「ようこそ!我が秘密基地へ!この基地の施設は全部俺製で最新鋭なんだ!凄いでしょ?最高でしょ!?天才でしょ!!」
変身を解いた仮面ライダービルドは、自分の秘密基地に帰って来るなり自称自分製の施設を自慢しだした。興奮し、暴走ぎみのソイツは自分の頭の後ろを素早くかく。かいた部分は寝癖のように逆立ち、整った髪型から一変、その着ている服と相まってだらしない容姿となってしまった。
「おい戦兎その辺にしとけ、コイツら困ってるだろ!それに自己紹介もまだだし!」
同じく変身を解いた仮面ライダークローズ。暴走ぎみの相棒を止めるべく、ソイツを
「はっ、すまん。つい自身の才能に自惚れていた······。俺は桐生戦兎、仮面ライダービルドだ。よろしくな」
「仮面ライダークローズ、万丈龍我だ。さっきはありがとうな」
「仮面ライダーゲート、戸島鍵だ。こちらこそ、さっきはありがとう」
「フィリップ、仮面ライダーサイクロン。信じてくれてありがとう」
フィリップが自己紹介を終えると桐生戦兎はフィリップの方に顔を向け、目を見開いてフィリップに近づいてその手を力強く両手で握る。それに反応したように寝癖が再び逆立ち、そしてまた暴走ぎみになる。
「よしフィリップ、さっきの約束だ。覚えているか?」
「分かったから落ち着きたまえ······」
大方、ガイアメモリかライディングブレスを桐生戦兎に渡して研究させる約束でもしてしまったのだろう。俺の知る桐生戦兎は、未知のテクノロジーに対して目がない、科学者の
「受け取りたまえ、ガイアメモリとライディングブレスだ」
「おぉ~!これが俺の知らない未知のテクノロジーで作られたガイアメモリとライディングブレス······!大丈夫、分解しても元に戻して返すから、
(両方だったかぁ、しかも分解すんのかよ······)
「あ、あぁ······。その代わりにと言ってはなんだが、君達の使うフルボトルという物を見せてくれないかい?」
(こっちにも居たよ知識に
未知の技術、知識を目の前にすると目が子供のようキラキラと輝く。未知に対して知識欲に逆らえないという事に関してはこの二人は似た者同士だ。今のフィリップは、まさしく「興味深いね」という目をしているのだ。
「こんな素晴らしい物を分解させてくれるんだ!寧ろそれじゃ割りに合わない!好きなだけ調べてくれ!因みにフルボトルは全部そこにある!」
桐生戦兎はガイアメモリとライディングブレスを見つめたまま、振り向きもせずにフルボトルのある場所を指した。
「ありがとう!」
フィリップは目を輝かせたままその場から歩きだし、そしてフルボトルを手にしてそれを調べ出した。
「なるほど、これがこうなってるから······。つまりこれは······」
「ボトルの中の成分が上手く作用し、そして肉体を強化出来るのか。興味深いね······!」
あぁ、コイツらもう自分の世界に入っちゃってるよ······。凄い集中力だ、周りの音がもう聞こえていないらしい。
「なんかゴメンな龍我、うちの相棒が······」
「それを言うならこっちもだ。大分話がそれちまった······」
「そうだ!アイツらが勝手に研究し出すから普通に忘れてた······。話すよ」
そして俺は龍我に話した。俺が仮面ライダーとなった経緯を、仮面ライダーの居ない世界の事を、俺達が戦っているインベイダーの事を、今までの事を全て。
「なるほどな······。俺バカだから確認させてくれ。お前達の敵はインベイダーって奴らで、ソイツらは仮面ライダーの居ない世界を侵略するから、ソイツらから仮面ライダーの居ない世界を守る為にゲートに変身して戦う。でも最近は調子に乗って俺達仮面ライダーが居る世界にまで侵略しだした。今回はそのターゲットが俺達の世界になった訳で、ソイツらを倒す為にこの世界へやって来た。そう言うことか?」
「あぁ、その認識であってる。しかし凄いなアイツら、俺達がこんなに喋ってたのに一言も聞こえてなかったみたいだぞ?」
「だな······」
すると、ずっと作業に没頭していた戦兎が立ち上がり、多分強化されたのであろうライディングブレスと、サイクロンガイアメモリと、もう一つのガイアメモリを手にし、それを上に掲げた。えっ、ガイアメモリ!?
