実力至上主義の教室と矮小な怪物   作:盈虚

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三日目、豊富な食料、飢餓

 三日目の夜明け、再び井の頭と会談するために俺は起き上がりテントの外へと出た。水辺の近くまで行くと、既に井の頭が待機していた。早いな、友よ。

 友の姿を確認したあと、川に手を突っ込み先日から使用が許された煮沸した水が入ったボトルを手に取り飲む。ボトルは川の水で冷やされており、十分に喉を潤させてくれた。朝の挨拶と雑談を交わした後、本題に入った。

 

「昨日は色々見た感じ、どのクラスも目標を持った感じがする。Aはちょっとまだ分からないけど、BとDは陣地を決めつつ拡張、Cは試験に参加しないって感じだと思う」

 

 まずは総括して話をする。すると井の頭はボケーっとした顔を作り、話し始めた。

 

「……Aは昨日観察した感じ、斥候をほとんど出してなかったよ。塔の方に数人、洞窟の近くに昨日赤石君を見ていた女子生徒が一人くらいで、他の人は滅多にいなかったし。あと、洞窟の入り口に布みたいなものが垂れてたから、穴熊になる気だと思うよ。個人的には洞窟から見てる女子生徒が厄介かな。ときどき岩場にいる私の方も見てくるし」

 

 あー、なるほど、俺も試験開始から最序盤を除き妙にAクラスに会わないと思ってたんだが、まさかクラス全員で籠るとは……うーむ、内戦状態でクラスを一つにするのは難しいし、やはり坂柳と葛城は手を組んだと見ていいかな?

 困ったな。ただでさえ強いクラスなんだから足を引っ張り合ってくれないと下位のクラスではまくれないぞ。せめて、今回限りの同盟で、特別試験が終わったらまた仲違いしてくれないだろうか。

 

「了解、Aは穴熊ね。厄介な女子生徒の方は大丈夫?なんかする?」

 

 最近、俺も武器が増えてきた。広がった人脈、ある程度の功績はクラス内での発言力を僅かに上げ、有力者とのつながりはここぞという時に切り札になる。軽井沢軍団二人くらい使ってその女子を排除とか良い手ではないだろうか、と思ったあたりで発想が暴力団だと気づき、止める。クソ、あいつらのせいで俺の思考回路まで暴力的に……

 

「……ありがとう、でも大丈夫かな。彼女は夜目は効かないみたいだし……あと、聞きたいことはある?」

 

 大丈夫ならいいのかな?というか、なぜ夜目?

 

「Bクラスは井の頭さんの岩場からは見えた?あと、Cクラスを午後中ずっと監視してたみたいだけど、あれどうなった?」

 

「Bは――、え、私の?……あの岩場は私のじゃないけど、……まあ、いいや。私の岩場からは殆ど見えないかな。森が邪魔になってるから。ただ赤石君が気にしてる滝上には誰も置いてないみたいだよ。あと、見える範囲ではあまり動いてない感じかな。Aよりは動くけどDよりは動いてないと思う。Cクラスは…………脱落した、と、思う」

 

「思う、とは?」

 

「昨日、Cクラスをずっと視て戻ってきた後王さんに、――ううん、いや、やっぱりいいや。自信が無いし、不確定なことを言って赤石君を混乱させたら悪いし。もしかしたら、私の計算ミスかもしれないから」

 

 うーん。なんか、この試験に入って友がかなり言葉を濁すようになったな。前からそう言う所はあるにはあったが……いや、まあ、時間も短いし、とりあえず話を進めよう。

 

「ええっと、つまりCは脱落ってことでいい?」

 

「たぶん。とりあえず、夜には浜辺からはいなくなってたよ」

 

 なら脱落でいいのでは?もしかして、陣地を森に移したとかを考えているのだろうか。確かにそれはありえなくもないが、ただ、龍園のあの感じからすると、普通に今回の試験は見送りで封印の儀式と仲間たちの慰安に使ったって感じだと思うぞ。

