基本的な能力は凡才だが、神憑りなハッキング能力を持つ主人公はDクラスに配属される。主人公はハッキング能力により入学前から学校のSシステムについて把握しており、自分の所属クラスやその実態も把握している。
既にめぼしい1年生についてもハッキングにより調査済みである。
現在の目標は2000万ポイント移籍計画である。
Dクラス
そして4月になった。
***
高度育成高等学校へ向かうバスに乗ると、中には同じ制服を着た生徒がたくさんいた。今日の入学式終了後は学園に幽閉されるため、この通学が最初で最後のバス通学となるだろう。
バスの中は空いていて、席も空いていたため遠慮なく座って思考にふけることにした。
――準備に関してはほとんど完了した。基本的なルールは把握し、さらに一部の重要そうな情報も記憶した。問題は人物についての精査が終わっていない点だろう。しかし、これは入学後、対象を観察しながら、情報を漁ればいいだろう。それに先入観を持ちすぎるのもよくないし……いや、これだけ調べておいてそれは手遅れか……
そんなことをダラダラと考えていると、バスの中がだんだんと混雑していることに気づいた。そして同時に何かを言い争う声が聞こえた。そちらの方を見ると、1人の新入生と一般人の女性が言い争っていた。
ん?、新入生の方は同じクラスに配属予定になるであろう高円寺だった。何かと思い耳を澄ませると、自信に満ちた声が聞こえてきた。
「優先席は優先席であって、法的な義務は存在しない。若者だから席を譲る? ははは、実にナンセンスな考え方だ」
この一文だけで今どういった状況かが分かるあたり、高円寺のぶっ飛び具合が良くわかる。つまり優先席に座っている高円寺は席を譲りたくないようだ。
一瞬、優先席だから譲ってあげればと思ったが、優先席って努力義務だっけ?いや法律に詳しくないし、優先席に法律的義務が発生したら色々と問題が発生しそうだから多分正しいのだろうが……気になったので手持ちの端末を使って調べてみた。
普通に調べてみた結果、特に法的義務はないようだ。一応、高円寺が言ったことは筋は通っているようだ。
しかし、この状況で自分を曲げない高円寺はなかなか強い。自分ならビビッて譲るだろう……いや、そもそも優先席には座らないか。
そうしていると口論はヒートアップしていき、ついには高円寺は他の席に座っている人まで巻き込み始めた。やりやがったあいつ。これは物凄く気まずい……譲るべきだろうか?お婆さんのことを考えると譲るべきだろうが、なんというかここで出ると悪目立ちしそうである。
ハッキングという陰謀特化の自分としては今後発生しうるクラス闘争を考えると、目立つのは避けたいが……そう思っていると1人の女子生徒が席を譲った。
よく見るとその生徒も同じクラスになる生徒である櫛田であった。彼女もDクラスでかつ能力が高い人物だ。実は平田あたりも隠れているのでないかと思いバスを見回したがいなかった。代わりに黒髪の美少女である堀北を見つけた。彼女は確か一芸枠だ。いや全体的に自分より能力が高いので一芸と言うと失礼か?
このバスはDクラス御用達のバスかなと考えているとバスは無事に高度育成高等学校へたどり着いた。まさか入学前にこんなイベントに巡り合うとは前途多難である。そう思っているとさらにイベントが発生した。
先ほどの堀北が校門の近くで男子生徒と話しこんでいた。相手側の男子の顔に覚えはない。新入生だろうが、さすがに全員は覚えていない。が、まったく記憶にひっかからない顔からすると一度も情報では見ていない生徒、つまり能力評価がB未満の生徒の可能性が高い。恐らく大勢に影響を与えるタイプではないだろう。
話は終わったようで女子生徒の方がそのまま校門に入っていった。自分もそのまま校門に入ろうと考えたところで、堀北と話をしていた男子生徒に話しかけられた。
「なあ、少し聞きたいんだが、いいか?」
その生徒はこっちの目をはっきりと見ながらそういった。やはり顔に覚えはない。しかし整った顔立ちである。陰のあるイケメンといったところだろうか。目つきが鋭いところも含めて戦隊モノの敵役みたいな感じだ。並んでみると、身長は同じくらい、いや彼の方が1、2cm程高いだろうか?
