦いで、唯一の心残りだったものがある。
『生きていた時代で、会ってみたかったものだ。』
そう、あれは降下するエレベーターの奥に眠る剣士に匹敵する戦いだった。今でも思い返している、あの手触り、あの感覚、忘れようがない。容姿はあの時と違えど、間違いない。
目の前の剣士…いや、霊気がセイバー…ではないな。
だが、その黒いコート、鋭い眼光、そして…その名。
「新撰組副長、土方歳三だ」
生きていた時代で…
「クラス? そんなことはどうでもいい」
会ってみたかったものだ…。
「俺がある限り、ここが-----新選組だ!」
その願い…叶ったぞ!
迷いのない言葉で高らかに宣言する誠の一文字
「お前がマスター、俺がサーヴァント。それはいい。だが、新撰組ある限り----俺は俺だ。」
眼を見開いていたアインスは手の甲をゆっくりと…見せた。
惑星スレア。あの星で知り、ヴァーチャル世界ではあったとはいえ、この身で戦い、その生涯を知り、何度も思い返したその男の存在。新撰組、副長。『鬼の副長』土方歳三に、アインスは宣言した。
「ああ、だからこそここに、この右手に宿りし三画に誓おう。俺は…私は…諦めない。だから共に来い、我が狂戦士よ。」
彼は静かに笑った。ああ、自分が呼びだした者がそう言う事は当然だ、とでも言わんばかりだ。
「上等だ。」
にやりと笑う土方にアインスも口を歪ませる。
そんなやり取りをした直後、横から沖田総司が土方の前にひょこっと顔を出した。
「あれー? 土方さんも一緒ですかー! わーい! お久しぶりです!」
「沖田か。…おい、沖田ぁ。お前ぇ羽織はどうした?」
ギロリと沖田を睨み付ける土方は羽織について質問していた。その時である。
「だーーー!?」
「何事!?」
「おう…爆発したぜ。大将、ありゃ大丈夫か?」
「…。」
「あれ大丈夫? 爆発が起きたようだけど?」
クロノス、シンキ、そしてミケの召喚したと思われる英霊たちがハヤマの行っていた召喚がサークルの光が頂点に達した直後、巨大な轟音と共に起きた爆発に驚きの声を上げた。正確にはミケの超巨大な英霊だけがずっとミケを見たまま固まっており、その肩に乗る、長い銀髪の少女がミケに対し驚いた素振りも見せず質問していた。
「ちょっとあなた大丈夫!?」
「ハヤマさん、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「いつつ…あ、ああ。オルガマリーさん、マシュさん、大丈夫。よかった、盾は無事見たい。壊したら怒られそうだ。」
あははと笑うハヤマの前に3つの影が歩み寄った。
「サーヴァント・セイバー。ネロ・クラウディウス、呼び声に応じ推参した。うむ、よくぞ余を選んだ!」
「ご用とあらば即参上! 貴方の頼れる巫女狐、キャスター玉藻の前、降臨ッ!です!」
「魔人アーチャーこと第六天魔王織田信長じゃ! うむ、そなたがわしのマスターじゃな? よい、マスターになる事を許そう。」
一人は真っ赤なドレスを着こんだ、綺麗な金髪の少女。
一人は桃色の髪にぴょこんと飛び出た狐耳と腰に見える巨大な尻尾が特徴で露出の高い蒼い着物を羽織った女性。
最後に現れたるは燃える火の如く真っ赤なマントを羽織り、軍人の服装を身に、金色の装飾を帽子につけた少女。
計3名の英霊が同時に現れた。
「3…3!? う、嘘でしょ!? いくら魔術の結晶とはいえ3つで一騎召喚できればいい方なのに3!? いえ、2でもおかしいわ…。なんで…どうして!? Dr.ロマニ!?」
「こ、こっちでも観測していますが、急に魔力が跳ね上がりまして…いくら結晶での触媒を用いているからとはいえ、あの上がり方は…。」
「…!」
「はい。すごいです。ここまで英霊の方々が同時に召喚されるなんて。」
