終電にはまだ早い   作:緋影真央#無印

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第二話

「よ、今日も朝から疲れてんな」

「毎朝あんな電車に揺られてるからね」

「ご苦労なこった、コーヒー要るか?」

「もらう」

 

ロビーに入ったところで肩を叩かれ振り返る、

そこに居たのは同僚の羽矢和斗だった

羽矢はというと私とは高校からの付き合いで友人のなかでも数少ない

腹を割って話せる相手だ。

暖かいコーヒーで掌を暖めていると今度は気のいい女性の声がした。

 

「あらまぁ、電車今日も相変わらず満員だったのねぇスーツよれよれじゃないの」

 

今日大事な会議なんでしょ

パリパリにしといてあげるわよ。

 

タイムカードを押して仕事を始めようとしたとき話しかけてきたのは清掃員の春子さんだ

彼女は五十代の人の良さそうなおばさんで私は彼女に何度か助けられている

...主にスーツのほうで。

相も変わらずよく気の効く人だ。

今日は大手企業の若社長と対談があるのだと昨日の会話で口から溢していたのを覚えていたらしい。

 

じゃあ、お言葉に甘えて。

 

頭を下げて感謝をのべると

 

いえいえ、いいのよ ふふふ。 と

 

何時もの気のいい笑顔で笑って去っていった

 

「春子さんとお前って仲良いよな」

「そう?ありがとう」

 

まぁ面白い人だしな、と言って笑う羽矢に笑いかけ自分のデスクに向き合う。

対談する前に、話す事を纏めておいた資料を見直しておきたい。

 

「なあ」

「なに?」

「お前なんか機嫌が良いのな」

 

無意識か知らねえけど、鼻歌

そう言って笑う羽矢の言葉に周りを見渡せば、くすくすと小さな笑い声が聞こえて肩をすぼめた

 

「なんかあった?」

「...うん、まぁ」

「ふぅん、後で聞かせろよ」

「わかった」

 

あと、お前のスーツ俺が取りにいっておいてやるから 感謝しろよ、と言った羽矢はそれだけ告げると自分のデスクについた。

 

少し、先程の車内のことを思い浮かべてみる。

考えてからドギマギし出す心臓に、

あぁ、もう、と頭を抱えた。

結局あのときのメールは送信出来ていない。

この気持ちを一人で理解しろと言われれば出来ないこともない、はず、だけど

 

「......けど男、だしなぁ」

 

一般的な考えをするなら、可笑しいことなのだと思う

けれど

それならこの気持ちをどう形容すれば良いのだろう。

 

「.........今考えるのはやめておこう、対談に支障が出たら嫌だしな...」

 

二、三度首を振って液晶を見つめる。

それでも頭に浮かぶ青年にあきらめるように机に突っ伏した。

 

「やだ、何してんのあんた」

「うえ、先輩...いやちょっと...考え事」

「考え事って!あんた社長と対談すんのにそれでいいわけ?」

「そんなこと言われても......」

私にだって悩みごとがあるんですよ

 

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