Bクラスの陣地にたどり着き、最初に感じたことは、純粋なレベルの高さだ。一人一人が協力しあっている。一之瀬を中心にクラスがよく纏まっているというべきか。Dクラスとは、かなり違う。唯一、Dクラスが勝っている点と言えば、それは一つしかないだろう。
「……食糧か」
「何か言いたそうね、綾小路君?」
『都合よく』堀北がオレの
「……そうだな。あ、いや、何と言うかだな」
少し語調を濁し、言葉を選ぶように間を取る。
「櫛田さんと赤石君のおかげという妄言はいい加減にしてほしいのだけれど」
案の定、堀北は想定通りの答えを返してきた。この調子であれば、Bクラスのベースキャンプでも堀北は十分に役割を全うしてくれるだろう。
「でも、Bクラスを見た感じ、食糧以外は、うちのクラスよりも良さそうだろ。逆に、食糧で勝っているっていうのは結構凄いこと……なんじゃないか?」
「ナチュラルにBクラスに勝てないような言い方は止めなさい。赤石君の負け犬癖が移っているわよ。それに、この付近に、たまたま食糧が自生していなかった可能性もあるわ。もしくは、一之瀬さんが自生した食糧の利用に関して何かデメリットを感じたかもしれないわね」
可能性としては無くは無い。しかし、蓋然性は低いと言える。この学校は平等ではないが、平等を装っている。つまり前者に関して言えば、ある程度スポットと植生のバランスは確保されていると考えられる。実際に昨日の偵察からしても、一之瀬のところだけ、食糧が極端に少ないとは考えにくい。そして、後者に関してだが、こちらも、一之瀬の性格やBクラスの状態を考えると、可能性はあったとしては、蓋然性は低い。
「まあ、確かにそうなのかもしれないが……」
こちらに向かってくる足音を感じ、言葉を途中で止める。見ると、一之瀬が手を振りながら、こちらへと歩いてきた。
「堀北さん!綾小路君!よく来たねー」
一之瀬は、明るい表情を浮かべ、快活な声で話しかけてきた。多少、疲れの色があるが、この試験の性質を考えると、十分すぎるほどの活力があると言えるだろう。
「一之瀬、久しぶりだな。神崎から朝、Bクラスのベースキャンプの場所を教わってな。来ても良いって意味かと思ったが……良かったか?」
「もし、来ることを禁じていた場合は、綾小路君が責任を取るわ」
「いや、お前も来てるだろ」
「神崎君の話は聞いていなかったわ。これは綾小路君の責任よ」
オレと堀北が馴れ合っていると、一之瀬は笑い声を漏らし、口を開いた。
「あはは。相変わらず、二人は仲がいいね」
「そう見えるか?」
「それはないわね」
堀北は冷たく吐き捨てると、こちらを軽く睨んだ。早く本題に入りたいようだ。
「息がぴっ、いや、ううん。何でもないよ。えっと、特別試験の話でも……する?」
一之瀬も堀北の気持ちを汲み取り、ちらりとオレを流し見て、そして再度堀北を見た。須藤の事件の件で、少し注目されたかもしれない。
「そうね。できれば一之瀬さんとは、いくつか情報の共有をしたいと考えていたところよ」
「うん。私もだよ。堀北さん」
そういうと、堀北と一之瀬は特別試験に関する話し合いを始めた。オレは口を閉ざし、会話は堀北に任せ、影に徹する。
二人は特にポイントの使い方などを交互に話し合った。また、今回の特別試験で『BクラスとDクラスは互いのクラスのリーダーを当てない』という取り決めがされた。口約束だが、堀北と一之瀬の性質上、破ることはないだろう。
ある程度、話の区切りがついたところで、一之瀬がふと遠い目をして、なんとなしに呟いた。
「でも、ちょっと意外かな。平田君と赤石君が来るかと思ったよ」
平田と櫛田ではなく、平田と軽井沢でもなく、平田と赤石か。興味深い発言だ。
「それは、どういう意味?」
当然の如く、堀北が追及した。相変わらず、堀北は使える。
「え……?あ、えっと、ごめんね。今ひょっとして声に出てた?」
流石に、その誤魔化しは厳しいが……どうも一之瀬の場合は単純な誤魔化しと判断しにくい。
「私には、はっきりと聞こえていたけれど……綾小路君はどう聞こえたかしら?」