カルデア側のメンバーは驚き戸惑っている。彼らに渡した虹色の魔術結晶はそう簡単に手はいらない代物とはいえ、サーヴァントの召喚に使用した場合、その魔力は3つでも1人召喚できればぎりぎり足りる程度である。
ましてやフェイトにより召喚が行いやすい状態になっているとはいえ、同時に2人、ましてや3人の召喚などあるはずがないのだ。
「あら、あなたのご友人? お仲間は3人も召喚しているのね。」
「あちゃー…相変わらずの豪運だなハヤマン。」
ハヤマは正直言って化け物揃いのオキの仲間たちの中では平均的なアークスである。努力の結果もあって現状ついて行けている状態であるがたった一つ、この化け物揃いに匹敵するほどの能力がある。それが『超運』。本人は意識して使えないものの、ここぞというときに発揮する豪運である。その幸運はあまりにも強力で常識的範囲を軽く逸脱する。
「ん? んな!? 貴様キャス弧!? 貴様がなぜここにいる!」
「おや、皇帝さん。あなたこそなぜここに? 私は、私をお呼びになったマスターの声に応えて召喚に応じたのです。全て私に任せて、あなたは座に戻られたらどうです?」
「なにおぅ!? 余こそマスターの声に応えたのだ。余一人おればよい! 貴様こそ座に戻ってもよいのだぞ?」
「げぇ! 人斬り! 貴様! またわしの邪魔しにきおったのか!? あれか! ワープか!? またワープしたのか!?」
「アーチャー、また貴方ですか…。人の事をどこかに現れた某将軍みたいに言わないでください。相変わらずどこにでも出ますねぇ。今回はそんなこと言ってる場合じゃないんです。貴方にかまってる暇はありません!」
ハヤマの英霊うち2名は既に内輪もめを始めている。更に3人目の織田信長を名乗る英霊はアインスの英霊沖田に驚いていた。
「あーもうグダグダだよ!」
「あっはっはっは!」
「頭痛いわ…。なんなのこの人達…。女神は召喚するし、一人につき一騎が限度のはずなのに2騎だけじゃなく3騎も…。」
クロノスは白目を向いてるし、シンキはソレを見て笑っている。オルガマリーは頭を抱えてとうとう伏せこんでしまった。正直気持ちは分かるぞとオキは思いつつ、数ある英霊達に目をキラキラ輝かせている立香の肩をポンと叩いて前に出た。
「あーそれぞれ言い分はあると思うが、こちらと急ぎでな。悪いが自己紹介を済ませた後に現状を伝えたい。どうだろうか?」
オキの言葉にようやく騒がしかった周囲が、燃え盛る街の音だけとなって静まり返った。
「んじゃ改めて。それぞれのお名前をお聞きしてもよろしいですか? いいよな? オルガマリー。それぞれの名前を知らないでこれから戦うのは効率が悪いと思うが。」
オキ達は周囲に危険が無い事を警戒しつつ、召喚した英霊を後ろに、大きく円を囲った状態になっていた。
「え、ええ。」
驚きと困惑でもうあきらめた目をしているオルガマリー。先ほど軽く聞いたがサーヴァントは本来真名を隠す必要があるという。名前を知れば、その逸話から弱点を割り出されて不利になる可能性が大いにあるからだ。
だがこれは聖杯戦争ではない。相手がどういう相手で、何をしてくるかが分からない以上、こちらの状態を万全にしておく必要がある。そのためにはお互いのサーヴァントの事を知っておき、弱点を補い合い戦えば、少なくとも詰む事は無くなるわけだ。
「そんなら俺から行こうかな。えっと、俺が召喚して答えてくれたのは…。アサシンの…。」
「ステンノよ。ふふふ、楽しめるかどうかと思ってたけど、最初から笑わせてくれるなんて。いいわ、マスターとして合格よ。」
「ステンノ…。女神ステンノ。ギリシャ神話のゴルゴーン三姉妹が長女! 女神さまが召喚されるなんてあり得るんですか?」
マシュの質問にオルガマリーは理論上不可能ではないという。だが、それでもかなりの確率。一般常識で考えるならばありえないと言った方が早いらしい。
