実力至上主義の教室と矮小な怪物   作:盈虚

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一日目の終わり

 14時50分、平田本隊と無事に合流した。

 なお、5つあった探索班の中では合流したのが最後だったため若干気まずかった。まあ、時間内に合流したので良しとしよう。それに高円寺はなんかどっかに行っちゃったらしいので、厳密には俺達「ドヤ顔を許さない会」が最後というわけでもないようだ。

 

 ちなみに高円寺の班は綾小路・高円寺・佐倉で構成される班だったらしい。まさかすぎる班である。何でこの3人を一緒に組ませたんだよ。熱量が高すぎるだろ。

 それにしても、高円寺はどこへ行ったんだ。どっか行っちゃった、みたいなことを綾小路が言っていたが、絶対嘘だろ。だって、それなら綾小路が取り押さえてるだろ。もし取り逃がしたのなら、何の為の謎技術だと思ってしまう。

 まあ、見当はついている。おそらく、グループが上手くいかず仲違いし、綾小路と佐倉が同盟を組み高円寺をフルボッコ。そしてどっかの木にでも吊るしたんだろう。ひぇ、何と恐ろしい。まあ、さすがにまかり間違って高円寺がリタイアするような事がないように加減はしているだろう。それに点呼の時間にいないと減点になるので、時間になる前には綾小路か佐倉が高円寺を解放しにいくだろう。

 

 綾小路グループ(正直、佐倉グループとも高円寺グループとも呼称できそうなので悩みどころだ)の恐ろしさについで一通りの考えをまとめていると、王がマニュアルとボールペンを持ってこちらに来た。なんやねん。

 

「赤石君、これ平田君から借りたんだ……」

 

 そう言いながらマニュアル内の島の概形が書かれていたハズのページを見せてきた。なんということでしょう。王がマニュアルに落書きをしていました。これは大変です。見ると、島の概形が書かれていたページはあら不思議。王によって所々、汚らしい書き込みがされていたのです。

 

「……これは、わ、みーちゃんが書かれたんですか?凄く精確な地図ですね……」

 

 まあ、色々言いましたけど、普通に地図書くの上手でした。普通に凄いと思います。方向感覚と距離感覚が抜群ですね。……でもさ、いくら自信があっても学校が配布した資料の島の概形に直接書いちゃ駄目だろ。せめて他の白紙のページに概形を写して書けよ。もしお前が下手くそだったら他の人が困るだろ。いや、まあ、上手かったから別にいいんだけどさ。

 

「う、うん。ありがとう。……地図はこういう風に書くんだよ。私が教えてあげようか」

 

 その顔やめろ。

 

 

 

 王の怒涛のマウント攻撃に耐えていると、池が帰還した。どうやら、やっとスポットを見つけたようだ。遅すぎるだろ、いったい君たちは何をやっていたんだ、と思い、平田にそれとなく尋ねると……口に出すのも(おぞ)ましい事件があったようだ。幸い、平田と山内の連携により未遂で免れたが……須藤、お前、環境は汚したらいけないって話だっただろ。なんでそんなことを……

 なお、平田は本件を秘密にしようと思っていたが、山内が暴露したせいで一部の生徒には須藤の痴態が露わになったらしい。

 そんなこともあってか、赤点三人衆の班の探索速度は大きく低下したみたいだ。まーた須藤が足を引っ張ったぞ。まあ、とりあえず、須藤はしばらくの間平田と山内に頭が上がらないだろう。いや、山内のせいで須藤の名誉が傷つけられたので山内に関してはトントンかもしれないが……

 

 池の案内により川辺のスポットに導かれた平田本隊は無事、スポットを確保していた須藤と山内とトイレの2人と1つと合流した。なぜトイレもこちらに置いてあるかというと、山内が平田本隊から輸送したからだ。つまりそういうことだ。

 まあ、須藤の痴態は本題ではないのでどうでもいい。とりあえず、現状をまとめると、高円寺を除く全員が川辺のスポットに集結したのだ。つまり、今後を左右する重要な会話がここで行われるだろう。たぶん。池や平田たちの会話を見守っていると、平田が重大な議題を挙げてきた。