こちらを見る堀北と目が合った。どうやら怒りの熱量にも輻射という概念があるようだ。
「あー、まあ、何と言うか、気持ちはわかる。オレと堀北よりも、平田と赤石というのは、しっくりくるからな」
適当に会話を引き延ばし、情報収集に努める。櫛田、龍園と赤石の黒い手……いや、赤い手か?赤い手が至る所に先回りしている。一之瀬とも何か関係があるのだろうか。
「あー、いやいや、全然、そんなつもりはなくてねっ!ごめんね。堀北さん、綾小路君。ただ、その、何と言うか、Dクラスだと平田君が特に有名だし……つい、思っちゃって。でも、堀北さんや綾小路君の事を低く見てるつもりはないよ」
「…………百歩譲って平田君は分かるわ。でも、なぜそこで赤石君なのかしら?一之瀬さんは彼と面識があるの?」
怒りの視線を一之瀬に飛ばしながらも、堀北は言葉を発した。対する一之瀬は、思ったよりも自然体で、口を開いた。
「うん?面識というか、あれ?あ、そっか。…………、……えっとね。以前、赤石君と話をしたことがあって、何と言うか、Dクラスの参謀みたいな人だなーって思ったからかな。あと平田君とよく一緒にいるしね」
今の間は、天然なのか、故意なのか判断に迷うな。今までの『オレから見える一之瀬像』からすると故意ではないように思えるが……どちらにしろ、一之瀬は、堀北とは違う、赤石に対する見方を持っているようだ。そしておそらく、他の生徒とも違うものだろう。
さて、どうしたものか。堀北に期待してみるか。
「まあ、平田は皆の纏めでベースキャンプに残らないといけないからな。赤石も忙しいから、ここには暇人二人で来た感じだ」
「分かっていると思うけれど、一之瀬さん。暇人は綾小路君一人よ。私は、純粋に、特別試験の状況確認と、一之瀬さんとの貴重な対話の機会を逃さないために来たわ」
「貴重だなんて……ちょっと照れるな。でも、まあ、私も、それは同じかな。堀北さんと綾小路君とお話できたのは大きかったよ」
一之瀬を観察するが……少し難しい。赤石ほどではないが、一之瀬も『読み取りにくい』人間だ。
「綾小路君程度で良ければ、クラスポイントに関わらない範囲でなら、好きに使ってもらっても私の方は構わないわ」
「それはオレが構う内容じゃないのか?」
そうオレが言うと、堀北は、一度鼻で笑うと、無言を決め込んだ。
仕方がない、オレが踏み込むことにしよう。
「それにしても、赤石が参謀か。まあ、テストの成績も良いし、結構似合ってそうだな」
「綾小路君がテストの成績を気にするとは意外ね」
堀北が上手く乗ってきてくれた。ここで会話を引き延ばせば……オレの想定する一之瀬の人物像からして、もう少し情報を引き出せるだろう。
「いや、実際気にするだろ。赤点になると一発退場だからな。オレもひやひやしたよ」
「貴方の普段の図太さを考えると何も言えないわね」
「あはは……二人はやっぱり、ってごめん、この話はさっき怒られたばっかりだったね。えっと、まあ、その、……話を戻すと、なんとなく、さっきはイメージで平田君と赤石君って思っちゃったんだよね。不快だったよね。本当にごめんね」
一之瀬は誠実な人間だ。いや、より正確に言うと、『誠実に見える人間』だ。だから、堀北の苛立ち具合を見せれば、先ほどの件を蒸し返すことができる。
「いや、全然いいぞ。というか半分合ってるしな」
一手打つ。一之瀬はどう返すか。
「うん?半分?」
「いや、まあ、さっきまで赤石はいたんだが、見ての通り、堀北が素直になれなくてな、気を使って別れてくれたみたいでな」
一之瀬の仕草や表情に意識を向ける……ほう、そうなるか。
「綾小路君、そんなに二学期の楽しみを増やしたいのかしら?」
堀北の言葉を流し聞きながら、一之瀬の表情について考える。そう、一之瀬は――
「まあ待て。落ち着け。ちょっとしたジョークだ。見ろ、一之瀬も少し驚いてるだろ」
――驚いた表情を浮かべていた。赤石と平田が来ることを予期していたと先ほど言ったが、一方で、赤石とオレと堀北の三人では不自然か。それとも、赤石が途中で抜けたのが不自然か。どちらにしろ、興味深い。