「女神様が味方ならどんなことがあっても安心だな。」
「あら、マスター。私は女神だけど、戦う力は無くってよ? いつもは妹に戦ってもらっていたから私は戦いなんて、ふふふ。それとも、私を戦いにだそうだなんて、お思い?」
微笑みに見せる大きな優しさと包容力のある声で囁くがオキに向ける眼だけは違った。まるで本気の際のシンキのように瞳孔は縦に広がり、それは例えるならば蛇の眼そのモノ。優しさの奥には『神』が健在しているようなのは間違いないだろう。
ゾクリと背筋の凍る感覚。戦える力は無いと言うが、本当だろうか。
「状況次第だね。他の英霊の事も知ってから考える。」
だが、そんな眼をみてもケロリとするオキ。
「…。」
眼を見開くステンノは何かに驚いている様子だった。なにか不思議な事を言っただろうか。
「あなた…。まさか…。いいえ…。そこのあなた。」
ステンノが立香を呼ぶと、立香は一瞬だけふらりとした直後にステンノの前に跪き、手をとる。呼ばれただけの立香の行動に戸惑うマシュ。
「マスター? どうなさったのですか?」
「超強力な魅了…。もし立香が男だったらその魅了は死を意味するほどの効力…。あれが、女神の力…。」
オルガマリーの言葉にステンノは説明は不要だといい、立香にかけた魅了をといた。ぶんぶんと首を振る立香は首を傾げ、なぜ跪いたか不思議そうに自分の手を眺めていた。
「あなた、私の魅了が効いてないわね。どういう事かしら。アークス…異世界の住人みたいだけど。こんなことがあるのね。ふふ、面白いわ。ふふ、ふふふ。」
微笑みを崩さずにステンノはオキの後ろに再び戻った。どうやら魅了をかけられたらしい。なんともなかったが。アークスには聞かないのだろうか。まぁそれくらいでいてはダークファルス、ましてや深遠なる闇相手なんかできなかっただろうが。
「あー、次は隊長のところ、よろしく。」
「ああ、俺の所は運が良かったのか二人だ。」
アインスが二人を前に誘導する。沖田総司に土方歳三。オキも惑星スレアで教えてもらっている為知っている。
新撰組、近代化がおきる前のニホン。幕末と呼ばれた時代に生きていた有名な剣士の名前だ。
「新選組副長、土方歳三さんと、同じく新撰組が一番隊隊長沖田総司君だ。」
「よろしくお願いします。」
「おめえらが新しい入隊候補か?」
「土方さん、ここは新撰組じゃありませんよ。空気読んでください。」
「うるせぇ沖田。俺がいる場所が新選組だ。」
「あーもう。すみません。この人いつもこうなんで…聞き流してください。」
土方の言葉に周りに頭を下げる沖田。相変わらず厳しい言葉を投げる土方。アインスは苦笑気味だが、どこか嬉しそうだ。
「土方さんはバーサーカー。沖田君はセイバーで召喚されている。」
狂戦士。たしかに間違ってはいないのだろうか。少なくとも問答無用でこちらに危害を加えてくる人ではないので安心できるだろう。
それにかつての逸話を知っている限り、二人の腕は確かなのは間違いない。
「じゃあ次は私ね。クラスはそっちと同じバーサーカー。」
「俺の名は坂田金時。よろしくな。悪いが暫く世話になる。俺の事は、ゴールデンと呼んでくれ。」
同じバーサーカーと言う坂田金時、いやゴールデンは金髪のおかっぱに長身の筋肉隆々の身体。手に持つ巨大な斧のような武器が特徴的だ。
「坂田金時…童話、金太郎のモデルにもなった有名な方ですね! 私も読んだことがあります。鉞担いだ金太郎♪」
マシュの歌声にゴールデンも微笑む。
「俺の事、知ってるなら話が早いじゃん。俺の大将はこの人だが、聞けばあんたが総大将だっていうじゃねぇか。よろしくな、総大将。」
ものすごい爽やかで且つ熱い気迫の青年のゴールデンはオキに握手を求めてきた。オキもよろしくゴールデンと笑いながら握手を交わした。
