うざいジジイと異世界に行くという謎の苦行   作:お爺ちゃん作家

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第3話『*ハネウマライダーの人じゃありません」

 

 

 

 

「この娘、エロフの娘っ子かの?」

「エロフじゃなくてエルフな? 確かにエロいけど」

 

 そう。自分でも驚くほどに凝視して気付いたが、この娘はエルフだった。本人は今眠っているので、直接聞いたわけじゃない。しかしその切れ長の耳が物語っている。

 漫画やアニメで見たあのエルフ耳そのままだ。正直触ってみたい。

 

 

 

「取り敢えず起こさんと話にならんな、どれ、ワシが起こしてやるわ」

「おい待てジジイ」

「なんじゃ、ワシは神じゃぞ? 種族の創造者たるこのワシが欲情するとでも思っておるのか? ワシからすればお前さんもそこなお嬢ちゃんも、皆等しくワシの子よ。言わば保護者じゃ。子に欲情する親がいるか? お?」

「なんで高圧的なのか分からんけど、とりあえず舌舐めずりはやめような?」

 

 

 

 さっき言われた言葉をそのまま返してやった。

 冗談だと主張する爺さんを羽交い締めにしたところで、金髪エルフっ娘に異変が起きる。

 

「う……うん? どうして私こんな格好を。それに、こ、ここは……どうしてこんな場所にっ!?」

 

 どうやら目を覚ましたらしい。被せていた爺さんの黒服を両手でつまみ、身体を隠しながらあたふたしている。当然だけど、相当怯えてるなこりゃ。

 

 

 

「娘さんや」

「な、なんでしょうか?」

「ここが何処か聞きたいのはワシらの方じゃっ!!!!」

「ひ、ひぃ!?」

 

「なんでテメエがキレてんだよ横暴かっ!?」

 

 

 

 光を弾く様な明度の高い金髪に、濁りなきエメラルドを思わせる様な相貌。歳は俺と同じぐらいか。いや、ひょっとしてエルフだから長命だったりするかもしれない。

 そんな美少女が小刻みに震えている。なんかすごい興奮……嘘ですごめんなさい。

 

 

 

「驚かせてごめんね。俺は瀬口海斗、こっちの爺ちゃんは……」

「吾輩は猫である。名前はまだない」

「猫? 獣人の方ですか? ある歳を境に耳と尻尾がなくなるというのはやはり本当だったんですね!」

 

 

 

 そういえば俺もこの爺さんの名前を知らないな。つーか、神様に名前なんてあるのか? そしてこの子、ピュアだ。

 

「いや、爺さんの事は放っておいていいよ。それより君の名前は?」

「…………え?」

 

 俺がそう聞くや否や、エルフちゃんはポカンと口を開けて固まってしまった。あれ、自己紹介の流れじゃない?

 

 そ、そうか! この娘からすれば俺達はいきなり現れた誘拐犯も同然なんだ。もしくは裸にひん剥かれた状態で、不審者にいきなり声をかけられるという最低最悪ポルノグラフィティ!

 

「あっ、あ、うぐっ、あ、あの……」

 

 やばいやばい泣き出しちゃった! 最初何が起きたか分からない状況からの、段々理解してきたパターンのやつだよこれっ!

 

 マジックミラー号がヤラセじゃないと信じてたけど、回が進むごとに悟ってしまったあの目だ。純真無垢な眼差しから、溢れ落ちる涙。いずれ乾ききった瞳には虹などかからない! かかるのは素人タグへと執拗に向けられる懐疑的な濁りのみ!

 

 てのは冗談として、取り敢えずなんとか誤解を解かないと。

 

 

 

「いやあの俺達は別に怪しい奴らじゃなく……

「名乗っても宜しいのでしょうか!?」

 

「……はい?」

「私の様な下女が……奴隷風情が主様に名前を名乗るなど、そんな、そんな事があってもよろしいのでしょうか?」

 

「いやいやいやちょっと待って? そうだ。あれだ。保護者に連絡取るからちょっと待って?」

 

 

 

 俺は助けを求めるように爺さんへと視線を向けた。

 

 

 

「誰がお前の保護者じゃ!」

「あんたさっきそれっぽいこと言ってたよねっ!? みんな等しくあんたの子だよねっ!?」

 

 

 

 爺さんにあのエルフちゃんを調べて貰うように頼んだ。神の力を殆ど渡したと言っていたが、俺にそんな芸当は出来そうにない。

 

 爺さんは「今の力ではそこまで詳しいことまでは分からんぞ」と念を押してから、手を双眼鏡の様にして、エルフちゃんを覗いた。

 

「ふむふむ、どうやらあの娘は奴隷売買の“商品”だったようじゃな」

「おい、それってまさか?」

「人件費0じゃな」

「ーーって鬼か!! お前ほんとに神様なのっ!?」

「冗談じゃ。恐らく“取り引き先”に送られる最中、お前さんの拉致魔法でここに転移。そこでお前さんの事を自分を買った本人、つまり主人だと勘違いしておるんじゃろう」

 

 なるほど。俺の拉致魔法ってあたりが解せんがそういうことか。

 にしてもさすが異世界。人身売買から察するに、エルフや他の種族への迫害とかありそうだな。

 

 

 

「エルフさん、俺は君を買った人じゃない。君と俺達は対等な立場だ。だから名前を教えてくれると助かる」

「そうなのですかっ!? わ、私の名前はアリシアと申します! 買った訳でないと仰いましたが、まさか私を助けて下さったのですか!?」

「うーーん、なんて説明したらいいか分からないんだけど、偶然、たまたまアリシアを転移させてしまったんだ」

「てててて転移魔法っ!? それも私に触れることなく!?!? そんな高度な魔法を使える方に出逢えるなんて、光栄です!」

 

 

 

 何それそんなにむずい魔法なの?

