「ようこそ、旧特状課へ」
(あっ、解散したままなのね······)
来て一番にそう思ってしまった俺は悪くないはずだ。だって、いきなり「特状課まで来てくれ」なんて言うもんだから特状課が復活したのかと思っても仕方がないはず。周りを見渡すと、俺が劇中で見た特状課そのまんまで、よく見るといたる所に
「なんかごめんな、こんな埃っぽい所で」
「いや、いいよ別に。わざわざここを選んだってことは、ここにはそれだけ沢山の思い出があったって事だろう?」
「あぁ、あったとも。思い出が沢山出来たさ。仕事をサボって、その度にバディに怒られて、またサボって、ベルトさんと出会って、そして、仮面ライダーになった······。もっとも、今はただの刑事だけどな!」
「いくらなんでも仕事をサボり過ぎだろう」
······言いたかった事をフィリップに取られた。まぁそれは良いとして、俺は刑事にただの刑事となった経緯を聞いた。理由は知っているが、俺が怪しまれないための作戦だ。確認も兼ねて一応聞いておくことにした。
「なぁ、その言い方だと自分も仮面ライダーだった、って言ってるように聞こえるけど······」
すると後ろから白いパーカーの青年が出てきて、ただの刑事となった経緯を説明してくれた。
「元々、進兄さんは仮面ライダードライブっていう仮面ライダーだったんだ。でも、俺達の敵であるロイミュードって奴らを全滅、いや、撲滅させて、進兄さんのさっき言ってたベルトさんが仮面ライダーをここの地下に封印したんだ。市民の平和を守るために戦う正義のヒーロー、今でこそ進兄さんはただの刑事だなんて言ってるけど、俺は今でも進兄さんは仮面ライダーだと思ってる」
······劇中で見ていたから分かってはいるが、本人の口から語られるとやはり彼がどれだけ凄い刑事であるかが伺える。そうだ、彼は今でも仮面ライダーだ。市民の安全を第一に考えることの出来る仮面のヒーローだ。でもなぜだろう、今の彼は「心のエンジン」がかかって無いように見えるのは······。
「······そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は泊進ノ介。元、仮面ライダードライブだ。よろしくな」
「詩島剛!同じく元、仮面ライダーマッハだ」
「お前は現役でマッハだろう?」
「違うぜ進兄さん、俺のはマッハであってマッハじゃない、チェイサーマッハだ!シグナルマッハがベルトさんと一緒に封印されちまったからな、今はこのシグナルチェイサーを使って変身してる。だから俺はマッハであってマッハじゃない!」
「知らねー······。まぁいつもこんな感じだけどよろしくな。お前達は?」
「俺は戸島鍵、仮面ライダーゲートだ。よろしく」
「僕はフィリップ、仮面ライダーサイクロンだ。よろしく」
「鍵とフィリップだな、よろしく」
軽く自己紹介をすませたところで、俺は「ある事」を聞いた。
「なぁ、進ノ介がさっき言ってたベルトさんって······」
「あぁ、そうか。まだベルトさんについて説明してなかったな······。来るか?ベルトさんが居るところに」
(ど、ドライブピットに入れるだとぉぉぉぉぉぉ!?)