 

「了解、偵察お疲れ様です。俺の方は、うん、ごめん、あんまり報告できることはないな」

 

「赤石君こそ、食料探索お疲れ様。あと、ちょっと聞いていい?」

 

「どうぞ」

 

「赤石君が寝てない方の男子のテントで今寝てる人って誰か分かる?」

 

「えーっと、俺の方じゃない方ってことなら、綾小路君、池君、須藤君、山内君、本堂君に……」

 

 高円寺を除く、9人全員の名前を挙げていく。井の頭は一人一人の名前を慎重に聞いていた。

 

「そっか、ありがとう。綾小路君もそっちなんだね」

 

「そうだけど、何かあったの?」

 

「ごめん、これもちょっと自信が無くて、……というより、目的が私にもよくわからないから上手く相談できない」

 

 井の頭の表情はいつも通りだが、なんとなく、かなり悩んでいるように感じた。たぶん自信が無いというのは本当なのだろう。うーん、こういうのって聞いた方がいいのかな。三人寄れば文殊の知恵と言うし、いや、まあ、二人しかいないし、井の頭が相談に意味がないと思っている事なら追求しても意味などないのかもしれないが……

 

「了解、考えが纏まったら教えて。あとは何かある?」

 

 まあ、友の決めた事だし、聞かないことも大事だろう。あと綾小路周りの怖い事とかこれ以上聞きたくないという気持ちもちょっとだけある。アイツ、なんかやべー奴感あるんだよなー。

 

「……うん、じゃあ、折角だから、昨日言おうと思ってたんだけど、赤石君はBクラス側から削っていくみたいだけど、Aの方がいいと思うよ。Aクラスは洞窟に籠ってるから人もいないし、それに一応、Bクラスとは同盟を結んでるみたいだから、あまり挑発しない方がいいと思うよ」

 

「あー、なるほど。でも、Aは洞窟に籠ってるなら食料はBとの取り合いになるし、ギリギリのラインで採取すれば問題にはならない気もする」

 

 Bが怒るギリギリまで攻めた後にA側を攻めればよいのでは、という発想だ。

 

「……赤石君は、Bクラスを落とすのが狙いってこと?確かに、Cが脱落したなら、次はBから落とした方がいいかもしれないけど……堀北さんや櫛田さん、あと一之瀬さんの目を盗みながらやることになるから、少し大変だと思うよ。本当にやるなら私も頑張るけど、難しい気がするよ」

 

 いや、リソース少し心配なだけだったが、井の頭的には一大事のようだ。ここは引くか。

 

「いや、そこまでは思ってないけど。まあ、Dクラスを押し上げるには他のクラスに沈んでもらうって手もあるし、いや、結局2000万ポイントで動くならあんまり変わらないけど……そこまで無理しようとは思ってないよ。この試験はできる範囲でクラスポイントを上げて、毎月の収入を増やすのが目標だと思ってる。その上で、場合によっては他のクラスの足を引っ張ってもいいような……気がする」

 

 本音は食料事情だが、直接言うのはなんかがめつい奴だと思われそうなので止めておいた。僅かに残ったプライドだ。

 

「そっか……なら、今日の午前の食料探索は私も行くよ。それで、できるだけBクラスのギリギリか、間違ってBクラス側に入るくらいを目標にしてみて。上手くいけば、Bクラスを落とせるかも」

 

 おっと、井の頭さんガチですね。あんまり一之瀬様のような強者がいるクラスに井の頭をぶつけたくないのだが。そういう消耗戦は軽井沢軍団や櫛田にやって貰うのがベストだが。

 

「あ、いや、ごめん、あんまり井の頭さんを矢面には立たせたくないし、それに俺もできれば矢面に立とうとは思ってないから、無理はしなくてもいいと思うよ」

 

「……大丈夫、今考えてることは全然無理じゃないし、それに、どちらかというとまぐれ当たりを期待する方法だから、そんなに本気でBクラスを落とそうとは思ってないよ……あと、動くのは私でも赤石君でもないから、きっと矢は刺さらないよ」