 

 後で爺さんに確認したが、本来であれば転移魔法は転移させる物質を粒子に分解し、その粒子1つ1つ、つまりほぼ無限に時間微分した速度で一斉に魔法陣を通さなければならない。少しでも計算が狂えば物体の分子構造を破壊してしまうというエゲツないものだった。

 

 それを物体に触れずに行うという芸当が出来るのは、世界にほんの数人、転移対象が生物でさらに人間クラスの大きさであれば、類を見ないレベルだそうだ。なんでそんなもん俺に使わせたの?

 

「因みにアリシアはこの辺の道分かったりするかな? 案内してくれると助かるんだけど」

「分かりました! 海斗さんにとってはただの偶然かもしれません。しかし私にとって海斗さんは神様も同然です。なんでも言ってください」

「ワシが神様……

「あーーーっ! ありがとう助かるよ!」

 

 ややこしい事になりそうだったので、爺さんの口は塞いでおいた。

 

 

 

***

 

 

 

「この様なお召し物、本当に頂いてもよろしいのでしょうか!?」

「気にしないで、案内してもらってるお礼だから」

「そんな、海斗さん達は本当に御心の広い方々なのですね」

 

 爺さんの服だけで出歩くのは流石にヤバいので、俺たちは先ずアリシアの服を買いに来ていた。

 

 それにしても。

 

 文明レベルは異世界モノでありがちな中世ヨーロッパ。

 往来を跋扈するのは、髪色は違えど殆どが人間。8対2ぐらいの割合だろうか。他は獣人やエルフがちらほら、日陰者のように静かに暮らしている印象だ。

 

「アリシア、率直に聞くけど人間って、いつも威張ってて鬱陶しいか? 暮らしにくくないか?」

「はい、人族は絶対数で言えば圧倒的ですからね。暮らしにくいかと言われれば正直。ですが勿論、亜人種を多く受け入れる町もあります。特に冒険職に亜人種の方は多いです」

 

 アリシアの表情は悲しそうだった。

 この世界の情報を調べる為とはいえ、奴隷だった彼女に、「暮らしにくいか」などと聞くのは少々無神経だったか。

 

 つーか冒険職とかあるのか。

 

 

 

「なんじゃ海斗。冒険者にでもなりたいのか?」

「あーうん。だってお決まりだろ? それにまあ、カッコいいじゃん?」

「それで?」

「魔獣とか倒してさ、お金もらって、みんなの役に立って!」

「からの?」

「そんであわよくばモテるかもしれない……チート能力もあるし天職じゃね!」

「ふんふんなるほどのぉ。その辺の話詳しく聞かせてもらっていいかのぅ?」

「いやもう全部言ったよねっ!? 包み隠さず吐き出したよねっ!? これ以上ねぇよ!」

 

 

 

 しばらくしてフィッティングルームから出てきたアリシアが再び頭を下げる。可愛い。

 

 白いワンピースに青のリボン。肩が出ていて露出もまあまあ。挑発的に揺れる胸も実に扇情的だ。

 可憐さとエロさが混在するその姿を俺は何時間でも見つめていたい……

 

 

「お客様、18000Gになります」

「もう一声っ!」

 

 

 ん? この世界でも値切り交渉とかあるんだな。つーかやっぱり単位は円じゃないのか。こりゃ日本円は使えんな、神様(じいさん)がいてくれて助かったぜ。

 

「いやあお姉さん、そこをなんとか頼むよぉ。ワシの顔に免じて、ね?」

「ーーって値切ってんのお前かーいっ!!」

 

 

「え、なんで? お金持ってるんじゃないの? なんで値切り交渉とかしてるの?」

「ワシがいつ、お金を持っていると言った?」

「え、確か店入る時ワシに任せろって言って悠々と入っていったよね?」

「だから値切っておるんじゃろうがっ!!」

「えぇ……そういう意味の任せろだったの」

 

 神さまもお金持ちって訳じゃないんだな。まあ確かにこれからどうなるか分からないし、節約が出来るならしておきたいけどさ。

 

「んで、所持金いくらあるんだよ?」

「うーむ。ひぃーふぅーみぃーのぉー……0Gじゃな!」

「それ値切っても届かないよねっ!? 無料だよねっ!? それに今なんでうーんって数え始めてたのっ? 計算する必要性あった!?」

 

 おいマジで何やってくれてんだこのクソジジイ! アリシアも首を傾げてこっちを見てるよ! 見ないで!! かっこ悪すぎる俺たちを見ないで!!

 

「うーしっ、最後の手段じゃ。お姉さんやお手を出しなされ」

「お、お客様?」

「ここをこうして、こうして、こー……

 

「ちょっと待て爺さん。今度は何するつもりだ」

「手相占い」

「嘘ついてんじゃねぇ! 今手に魔法陣書いてただろうがっ!?」

 

「何を躊躇する必要がある!? お主捕まりたいのかっ!?」

「もう捕まれよおまえ!」

 

 言い合っている間にレジのお姉さんはフラリと気絶、爺さんに引っ張られ俺とアリシアは店の外へと走り出た。

 最悪だ! 大罪人だ俺たちは。

 

 絶対後で返しますからお助けくださいと祈る俺。急に連れ出されたことに疑問を覚えるアリシア。そして汗を拭うジジイ。汗は拭えてもお前の罪は拭えない。

 

「大丈夫じゃ海斗! 金を得れば後は魔法で転移させて返しとけばいいんじゃ! しかも多めに払ってな! 先行投資じゃ先行投資!」

 

 だめだこのジジイ、早くなんとかしないと。

 

 

 





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