初めての勉強会から6日が経過した。
平田の勉強会はサッカー部が休みの時のみ開催されるため、まだ二回目が開催されていないが、平田曰く、5月中にあと2回はやりたいらしい。また中間試験直前になれば、たとえ部活がテスト休みにならなくても平田は勉強会を優先するらしい。ちなみに櫛田の勉強会は平田に合わせて活動するため、こちらも未だ初回のみである。明日はサッカー部が休みのため、両人とも2回目の勉強会に備えている。
一方で、新赤石チームは初回の勉強会の翌日と休日を除き毎日のように放課後に活動している。
なぜ毎日かというと、外村が2日に1回しか出席しないからだ。そして井の頭が毎日出席するので、合法的に井の頭と2人っきりになれるのだ。そういう時は、勉強を教えつつ交友を深めている。図書館の別館は人がほとんどいないこともあり、お互い砕けた口調で話せる数少ない場だ。
まあ、他の理由としては、井の頭と外村を退学させないために真面目に教えるためでもある。外村は2日に1度だが、よく勉強をしてくれている。やる気があるようで、こちらとしても若干、情が湧いてしまったようだ。
しかし、この1週間は良い話だけではなかった。なんと、何を考えたのか櫛田がこの前の勉強会で5人に渡した問題とその正誤によるオススメ問題集について教えて欲しいと連絡してきたのだ。お前は、王と井の頭と友達だろ。2人に聞けよ。と思ったが、話はそう単純ではなく、どうも櫛田は直接会って話をしたいそうだ。
――勉強会終了後の櫛田の不安定さはこの6日間感じることはなかった。しかし、直接会うメリットは正直無い。というよりデメリットしかない気がする。
なんか堀北みたいな話し方になってしまった。櫛田との繋がりをもつことは悪くは無いのだが、今は新赤石グループに注力したい……よって櫛田との会合には拒否のメールを送る。勉強会が忙しいのじゃ。
しかし、ただ拒否するだけだと角が立つため、しっかりと媚を売っておく。拒否メールにはこの前作った問題と解答、そして解答チェックシートを添付しておいた。
チェックシートは問題の正誤から自動的に観点別評価を出し、オススメ問題集を教えてくれる優れものだ。
念のため、櫛田の勉強会で使うときは出所は秘密にする、ないし作者は櫛田にするように書いておいた。まあ、勉強会の2日後に井の頭に問い合わせたところ、櫛田は秘密を守ってくれているようなので大丈夫だと思うが……
また、良い話とも悪い話とも言えない話もある。傍受していた龍園の端末からCクラスの一部のメンバーにBクラスへの攻撃命令が送信されたのだ。これを「龍園事変」と名付けたい。
「龍園事変」は唐突に発生したが、メールを受け取ったCクラスのメンバーは驚きながらも龍園に確認のメールや電話を送っていた。が、メールの内容や電話の傍受をするに、突然龍園が思いついたのではなく、前々から計画していたようなのだ。
おかしいと思い、これまでの龍園の通信履歴を漁るが、まったくそれらしき計画はなかった。……どうも龍園は以前から集会場のような場所を設けて、何度かそこでCクラスの会合を開いているようであった。集会場の場所は龍園の端末のGPSの動きから高級カラオケのような場所であると推測される。――あのあたりはカメラが少なくやりにくいエリアであった。
主に龍園が椎名に送るメールには会合に参加するような要請文が含まれていることが多かったが、椎名が参加していない以上あまり重要だとは考えていなかった。クラス懇談会程度といったイメージだ。しかしCクラスの会合の方で重要な決定がされるのであれば、龍園の通信傍受だけでは足りないかもしれない……もし可能であれば、高級カラオケ店を特定し、盗聴器でも付けたいが……
話が逸れてしまったが、お題を「龍園事変」に戻す。どうやら、傍受内容を精査していくと、龍園はCクラスの精鋭女子を中心に集め、Bクラスの気が弱そうな生徒に対して当たり屋のような事をしたいみたいだ。……暴力団かよ。
しかし、かなり本気のようで、龍園は作戦決行間際でビクついているCクラスの女子たちに「練習通りやれ」やら、「安心しろ、バレても退学にはならない」とか、「お前ならできる」とか、「もしもの時はポイントを用意する。大丈夫だ」とか言って励ましていた。意外にも情が深いタイプなのだろうか……?いや、まあ椎名に対してあんなにもメールを送ったり、推理小説の勉強をしたりしている以上、かなりクラスの為に頑張っているみたいだが……