「ええっと、何でしょうか?」
考えながらも答えてみた。入学式の場所だろうか?それとも時間だろうか?
「いや、あんたはさっきの女子と知り合いなのか?」
さっきの女子。堀北だろう。ハッキングにより一方的に知っているが、彼女は自分のことを知らないだろう。
「いえ、知り合いではありませんが……」
嘘はなかった。知っているだけで知り合いではないという、頓知のようだったが、男子生徒はじっとこちらを見た後に、一応納得したのか一度頷くと、
「そうか、なら別にいいんだが……」
と言った。何がいいんだ?まったくわからない。不思議系の人だろうか……?
とりあえず、彼とは一旦別れて、Dクラスを目指す。不自然にならない程度にゆっくりと歩き、校内を観察しながら進む。事前に入手した校内図と同じであった。また嬉しいことに監視カメラの配置も入手したカメラ配置図と同じだった。やはり死角はあるが、これだけ配置されているなら、ほとんど全ての生徒の動向を観察できる。これは十分――
「監視カメラが気になるのか?」
ふと、そんな声を後ろから掛けられた。一瞬慌てそうになるが、何とか冷静になり後ろを見ると先ほどの男子生徒がいた。何故だ?そんなに意識しないようにしたのになぜ分かる。いや自分は観察のプロというわけではないから、見る人が見ればわかるだろうか……?いや、とにかく今は返答をしなければ。
「いや、校舎に入るところにもあったので、なんだか沢山配置されているように思えて……」
できる限り、普通のトーンで話したつもりだが、少し声が震えたかもしれない。いや落ち着け、普通の男子高校生がカメラのハッキングなどするだろうか?いやしない。自分がカメラをハッキングできるとは目の前の男子生徒にも分からないだろう。
「そうか?そんなに配置されてたのか……気づかなったな」
その男は特に興味もなさそうに言ったが……なんだ?話題の追求もしない。何となく話してみたといった感じだ。もしや、話し方がわからなくて何となく適当なことを言ったのか?だとしたら墓穴を掘ったか?いや、ここで自分がどう答えても監視カメラに関して自分を結びつけることは不可能だろう。だが、この生徒なんとも独特だ。
とりあえず、Dクラスに行くまで念のため校内チェックは止めるか。大丈夫だとは思うが一応。
「ええっと、あなたは新入生ですよね?もしかして同じクラスだったりします?自分はDクラスなんですが……」
一応聞いておく。そんなに危険な人物にも見えないし、事前情報に引っかからなかったが、先ほどの校門での不思議の質問といい、なんだか変な予感がするのだ。
「ああー、偶然だな。オレもDクラスだ。綾小路清隆って名前だ。よろしく……?でいいのか?」
綾小路と名乗った男は何とも間の抜けた感じの挨拶だった。何というか独特な男だ。どうも警戒しすぎていたような気がする。
「綾小路君、こちらこそよろしく。俺は赤石求と言います。【きゅう】は【求める】って字の求です。よく変わった名前だって言われます」
……危ない。今間違って3年間宜しくお願いしますって言うところだった。本当に俺は抜けてるな……
綾小路は俺の挨拶を聞くと「確かに求って名前は珍しいな」と無感動に言った。それからお互いに会話をしようとするも、バスの話や校舎の大きさ、挙句の果てには今日の天気の話など、2人のコミュニケーション能力が致命的だと判明しただけだった。綾小路の事を不思議系だと思ったが、俺も人のことは言えないかもしれないな……
***
綾小路と一緒にDクラスの教室に入ると、すでに生徒が多くの生徒が中にいた。ふと、教室内に配置されているであろうカメラを確認しようとして、視線を感じた。もはや、これは偶然には感じられなかった。よってこちらから仕掛けることにした。少し顔を上げカメラを視界に収め、数秒ほど観察。配置通りだと確認し、綾小路に声をかけた。
「綾小路君。ここにもカメラがあるみたいですね」
綾小路は間髪入れずに答えた。
「そうだな」
まるで興味のないような口調であった。自分は人間観察に関しては可もなく不可もなくだと認識しているつもりだが、この綾小路に関してはまったく分からない。鋭いような鈍いような、本当に判断に困る。とりあえず帰宅したらこいつの入学時の評定を漁ろう。