「はっはっは。…ところでうちの大将…ゴールデンなのは間違いねぇんだが、ちょっとその…服がデンジャラスすぎじゃん? 総大将からも、もう少し言ってほしいんだが…。」
肩を叩きながら笑っていたゴールデンがオキにしか聞こえない小声で話しかけてきた。どうやらシンキの服装についてらしい。
まぁ、確かにシンキの服装は露出度が高い。ほぼ水着に近い薄さだと言ってもいいだろうその姿はどこかの国の踊り子をイメージする。
「あ、あはは…善処します…。」
「おう…あんたも苦労してんだな…。分かるぜその気持ち。」
泳ぐオキの眼にゴールデンは察してくれたらしく、どうやら同情できるらしい。
「つ、次!」
続いてハヤマの陣営。その豪運により3名の英霊が召喚された。
「えっと、セイバーのネロ・クラウディウス、キャスターの玉藻の前、そしてアーチャーの…。」
「魔・人! アーチャーじゃ。」
言い直すように強くハヤマに伝える魔人アーチャー、第六天魔王織田信長。
「しっかしよく燃えとる街じゃのう。これあれか? わしのせいか? 流石わし! どこでも炎上するのがわしの力よ。」
はっはっはと笑う信長の頭にすぱーんといい音の鳴る手が鳴り響いた。
「そんなことありません。まったく、アーチャーもわかってるはずです。ここが今どういう状況なのか。」
「いっっったいのうセイバー! 冗談じゃ。魔王じょうくと言う奴じゃ。そんなことわしらサーヴァントはわかっとるわい。…おぬしらが異世界からの武士じゃということもな。」
コントのようなやり取りから一転。急に声色が変化する信長。
『織田信長と言えば、惑星スレア、および地球でも超有名な武将の一人です。なんでも、魔王の如く力を発揮し、圭子さんやヒツギさんの国の天下を築いたとか…。』
オキの胸ポケットにいるシエラがデータベースからその情報を引っ張り出してきたようだ。
ネロ・クラウディウス。帝政ローマの第5代皇帝。悪名高き「暴君」とまで言われた。
玉藻の前。嘗ては九尾の狐と呼ばれた大妖狐。日本の平安時代末期に、鳥羽上皇に仕えたと言われる絶世の美女であり、白面金毛九尾の狐が化けたものであるとも言われた。日本三大化生の一角。惑星スレア、及び惑星地球の双方にその名は残っているという。
また、先の坂田金時を初め、土方歳三、沖田総司、そしてステンノもそれぞれに名が残る歴史があるという。
『なるほど。宇宙の記憶とは、そういうことか。』
アルマは言っていた。この世界は宇宙の歴史そのものだと。数多くの宇宙の歴史に名高き英雄達が同時に存在していてもおかしくはない。
「ネロに、玉藻さん、と…」
「あ、アーチャーはノッブと呼んであげてください。」
「了解沖田さん。ノッブっと…。ほい次。んじゃぁミケ。」
「なんか失礼な略し方されたのじゃが!? じゃが!?」
ハヤマの首をもってぶんぶんと振り回すノッブ。だがその顔は満更でもなさそうだ。
「じゃあ次はミケなのだー!」
「■■■■■■■■■■■ーーー!!」
巨大な咆哮と共に前に出て来るはミケと銀髪の少女を両肩にのせた土方、ましてやゴールデンよりもでかい巨体。
「oh…ビースト。」
ゴールデンの言葉通り、ビースト。まるで怪物とまで言えるその姿を見るだけで強者と分かる。
黒い巨体、巨木のような太い腕と脚。鬼のような顔。それとは裏腹に一緒に連れている少女は可憐であり、例えるならば雪の様。
銀色に輝くロングの髪が濃い紫色のコートによく映える。それでいて凛とした顔つきに紅く大きな目が綺麗に感じる。
「初めに言っとくわ。私のバーサーカーは世界で一番強いの。そこんとこ、よろしくね。」
オキの見たそのニコリと微笑む笑顔は天使よりも悪魔を初めに連想した。
「ヘラクレスというそうなのだー。こっちの子はイリヤというらいいのだー。」