「……え、いや、私が驚いたのは、……うんっと、もしかして堀北さんって」
「何かしら一之瀬さん?」
さあ、どう出る一之瀬。
「えっと、違ったら悪いんだけど……もしかして、堀北さんって赤石君のことが好きなの?」
……
「どうして、そんな突飛な話を始めるのかしら。一之瀬さんが言うからには何か根拠となるものがあるのよね?」
…………
「根拠って言っていいか分からないけど、さっきから赤石君関係だけ、かなり堀北さんは気にしてるみたいだし。私の経験上、こういった場合はそういうケースが多いかなって……えっと、違ったかな?」
……………………
「絶対に、それだけは有り得ないと言っておきましょう」
ふう。息が詰まりそうだ。
「それなら……」
「逆に聞きたいのだけれど……一之瀬さんは赤石君の事を好きと言えるの?」
追及しようとした一之瀬の言葉を遮るように、堀北が言葉を発した。
「んー、好きと言うか……赤石君って
多才か。それはどちらの意味だ。表面的な、何でもそれなり以上にできるという多才という意味か、それとも別の意味か。
「一之瀬さんが評価するほど優秀とは思えないのだけれど」
「そうかな?私の知ってる赤石君って結構頭が良さそうなイメージがあるけど……」
「一之瀬さんは赤石君とは知り合いなのかしら?」
「知り合いというか、何度かお話してるね。そんなに意外かな?」
「意外ね」
堀北が頑張ってくれているが、一之瀬の方が上手だな。会話に粗が少ない。どうとでもとれる会話だ。単に天然なだけにも見えるが、どこか、櫛田よりも巧妙さを感じるのは気のせいだろうか。
「私も意外かな。この点では堀北さんと意見が合うと思ったから……そういえば、綾小路君、赤石君はさっきまで一緒だったってことだけど、つまり、Cクラスへは三人で行ったってことでいいのかな?」
オレは特に考えることなく口を開いた。
「ああ、そうだ」
「待ちなさい、綾小路君」
かぶせるように堀北が遮ったが、少しだけ時間が足らなかったようだ。やはり堀北は期待を裏切らない。
「あ、堀北?悪い、言ったらまずかったか?」
「……一之瀬さん、いきなり綾小路君に話題を振らないでもらえるかしら……綾小路君の小さな頭だと、上手く答えられるか不安だわ」
「綾小路君
強いな。それに、よく見ている。しかし、オレと赤石が同格か。オレは赤石ほど異常な才能はない。そして、今までのオレの振る舞いで、一之瀬がオレを正しく評価することができていたら、それは一之瀬は誇大妄想者だ。そして一之瀬の今までの実績を見るにそれはない。つまり、一之瀬の持つ情報量はそれほど突出しているわけではない。
「別に秘密ではないわ。ただ、……そうね、さっきまで龍園君と話をしていたから他人に対して疑り深くなっているかもしれないわね」
どういうわけか、一之瀬は、龍園や櫛田が赤石に下す評価よりも高いものを、赤石に対してしているようだ。一方で、あの男の才幹を深く知っているわけではないようにも見える。なぜなら、
「あはは、龍園君には悪いけど、それ、ちょっと私も分かるな……それに、いきなり綾小路君に聞いたのは、確かに怪しくみえちゃうね。赤石君のこと、堀北さんに聞くのは、堀北さんにとって嫌なのかなって思ったら、ついね」
しかし、普通のDクラスの生徒に向けるものとは違うものを赤石に向けている。
赤石の何かを掴んだか、それとも掴まされたのか。もし、後者であれば、それもまた、あの男の策謀の一端なのだろうか。恐ろしいな。
「いえ、私も悪かったわ。さっきお互いに不戦同盟を結んだばかりなのに、少し、色々と初めての環境で参ってるのかもしれない」
「そうだね、私も、初めての体験だから、いろいろ気になっちゃったかも。堀北さんも綾小路君もごめんね」
そう一之瀬が謝り、僅かに会話に切れ目が生じた。
その切れ目が、オレにとっても予想外の事態を生み出した。
