島「ところで古代、ちょっと気になっていることがあるんだが。」
古「なんだい?」
島「おまえ声変わりでもしたか?」
古「気のせいじゃないかな。」
メ号作戦から三か月後
ヤン・ウェンリーあらため古代進はキリシマに乗艦し、地球への帰途に就いていた。
地球というフレーズにいい思い出がないが、一応、古代進は軍属であり、帰還命令が出ている以上地球に帰らないわけにはいかなかった。
今回のメ号作戦で生き帰ってきたのはキリシマ1隻のみであった。古代進の兄、古代守の乗艦である駆逐艦ユキカゼはキリシマの撤退を援護し、多数のガミラス艦を撃沈する戦果をあげるも包囲攻撃され轟沈。古代守以下24名は乗員は戦死した。
この作戦で生き残れないであろうと分かり切っていたこととは言えヤンにとっては唯一の肉親が死ぬというのは辛いものであった。
一度でもあって話をしたかったと、船窓から見える赤く干上がった無残な地球を見ながら思うヤンであった。
キリシマは大気圏に入るとそのまま突入し干上がった海底の地下に作られた軍港へと入港しようとしていた。
現在の地球人類の生存に必要な施設及び都市はすべて地下へと避難していた。ただ、宇宙船が頻繁に出入りするという港湾施設については多くが他の施設に比べ比較的浅い場所に作られていた。理由については、利便性の面や建設された当初は想定された内惑星戦争当時の火星からの攻撃に十分耐えることが出来ると判断された為であった。実際に内惑星戦争時には隕石による攻撃から地球艦隊を守り切ったのであった。
しかし、今回のガミラスとの戦争においてはそうではなかった。遊星爆弾による攻撃はまだしも、ガミラス製の長距離地中貫通型ミサイルや、高速大型空母の主砲による一撃離脱攻撃は防げなかったのである。その結果、現在まともに稼働している大型港湾施設及び造船ドックは指で数えるほどしかない状況であった。何らかの対策をとるべきであったが、市民の安全を優先し地下都市の増設や強化が優先され対策が施されたのはわずかであった。理由としては軍事港湾施設そのものは秘匿性が高く、ガミラスからは発見されないという理由からであった。しかし、ガミラスはその施設を次々と特定し破壊していったのであった。多くの戦闘艦が戦うことなく破壊され、結果として更なる戦力の低下となったのであった。
今回、キリシマが入港するドックは、低下する港湾施設を回復する目的で新造された小さなものでガミラスから脅威は低いとされ露骨に放置されてきた場所であった。本来のキリシマが帰るべき港は第一艦隊が出撃後すぐに攻撃によって壊滅し、地図上から消えていた。
では、その他の人類が居住する施設、重要区画は安全であるかというとそうではなかった。敵性植物が放つ毒素は予想に反して、地中深くまで汚染し始めていたのであった。対抗策として新たな防護壁がすぐに開発されたが、いまの人類にすべての都市を覆うことは出来ず、地表に近い軍事施設だけしか覆う事しか出来なかった。
現在の防護壁だとあと1年で毒素が現在の都市に降り注ぐことになる。人間は毒素を一瞬でも吸うと数秒で死にいたる。もし、防護壁を毒素が越えれば1週間として持たないだろう。
そのため、人類滅亡まで一年と言われているのであった。
キリシマは入港すると、すぐにドック入りとなった。そして、自分と島はキリシマを退艦し、別命あるまで待機との命令を受けたのであった。
命令を受領した古代と島の2人は、港と地下都市を繋ぐモノレールに乗り都市部へと向かっていた。
「しかし、まったく・・・見事としかいいようがない。」
「いきなり、どうしたんだ古代。」
「敵について考えていただけだよ。」
つい、つぶやいてしまったことをどうやら島に聞かれてしまったようであった。
「ガミラスがどうかしたのか?」
「逆に聞くけど、今の彼らにとって地球はどの程度価値があると思う?」
「攻撃してくるんだ。それだけの価値はあるだろうよ。」
「僕はガミラスにとってそこまで価値は無いと思うよ。」
「おい、どういう事なんだよ古代。」
「いいかい?島。まず、ガミラスにとって今回の戦争の意味について考えてみるんだ。」
「意味っていやぁ、そりゃあ、地球や太陽系にある資源の獲得じゃないのか。」
「確かに資源を獲得を目的とした戦争は有史以来数多く行われてきている。だけど、主な資源採掘が可能な宙域にて調査や採掘などの動きを見せていないし、その他の宙域でも同じく確認できていない。よって、可能性は低いと考えるべきだよ。」