綾小路は会話を続ける気がないらしく、そのまま、窓側の一番後ろの席に向かった。綾小路の方を見るが、こちらへの興味を失くしたようで、視線は感じなかった。
こちらも一旦、綾小路のことは忘れ、自分の席に向かった。窓側の黒板に近い席であり、綾小路4つ前だ。席の座り周りを見ると、後ろの席の男子が目に入った。資料で何度も見た顔だ。彼はこちらが見ている事を気づくと、爽やかな笑顔で口を開いた。
「僕は平田洋介、よろしく。君は?」
事前資料ではDクラスで最も期待ができる人物である平田洋介だ。まさか、すぐ後ろの席になるとは……この好機、上手く生かしたいが……
「赤石求と言います。平田君、こちらこそよろしくお願いします」
先ほど綾小路相手に失敗した名前ネタは止めておいた。が、流石は平田。綾小路とは格が違った。
「きゅう?どんな字を書くんだい?」
手早く会話を広げてきた。やはり、コミュニケーション能力が高い。――綾小路と俺が低すぎるだけかもしれないが。
「求めるとかいて【きゅう】と読みます。平田君のヨウ介のヨウは太平洋の洋?それとも太陽の陽?」
こちらも名前ネタで応戦する。とはいっても太平洋の方だというのは知っているが。会話を続ける手がこれしか思いつかなかったのだ……
「太平洋の方だよ。赤石君」
平田は人好きのする笑みのまま答えた。「なるほどー」と適当過ぎることを言ってみると、チャイムが鳴り響き、それと同時に黒いスーツを着た女性が教室に入ってきた。
彼女は教卓まで移動すると、鋭い声で着席を促すと、Dクラスの生徒たちはそれぞれ、自分の席に座った。そうすると、彼女は資料を配り、自己紹介を始めた。と言っても自身の名前と担当科目程度しか言うことはなかった。
茶柱と名乗った先生はその後、本学校ではクラス替えを行わないこと、担任も変わらないことを説明すると、肝心のSシステムの説明に入った。しかし、ここで問題が発生した。
「ポイントは毎月1日に振り込まれる。1ポイントで1円の価値だ。お前たちにはすでに今月分の10万ポイントが支給されている」
そう怜悧に言い放つと、クラス中から感嘆の声が響いた。が、問題はそこではない。今の言い方は非常に誤解を招く言い方だ。これでは毎月10万貰えるみたいだ。というより、事前調査がなければ、自分も間違いなく勘違いしている。しかも、さらに茶柱先生は誤解を加速する発言を繰り返した。曰く、
――支給額は実力で測られ、入学をはたしたDクラスの面々にはそれだけの価値がある
とのことだった。これは本気で間違えるぞ。……どうする?指摘すべきか?いや、さすがに目立つ。誰か気づいてくれないだろうか?平田、出番だぞ!ちらりと後ろを見るが、平田は資料をめくっている所だった。駄目だ。多分気づいてない。いや、これは気づくのは無理だよな……というか茶柱先生性格悪くないか?それともこの学校ではこういう誤解させる言い方がデフォルトなのか……?
***
茶柱先生が一通り説明を終えると、入学式が始まるまで待機ということになった。
茶柱先生が立ち去った後、後ろの席の平田が立ち上がって皆に言った。自己紹介をしようと。しかも、枕詞に「1日もはやく皆で仲良くするために」という言葉をつけた。流石は能力評価で協調性が飛びぬけて高い男だ。志が違う。
しかし、困った。こういうのは大体、時計回りで進行することが多い(逆時計の可能性もある)、そうなると第一声を行った平田の前にいる俺が第一犠牲者(平田は率先した事とコミュ力が高いので犠牲者カウントしない)になってしまう!
なんとか逸らせないかと思ったが、平田から無情のキラーパスが投げられた。おのれ。
「時計回りでいいかな?赤石君、次お願いできるかな?」
人の好い笑みを浮かべている。うん。つい頷いてしまった。仕方ない、ここは再び名前ネタで行くか……?
「赤石求です。【きゅう】は【求める】の求です。趣味は………………一応?チェスが少しだけ得意です。3年間よろしくお願いします」
パチパチと小さな拍手が聞こえてきた。名前ネタはあまり反応が良くなかったため急遽、趣味の話をはじめたが、そもそも趣味などなかった。いや、ハッキングはもう趣味みたいなものだが、まさか言うわけにもいかなかったのだ。仕方ないのでチェスと言ってみたが、そもそもチェスなんて最後にやったのは何時だったか?