「完成だ!ライディングブレス完全版、そしてサイクロンガイアメモリの構造を分析し、仮面ライダーゲートの戦闘データを元に作った、最っ新鋭にして最っ強にして最っ高のガイアメモリが!その名も<ゲートガイアメモリ>!凄いでしょ?最高でしょ!?天才でしょ!!」
「ガイアメモリを作ったのかい!?」
さすがに作業に集中していたフィリップもこればかりは驚き、戦兎の持っていたゲートガイアメモリを取り上げて、それをまじまじと全体をくまなく見つめる。
「凄い、ガイアメモリの構造を完全に理解した上で作られている!それだけじゃない、この世界の最高峰のオーバーテクノロジーが組み込まれている!これは、興味深いね······!でも僕には使えないな」
「そう、俺が開発したこのゲートガイアメモリはコイツには使えない。お前専用だ、戸島」
「えっ、俺?」
「そう。お前の戦闘データを解析していくうちに、ガイアメモリを使った戦闘スタイルがあることが分かってな。この俺が、この寛容な心で、この専用ガイアメモリを!作ってやったという訳だ。調べると、サイクロンガイアメモリを使った戦闘では多少の誤差の反応があってな。多分お前がサイクロンガイアメモリに適合していないからだ。でも、このゲートガイアメモリはお前専用にチューニングしてある。今までの誤差は完璧に無くなるし、思い切り暴れられる」
「そうか。ありがとう戦兎!」
「あぁ。上手く使ってくれよ?」
戦兎はガイアメモリの端子を傷付けないように持ち直し、それを俺に手渡す。それを受け取ると、俺のものではない誰かの記憶が頭の中に流れ込んできた。恐らくは目の前に居る戦兎の記憶だろう。
<見返りを期待したらそれは正義とは言わねぇぞ!>
<仮面ライダーは軍事兵器じゃない。人を守るためにある。それだけは忘れるな!>
<僕だって戦争の道具を作るつもりなんて無かった!でもあなたの思惑に気付いた時にはもう遅かった!だから自分に言い聞かせたんです!ライダーシステムはエボルトを倒す為に必要なんだって!その為に多少の犠牲はやむを得ないんだって!>
<ラブアンドピース!>
<勝利の法則は決まった!>
······なるほど、葛城巧としての思いも込められているのか。これは二人のビルドの、ラブアンドピースを願う思いの結晶なのか。ならばこの世界をなんとしてでも救わなきゃいけない。俺は受け取ったゲートガイアメモリを胸に当て、再決心する。二人の、いや、龍我も入れて三人だな。三人の願いを受け止め、ラブアンドピースの理念を胸に刻む。
「このガイアメモリはお前達の願いその物なんだな······。取り返そう、ラブアンドピースを!」
「っ!あぁ!」
「いい感じのところ悪いけど、また来たよ。どうやらインベイダーが僕たちをお呼びのようだ」
「よし、行こうぜ!今度こそあのエボルトモドキをぶっ潰す!」
俺達は秘密基地の外に出て、目の前に扉を出現させ、その中に入った。
「フハハハ!やはり侵略はまず
エボルトインベイダーは、とうに人気もなく、ハーフインベイダー達だけが徘徊し、破壊活動を繰り返すだけの街の中で一人高笑いする。
「クックックッ······!む?やはり来たか、仮面ライダー共······」
破壊され尽くした、ただの瓦礫と化したビルのたてる砂煙の中に扉を出現させ、その中から出て俺達は肩を並べて歩く。
「酷いな······。街がもうこんなに破壊されてる。全く、どこまでお前はエボルトに似てるんだよ······!」
「でももう終わり、俺達がお前の侵略を止めてやる······!」
「「「「変身!」」」」
[World gate keeper!KamenRider Gate!foooo!]
