『PI PI PI PI PI PI PI PI PI !!』
書類や本が床を埋め尽くす程に散らかっている1LDKの一室で時計の電子音が鳴り響く。すると二段ベットの一段目で寝ている古代進は電子音で目が覚めた。古代は布団から手を出して辺りをまさぐり電子音のスイッチを探す。そして、手が時計のスイッチに触れるとそれを押し時計の電子音を停める。しかし、押した途端、再び眠りへと着いてしまった。
ここのところの古代進の生活習慣は完全に崩壊していた。こちらの世界の情報を整理しようとして、資料を集めてそれをまとめる作業をしていたせいもあるが、前世の養子と妻がいないことが一番大きかった。前世は辛うじて彼らのおかげで生活習慣は保たれていたが、残念ながらこの場に彼らはいない。結果、生活習慣は乱れに乱れた。さらに、軍令部から自宅待機の命令(守ってはいない)も出ていたこともこの崩壊に拍車をかけた。
古代進が再び眠りに入って数分後、島大介が慌ただしく部屋に入ってきた。部屋に入ると、本や紙が散らかった状態に驚きたじろぐが、古代が寝ているベットへと足の踏み場を探して進んだ。
「おい古代! 起きろ! 何時だと思っていやがるんだ!」
布団に丸まっている古代を必死に揺すり起こそうとする。
「むにゃ・・・ユリアン・・・後、5分寝かせてくれ……」
「ユリアンって誰だよ! というか、今日の予定わすれたのかよ!」
「予定…?」
寝ぼけた頭で記憶を巡らせてみる。すると、本日の午前中に出頭する命令を受けていたことを思い出す。
「や、やばい…!!」
慌てて勢いよく飛び出すベットを飛び出す。しかし、布団に足を引っかけてしまい。顔面から床に突っ伏してしまった。それを見た島は呆れた顔をして、「外で待っているぞ!」と言い部屋から出ていった。
古代は、散らかった部屋をかき分けながら寝間着を脱ぎ、軍服に着替えて慌てて外へ出た。外では島が時計を見ながらそわそわしてまっていた。
「おい、ヤバいぞ。このままだと完全に遅刻だぞ!」
「す、すまない。」
エレベーターを待っていたが、待つ時間が惜しかったので、古代と島のそのまま建物の階段を走り下りた。階段を降りてバス停に向うと、辛うじてバスが止まっていた。二人は飛び乗り、命令された場所へと向かうのであった。
目的地に場所にバスが到着すると、二人は飛び降りて、集合場所へと全力で走った。途中、身分証明書の提示の提示等で、時間を食われたがなんとか辿り着くことが出来た。
だが、時すでに遅し、命令された時間はとっくの昔に過ぎており、呼ばれた全員が整列していた。その為、集合していた他の隊員から見れば浮いた存在であり、後から来た二人には全員の目が注がれたのであった。おまけに、ステージの奥にいるお偉いさん方の一部は顳顬に筋を立てていた。
古代が「ど、どうも…」と言い頭を下げると、航空隊の制服を着たスキンヘッドの男に「お前らはあっちだ。」と前列に指を刺し指示をしたので前列へと進んだ。古代と島が前列の自分の位置に着くと、ステージの上に立つ沖田十三が話をし始めたのであった。
「諸君、諸君らはこれまで特殊任務の訓練を受けて来たイズモ計画の選抜メンバーである。今日、私はここで正式に君たちの任務を伝える。……」
この手の話は長くなるので割愛しまとめる。
話の内容は至って単純『火星での回収物の答え』と『集められた自分らの処遇について』であった。
まず前者についてであるが、あの火星で見た異性人の女性はイスカンダルという星から来た使者であり、彼女の役目はこの地球に恒星間航行可能な船のエンジンのコアを届けることであった。そして、彼女の一年前に設計図を届けに来た使者がいたということであった。さらに、イスカンダルのスターシアという女性はこの地球にその船を使ってイスカンダルまで地球再生の為のコスモリバースシステムという機械を受け取りに来いと言っているという内容だった。
「(しかし、まあ、とても物好きなヤツがいたもんだ。)」
この話を聞いて、
このことはガミラスにとって都合が悪いことにはなるが、それがイスカンダルの利益につながるとはわからない。