一之瀬や神崎に密告すべきか悩んだが、放置とした。どちらが勝っても負けても損失は無いし、何よりBクラスや学校側の対応を見たかった。……残念ながら、龍園はカメラを強く意識しているため、Cクラスの女子が攻撃を仕掛ける場所は監視カメラの範囲外であったため作戦決行の様子自体は見ることができなかった。
仕方がないので、「龍園事変」が行われた次の日は龍園の通信履歴やB・Cクラスのカメラの様子など様々な角度から関係者を監視することにした。
一之瀬と神崎が被害にあったBクラスのメンバーから聞き取りを行い、そろぞれが、Cクラスの女子たちに話をつけにいった。これは、1日の間に連続して発生した当たり屋は4件にも及び、一之瀬・神崎ともに陰謀であると結論付けたためだ。
……なぜ一斉にやったのか自分には龍園の考えがよく分からなかったが、一之瀬曰くCクラスの挑発行為らしい。
ともかく、4件のうち2件はCクラス側が引き、事件とならなかったが、1件は龍園自らが話し合いを行い、2000プライベートポイントを神崎から奪い取った。
交渉時はカメラのないところで行っていたため、どのように龍園が話し合いをしたかは分からなかったが、のちの神崎の話からすると、なかなか聞くに堪えない話術だったようだ。
4件のうち最後の1件は一之瀬が学校に報告し、生徒会が出てくる直前で、龍園が引き、有耶無耶になる形になった。結果として「龍園事変」では1人の当たり屋が打ち勝ち、被害にあった生徒の代わりに神崎がプライベートポイント2000を失う形になった。
事件後、Bクラスでは神崎は自身の不手際をBクラスに詫びたが、Bクラスはむしろ神崎の人徳を称え、一之瀬は神崎を上手く補佐できなかった事を反省していた。……神崎って本当に協調性低いのか?普通に高いぞ……それにBクラスはかなり団結しているようで、隙がなかなか見つからなかった。
今回のような奇襲戦法でもないと攻撃は難しく、また攻撃したとしても、2000ポイントぽっちで終わってしまいそうだ。
それに今回の件でBクラスは連絡網を刷新したようで、緊急事態時はすぐに一之瀬・神崎に連絡という方式が確立したようだった。奇襲対策も取られてしまい、ますます攻略が難しくなった印象だ。
ただし、2人の指揮官に負担が集中したのが一概に良いとは言えない気がした……次突くとしたら、そこだろうか……?
Cクラスでは、反省会は教室外の会合で行われるらしく、残念ながら全体の様子は見られなかった。が、通信状況を見るに、龍園は戦った4人の女子を評価し、2000ポイントを奪った女子からマージンを取ることもなく、むしろ戦果を得られなかった女子3人に龍園自身が2000ポイントずつ振り込んでいた。
……なんだか龍園はカリスマ独裁者みたいな奴だな。
***
そんなこんなで、勉強会から6日経過した放課後、いつものように外村・井の頭両名を誘い図書館の別館に向かう。
今日は外村も参加の日だ。ぞろぞろと歩いていると、別館から聞いたことある凛とした声が聞こえた。なんだ?と思い、3人でこそこそと声が聞こえた方を覗き見る。外村も井の頭も人前があまり得意ではないため、最近はこういった、隠密芸が映えてきた。
別館の中を見ると、中には堀北と綾小路、そしてなぜか櫛田と赤点3人衆がいた。何やってんだ……?
しばらく3人で黙って観察していると、堀北と櫛田が言い争いをしているようで、だんだんと険悪な雰囲気がこちらまで漂ってきた。外村と井の頭を見ると2人とも、中の様子に困惑しているようであり、別館に入りたく無さそうであった。俺も入りたくない。
もう一度中を見たところで、かなり距離があったにも関わらず綾小路がこっちを見た。いや、見たというより凝視してきた。バレた?バレた?よーし。皆今日は解散だ!
「えっと、外村君、井の頭さん。その何だか別館は忙しそうですし、今日は別の場所にしませんか?」
俺の提案に対して井の頭はコクンと頭を振り、外村は「そうでござるな」と軽く言った。よし撤退!