 

 それなら安心だ。まあ、マージン取りつつ行こう。それに、聞いたところによると、昨日神崎がDクラスの近くまで侵入したという話もある。なので、Dクラスのメンバーが徒党を組んでほんの少しだけBクラス側に入っても、それはただの事故だろう。というか、問題にすらならないかもしれない。

 

「了解、それなら、一応午前はBクラス側にいつもより深く入るよ。といっても安全なラインで行くから、Bとは遭わないかもしれないけどね」

 

 そう言ったあたりで、今日の会合は終了した。

 

 

 

***

 

 

 

 その後は二日目と同じように朝の個人探索、朝食、点呼とノルマをこなしていき、午前中の食料探索に向かう。メンバーは希望通り井の頭を入れた。後は特に特記すべき人はいない。一応、櫛田も参加している。というか、櫛田は今の所食料探索には全て参加しているので歴戦の猛者とも言える。

 ただ、最近食料が余り気味になってきたせいか、それとも、安定した島での生活により精神的な「緩み」がでてきたためか、今回の参加者は昨日までより少なかった。なんか弛んできたようだ。まあ、どうせ今日も往復することになるし、二回目の出撃以降も人員を募集すればいいだろう。Bクラスと遭遇したときに備えて手数は欲しいが……まあ、いきなり殴り合いにはならんだろう。

 

 少ない人数ながらも、櫛田の下で一致団結し、Bクラスのテリトリーへと近づいていく。ちょっとだけ、さきっちょだけなら大丈夫だろうという心胆だ。……正直に言うと少しビビってる。一之瀬様率いるBクラスの領域近くから食料を掻っ攫っても大丈夫だろうか?いや、まあ、中間地点より少し踏み込んだだけだし……大丈夫だろう。

 不安を抑えつつ、櫛田に、あそこにトマト、あそこにナスと適当に指摘していく。うーむ、位置的にこれ以上進むのは少し怖いか。そう考えると、ガサガサと人の気配が進行方向からした。これは来ちゃったか?

 

「あれ?、もしかして、桔梗ちゃん?それにDクラスの皆?」

 

 まさかの一之瀬様である。なんで指導者自らこんな前線に出向いているんだ。うちのクラスの平田も自分で動く人だけど、指示を出さなくちゃいけないから基本的には本陣にいるぞ。

 

「わっ!帆波ちゃん久しぶり~、まさか帆波ちゃんと会えるとは思ってなかったよ」

 

 櫛田は一之瀬様と面識があるようだ。まあ、顔の広い者同士、当然と言える。

 

「私こそ、会えて嬉しいよ。堀北さんから話は聞いてる?」

 

 そういえば、櫛田と一之瀬様って雰囲気結構似てるよな。能力が高くて、おそらく性格も良い、そして当然、口も悪くない。

 

「うん、聞いてるよ。今回はお互いにリーダーを当てないって話だったよね。帆波ちゃんのクラスと戦わずにすんで堀北さんも嬉しそうだったよ」

 

 あ、そういえば、時間がなかったから井の頭の計画を詳しくは聞いていないな。中間地点で挑発するのが目的なのか、それとも遭遇するのが目的なのか。まあ、ここは櫛田と井の頭の活躍に期待しよう。任せたぞ、友よ。

 

「私も、今回の試験は中々難しそうだし、堀北さんや桔梗ちゃんがいるクラスは敵に回したくないからね……ところで、桔梗ちゃんたちは、……食料探索かな?」

 

 今一瞬、一之瀬様の目が鋭く光った気がする。ひぇ、いや、落ち着け大丈夫だ。こっちには櫛田がいる。さあ、櫛田、皆の盾となり一之瀬様を倒すのだ。

 

「うん。そうだよ。もしかして、帆波ちゃんたちもかな?」

 

「そっか、実は私たちも食料を探しに来たんだ。少しでもポイントを節約したいからね。とはいっても、中々難しくてね……もうベースキャンプの周りは殆ど取りつくしちゃったから……桔梗ちゃんたちは、どんな感じ?結構取れてる?」

 

 櫛田、頼むぞ……そう思っていると櫛田はチラリとこちらを流し見た。いや、一之瀬様が目前にいるときにアイコンタクトは止めろ。危ないだろ。櫛田がいくら警戒されようが一之瀬様にボコボコにされようが俺は構わないが俺がターゲットにされるのは困るのだ。分かるか?分かれ!

