≪ヤマト計画発表から12時間後≫
現在、恒星間航行宇宙戦艦ヤマトのクルーは軍の輸送車に乗り。ヤマトがいる造船所へと向かっていた。沖田の言葉で地球に残留してもよいと許可はされていた。しかし、古代進を含めたヤマト乗組員からは残留希望者は誰一人として発生しなかった。
「さて、どこに向っていることやら。」
ヤン・ウェンリーこと古代進は車窓の外をずっと見ていた。地球防衛軍本部から輸送車に乗っているが、地図上にある宇宙港とは全く別の方向に進み、先ほどからはトンネルの中をずっと走っているのであった。ここにいる全員がまったく何処に向かっているか把握できていなかった。車窓からはずっと岩盤の壁しか見えない為、古代に段々と眠気が迫って来た。そして遂に瞼が閉じようとした瞬間、トンネル先から光が差してきた。古代は迫って来た眠気を根性でキャンセルし覚醒すると、輸送車がトンネルを抜けた。トンネルを抜けた先は開けた広い空間であった。
「おいおい、なんだありゃ!?」
そしてバスに乗っている一人が窓の外を指さした。古代はその方向に目を追った。そして見たものは驚愕の光景であった。なんと空間の天井から艦尾と船底の一部と思われる物体が
それを見た輸送車に乗るヤマト乗組員達は唖然となった。当たり前である。本来なら有り得ない光景である。通常宇宙艦艇の停泊方法は、艦艇がすっぽり入る空間にアーム等で固定されるか、艦艇自身の着陸脚で接地しているのが当たり前である。たまに変わったものもあるが、決して天井に突き刺さって尻を出しているようなものではない。その光景は余りにも異常すぎた。
そうこうもしない内に輸送車は船尾の麓に到着した。バスから降りて近くで見ると更に凄まじい異質さが伝わってきた。天井から艦尾が突き出ている上に船全体が傾いているのだ。一体全体どうやってこんな状態で宇宙戦艦を建造したのかを逆に聞いてみたいぐらいだ。
「これじゃあ、まるで新造戦艦ではなく墜落した船じゃないか。」
早速これからの行く先が心配になってきた古代ことヤン・ウェンリーであった。
乗艦してみると見た目程傾きというのを感じることはなかった。どうやら艦内にはある程度重力制御が働いているようであった。指定された自室まで行き荷物を置くとそのままブリッジへと向かった。荷物とは言ってもまとめた資料と衣服といった生活必需品などで多くはなかったので直ぐに済んだのであった。艦橋はエレベーターで直接入ることが出来たので中央エレベーターに乗ると直ぐに着くことが出来た。
通路及び艦橋は他の地球防衛軍の艦艇と比べ圧倒的に広く肩を寄せ合うような既存の地球軍艦艇と比べ圧倒的に居住性は高かった。
???「貴方は…?」
艦橋に入って数歩して話しかけられた。声の方向へと振り向いた。
「君はっ!?」
古代は目の前の女性を見て驚いた。火星であったイスカンダル人に似ていた――あまりにも似すぎていた。顔つき、金髪の長髪まで殆んどの部分で火星で亡くなった女性にそっくりであった。
「どうしたの貴方。私の顔をずっと見ているけど何かついてるの?」
「ああ、ごめん。ちょっと昔にあった人にすごく似ていたから。」
「そう…」
つい女性の顔をジロジロと見てしまった。古代は咄嗟に頭を掻いて誤魔化したが、彼女に対してとても失礼なことをしてしまったと思った。
「もしかして貴方が戦術長の古代進さん。」
「そうだよ、今後もよろしく。」
目の前の女性に手を差し出した直後、島を含めた6人が艦橋に上がってきた。その時、艦橋要員はこれで全員が揃う事となったのだった。
「全員そろっているな。」
さらにその直後、沖田艦長も艦長室から直接スライド式の椅子で艦橋に降りて来た。
(あの構造は意味があるのだろうか……)
効率性を求める軍艦にしては些か存在意義について疑問に思う古代であった。それぞれ自己紹介をしようとした――突如凄まじい警報音が鳴り響く。自己紹介が出来ぬまま沖田艦長の『戦闘配置!』の声で全員が拝命された席へと着く。
「艦長!司令部から緊急連絡。早期警戒衛星が、惑星間弾道弾がこちらへと向かっているのを確認したとのことです。」
「徳川機関長、抜錨はまだか!」
「波動エンジン始動の為、極東管区の全電力が送られることとなっていますが、まだ送られてきておりません。」
「通信使、司令部と直接回線を繋げ。」
すると、頭上の巨大なディスプレイに藤堂地球防衛軍司令長官の姿が映った。
『すまない沖田君。先ほどのD地区にて暴動が発生し暴徒によって変電所が占拠、停止させられた。急遽、別途の電力ラインを引いているが間に合うかどうか。』
「真田副長、地上発射型迎撃ミサイルの方はどうだ?」
「先日の空襲で破壊され、復旧はまだです!」
「徳川機関長、サブエンジンを起動できるか?」
「無理です。波動エンジン始動の為にスラスター近辺にケーブルが接続されているため、起動した場合、波動エンジンの始動は不可能になります!」
「打つ手なしかよ!」
島が悪態を吐いた。この場の全員が『万策が尽きた』と空気が満ち始めた。その時であった―――
「――艦長、意見具申があるのですが。」