古代が地球帰還までの間にキリシマ艦内にある資料を確認したところによると、現在ガミラスがその様な調査等の行動をしていないことを長距離偵察隊やパトロール隊の報告書に書かれていた。人類の知らない未知の資源があるかも知れないが、資源を調べる行動を起こしていない以上可能性は低かった。
「なら、人間とか。」
「確かに人間も立派な資源の一つだ。だけど、地球人類が絶滅一歩手前まで追い込まれている状況でそのことは考え難いと思うよよ。」
確かに人間は立派な資源の一つである。実際、前世の世界において帝国は労働力確保を目的とした同盟領内でのマンハントを実施していた。エル・ファシルがいい例である。しかし、エル・ファシルでは結局のところすべての住民が逃げてしまい。帝国は戦術的には勝利したが戦略的に失敗してしまったのであった。
ガミラスはマンハント又はそれに類する作戦行動をとってはいないことを確認している。また、獲得すべき人間を絶滅に追い込んでしまっていることから、除外しても問題はないだろう。
「なら地球そのものじゃないのか?」
「たしかにそれが一番高い可能性であると僕は考えているよ。」
「なら、戦争する価値はあるだろう。」
「うーん、なんて言えばいいかな。ガミラスはそこまで本気では無いと思うんだよ。」
「本気ではないって。どういうことなんだよ?」
「まず、もし、ガミラスが本気で地球を狙っているなら、もっと積極的な行動を取っているはずだ。だけど、彼らは冥王星に引き籠って長距離攻撃を繰り返している。」
「それは、第二次火星沖海戦で地球が勝利したからだろう。」
「それは戦術的にも、戦略的に見ても地球は敗北していると思うよ。」
「どういう事なんだ。それは!」
どうやら、島は感情昂らせて反応してした。ヤンは何か癪に触ってしまったのであろうかと考え、理由をあとから付け加える。
「確かに、地球軍は火星沖でガミラスに損害を与えることができた。だけと、宇宙艦隊を殆んど失い、火星における重要防衛拠点は破壊されてしまった。これらのことを考えると戦術的にも戦略的にも敗北としか言えないよ。」
「わ、分かったよ古代。それで本気でないというのはどういうことなんだ。」
「さっきも言ったように火星沖において、地球艦隊大半と火星における防衛拠点を失ってしまった。よって、事実上、防衛線は既に崩壊しているようなものだよ。絶好のチャンスだけど、ガミラスは火星を越えて積極的な攻勢を仕掛けていない。この理由としては、今回の火星沖での海戦では彼らにとっても予想外のことが起きたということだよ。」
「英雄・沖田十三の活躍か。」
火星沖会戦の際、地球からすると敵に対して比較的大きな損害を与えたのは沖田十三の艦隊であった。これは撤退する艦隊を追撃してきた艦隊を、待ち伏せ攻撃によって壊滅させたものであった。プロパガンダの意味もあるが、地球からするとまともに相手に痛手を与えた希有な例であった為に何度も大きくとり上げている。
「このことは、彼らにとっても予想外であったんだと思うよ。彼らからすると赤子の手を捻るよな感じであったのに予想外の手痛い被害を受けてしまった。だから、地球に近づくごとに予想外の被害が出ることを警戒した。ここで重要な攻略すべき存在であるなら、確実に攻略できる上陸部隊や艦隊を地球に差し向けるよ。だけど、艦隊を差し向けない。ということはそこまで重要拠点でない。だけど、放っておくわけにもいけない。だから、精度が悪くて時間もかかるけど、着実に国力を裂いていく遊星爆弾による攻撃に変更したんだと思うよ。それに、遊星爆弾は材料が小惑星があれば簡単に作れて経済的でもあるし、もし、何らかの理由があり撤退することになっても出血を少なくできるしね。よって、彼らはそこまで本気で地球が欲しいわけじゃないのさ。」
「まじかよ。そんな理由で。」
「自分は労力をかけず、血を流さず、確実に相手を弱らせていく。まったく、見事なもんだよ。だけど、これは地球の基準で考えているから実際は間違っているという可能性はあるけどね。」
なんだかんだ喋っているうちにモノレールは都市側の駅に到着した。モノレールを降りて、都市側の係員に手続きを済ませた。このまま自宅待機をするため島は駅を出ようとしたが、古代は出ずに別の路線に乗り換えようとしていた。
「おい古代。別命あるまで待機と言われただろう。」
「ちょっと行きたいところがあってね。」
「どこに行くんだ?」
「図書館にちょっとね。」
「図書館?」