人里に重傷を負った霊夢を担ぎながら戻ってきた勇斗は慧音の紹介である医者の元へ訪れる。
「ん…」
勇斗は眠りから目を覚ました。どうやら自分は畳の部屋で敷かれた布団の中で寝ていたらしい、
勇斗は過去の記憶を辿るだがしかし慧音とある医者のところへ行って…。
「霊夢!霊夢はどうなったんだ!?」
体を起こそうとするが力が入らない、どうやらあの戦いで霊力を使いすぎたようだ。
すると障子扉の向こう側から声が聞こえた。
「気がつきましたか?でもまだ安静にして下さい」
声の主は障子を開け姿を見せた、兎の耳に女子高生の制服の衣装…いやここは幻想郷、妖怪には間違いは無い。
しかし勇斗は名前も知らない、姿も初めて見た。ましてや少し前までの記憶が飛んでいるためにうまく話を切り出せない。
そんな勇斗の状態を察した彼女は少々取り乱しながら話を続けた。
「す、すみませんお体大丈夫ですか?でもさっきも言ったとおりまだ安静にして下さい、お体に障りますから」
「わ、分かりました…あの、ここは?」
「ここは永遠亭です、あなたここに着いて私や師匠が出てきたと思ったら倒れて、そりゃあ驚きでしたよ。そういえば自己紹介がまだでしたね、鈴仙・優曇華院・イナバです。鈴仙でいいですよ」
「そうですかそれはご迷惑を…。俺は牧屋勇斗って言います。よろしくお願いします鈴仙さん」
「勇斗さんのことは慧音から少し伺っています、それと…そんなにかしこまらなくていいですよ、タメ口でも」
「わかった、よろしく頼むよ鈴仙」
その後鈴仙から霊夢の状態を聞いた、かなり重傷だったが今は大丈夫らしい。さすがは博麗の巫女と言ったところだ。
勇斗は鈴仙に霊夢に会わせてもらうようお願いした、鈴仙は無理をして起き上がろうとするのを止めようとするが勇斗の真っ直ぐに見つめるその目に負け渋々肩を貸す。
勇斗は霊夢のいる部屋へ着いた、見る限りまだ起き上がれそうにはないが、命に別状は無いようだ。
霊夢は不安そうに自分を見る勇斗に笑顔で返した。
「霊夢、今回の件だけど…」
「正直あなたがいなかったら今頃私どうなってたか…本当にありがとう」
「実は霊夢に謝らなければいけないことがあるんだ」
勇斗が言う謝らなけれはならないこと…それはあの時に使ったスペルカード『フェアシュメルツング』の事だった。
勇斗は話を続ける、あのスペルは特定した人物を一時的に特別な霊力に変換し使用者がその霊力を体内に取り込むことによって姿が変わり様々な能力を飛躍的に上げることのできるスペルカードである。
しかしその反面大きなリスクを伴うものでもあった。人物を霊力に変換する以上、使用者がそれをコントロールしきれなければ変換した人物を消滅させかねないということであった。幸いあの時は成功したが自分が霊夢を危険に晒したということには変わりは無い、勇斗はそれを話すと霊夢に深々と頭を下げた。
「何を言っているの、頭を上げて」
霊夢はそう言うと話を続けた。
「勇斗、あなたはスペルを使う前に私の断りを得ていたのよ?意識は薄れていたけどはっきりと覚えているわ。だから勇斗が謝ることなんて全くないのよ、むしろ全力で私のことを守ってくれた…私は少なくともそう思ってるわ」
それを聞いて勇斗は「なら良かった…」と小さな声で言葉を漏らした。
しかし霊夢は今の話を聞いて別の疑問を持った、それはそのスペルがどうできたのかである。いくら勇斗2年の修行の身である下は外の人間だ、その勇斗がこんなトンデモスペルをつくるはずがない。
そう思った霊夢が勇斗に聞くと勇斗は人から預かったものだと答えた。
それは勇斗が修行をしていた時だった、いつものように華扇の指導で修行メニューをこなしているとある人物が訪ねてきた、名は「霍青娥」である。
青蛾は勇斗の存在を知りやってきたらしい、興味があったのだろう。
「あなたにこれを預けるわ」
「…これは?」
その時渡されたのがそのスペルであった。青蛾が言うには太古昔の幻想郷で災厄が起きたとき、それを鎮めるために仙人が龍神と力を合わせる為に使った技がスペルという形で今まで残ってきたそうだ。
何故青蛾がそのようなものをわざわざ勇斗に預けたのか。この事態を、そして勇斗がこのスペルをコントロールできるのを知った上で渡したのか…。
「兎に角俺はこのスペルを封印しようと思う、今後自分の手で他の人を危険にさせたくないんだ。霊夢このスペル君の神社に祀っておいてくれないか?」
勇斗はスペルを霊夢に渡す、それに霊夢は頷いて受け取った。
「じゃあ戻るね、お互いゆっくり治そう」
そう言って鈴仙に支えてもらいながら勇斗は部屋へ戻った。
今回はスペルの説明回になりました。永遠亭エピソードは次回以降になりそうです(^_^;)
話の通り当面『フェアシュメルツング』は封印となります。
今回新しく鈴仙が出てきたということで、スペルの説明の時は鈴仙も傍聴していたということでよろしくお願いします。
よろしければ次回も楽しみにして頂けると光栄です!