またも思考が脱線していくと、自己紹介の輪は次々と広がっていき、櫛田のターンになった。曰く、同学年の全ての生徒と友達になるそうだ。それは、流石に目標が高すぎないか?というより、学年全体なら俺や綾小路、そして高円寺も含むが大丈夫か?いや、櫛田の友達の定義が限りなく緩く、喋ったら友達、クラスメイトなら友達とかかもしれない。もしくは連絡先を知っていたなら友達という可能性もある。
あ!それなら俺、学年全体どころか学校全体の全生徒と友達だ。いえーい、櫛田、見てるー? ……やっても櫛田なら許してくれそうな雰囲気があるが、周りが絶対に許さないだろうし、何より自分がそんな事を言える度胸が無いので絶対やらないが……というより、おもいっきりハッキング能力がバレるので、できない。
そんなこんなで、途中、須藤が出て行ったり、綾小路が渾身の一撃を放ったりなど見所が豊富な自己紹介だったが、比較的穏当に終了した。とりあえず、癖の多いやつが多すぎた。寮に帰ったら情報を整理せねば……!
自己紹介が終わると、入学式に整列して向かっていったが、特に面白みにあることは無かった。あえて挙げるとすれば堀北生徒会長だろう。
非常に優秀な生徒という評価に偽りはなかく、カリスマ性を感じた。ただ、どうも正攻法に拘り過ぎるような人柄だった。よく言えば真面目すぎると言うべきだろうか?変な感じだが、これまで見た生徒の中で一番、奇襲に弱い印象を受けた。自分でもワンチャンあるんじゃないか?と思ってしまう。
いや、正面から戦ったら必ず叩き潰されるが、ハッキング・陰謀主体の自分からすると、かなり相性が良い相手に見えた。まぁ、3年生である彼と直接相対する機会は無いだろうが……
入学式終了後、クラスの皆でカラオケにいかないかという話になったが、今はすぐにでも寮に戻る必要があったため、平田には辞退を伝えておいた。正直、平田との繋がりは維持したいが、席が近い以上、焦る必要は無いだろう。あと、人前で歌うのなんかイヤだ。
ちなみに綾小路や堀北・高円寺といった非コミュ戦士たちは素早く戦場を離脱し、平田・櫛田の攻撃を逃れた。あれが名将というものだ。対人関係に全く執着せずに離脱する。見習いたいものだッ! いや、冗談抜きに淡々と帰宅モードに入れる彼らはすごいと思った。
***
帰宅すると、素早くPCを起動し、ハッキングを行う。まずは、カメラだ。特殊なルートを使い、学園内のDクラスのカメラにアクセスを開始した。カメラは常時起動しており、生徒の監視を行っていた。そして、ある時刻になると、教室の扉が開かれ、俺と綾小路が入ってくる。そこで一時停止をかけ、画像を特殊なプログラムにかけ、拡大・鮮明にした。
画面内の俺が僅かに上を向く、そして隣の綾小路はじっと俺の側頭部と視線の先を見ている……ように見える。正直、人間の動作や心理は専門ではないため分からなかった。しかし、見ている気がする。一度再生をかけると、画面内の俺が一瞬硬直したあとカメラを見回し、口を開いた。綾小路は俺の言葉を聞くと観察を終え窓側の自身の席へ向かっていった。そこで再びストップをかけた。
「やっぱり、見られてるよな、綾小路に。あいつは動くものを追いたくなるタイプなのか?うーん。とりあえず綾小路の入学時に評価でも見るかー」
再び指を動かし、高度育成高等学校の評価一覧にハッキングをかけた。そして画面に綾小路の写真と評価が表示された。
氏名:綾小路 清隆(あやのこうじ きよたか)
クラス:1年D組
学力:C
知性:C-
判断力:C-
身体能力:C-
協調性:D
【面接官の評価】
積極性に欠け将来への展望なども持ち合わせておらず、現段階では期待の薄い生徒だと言わざるを得ない。
――え?