 

「じゃあ、後は誰をリーダーにするかだ。肝心なところだね」

 

 難しいところだ。指導者としての意味なら平田一択だろうが、それは他のクラスも知っているだろうし、リスクが大きい。個人的にはあんまり目立ってなさそうなヤツが良いと思うが……

 クラス内に目を向けると、皆嫌そうな顔をしていた。まあ、もしリーダーを当てられたら戦犯だからな……誰もやらないだろう。当然俺もやだ。そんな空気の中で、櫛田が手を挙げた。なんじゃ?推薦か?俺と井の頭以外にしろよ。

 

「いいかな?……私なりに色々考えたんだけど……リーダーは責任感が高い人じゃないとダメだと思うの。でも平田君がリーダーをするのは、リスクが大きいと思うの。だから、目立ち過ぎず、責任感がある堀北さんがいいと思うの」

 

 いや、個人的に堀北は目立ってると思うけど……他のクラスからはあんまり目立ってないからセーフなのかな?

 堀北は見た目も美しいし喧嘩腰だから色々と揉め事とか起こしてそうなイメージがあるけど、大丈夫だろうか?まあ、平田・軽井沢・櫛田ほど目立ってないからいいのかな。あと責任感云々で言うなら幸村あたりでも良くない?アイツも属性としては堀北系ってだけで、堀北ほど注目を集めるタイプではないだろうし。

 あー、でも。さっき女子と揉めたから、リーダーにすると反発が大きそうだな。いやいや、でもそれなら堀北は性格上リーダーにするのは不適切のような……

 まあ、実質的なリーダーは平田で、堀北はカード操作係だと考えれば問題ないのかね?うーん、割り切れない人は出そうな気もするけど、あー、でも、来月以降の小遣いが増える試験だし、さすがに皆割り切るかなー。

 本当なら自分以外に当たったからいいか。と、思う所だけど、やっぱり堀北は目立ちすぎてる気がするし、もういっそ綾小路でよくない?あいつ、有能な怠け者っぽいから大変な仕事を押し付ければ必死に働くよ。たぶん。きっと必死に戦犯回避のために死力を尽くすよ。

 あー、なんか、これ適当な考えだけど、結構ベストな気がしてきた。ちょっとだけ言ってみるか。言ってみるだけ。

 

「櫛田さんの意見に賛――、赤石君、何かな?」

 

 やっべ、手を挙げたのとほぼ同時に平田が話を纏めようとしてたぞ。やべぇよ、やべぇよ。思わず軽井沢軍団を見る。怒りゲージ10%ってとこっすかね?すんませんでした。本当にすんませんでした。許してください。マジで許してください。これはアレです。何か分かりませんが、櫛田が悪いんです。そう思いながら櫛田の方を見ると、櫛田はこちらから視線を逸らした。おいおいおい、まさかお前本当に俺を嵌めたんじゃないだろうな……

 

「えっと、堀北さんは確かに素晴らしい方ですし、責任感が強い方でもあると思います。しかし、堀北さんが優秀な生徒であることはDクラス以外でも話になっているでしょうし、リーダーにするのは危険ではないでしょうか?」

 

 提案後に素早く、クラス全体を見る。どうでもいい1割、それもそうだな2割、まだ話続けるのかよ7割といった感じだ。軍団の皆様は殆ど7割の方だ。サーセン。2割に属しているように見える平田と櫛田は何かを考えながらもこちらを見て反論を述べてきた。

 

「そうだね、確かに赤石君の言う通りだね。堀北さんは目立つ人かもしれない。でも、その上で僕は堀北さんがいいと思うよ。リーダーになるのは責任感だけでなく統率力やメンタルの強さも要求される。それらの能力が高い水準に纏まっている堀北さんがやるのがベストだと思う。……勿論、堀北さんが受けてくれれば、だけどね」

 

 という、平田の言葉と、

 