これまでの疲労、苛立ち、いろいろな思いが貯まった堀北にとって、僅かな緊張の切れ目。
「皆どうして彼に構うのかしら……」
綻びから出た小さな言葉。隣にいたオレでも聞こえるか聞こえないかの、堀北の、ほんの小さな囁き声。
「彼って、赤石君?」
それを一之瀬は拾い上げた。
「いえ、一之瀬さん。気にしないで。独り言よ」
突き放す堀北に対して、一之瀬は一歩足を踏み込み、堀北の目を見ながら小さく囁いた。
「さっき私も独り言拾われちゃったから、私も拾っていいかな」
優しく囁く一之瀬の声に、オレはなぜか鳥肌が立つのを感じた。
「ごめんなさい。不快だったわね。謝罪するわ」
「ううん、全然不快じゃないよ。気にしないで……それと、皆が赤石君を気にする理由は分からないけど、たぶん私は……多才ってだけでなくて、一番は『なんとなく』だと思うよ」
一之瀬は表情は優し気だが、目はじっと堀北を見ていた。真剣な思いというのだろうか。そういった部類のモノを一之瀬からは感じた。
「なんとなく……?」
「うん、私は、というか、大半の人は堀北さんほど合理的に考えられないと思うから、『なんとなく』っていうのは結構理由になると思う。あと、そうだな……赤石君とは誕生日も近いから気になるのかな?シンパシーみたいな?」
直感、いや、この場合は直観か。一之瀬の言葉に嘘がないならば、彼女の何らかの経験が理由で、赤石に興味があるのだろう。しかし、こういった概念的なものは言葉での伝達が難しい。ましてや、現在のオレや堀北と一之瀬の関係では、深くは聞けないだろう。つまり残念ながら、一之瀬の赤石に関する追及はほぼ終わりだ。最後に仕入れることができそうな情報は、あって一つだろう。
「一之瀬の、……ああ、いや、赤石って誕生日、いつなんだ?」
「綾小路君。本音が漏れてるわよ」
堀北が上手く聞き取ってくれたようだ。
「本音って言うと?」
「今の聞き方でわかるわ。赤石君の誕生日を聞いている風だけれど、本命は一之瀬さんの誕生日を知りたいだけでしょ」
「おいおい、誤解だ。一之瀬に悪いだろ、堀北」
少し慌てた風に、堀北と一之瀬を視界に収めながら言い訳をする。
「私の誕生日なら、別に教えても全然平気だけど?」
「いや、誤解だ。本当に赤石の誕生日が気になっただけだ」
「一之瀬さん、教える必要はないわ。貴女の誕生日も、別の人の誕生日も」
「うーんっと、私の誕生日は7月20日だよ。だから、もう十六歳。綾小路君の誕生日は?」
「10月くらいだ。あと、さっきのは堀北の誤解だ。オレは赤石の誕生日がいつか気になっただけだ」
少し慌てた風に語調を整える。オレは須藤の件で、一之瀬と接する機会があった。そして何度か一之瀬と話をした。実際、客観的に見て魅力的な面を多々持つ少女と言える。一般的な男子生徒が誕生日を知りたがるのは自然だ。
「綾小路君と堀北さんは本当に……っと、ごめんまた同じ話をしちゃう所だったね。赤石君の誕生日だよね。一応、知ってるけど、さすがに人の誕生日は勝手には教えられないかな。赤石君なら……聞いてみれば、すぐに教えてくれるんじゃないかな?」
「確かに、それもそうだな。今度聞いてみる」
「一之瀬さんの誕生日を聞き出す目的は達したようね」
「違うって言ってるんだがな……」
そう、違う。目的は赤石の誕生日だったのだから。
そして一之瀬は、オレとは違った面で赤石のことをよく知っているようだ。その理由は分からないが、今後も堀北と一之瀬には仲良くしてもらいたい所だ。
***
一之瀬との会話を終えた後、オレと堀北はAクラスの偵察を行った。
堀北と葛城の間で
敢えて気になった事と言えば、Aクラスに向かう途中、やけに視線を感じた事だろう。葛城や他のAクラスの生徒たちの性質を考えると、Dクラスであるオレや堀北に強く視線を送ることは、やや不自然だ――侮蔑の視線や物珍しさといった類のものなら考えられるが、そちらは葛城の性質と少し異なる。このような状況で、Aクラスの生徒がそのようなことをする事は葛城も好ましくないと考えるだろう。とすると、警戒と見るべきか?