そろりそろりと3人で別館から離れるが、パタパタと足音がした。おい、やめろ来るな。しかし無情にも追いつかれてしまった。後ろを見ると櫛田がいた。綾小路め、チクったな。
「あ、良かった赤石君。外村君と心ちゃんもいたんだね。ごめんね。3人の邪魔をする気はなかったんだけど、今日堀北さんたちが勉強会を開くみたいで、私も参加したくて来てたんだ。それで折角だから綾小路君にお願いして別館の方に集まることにしたんだ」
いや、別館で俺らが勉強するって知ってたでしょ。なぜ被せた……なんとなしに井の頭の方を見ると井の頭も驚いてるようだった。独断か……
「えっと、桔梗ちゃん。その、赤石君の勉強会は少人数でやるみたいだから……その。赤石君はどう思いますか?」
井の頭は櫛田に苦言を呈した後、俺に話を振った。断れって意味だよね。まかせて。俺も断りたい。
「あの、櫛田さんがどのように考えているかが良く分からないので、教えて貰いたいのですが……こちらの勉強会と堀北さんの勉強会を合流させるべきだと言いたいのでしょうか?」
文脈的にそれしか考えられないが……一応確認する。
「うん、それも含めて堀北さんと揉めちゃって……あの、電話で話そうと思ってたんだけど赤石君と上手く繋がらなくて、だから直前になっちゃって。本当にごめんね。でも須藤君や池君、山内君にそれに綾小路君が退学になって欲しくなくて……私。……赤石君、少しだけでいいの。4人を助けるのを手伝ってくれないかな?」
やだ。いや、というか井の頭経由で言えばいいじゃん。言ってないとか確信犯(誤用)だろ。まあ、井の頭経由で言われても答える気はおそらく無いだろうが……
あと、綾小路は大丈夫そうだけど、彼も意外と勉強は苦手なのか?まあ、とにかく断ろう。井の頭も早く離れたそうだ。
「えっと、櫛田さん。確かに退学者は出したくありませんが……物事には順序があると思いますし、今日は外村君と井の頭さんと先に約束していますし、中間テストもまだまだ先ですから、今日の所は俺たちは別のところで勉強をしたいと思います。あと、その櫛田さんと堀北さんがいる以上、俺が入らなくてもこちらの4人は安泰だと思いますが」
本当はわからない。堀北次第だと思う。性格はキツそうだが、教えるのは実は上手いかもしれない。それなら4人とも大丈夫だろう。まあ、あの4人が退学になっても別に困らないがな……
「駄目かな……。心ちゃんはどう思う?外村君は?」
なんか、今日の櫛田はいつも以上に押しが強い。頼んだぞ2人とも!
「えっと、桔梗ちゃん。その、言いにくいんだけど、堀北さんや須藤君って怖くて……ごめんね」
「拙者も、まあ、なんと言いますか、赤石殿の言う事に一理あると言いますが、いえ、決して櫛田殿が間違えているといわけではなく、単純に堀北殿と須藤殿が場を乱す印象が強いでござるかと」
よくやった!2人の攻撃を受け、櫛田は残念そうな顔しながらも、こちらに謝り、背を向けた。しかし今度は綾小路がやってきた。
「あー、櫛田。その感じだと上手くいかなかった感じか?」
「うん、ごめんね綾小路君。せっかく教えて貰ったのに……綾小路君の方はどうだった?堀北さんやっぱり怒ってた……?」
櫛田は不安そうに綾小路に尋ねた。若干上目遣いに見える。うん客観的に見ると少しあざとく見えるな……なるほど、井の頭はずっと間近でこれを見てきたのか。
「いや、櫛田は悪くないと思うぞ。赤石はノリが悪いからな。あと堀北は、まあ、怒ってはいたが……あいつはいつも機嫌悪いから気にするだけ損だと思うぞ」
綾小路、もしかしてこの前、学食に行かなかったこと根に持ってる?というより、本当に俺も学食に連れて行きたかったの?てっきり堀北との学食デートを自慢したいだけだと思ったが……違うのか?