[サイクロン!]
[鋼のムーンサルト!ラビットタンク!Yeah!]
[Waike up berning!Get CROSS-Z Dragon!Yeah!]
「俺達の!」
「勝利の法則は決まった!」
「さぁ、お前の罪を数えろ」
「今の俺は、負ける気がしねぇ!」
「······良かろう、俺直々に貴様らの相手をしてやる。かかってこい······!」
その言葉がトリガーとなり、俺達の戦いは始まる。やはりと言うべきか、エボルトインベイダーは強敵で、四人がかりでも攻めきれない。気配を消してパンチをしても、背後からキックをしても、寸手のところで全て防がれる。どうやってあんなことを······。
「貴様らは、最後に油断して殺気を放っている。これからあなたを殺します、と言わんばかりにな······。良くも悪くも、貴様らは分かりやすいんだよ」
寧ろ俺達より攻勢なエボルトインベイダーは、マスク越しでも分かるほどの余裕を見せながら俺達の攻撃を軽々とかわしていく。それどころかキックする俺俺の右足を右手だけで受け止め、力任せに足首を握り潰そうとする。
「っ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「戸島!」
「よそ見するなよ仮面ライダー」
エボルトインベイダーは俺を地面に引きずったままビルドのふところまで近寄り、一蹴りで近くにある倒壊したビルの壁まで吹き飛ばす。
「ガハァッ······!」
「桐生戦兎!お前······!」
「おい次来るぞ!」
「フンッ!」
エボルトインベイダーは俺を武器のように振り回し、フィリップとクローズを巻き込んで俺ごとビルドの近くまで吹き飛ばす。
「くっ······そっ······!」
「終わりだ、仮面ライダー······!」
絶体絶命とはこの事だろう、まさに大ピンチだ。
(アァコレ、俺モウ死ヌカモ······。悔シイナァ······)
意識が危ない。思考がまとまらない、感情が不安定で仕方がない。なるほど、マスクの中で泣くって、こういうことか······。
(クソッ!立て!立て!!立て僕!!!早く立てよ、まだ行けるだろう!!?僕の相棒が危ないんだよ!!!)
体が言うことを聞かない。いくら僕が脳で命令しても、体が反応しない。ピクリとすら動かない。ビルドとクローズも気絶し、変身が解けてしまっている。鍵も半分気を失い、寝転がっている地面から動けずに居る。僕はもう待つしかないのだろうか?目の前で相棒が死ぬのを。いや、まだだ!僕はまだ意識がはっきりしている、後は体さえ動けばなんとか······とは思っているが、その体が一向に動く気配が無い。クソッ!クソッ!!クソッ!!!
「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
僕がそう叫ぶと、その思いに呼応するように僕の右腕に装着された、銀色だったブランクのライディングブレスに色がつき、そして発光しだした。
「な、なんだ!?その光は······!」
やがて僕はライディングブレスの発するその光に飲まれ、それの眩しさに目をつむって再び目を開くと、変身を解かれた状態で見知らぬ真っ白な空間に立っていた。
「ここは······。君が僕を呼んだのかい?」
「正確には違うな。お前が俺を呼んだって方が正しい」
「僕が君を?」
「あぁ。仲間を守りたい、助けたい、という強い思いが、世界と世界の狭間でさまよっていた俺を呼んだんだ」
「君は何者なんだい?」
「さぁな。知りたきゃ自分で知るといい。お前に新しい力を渡しに来た」
「新しい力を?」
「あぁ。受けとれ、グリスライドキーだ。この力でお前の大切な相棒を守るんだ。ついでと言ってはあれだが、あの自称天才ポンコツ物理学者と筋肉バカを守ってやってくれ、俺の代わりにな」
「そうか、君は······!」
「そろそろおはようの時間だ。早く行け、お前の大切な相棒を守るん為に、心火を燃やしてぶっ潰せ!」
「あぁ。ありがとう、仮面ライダーグリス、猿渡一海······!」
謎の空間内での僕の意識は途切れ、やがて現実へと返った。目を開けると同時にライディングブレスから放たれる光は徐々におさまっていき、一つの形をなす。グリスライドキーだ。グリスライドキーは既に、「心火を燃やせ」と言わんばかりに鍵穴に刺さっていた。僕自身の体も、ライドキーの力か、体を自由に動かせる程に回復していた。僕はその場から立ち上がり、既にライディングブレスに刺さっているグリスライドキーを回す。
「鍵、君の言葉を借りるよ。<グレードアップ>!」
[Cyclone operator!KamenRider Cyclone!Type Grease!]