「うん、平田君の言う通り、赤石君の意見は正しいと思うよ。ありがとう。でも、その上で私は堀北さんがリーダーになるのがクラスの為になると思うの。理由は平田君が言ってくれたけど、でも私から改めて言えるとしたら、きっとそれは、堀北さんが信頼できる人で、それでいて皆の信頼に答えられる人だからだよ」

 

 という櫛田の言葉により、俺の意見は却下となった。いや、まあ、メンタル的に受けたくない人に受けさせるべきではないと言われると確かにそうなのだが。

 ああ、あと櫛田さん、あなたは堀北アンチじゃなかったっけ。堀北の悪口だとあんなに盛り上がるじゃん。何、あなたはツンデレなの?本当は恋敵の堀北の事も気に入ってる系?ラブコメの登場キャラか何かなの?

 

 まあ、櫛田の態度に考察しても仕方ないので、適当に「た、確かにお二人の言う通りですね」と返して、堀北のリーダー就任を認める事となった。責任感とメンタルが強い堀北は当然この提案を受け入れリーダーとなり、スポットの占有を行った。そして次の議題であるが……

 

「次にポイントに関してなんだけど……赤石君、こういったサバイバル生活で最低限何か必要なものがあったら教えて欲しい」

 

 平田がそう言うと、皆の視線がこちらに集まった。ぐぬぬ、やはりクラスの方針に関与しようとすると注目を浴びることになる。できれば目立たずに4000万欲しい身としては避けたいのだが、ここは言葉に注意だな……

 

「まず、マニュアルを見せてもらってもいいでしょうか?……櫛田さん、ありがとうございます。……そうですね、さきほど話にもあった仮設トイレは必要だと思います。他にもテントは配布は2つですが、あと2つ追加で必要です。野宿するのは身体に大きな負荷がかかりますし、メンタル面にも悪影響を及ぼします。俺の行った合宿でも、野宿は最悪の時のみとしていて、できるだけ避けるようにと言われました。それと食料ですが――」

 

「待て、赤石。勝手に使用目的を決めるな。テントは男女1つずつでも十分なはずだ」

 

 幸村が遮ってきた。いや、あの、気持ちは分からなくもないけど、テント1つで20人は狭いぞ。あと、多分だけど、軽井沢軍団がいるから追加のテントを購入しないと軍団が2つともテント持ってちゃうと思うぞ。あいつらはそういうやつらだ。だって発想が暴力団だもん。

 俺が少し困っていると、平田が幸村に対して話しかけた。来た!平田大明神来た!

 

「幸村君、現実的に考えて、テント1つで20人は収まらないよ」

 

 馬鹿め幸村。こういうのは根回しが大切なのだ。普段から平田や軍団に媚びることでこういったときに意見が通りやすくなるのだ。大切なのは意見の正当性ではない、いかに権力者に気に入られるかだ!分かったか!

 

「だったら、一部は野宿すればいい。第一、赤石の知識が本当に役に立つか疑わしいぞ」

 

 ギクッ。適当に言ったのがバレたか……?ぐぬぬ、もう少し幸村にも根回しをしておくべきだったか……?

 

「少なくとも、僕や君よりは彼の方が経験があるよ。それに意見に関しても、彼は俯瞰的に見えていると思う。……そうだね。本当は赤石君の説明が終わってから話そうと思っていたんだけど……今、話そう。今回の特別試験で、僕たちが残すべきポイントのラインについてだ」

 

 そう言うと、平田がポイントの使用目的について話し始めた。内容としては、食料・水はポイントで確保し、テントを2つ、仮設トイレ、あと非常用にポイントを用意して計180ポイントを使用し、残った120ポイントを保全しようというものだった。

 この短い間によくそこまで考えたな……俺も漠然と平田に近いものを考えていたが、これはかなり前から準備していたおかげだしなー。しかも、考えの質が俺より深い気がする。なんで、俺より思考時間が短いのに結果が良いんだよ……やっぱり、あれだな、平田のスペックは葛城や一之瀬様にも劣らない気がする。親しみやすさなら葛城以上だ。何でコイツはDクラスなの?判定ミスじゃね。