 

「成果は……そこそこって感じかな。Dクラスのベースキャンプの周りには結構食べられるものがあったから、そのお陰で、上手くいってるみたい」

 

 ナイス。個人的には模範解答だと思う。あー、でもこれは流れ的に、こちらが退くことになりそうだな。

 

「うーん、無人島の植物の分布を考えると、不公平になり過ぎないように配慮されてると思うから、きっとDクラスには凄く優秀な人がいるんだね~。誰かな。やっぱり堀北さん?良かったら教えてくれないかな」

 

 ひぇ、櫛田、応戦しろ。お前ならできる。頼むぞ。俺は昨日不可抗力で龍園に名前を憶えられてしまった。まあ、アホだと思われてると思うからなんとかなりそうだが、一之瀬様あたりに警戒されるのは危険だ。櫛田!本当に頼むぞ。

 

「それは、さすがに帆波ちゃんにも教えられないかな。でも、私は個人の力よりもDクラスの皆一人一人が協力したから上手くいってるんだと思ってるよ」

 

 う、そこは、そんなやついないぞ、の方が良かった気もするが……あ、いや、それはさすがに不審か、一之瀬様もさっきの言い回しだとサバイバーがいると思ってるっぽいし。なら、櫛田のこの回答は悪くないか。むしろ最善かもしれない。よくやった!櫛田!

 

「むむむ~、やっぱり、裏に誰かいるんだね。Dクラスは人材豊富で羨ましい限りだよ~。堀北さんに桔梗ちゃん、平田君に、あと綾小路君も結構鋭いところがあるし、うーん、やっぱり、しばらくはDクラスとは戦いたくないね」

 

 まさに、貴女様が言うな、である。

 あ、でもBクラスは総合力が高い感じで尖った人材はDの方が多いか。堀北・綾小路のボッチ参謀タッグや、運動力の須藤、軍団の保有する軽井沢と篠原、勉強ガチ勢の幸村、チャッカマン池君、ドヤ顔の王に、マウントの佐倉、あと世界一クリーンな企業の社長になる予定の高円寺。

 うーむ、なかなかの尖り具合だ。そして、平田・櫛田の二枚看板はほとんどの試験で活躍できるワイルドカードだ。

 

「あはは、これは一本取られちゃったかな。……このまま話し続けると、帆波ちゃんに大事な事まで話しちゃいそうだから、この辺で一旦戻ろうかな。じゃあね、帆波ちゃん」

 

 櫛田は状況悪しと見たのか撤退モードだ。いいと思います。ここは退きましょう。そして、軽井沢軍団をぶつけてBクラスをびっくりさせてやりましょう。

 

「うん、じゃあね、桔梗ちゃん。――って、あれ、この辺りの食料、採らなくていいの?」

 

 お前、じゃない間違えた、貴女様が怖くて櫛田も俺も、あと他のメンバーもビビッてるだけだよ。なぜ分かりきったことを聞くのでしょうか……

 

「うーん、本当は採るように言われてたけど……でも帆波ちゃんのクラスの方が大変そうだから、Bクラスの方で食べてもらった方がいいかな」

 

 そう櫛田が言うと、一之瀬は少し困った顔をした。なんか問題あるのか?