何といえばいいのだろうか。なんとも普通の生徒だった。俺からハッキング能力を引いたみたいな生徒だ。俺の勘違いか?勝手に思い込みで警戒していただけだろうか……?なんとも腑に落ちない。でも協調性Dはなんとなく分かる……
それにしても面接官の評価が致命的だな。いや、確かに物事に対して達観しているというか、やる気が無さそうな印象が強いが……うーん、学力は入学時の成績できまるが、知性は面接の応答にもよることを考えると……面接の時はやる気がなかったとかだろうか?気分で能力が変わるタイプとか……?
なんにしてもこの評価がすべてという訳ではないだろう。もちろん、これは綾小路だけに言えたことではないのだが……どうにも自分は面接官の評価や学校が決めた基準に引っ張られ過ぎた気がする。
とりあえず、綾小路に関しては、いったん保留だ。今日はなんだか一旦保留してばかりだ。なんとも想定外の事態が多い。いや、おそらく半分以上は綾小路が原因だが。
次に調べる事は、他クラスについてだろう。特にSシステムの説明が気になる。はたして茶柱先生が解りにくいことを言っているのか、それともこの学校の性質なのか……
結論。A・B・C全てのカメラのアクセスし音声も確認したが、説明の仕方は恐ろしい事にほとんど同じだった。もちろん話し方には個人差はあるが、言い回しが勘違いさせやすいという点においては4クラスとも同じであった。
これは完全に決まっている事項であると見るべきだろう。……口頭で決まった事項だろうか?それとも例年決まっているのか。一応調べてみるか……おお!見つけた。新入生への言い方マニュアルだ!……ふむふむ。どうやら誤解させる言い方は学校の決まり方針のようだ。
それにしてもこの学校はマニュアルが多いな……事前調査にかなり時間を使ったが、こんなものまであるとは……いや、逆にこの高校はマニュアルに強く影響されていると考えることができるな。それならマニュアルを閲覧できる自分がやはり優位か?……問題は自分は抜けているところだな。能力の持ち腐れというべきか。
とりあえず、振る舞いには気を付けよう、ハッキング能力は警戒されていたら使いにくくなるからな……
あとは、せっかくだし、カメラを使って各クラスの動向でもチェックするべきか?いや、ポイントの詳細について調べるか?やるべきことがたくさんあるが……とりあえずはポイントだな。生活にも直結するしと思い調べた結果はだいたい以下のようになった。
・茶柱先生の説明通りポイントで買えないものはない。中には校則を変えることができる。
・クラスポイントの100倍の値が毎月1日に端末に支給される。
・入学時点で各クラスのクラスポイントは1000である。ただしクラスポイントは増減する。
・ポイントは学生証とも連動している携帯端末を用いて使用する。
・学園には無料の商品があり、ポイント無しで入手することができるが、1月に3度など回数制限がある。回数制限の判定のためには学生証が必要であるため、この方法で商品を入手する場合も携帯端末が必要である。
・端末間でポイントのやり取りが可能である。また匿名の相手に対してポイントを渡すことも可能である。
・支給や使用、端末間でのポイントのやり取りによって増減するプライベートポイントの記録は学園本部内にあるサーバー内に保管される。生徒が在籍している限り記録は残る。
サーバー内はなんとかハッキング可能であったため、時間をかければ個人のポイントの使用履歴や支給履歴は調べることができるだろう。しかし一方でサーバーに保管されることからポイントの不正受け取りは難しそうである。支給させて、サーバーのデータを削除すれば受け取りはできるが、そうするとポイントの使用や端末間でのやりとりの際に発覚する恐れがある。いや……端末のやり取りは双方の送受信履歴を消せば……ダメか、今度は相手側がサーバーのデータよりも多くポイントを持っていることになる。そうすると、捜査が行われ相手側から自分がバレる可能性がある。
つまりは、俺のハッキングは本物に限りなく近い偽札作りに近いのだ。偽札そのものは誰にもわからないが、通貨の総量が国家が定めた値より多くなって、偽札の存在がバレてしまうという事だ。さらには電子通貨なので発覚が早い。うーん、もう少し捻ればポイントを不正に得ることができそうだが……難しいな。
今日のハッキングはここまででいいだろう……明日からは授業だ。とりあえずは授業態度でマイナスをとらないように普通に受け、あとは平田との繋がりを大切にしよう。