「(正直、同じ人間相手ならまだしも、異星人となるとまったく前提がわからないなあ…)」
そして、次に後者についてだが、そのイスカンダルへと向かう恒星間宇宙船の乗組員として、自分を含めたこの場にいる全員が選ばれたということである。選ばれたと言っても乗船拒否も可能であると付け加えていた。つまり、命令ではなく要請であるということだった。
古代本人からすれば、前世に満喫しきれなかったブランデー入りの紅茶を飲んでゆっくりとした生活したい限りである。しかし、そもそもいまの地球に上質な紅茶とブランデーが残っているどうか怪しい上に、地球に残ったとしても滅亡へ進む地球でゆっくりと出来るわけがないのでヤマトに乗船することにした。
さて、沖田十三の説明が終了した後は、芹沢虎鉄軍務局長からのありがたい演説が始まったが、あまり重要そうでないため、右の耳から左の耳に流すことにした。
20分ぐらい経った頃に彼の演説は終了した。
その後、解散の指示が出された。古代は自室に散らかした資料の片付けと本の返却を地球出発前にしなくてはならない為、急ぎ足で帰路につこうとしたが、
『古代進、島大介、司令室に出頭を命じる。』
「こ、古代――」
「(やれやれ、まだ帰れそうにもないか…)」
「貴様ら、軍紀をなんだと思っているんだ!!」
「うっ!」
古代と島が司令室に出頭するや否や土方竜<空間防衛総隊司令長官>から怒鳴りの一声を受けたのである。古代進の記憶によると、彼は士官学校での直属の教官であったということで、島を含めた二人にとって、彼は頭があがらない存在であるらしい。
「士官学校からやり直すか、貴様ら!」
「いえ!今後、改善に努力していくことを誓います!」
「ふん、まぁいいだろう。」
古代は、遅刻したことに長い説教話があるのだと覚悟していたが、そうでもなかった。
「貴様らを呼んだのは軍紀のこともあるが、もっと他の用件があってな。」
「はっ!何でありますか?」
「古代、貴様に会いたいという人物がいる。」
「誰でしょうか?」
「彼だ。」
土方長官が向けた先には、今回のヤマト計画の主要人物でこれから自分たちの上官となる沖田十三が司令室のデスクに座っていた。
「彼が古代守の…」
「そうだ。」
すると、デスクを立ち、古代の目の前まで来た。
「古代守は男であった…立派な男であった。だが、死に追いやったのこの私だ。そのことについて一言でも謝りたかったのだ。すまん…」
沖田十三はそう言うと、頭を下げたのであった。
「いえ、気にしてはおりません。軍事作戦の中での出来事であるため仕方がないことであります。」
「そうか。」
「一つだけ聞きたいことがあります。」
「なんだ?」
「ユキカゼの突撃は彼の独断であったのでしょうか?」
「いや、決して彼はそんなことはしていない。あれはユキカゼ乗組員の同意で行われていた。」
「そうですか、ありがとうこざいます。」
その後は、何らお叱りも無く、古代と島は司令室から退室することが出来たのであった。
「ところで古代。なんであんなことを沖田十三に聞いたんだ?」
司令室を退室して、廊下を歩いている中で、島から来た質問に対し、頭を掻くと古代は答えた。
「兄さんが部下達の心情を無視して、敵に突っ込んだんじゃないかと心配していたんだよ。」
古代は帰還後、この世界について知る為に自分の権限の範囲で集められるガミラスと海戦の戦闘データを片っ端から読んでいたのであった。その中で、ユキカゼの撃沈時の行動に目が触れたのであった。
メ号作戦の撤退戦において、ユキカゼは反転、ガミラス艦隊に対して突撃を行ったのであった。結果としてはキリシマの撤退の時間を稼ぐことになったわけであるが、古代守の独断による節があった。そのため、古代守という人物を知る為に生き証人である沖田十三に聞いた次第であった。
「そうなのか、よかったな古代。」
「ああホント、よかったよ。指揮官の心情につき合わされて死んでしまうのはくだらなくてたまったもんじゃないからね。もし、兄さんがそんなことをしていたら、僕は兄さんをキライになっていただろうな。」