――艦橋の中央前方、戦術長の席に座る古代進が手を挙げた。
「古代!」
「古代戦術長、何か案があるのか?」
「はい。徳川機関長、波動エンジンの起動用の電力を火器関連装備に送ることは出来ますか?」
「可能だが、どうするのだ?」
「主砲にて弾道弾を迎撃します。」
「その手があったか!」
「古代戦術長、残念だがその案を実現することは難しい。」
古代の言葉に水を差すように真田副長の言葉が入った。この場にいる全員の視線が真田副長へと向かった。
「主砲を撃つことが出来たとしても迎撃はギリギリとなる。波動防壁が無い以上は爆風の影響をもろに受けることになる。船体が持たない。」
「副長、ギリギリというのはヤマトの探知可能圏内で迎撃した時の話です。ショックカノン理論上の有効射程はそれ以上です。」
「その場合だと、火器管制システム無しで目測で撃つことになるぞ。」
本来ヤマトの主砲は火器管制システムを使わず運用するという事は兵器システム上想定はされていない。ただ撃つことは可能ではあるが、高速で移動する物体に対して撃つという事は目隠しして銃を撃つというのと同義であった。
「過去のデータから弾道弾は、一定のコースを維持し突入してきます。そのコースに向って撃てば当たります。」
「だが、その突入コース・タイミングはどうやって知る? 軌道衛星は役には立たないぞ。」
地球の衛星軌道上にはかつて多くの衛星が存在していた。しかし、ガミラスとの戦闘でその多くが破壊され、穴あきだらけであった。その為、継続的な観測は難しい状況であった。
「それは問題ありません。現在、軌道上にはヤマトをエスコートの為にキリシマが待機中です。彼らに観測をお願い致しましょう。」
「古代戦術長。」
「艦長――」
「その計画を実行しよう。現在、考える限りで最善の策だ。通信使、軌道上のキリシマに連絡取れ。各員、古代戦術長の指揮の元で行動を開始せよ!」
『了解!』
各員が一斉に自分の持つ仕事を開始した。
「戦術長、キリシマとのデータリンクを接続を確認。しかし、観測データを得たのはいいですが、そこから諸元はどうしたら……」
「それについては問題はないよ。」
砲雷長の質問に対して古代は自分の左にあるメーターがガラスで剥きだした赤い半卵上の機械を指さした。
「なんだ、そのガラクタ?」
「ガラクタデハナイ! ワタシノナハ『【AUO9】アナライザー』トヨベ。」
「うわっ喋った!?」
島を含めた何人かが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「アナライザー、僕の友達が失礼をした。観測データから主砲諸元を求めることは出来るかな?」
「ナニヲイッテイル。ワタシニカカレバアサメシマエナノダ!」
「なら、よろしく頼むよ。」
「古代、よくアナライザーのことを知っていたな」
「乗る船についてはある程度、部署が違って知っていても損はないよ」
島に対して返答をしているとキリシマからの通信が入った。
「戦術長、観測データ届きました!」
「アナライザー、急いで計算をしてくれ!」
「リョウカイ!――――デキタ。」
「速っ!!」
予想以上に速く諸元データを計算結果が出た。このことは古代にも予想外であった。だが、驚いてはいられない。
「アナライザー、砲雷長にデータを!」
「リョウカイ。」
「データ頂きました。諸元入力―――完了!!」
すると、艦橋全体に機械音が響いて来た。防護シャッターが降りている為、外の様子は分からないが主砲が動いていることは分かる。
「主砲ショックカノンにエネルギ―伝達完了!」
主砲に砲弾が装填された。後は引き金を引くだけであった。
「発射まで20秒―― 戦術長に引き金を渡します。」
「りょ、了解――」
秒読みが読み上げられる。たったの数十秒であったが、この場にいる全員がその時間を長く感じていた。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ファイアー!!」
ショックカノンの引き金を引く。9門の砲から飛び出した青い閃光は距離を進むにつれて渦を巻き3本の線となる。そして大気圏突入まじかのところの弾道弾の先頭に直撃する。ショックカノンの閃光は外郭を溶かし、そして内部の炸薬を溶かす。刹那、大爆発。大気圏ギリギリであったが衝撃波が伝わって来た。ヤマト全体が振動する。その振動は数秒で治まった。
「被害状況を確認!」
各科員が持ち場の部署、機器を確認する。
「船体、異常なし!」
「火器及び管制システム異常なし!」
「航海システム及び航法システム異常なし!」
「レーダー異常なし!」
「乗組員からの負傷者の報告ありません。」
「全員よくやった。」
その艦長の言葉で艦橋全体が歓喜に包まれた。その中で古代はというとホッと胸を撫でおろした。まさか、砲雷長でなく、戦術長が引き金を引かされるとは思わなかった。前世ヤン・ウェンリーの射撃の腕はお察しの通りである。今後ずっと引き金を引き続けなければならないと思うと気が重かった。
「やったな古代!」
「ホントやったよ全く。」