 

「それは、――正直言うと嬉しいけど、でも桔梗ちゃんたちが先に見つけたと思うから、桔梗ちゃんたちのものだよ」

 

 確かにそうだな。よし、貰って行こう。

 

「でも、まだDクラスには――そうだ!なら、交換っていうのはどうかな?」

 

 いや、貰おうよ。せっかくだし。

 

「交換?」

 

 一之瀬様は顔に疑問符を浮かべていた。

 

「うん、この場所の食料をBクラスの人たちが採っていって、代わりに、Bクラスの皆とアドレスを交換したいなって。帆波ちゃんは私の目標知ってるでしょ。でも、まだ交換できてない人もいるから、今は端末が無いから無理だけど、ここにいる人だけでも自己紹介しない?お互いに知り合えば、きっと私と帆波ちゃんみたいに良い友達になれるよ」

 

 いや、何言ってんだよ櫛田。というより、貴重な資源の対価がお前の個人的探究なのは駄目じゃないか?いや、まあ、龍園や坂柳あたりもクラスや派閥を私物化してるからこのくらい大したことないと言えるけれど……

 

「……うん、私は良いよ。でも一応、皆に聞いてからでいいかな。アドレスは試験の後でって形になっちゃうし、それも承諾を得られた子だけになるけど……」

 

 俺はあんまり良くないよ。俺の名前が広がったらどうするんだよ。それともなんだ。ここで一之瀬にあえて食料班を見せびらかすことで、さきほどの会話の流れから逆にこの中に有能は櫛田しかいないみたいな論法に持ってきたいのだろうか。それは戦術の一つだと思うけど、俺には危険に感じられるぞ。リスクを取りたくないぞ。

 

「勿論だよ!」

 

 櫛田が明るく言い放つと、一之瀬様はこちらに背を向け、後ろに引き連れたBクラスの集団に話をつけていた。1分もかからずに全員に承諾を貰ったようだ。そして、なぜか自己紹介大会が始まった。なんで俺一之瀬様に二回も自己紹介してるんだ?

 

 ちなみに櫛田はほくほく顔で、「白波さんや網倉さんとは、まだちゃんと話せてなかったから、これがチャンスだと思ったんだ~」と述べていた。

 お互いに軽く自己紹介をした後、解散となった。なお、俺が自己紹介をしたとき一之瀬様の近侍の一人であり会話率がおかしい白波がこっちにガンを飛ばしていたことをここに記しておく。アイツは何がしたいんだ……

 

 

 

***

 

 

 

 Bクラスとの遭遇戦を終えた櫛田班はそのままベースキャンプへと帰参した。その後、いつもの往復輸送を行い昼飯分の食料調達を終えた。そういえばヒヤヒヤしてて忘れていたが、井の頭が言ってたBクラスを落とす作戦はどうなったんだ?まあ、こっちが退いちゃったし普通に失敗かな?

 

 最後の物資を調理班に届けたところで綾小路と佐倉がトウモロコシを抱えてベースキャンプにやってきた。どうやら二人は自主的に食料を探していたようだ。綾小路は筋肉ありそうだから普通に櫛田班に参加すればいいのに……ああ、でも俺も井の頭もちょっと不気味な綾小路は怖いから別に参加してもらわなくていいか。

 平田の傍で綾小路の報告を聞くと、彼は佐倉と一緒にトウモロコシの群生地を見つけたようだ。うーむ、報告の地点から考えるとAクラスの洞窟との中間地点より洞窟寄りだな……確かに、あそこには群生地があったが、俺はAクラスに近いため、止めておいた場所だ。

 正直、今回の櫛田班のBクラス接近よりも遥かに敵に肉迫する危険の手だ。なんであんな場所をいきなり探索したんだ?やっぱり、筋肉マウントコンビ故に闘争を求めたのだろうか。これはAクラスとの戦闘になりかねんぞ。井の頭曰く、ずっと偵察している女子もいるという話だし、少し危険な感じがしたので、綾小路に周囲に誰か見なかったか聞くと、「いや、特にいなかったぞ」と平然と答えられた。うーん、偵察が消えたのか、それとも綾小路が鈍いのか、判断に迷うな。