「■■■■■ーッ!!!」
ミケの紹介に合わせて再び叫ぶヘラクレス。どうやら挨拶代わりらしい。その大声に耳を塞ぐオルガマリーや立香、若干おびえの見せるマシュと対してオキ達は笑みを浮かべる。
強い。この英霊はこの中でも一番の強さを持ってそうな…気が…。
「あれ? 強さを感じた…はずなんだが。」
ミケのサーヴァント、ヘラクレスに何かが足りない。それにこの少女。姿形はそこに見えるのに実際に実体がないようだ。
「どうやら強い繋がりのある二人のようなのだー。ヘラクレスは自分の影さんを忘れたようなのだー。おっちょこちょいさんなのかー!」
ヘラクレス。ギリシャ神話に登場する大英雄。大神ゼウスの子にして様々な冒険の物語を持つという。
ヘラクレスの足元を見ると、確かに影がない。足りないと思ったのはこれだった。
そのため、ヘラクレスは本来の力を発揮できずにいるという。
イリヤと名乗る少女についてはシエラがいくら探しても出てこなかったようだ。つまり英霊ではない。イリヤは言った。
「私はサーヴァントじゃないわ。そうね、分かり易く言うなら、バーサーカーについた概念かしら。なぜ一緒に出て来ちゃったのかは私も分からないわ。でも、別にいいでしょう?」
特になにか問題があるわけではない。ミケ曰く、イリヤの事は必ず守るとヘラクレスは言っているという。
「え? なにミケ、ヘラクレスの考えわかんの?」
「わかるのだー。」
「■■■■■…。」
言葉をしゃべらない、まるで獣の咆哮のような言葉使い。強い狂化スキルを所持するヘラクレスは本来ならば意志疎通はできるはずがないとオルガマリーは説明したが…まぁミケだし。
「次はボクのサーヴァントだね。」
「こんにちはっ!私はクロエ。クラスはアーチャー。よろしくね。」
元気な褐色の少女だ。どこか、先のイリヤとよく似ている気がする。
「私は本当ならサーヴァントの座には居ないのだけれど…。なーんでかここに召喚されちゃったのよねー。」
クロエはチラリとヘラクレスの方を見る。彼の肩に乗るイリヤは微笑んだまま知らんぷりだ。
「まぁ荒事には慣れてるし、聖杯戦争…とまではいかないけど、そっち方面には嫌と言う程縁があるのよね。呼ばれたからには仕事はするわ。だから、マスターにはきっちり魔力供給、お願いするわね。」
ウィンクして小悪魔の如く微笑むクロエにクロノスは少したじろいでいる。
後にクロノスから聞いた話だ。
『彼女、クロエはどうやら別世界に飛んだ友人を探していたらしい。そこにボクや他の要因で引っ張られた可能性がある…。とはいえ魂が分かれるって珍しいにも程があるよ。気をつけた方がいいとおもう。』
彼女、クロエは魂が別れた状態でこちらに来ているため、本来の世界には本来の彼女がいるらしい。ここにいるサーヴァントとして召喚された彼女は、彼女であって別の彼女であるという事らしいが…正直こんがらがってきたのでオキは考えるのをやめた。
以上、各マスターについたサーヴァント達だ。
次の動きをオルガマリーに確認し、次の目標地点へとゾロゾロと団体が動き始めた。
「へぇ。おもしれぇ奴らが居るもんだ。」
遠く離れた崩れた大橋の上。燃え盛る街を一望しながらひとりの男がその団体を見つめていた。フードを被り、大きな杖を持った男はその団体が向かった港方面へとジャンプした。
みなさまごきげんよう。
早速各メンバーがサーヴァントを召喚し、メイントなるパートナーたちと手を組みました。
正直、冬木でメンバー入りするサーヴァントとしては破格でしょう。
近中遠のバランスもかなりいい感じに別れました。
さて、これから彼女ら彼らと共に旅をしていくことになります。
いろいろ裏設定がありますので、それについては今後物語の中で説明していきたいと思います。
それでは次回にまたお会いしましょう。