まあ、帰るか。俺は綾小路と櫛田の方に軽く会釈して帰ろうとするも、また腕を掴まれた。動けない。綾小路の謎技術だ。まただよ。
「まあ、待て赤石。堀北は美人だし、話してみると意外と面白いかもしれないぞ。須藤達も気のいい奴らだ、きっと話も合う」
いや、ねえよ。
「あの、綾小路君。櫛田さんにも言ったのですが、今日は外村君と井の頭さんと先約がありますので……失礼します」
こちらが動く気を見せると綾小路は掴んでいた腕を離した。うん、ぜんぜん痛くない。本当に謎技術だな。しかし離したが質問はまだするようで、再び綾小路が口を開いた。
「櫛田が言ってた勉強会か……どんなやつなんだ?」
櫛田が綾小路に情報を漏らしていたようだ。櫛田の方を見ると手を合わせてゴメンとジェスチャーをしていた。いやいやいや、許されないぞコレ。
「櫛田さんや平田君の勉強会に比べると小さいものですが、基礎の見直しをしています。ただ俺はあまり平田君たちほど教えるのが上手くないので、基本的に自主的に学習できる方でかつ中間が厳しい人だけとさせてもらっています」
須藤は勉強をしないとはっきりと宣言した猛者だ。この言い方なら、綾小路も誘えまい。
「そうか……確かにその方針だと池たちには難しいな。わかった邪魔して悪かったな、今度学食で何か奢るからそれで許してくれ」
許そう。ただし魚定食以上のモノを所望するぞ。
「ええっと、期待してますね。それじゃあ、外村君、井の頭さん行きましょうか」
2人は首肯し、綾小路達に軽く挨拶をし、歩き出した。俺もそのあとに続き、別館の入り口を去った。
その日は結局普通の図書館に向かい、端っこの方で3人で固まり勉強をした。1時間程度で外村・井の頭の集中力が切れたので早めに切り上げる事になった。
やはり中間テストが近くなったのか、ちらほらと図書館の利用者が増えているようだった。やっぱり別館の方がいいな……
***
寮に帰り、監視カメラにアクセスする。彼らの勉強会はまだ終わっていないようで、カメラには櫛田と堀北と綾小路と赤点3人衆の姿があった。
懸念通り、櫛田の近くには俺が渡したチェックシートがあり、綾小路と池と山内は指定の問題集をやっていた。須藤の近くには問題集が積まれていたが、問題集は使用されておらず、堀北が何かを言って、須藤がそれを必死に書き取っていた。どうやら須藤以外の3人は俺が教えていた教材を利用して櫛田が教えているようだ。
なぜ、あの6人が行動しているのか気になったため、監視カメラのデータを漁り、会話を聞くと、どうやら以前から堀北と綾小路は赤点3人組のために勉強会を開いたが、その勉強会が一度失敗してしまったようだった。
そこで堀北が櫛田に3人組を集めるように頼んだが、櫛田は勉強会に参入しない事を条件とした。うん。いろいろと意味が分からない。なんで、堀北が3人組を集めるように頼んだのに、櫛田の勉強会入りは拒むのか……意味不明だったが櫛田は了承したらしい。
しかし、土壇場になって本日、櫛田が勉強会に参加。綾小路は知っていたようであり、それがまた堀北の怒りを誘い、口論になっていたようだ。
ちょうど、俺と外村と井の頭が目撃したのがこのタイミングだった。ちなみに以前の堀北勉強会は図書館の方で開催されていたのだが、櫛田が綾小路に赤石勉強会との合流を提案し、綾小路が堀北に頼んだため今回は別館で開催されることになった。しかし綾小路は堀北に赤石勉強会については知らせていないようだった。
うん、堀北が怒った理由が分かった気がした。つまり堀北は櫛田に綾小路を取られるのが不満のようだ。……いや、それ以外の理由がいまいち思いつかない。まあ、櫛田が意外と口が軽くて信用できないというのは同意見だが……せっかくだから、ちょっと櫛田について調べるか。
画面上で現在も開催されている堀北勉強会を見つつマルチウインドを使用し、櫛田のこの1週間の行動を洗う。画像認識を用いて監視カメラから櫛田らしき人影を追い、行動パターンを確かめる。監視カメラ外に出た場合は、再び監視カメラに観測された時刻からカメラ外での移動を予測する。同時にこの1週間の間の綾小路と堀北の行動を重ね合わせ。櫛田との影があった時、つまり櫛田が堀北か綾小路と会っている時刻と場所を特定する。
授業中を除くと、櫛田と綾小路は頻繁に会っているようで、逆に堀北と櫛田は、2回しか会っていなかった。綾小路の方は監視カメラの範囲外が多く、情報の精査が難しかったが、堀北と櫛田の2回の会合はカメラの範囲内であり、録音データも見れた。……どうも、堀北と櫛田はあまり仲が良くないようだった。また綾小路含めて、監視カメラの範囲内では櫛田はそこまで、俺の事を話している訳でもなかった。少し自意識過剰だったようだ。ごめん櫛田。
櫛田は一時保留として、堀北勉強会のログを見ていく。ちょうど綾小路が何かを櫛田に伝えると、櫛田が外に駆け出して行ったところだ。この後、どっかの雑魚が隠密判定に失敗して捕まるが、まあ、それはいい。櫛田が去った後、堀北と綾小路が言葉を交わし、綾小路が櫛田の後を追い、堀北が3人に勉強を教えることになった。さらに少し時間が経つとと、綾小路と意気消沈とした櫛田が戻ってきて、堀北と話始める。
堀北は戻ってきた2人を問いただし、赤石勉強会との合流を綾小路と櫛田が画策していた事を話すと、非常に不機嫌になっていた。しかし何だかんだで、綾小路が上手く堀北を丸め込み、今回に限り特別に櫛田の同席が許されることになった。
そして、櫛田は自身のバックから問題とチェックシートを出すと、綾小路を含めて4人に解かせ始めた。堀北は怪訝な顔つきでそれを見たが、赤点3人衆が乗り気だったため、あまり追求せずに許したようであった。
10分が経過したあと、櫛田が4人の解答を採点し、チェックシートを使い必要な問題集を割り出していた。
その様子を見た堀北がチェックシートについて質問し、櫛田の答えを聞くと驚いたような顔になり、櫛田が作ったかを聞いた。えらいぞ、よく聞いた堀北!