 

 幸村を含むポイント温存派、いや、それだけではなく、Dクラスの大半の生徒は平田のアイディアで行くか、という空気になってきたあたりで恐る恐る手を挙げた。周囲からまたお前か、という視線が刺さった。ちゃうねん。今度はいちゃもんじゃなくて、もうちょっとできるよって話だから。

 

「平田君の提案で俺も良いと思います。ただ一つ、水と食料で110ポイントという件ですが、これは恐らくもっと減らせると思います。さきほど探索した時、この島にはかなりの食料が見られました。果物、野菜、あと穀類も見かけたので、上手く集めれば、食料分の殆どは温存できると思います。水に関しては、そこの川があります。見てみましたが、透明度と泳いでいた魚から考えて、かなり綺麗な水だと思います。煮沸し、再冷却すれば十分、飲料可能だと思います。勿論、川ですから食事以上に抵抗感はあると思いますので、飲んでもいい方だけだと思いますが……」

 

 ぶっちゃけ、川に関しては学校の手が加わっているので直飲みしても大丈夫だぞ。上流で汚染されれば別だが、学校も汚染禁止のルールを出しているし、たぶん大丈夫だろう。

 

「はぁ?、川の水……?」

 

 軍団から批判の声が上がった。気持ちは分かる。というか、俺も他人に川の水飲め、と言われたらちょっとやだ、と言う。しっかし、不思議なことにこの川の水安全なんですよ。マジで。

 そう思っていると、平田が少し悩んだ顔を作りながら質問してきた。あー、水はポイントで賄うって言った方が良かったかもなー。

 

「赤石君、川の水は確かに飲めれば理想だけど、君が言うからには根拠があると思う。教えて貰えないかな」

 

 やだ。というか、この辺の知識はうろ覚えなのだ。確か、ヤマメだったかな?このあたりの川で生息していたハズだ。

 

「さきほど、川を見た時、ヤマメがいました。ヤマメは清流でしか生息できない特殊な川魚です。この魚がいれば、その水は煮沸すれば十分に、最悪、煮沸しなくても摂取できると合宿では習いました」

 

 水の中で泳いでいる魚が何かなんて本当は知らん。あと、清流を飲めるかも知らん。でも、この島の水は特殊な濾過がされてるから大丈夫だぞ。俺が平田に、川の水、平気、川の水、安全と視線でオーラを飛ばすと、平田も納得してくれた。一応、本日は水をポイントで買い、平田だけが煮沸水を飲み、明日平田が生きていたら煮沸水を希望者に配布するという形になった。

 なんか、平田を生贄にするみたいで気まずかったから生贄に志願したら、平田から「もし何かあった時に、倒れるのは僕であった方がいい」と言われて固辞されてしまった。違う、そうじゃない。俺は平田が倒れる事を心配しているんじゃない。俺の立場が悪くなることを心配しているんだ。うーん。軽井沢軍団からの視線が痛い。

 

 その後は食料確保として、釣り道具が1ポイントで購入となった。また他にもシャワー室が20ポイントで買われそうだったので事前に調べておいた5ポイントのウォーターシャワーなるものを熱心に紹介したら、何だかんだでポイントを残したいDクラスの面々も納得してくれたのか、そちらの方となった。よし15ポイント節約したな!

 他にも、この試験用に作った無人島天気予報システムだと6日目に雨が予想されるので、平田に雨が降った時にテントだけでは心もとないのでと言い、木材製の簡易シェルターの立て方を教えておいた。一番簡単な作り方の物だから、たぶん手先が器用なヤツならできると思う。たぶん。

 

 一通りの方針が決まると、平田の指示により仕事の割り当てが行われた。テントの設営、釣り、食料探索、燃料集めなどにクラスメイトは従事することとなった。当然俺は、人前で大口叩いたこともあり食料探索班となった。