俺は狂喜した。心の中で。ドライブと言えば俺が好きな仮面ライダーの中でもベスト5に入るシリーズで、そしてそんなドライブの秘密基地であるドライブピットに入れると言うのだ。狂喜しない訳がない。俺はこの喜びを声に出したい気持ちを抑えつつ、直立したまま腹筋運動を続ける。
「鍵、嬉しいのは分かるがとりあえず落ち着きたまえ」
しかしここでフィリップに落ち着けと注意された。
「ここだ。ここが仮面ライダードライブとして活動していた頃の秘密基地、ドライブピットだ」
「凄っ······」
驚きのあまり、俺の口からはその言葉しか出ない。スイッチを入れても電気がつかない辺り、ドライブピットが今は使用されていないというのが見てとれる。上を見るとロボットアームがいくつもあり、ドライブピットの中心部を見ると、鉄板の丸型の床があった。
「この丸い部分あるだろ?これの下にベルトさんと仮面ライダーがいる」
「この下に······」
丸型の床の中心部に立ち、その場で左足の膝をついて鉄板を見つめる。
「ベルトさんはな、俺の心のエンジンをかけてくれた恩人なんだ。完全に冷めきって、何事にもやる気の起きない俺の······」
「そっか······。なぁ進ノ介、一つ聞いていいか?”今のお前に心のエンジンはかかってるのか”?」
「っ!それは······」
俺がそう言うと進ノ介は遂にうつむき、口をつぐんで沈黙する。
「俺は当時のお前を知っているわけでは無いけど、少なくとも俺には、今のお前は心のエンジンがかかっていないように見える。言いたかったのはそれだけ」
「······」
「進兄さん、俺がこんなこと言うのもあれだけど、確かに進兄さんは刑事として、仮面ライダーとして成長したのかもしれない。でも、心のエンジンがかかっていないっていうのは鍵と同意見かもしれない」
「······インベイダーの反応だ、二人とも行こう。泊進ノ介、君は来るのかい?」
「俺は······、少し考え事をしたい······」
「そうかい······。じゃぁ行こうか二人とも」
「あぁ」
「分かった」
俺達はドライブピットを出て特状課を後にし、フィリップは青白い空間に消え、俺と剛はそれぞれのバイクに跨がってインベイダーが出現した場所へと向かった。
「あのライダー共、また来るな······。奴らは分かるが、あの場にいた刑事の男、アイツはなんだ?記憶を辿ってもそれらしき男は······いや、一人居たな。ロイミュードを全滅させた男か、だとすれば中々手強いな······。しかし、記憶が正しければあの男はもう変身できないはずだ、注視する必要はないか。この世界の侵略が終わるのも時間の問題か······。来たな、仮面ライダー共め」
俺達は既にベルトを巻いた状態で並走する。それぞれ素早くゲートライドキーとシグナルチェイサーを取り出してベルトに装着し、バイクに跨がったまま変身した。
「「変身!」」
[World gate keeper!KamenRider Gate!foooo!]
[シグナルバイク!ライダー!チェイサー!]
俺達はそれぞれ仮面ライダーゲートと仮面ライダーチェイサーマッハに変身し、そのままハートインベイダーに突進攻撃をかますが、それはハートインベイダーになんなくかわされてしまう。バイクのブレーキをかけると、凄い勢いのスピードが出ていたためか、後ろにはわだちがくっきりと残っている。
「くそっ!」
「外したか······!」
すると変身したフィリップとアラタが現れた。
「なんか大変な事になってますね、折角の街並みが台無しだ。僕も手伝います、鍵さん!」
「アインがこの世界の異常を察知し、駆けつけてくれたそうだ」
「アラタお前最高だよ!超助かる!」
「また増えたな······。まぁ、戦力が増えてくれるなら助かるけどね!」
「一人増えただけだ、何も変わらない。行け、しもべ共!」
ハートインベイダーは自分の背後から大量のハーフインベイダーを召喚し、俺達を襲わせる。
「いやぁ、多いな」
「この量がただ多いなですまされる量なのか······。スゲェな鍵って」
「ん~?実は前なんかこれより多い時なんてあったんだぞ?」
「嘆いていても仕方ありません、とりあえず手分けして倒していきましょう」