しかし、もしそうであれば、それが意味するものは……今は余裕がないため深く考察することはできないが、将来的に意味のある情報になるかもしれない。
午後二時を過ぎた頃、オレ達はDクラスのベースキャンプへ戻った。丁度、食糧班が戻っているタイミングだったため、今のベースキャンプには人が多い。食糧班はまとめ役である櫛田が上手くやっている。そのためか、Dクラスの物資はBのものよりも多い。勿論、調達している時間も、その分長いため、この二日間、ベースキャンプにいないタイミングも多い。
オレがこんなことを考えているのには理由がある。それは、食糧班の影の中核と考えられる男が、オレと堀北が戻るや否や、こちらに鋭い視線を浴びせてきたからだ。見透かすような独特な瞳。おそらく、オレと堀北がBクラスでどんな会話をしてきたか、その見当はついているのだろう。
それから、夕方まで、オレは燃料集めに従事しながら、現在の状況の確認と今後の想定を行った。
最も重要な赤石の基本戦略に関しては検討がついた。龍園の性格や、伊吹の立場などを考慮に入れると、おそらく5日目あたりから、龍園と赤石の戦いが始まるだろう。赤石の方で処理を行うかもしれないが、一応、伊吹が持っているカメラはオレの方で今夜破壊することにしよう。
それと、さらに先の計画、二学期以降の対策のためにも、もう少しAクラスの情報が欲しい。三日目と四日目はそのための準備としよう。
あとは、堀北を脱落させるタイミングだ。赤石からの指示を待つか、それともオレの方で合わせるか……いや、こちらは時が来れば分かるだろう。
段々とするべき事がはっきりとしてきた。もう少し赤石の全体的な方針や思考回路が分かれば助かるが……いや、それは欲をかきすぎているな。なぜなら、今回、オレは、赤石の異常な才能について僅かだか手がかりを得たのだから。
赤石は不気味で恐ろしい男だ。しかし、この試験で手札を多く見せすぎてしまっている。まだまだ隠された手札があるだろうが、ようやくオレも赤石の手札の引き方にあたりがついた。
そう、赤石は、手札の引き方が上手すぎるのだ。手札の質でも量でもない。まるで、次来るカードが分かっているかのような引き方だ。
おそらく、赤石の天才性は、統計学を直観に昇華させていることだ。
初めて見るものであっても、常人には得られないような細かい情報を読み取り、それを一瞬で解析し、
だから、赤石は、初めて受ける試験を、船に乗り移動している間に得られた情報で、予想することができた。だから龍園の戦術を
赤石は予想・分析においての天才、いや怪物と言える。
この恐ろしい怪物が、同じクラスにいることは、幸運と捉えるべきか、それとも不運と捉えるべきか、悩ましい。
ふと、夜風が体に流れてきた。もう、夕方を過ぎ、夜と言ってもいい時間だ。日の光がなく、気温も落ちている。夜風も適度に涼しいと言えるだろう。しかし、どういうわけか、体の中心が熱を帯びたように、オレには感じられた。
――ああ、心臓の音が少し大きいな。
特別試験二日目。
「岩場の観測者」の別視点、裏話となります。
綾小路視点終了。
次の視点は一番頑張ってる人です。
4巻部分以降についての知識調査(今後の執筆内容に関わります)
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小説の4巻部分を読んだことがある
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アニメ版の無人島(3巻)までしか知らない
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小説未読だが、4巻部分の内容を知っている
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そもそも原作を知らない