 正直な話、この班になるためだけにここまで頑張ったと言っていい。なんといっても、俺は植生を全部暗記したのだ。そう、全部暗記したのだ。他のクラスが夏休み遊んでいる間も俺は全部暗記したのだ。暗記したんだ、大事な夏休みを使ってな……

 

 探索班のメンバーは俺と、櫛田グループのいつもの3人と、水泳部の小野寺、あとなぜか長谷部、船室が同じの三宅、探索に志願していた伊集院、ちょっと紹介文が思いつかない宮本の計9人だ。なかなかの大所帯だ。

 この九人のまとめ役は櫛田である。まあ、実質探索班のリーダーだ。所々、俺がアレコレ進言できたらいいな。

 

 

 

***

 

 

 櫛田に率いられた探索班は、2時間ほど探索を経て水辺周辺の多くの資源を獲得した。探索の際は、あまり不審にならないように、けれどもそこそこの情報を櫛田に提供できたと思う。

 なお、採取物の多くは食料である。まあ、食料探索班なので当然と言えば当然だが……一応、腐ることも想定して、採取する量は、明日の朝食分までにした。といっても40人の2食分なので、かなりの量だ。ぶっちゃけ4回も本陣に戻った。途中からさらに5人(軽井沢軍団の方々)ほど追加の人材を平田から捻出してもらった。

 あと、途中で川辺に戻った時に少し本陣の様子を見た所、釣り部隊はかなり活躍しており夕飯には期待できそうであった。なお、さりげなく一回目の探索後に確保された食料を見て平田が篠原に声をかけていたのを俺は生涯忘れないだろう。

 いや、まあ、平田の立場からすると正しい判断なのかもしれないが。そういえば3回目の出撃の時に綾小路がこちらに寄ってきて、「赤石、火が……」とか言ってきたが、忙しかったのととてつもなく嫌な予感がしたので聞こえない振りをしておいた。

 

 

 そうして、4回目の食料補充を終えた櫛田率いる食料探索班は川辺へと帰還した。テントは立ち並び、火が焚かれ、川辺には魚たちが骸をさらしていた。また、その近くでは平田により急遽編成された調理班の面々が3回までの食料探索で運び込まれた食材と魚を合わせて調理を行っていた。

 うーん、一時はどうなるかと思ったが、案外何とかなるものだ。案ずるより産むが易し、というヤツだな。見たか!これがDクラスの結束!この鋼のような結束は誰にも崩せない!

 

 Dクラスの強さを再確認した後、探索での収穫について平田に報告しようとするが、どうもきな臭い。なんか平田の周囲が少しざわついていた。気になり、近くにいた軍団兵である佐藤に聞いてみたところ、Cクラスの伊吹何某が先ほどベースキャンプに来て、今平田が対応しているらしい。

 おいおい、マジか。と思っていると、櫛田も素早く佐藤が示した方向へと走っていった。

 

 うーん。まあ、龍園の配下だし。というか、龍園はなんか今回の試験部下に訓示を与えていたし、怪しいぞ。流石に、邪神椎名を解き放つことはないだろうが、戦闘力0.01椎名以下のゴミを投げてくることは十分にあり得る。いや、まあ、椎名が封じられているCクラスのメンバーである以上、伊吹何某が0.1椎名以上の実力を持つことも考えられるが……どちらにしろ、警戒すべきだろう。というか、問答無用で追い出せや。

 

 しかし、平田と櫛田の考えは俺とは違ったようで、なぜか伊吹何某を受け入れる方向となったようだ。いや、追い出せよ。

 

 

 

***

 

 

 

 伊吹を招き入れるという予想外の流れになったものの、気を取り直して夕食を楽しんだ。ちなみに伊吹の分の水は、元々余る予定だった平田のものを渡すことになった。食料に関しては櫛田班の五人がそれぞれ出し合うことになった。チラリと井の頭を見たが、あれは間違いなく、『なんでこんなアホなことをしているんだろう』と思っている顔だ。

 