櫛田は、一瞬詰まるも、自分が作ったと答えた。えらいぞ櫛田!お前は保留じゃない、推定無罪だ!
この間、赤点3人衆はよくわからない顔をしていたが、綾小路は問題とチェックシート、そして対応する問題集をじっと静かに見ていた。
ちなみに、3人とも基礎からして致命的だが、須藤は英語・数学共に0点という快挙をやってのけた。また、綾小路は5点ずつとっていた。ちょうど1から5問まで正解していた。……数学の6問目は5問目を正答すれば、解けるはずだが時間がなかったのだろうか……?
池と山内は問題集をやり始めるが苦戦し、そのたびに櫛田が丁寧に教えていた。綾小路は問題集を解くよりもチェックシートに興味があるのか、対応する問題や正誤判定をずっと見ていた。なんか怖い。ちなみに須藤は問題集にチャレンジできるレベルではないため堀北が付きっきりで教えることになった。
その後はずっと長閑な勉強風景が続き最終的に下校時間の30分前程度で解散となった。
解散後、堀北が池と山内の相手をしてくれたことを櫛田に感謝するが、やはり次回から櫛田の参戦が許されることは無かった。綾小路と密会した罪は堀北の中では重いようだ。
また、綾小路は櫛田に謝罪しつつも、堀北に対して櫛田の評価を改めるように言った。どうやら、綾小路はチェックシートがえらくお気に入りのようで、何度も櫛田を持ち上げ、作り方を聞いた。おい、やめろ、ぼろが出たらどうするんだ。櫛田がんばれ。
堀北の様子を見ると、堀北もチェックシートに興味があったのか、綾小路に乗り、櫛田に問題集の選び方などを聞いていた。マジで止めろ。櫛田がんばれ。
しかし、俺の応援は届かず、櫛田が本当は自分が作ったわけではないと言い始めた。おいおいおいおい、やっぱ櫛田は駄目だな。これは保留に格下げだ。
けれども櫛田も最低限のラインは守ったのか追求する堀北・綾小路に対して、問題作成者の名前は出さなかった。人格攻撃も辞さない堀北は、「自分の手柄にしようとしているの?」とか聞いていた。やめてさしあげろ。
普段は止める綾小路も堀北のご機嫌取りのためか、櫛田に対して「この問題を作った人が協力してくれれば須藤たちの勉強は大きく進むと思うが……」などと、言った。やめろ、やめろ。
櫛田は尋問に屈するような女ではなかった。最後まで問題作成者の名前は出さず、その人はとても忙しいからと言ってくれた。やっぱり櫛田はいい奴だ。綾小路と堀北も櫛田の強い意志を見て、質問を止め、そのまま解散となった。
――ここまで問題に興味を持たれるのは意外だった。いや、そこまで凄い事でもないし、最悪バレても問題はないのだが……あの2人は面倒事を押し付けるタイプに見えるので、出来る限り低評価でいたいのだ。しかし難しいかもしれない……あの問題は佐倉と市原と王も知っている。何時かは発覚するだろう。
……いや、3人の問題と解答は回収した気がする……たしか初回の勉強会の最中になんとなく回収したのだ。3人が堀北たちが持っている問題を見たら発覚するかもしれないが……でも3人ともあの後かなり多くの問題集を解かせた。記憶も混濁しているだろう……決定的な証拠にはならないな。
あの時、何で回収したのか忘れたが、結果的にはかなり良い行動だった。珍しく俺の行動が裏目に出なかったな。
そんなことを考えながら、その日は眠りにつくのであった。
原作に、須藤の暴力事件の前にBクラスとCクラスでドンパチしたとあったので、こんな感じかなーと妄想で書きました。
赤石がいるせいで1巻の櫛田・堀北の対立がより激化。
1巻のエピソードはあと3話で終わる予定です。