ロストドライバーと同じ声で変身音声が流れ、仮面ライダーグリスのアーマーに似たものが体に装着される。僕は「仮面ライダーサイクロン タイプグリス」へと変身した。
「心火を燃やしてぶっ潰す、か······。気をつけたまえ。これから、鉄の嵐が吹き荒れる······!」
「フィリッ······プ······」
鍵は僕の名前だけ言うと気絶し、同時に変身が解けた。
「もう大丈夫だ鍵、君は休んでいるといい」
そう言いきって鍵の顔を見ると、気のせいだろうか、鍵の顔が笑っているように見えた。
「この世界に、ラブアンドピースをもたらそう!」
「仮面ライダーァァァァァァァァァッ!!」
エボルトインベイダーは怒り狂い、僕に向かって走り出した。グリスのロボットの力でエボルトインベイダーの攻撃を分析し、それに対応しながら反撃をする。エボルトインベイダーは焦っているのか、分析をせずとも見切れるほどに攻撃が単調になってきた。だがそれに比例して一発の威力も増してきている。しかし、このグリスのアーマーは攻撃を吸収し、それをそのまま相手に返すという性質がある。つまり、エボルトインベイダーの攻撃は全て自分に返っているのだ。
「グゥッ······!」
「痛いか?自分の攻撃は。だが安心しろ、あの三人はお前以上の痛みを心身共に受けてきた!」
僕はエボルトインベイダーを右手で殴り飛ばし、その先にあった瓦礫の山に叩きつけた。
「カハァッ······!」
「終わりにしよう。心火を燃やしてぶっ潰す!」
右腕のライディングブレスに刺さったグリスライドキーを回し、必殺技を発動する。トドメの一撃だ。
[Grease!Maximum Finish!]
鉄の混じった、
「守れた、僕の相棒を······!」
「お前門番としての役目果たしたか?ほとんどフィリップがやったように思うのは気のせいか?」
「うるせぇっ!あのインベイダーが規格外なんだよ!」
「ははっ、悪い悪い。行くのか?」
「あぁ。次の世界が俺達を待っているからな」
「そうか······。気をつけろよ。そうだ、伝言頼まれてもらってもいいか?仮面ライダーグリスによろしく言っといてくれ。それとこれ、お前なら使えるんだろ?」
「ビルドライドキー······!」
「じゃぁ頼んだぜ」
「分かった、グリスには僕から伝えておこう」
「じゃぁなお前ら、次会う時までにはもっと筋肉つけとけよ!」
「なんだそりゃ!またな!」
戦兎と龍我に背を向け、俺達二人は歩き出す。目の前に扉を召喚し、その中へ入り、後ろの二人が俺達を視認出来なくなったところで扉は閉じた。
「よろしくだってさ、仮面ライダーグリス」
フィリップは自身の手のひらに乗ったグリスライドキーを見つめながらそう言った。フィリップは何でもないような顔をしていたが、俺にはグリスライドキーがそれに答えるように鈍く光ったように見えた。
「フィリップ、ありがとうな、俺を守ってくれて」
「君は僕の相棒だ。死なれては困るからね」
「それもそっか!じゃぁ、次の世界に行こうぜ!」
「あぁ!」
俺達は走りだし、ビルドの世界を後にした。
「収穫は無しですか······」
「寧ろあの状況で盗りに行こうと思える君が凄いよ!」