 なお、食事に関しては中々美味しかった。野菜・果実・穀類、そして釣り班がだいぶ頑張ってくれたおかげで、少しだが魚も配給され、それを調理班が見事に料理してくれた。

 どうも、料理部の篠原がだいぶ頑張ってくれたようだ。よくやった!さすがは軽井沢軍団……と褒めたいところだが、どうも、このクラス、俺の想像以上に複雑な人間関係をしているようだ。具体的に言うと、食事の仕方に歪な人間関係が表れている。

 男子に関しては比較的分かりやすく、基本的には全員纏まって食事をしている。綾小路や三宅や幸村などの孤高タイプは若干距離を取っているものの、集団との距離はそこまで遠くない。ちなみに俺は平田の傍だ。

 しかし、一方で女子に関しては大変複雑だ。先ほどの櫛田班に微妙に人と距離を取る長谷部がいたり、他にも軽井沢軍団だと思っていた篠原は別グループだったりと、なんだか混乱する。一応大きく分けて、軽井沢、篠原、櫛田のグループがそれぞれある。どこにも在籍しないのは、孤高の堀北とマウント王の佐倉だ。

 

 グループ間の距離は広いというよりは、むしろ深い。仮にもしあの間に落ちたら大変だな、と感覚的にも分かってしまう程の深さだ。

 ちなみに、赤点三人衆の女子評を小耳にはさんだところ、Dクラスの3つのチームの名前はそれぞれ女帝、傲慢、仲良しらしい。結構納得できる渾名だけど、仲良しチームのうち最低1名は班内に友達はいないらしいから、仲良しチームって呼んで良いかわからんぞ。うーむ、やはり女子の人間関係は複雑だな。

 ……あれ?3グループあるのに、女子のテントは2つ……1グループ野宿するのかな?

 

「そういえば、高円寺君は?」

 

 飯を食っている時に女子の一人がそう呟いた。そういえば、見ないな。そろそろ点呼の時間だから、綾小路と佐倉が木から下ろしてやってると思ったが、まだ下ろしてなかったのか……よほど高円寺がふざけた事をしたのだろう。

 まあ、高円寺はいつも暴れまわってるし気持ちも分からなくもないが、許してやればいいのに。そう、どんなに憎くても許すことは大切なんだ。広い心をもって、高円寺の無礼を許してやろうという気持ちの持ち方が大事なのだ。慈悲の心を持つのだ。俺のように。

 美味い夕飯で心が和んでいたDクラスの下に今日で最後にして最大級の爆弾が茶柱先生により落とされた。

 

「ああ、高円寺なら体調不良でリタイアだぞ。勿論、リタイアということになるためDクラスからは30ポイント差し引かれた。これはルール上、どうしようもない」

 

 は?

 

 は??

 

 はああああああああ!!!!!

 おい、ちょっと、高円寺、お前、マジふざんけん。冗談じゃなくて、本当にマジでふざんけんな。ありえないぞ、お前、これはお前、許されないぞ。慈悲とかないからな。これは。お前、本当に許されないぞ。お前、これ、自分が何をやったのか分かってるのか?ありえないからな、マジで、お前、こんな行為ありえないぞ、広い心とか関係ねーぞ、この怒りが収まるかボケ!

 ああ、憎い憎い憎い、高円寺が憎い。あの野郎。俺が一瞬想像した「自分だけリタイア」をやりやがった。お前本当にありえないぞ。これが仮に本当に、例えば体が丈夫じゃない人が体調不良になったのなら許せるが、高円寺は絶対違うだろ。どうせ飽きたとかそんな理由だろ。本当に憎いぞ高円寺。許す事の大切さなんざどうでもいいわ。この憎しみを晴らすことしか今の俺にはないぞ。

 

 もう、俺は本気で怒ったぞ。お前、高円寺、俺をここまで怒らせたのはお前が初めてだぞ。お前が将来高円寺コンツェルンを継いだら、内部の不正データを全世界に発信してやるからな。高円寺コンツェルンを世界一クリーンな企業にしてやるからな。これはマジでやるぞ。

 俺、卒業したら、世界一クリーンな企業作るんだ!

 

 

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