 まあ、どちらにしろ時刻は既に12時だ。つまり昼飯時だ。今から群生地に行ったら昼飯が冷めてしまうし、食った後で良いだろう。

 

 しかし、俺の思考とは裏腹にDクラスの皆はトウモロコシが気になるようで10名近くが綾小路が示した群生地に向かってしまった。いってらっしゃい。俺は暖かい飯を食うことにした。

 

 結局、トウモロコシ狩りは時間がかかり、13時を過ぎてしまったようだ。冷めた飯を食っていた山内が言うには、Aクラスの葛城を付近で見かけたらしい。おい、綾小路、お前の索敵力どうなってやがる。この節穴が!よりにもよって指導者である葛城自ら偵察してるじゃないか。

 気づかない綾小路も綾小路だが、葛城も葛城だ。一之瀬様といい、葛城といい、なんでお前らはベースキャンプから離れたがるんだ。もし俺が遭ったらびっくりするだろ。一之瀬様と葛城はもっと俺の心臓を慮れ。ちゃんと本陣にいろ。平田や龍園を見倣え。

 

 

 昼飯を食い終わり午後になると再び櫛田班が編成された。井の頭は疲れているのか、ベースキャンプで待機となった。まあ、井の頭は体力無いムーブしてるからあんまり活動的になるのも不自然なのでいいと思うよ。

 櫛田とともに今度はCクラス側の方向に探索の手を伸ばした。浜辺と森の中間地点だ。今日はここの食料を根こそぎ頂こう。トウモロコシの臨時収入で再びテンションが上がったのか、それとも葛城の姿で危機感を覚えたのか、それとも単に午後になり午前の眠気もとれたのか、今回のメンバーは午前よりは多かった。

 

 もう殆ど指示することはないものの、見つけにくい食料を櫛田に報告し、次々と食料を狩っていく。しかし、何だかんだで櫛田と一緒に活動する機会が多いな。まあ、平田がベースから動かせない以上能力的に櫛田が食料班に指揮を執るのは必然なので一緒に活動するのは当然なのだが……どうも、そのあたりが堀北に誤解を与えてしまっているのだろう。

 お、草場に隠れたトマト発見。回収しよう。うん、Cクラスは全員(伊吹何某と、Bクラスにいると噂される何某を除く)脱落したようだし、好き放題奪えるぞ。皆の者、乱取りじゃー。

 

 

 

***

 

 

 

 そして時間は過ぎていき、夕食を食べ点呼を終えた。

 点呼が終わると、また昨日と同じように櫛田が数人の女子と共に平田のところへ向かっていった。彼らは何かを話し終えると、そこに軽井沢軍団が加わり途中で軽井沢が平田の腕に抱き着いたりしていた。彼らの観察を続けると、平田と軽井沢軍団の一部、そして櫛田などがまたベースキャンプからライトを持って離れて行った。なんだろう?まあ、平田と櫛田がいるし危ないことではないだろうが……

 二日も連続で夜に抜けられると気になるな。何やっているんだろう。星でも見ているのだろうか。

 まあ、星とか女子は好きそうなイメージあるし、そんなところかもしれない。それに偏見だが、女子は流行や迷信が好きそうなイメージがある。例えば、流れ星が落ちる前に願い事を3回言うと願いが叶うなどという迷信もよく流布されている。科学的根拠がまったく無いのによくもまあ信じるものだ。まあ、色々と満たされていない人は神頼みならぬ星頼――

 お、流れ星!!

 

――無人島試験でこれ以上何事もありませんように!無人島試験でこれ以上何事もありませんように!無人、あ……

 

 クソ!3回言いそびれたぞ……

 

 

 まあ、いいか。心を落ち着かせて30分ほど経過したあたりで平田と女子たちが帰ってきた。もったいないヤツらだ。ベースキャンプにいれば流れ星が見えたのに……

 幸い、本日も脱落者はいないようだ。とてもよいことだと思う。俺卒業したら世界一クリーンな企業作るんだ!

 

 

 

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