「よーし、んじゃ俺とアラタでこっち、フィリップと剛はあっち頼む」
「分かった!行こうフィリップ!」
「あぁ」
俺は今、誰も居ないドライブピットの床にどっかりと腰を落とし、後ろに両手をついて、両足をだらんと伸ばした状態で座っている。誰も居ないドライブピットには寂しさだけが残り、発した一声一声がこの広い部屋の壁に当たって自分の耳へと帰ってくる。
「なぁベルトさん、聞こえるか?俺、遂に出会って間もない奴に心のエンジンが止まってるなんて言われちゃったよ。仮面ライダーとして成長できても、根はそのままだな······。ベルトさん、俺不安なんだよ、今の自分がちゃんと刑事をやれてるかどうか、父親をやれてるかどうかがさ······。ベルトさん、今の俺はベルトさんにはどう見えてる?」
俺がそんな風に今は眠っているベルトさんに問いかけると、思いもよらない答えが返ってきた。声は自分のものではない、別人の声だ。ついこの間まで日常的に聞いていた声だ。
「······私には、君は心のエンジンがかかっていないのではなく、一時停止している様に見えるな。いち刑事、いち父親としての当然の悩みだろう。しかし、もしそれが一時停止の原因なのだとしたら、君は少々停止しすぎていたようだ。立ちたまえ進ノ介。そろそろ、進む時だ!」
そう、ベルトさんだ。
「ベルトさん······!あぁ!」
答えて欲しかった人に答えてもらえて俺は心の底から嬉しくなり、かなりの勢いをつけて立ち上がった。
「仲間が待っているんだろう?速くトライドロンに乗って現場へ急行するぞ!」
「あぁ!」
俺はシフトブレスを左腕に巻き付け、ベルトさんを腰に巻き付けてトライドロンの運転席に乗ってエンジンをかけた。
「行くぜベルトさん、久しぶりにひとっ走りつき合えよ!」
「あぁ!」
アクセルペダルを踏み、俺達はドライブピットを後にした。
「クックックッ······!どうした仮面ライダー共?さっきまでの威勢はどうした?」
「クッ······ソッ······!」
単刀直入に言おう。俺達四人は今押されている。フィリップとアラタが「ハーフインベイダー達を抑えとくからハートインベイダーを何とかしてくれ」との事で、俺と剛でハートインベイダーの迎撃に当たっているが、ハートインベイダーの強さと言ったらはかり知れず、こんな状況となってしまった。ハーフインベイダーも徐々に増えてきている。これはまずい。
「鍵!っく······!」
「剛、無理するな!」
「無理でもしないとコイツ倒せないでしょ!」
「二人ともしっかりして下さい!うぁっ!?」
「よそ見をするな怪条アラタ!死んでしまうぞ!」
そう、まさに絶対絶命の大ピンチって奴だ。そんな時だった。仲間のピンチに駆けつけた主役の如く、タイヤが六つ着いた赤い車が現れ、そしてハートインベイダーに突進攻撃をかましたのは。ハートインベイダーも流石にこれは予測が出来なかったらしく、思い切り喰らっている。更にその赤い車の後に続く様に、突然現れた小さい道路の上を走るミニカー達が現れ、ハートインベイダーを攻撃する。
「グゥッ······、一体なんなんだ······!っ!その赤いボディの車、俺の記憶が確かなら······!なぜ、なぜ······!」
しばらく言葉をためてやがて言葉を発し、それと同時に人影が現れる。
「なぜトライドロンが!?そしてそのブレスレットとベルト、ドライブが復活したと言うのか!?」
そう、進ノ介とその腰に巻かれたベルト、ベルトさんだ。遂にあの最強コンビが復活したのだ。
「そーゆー事!行くぜベルトさん!」
「OK!Start your engine!」
進ノ介はドライブドライバーのエンジンをかけ、小さい道路の上を走って自分の元へやって来たミニカー、「シフトスピード」をキャッチしてレバー型に変形させ、それをシフトブレスにセットする。車が加速するような、ブーンという音がなり、そしてセットされたシフトスピードのレバーを起こす。
「変身!」
[Drive!Type Speed!]
やがて進ノ介は様々なアーマーを身にまとい、「仮面ライダードライブ」へと変身した。
「進ノ介!」
「進兄さん!」
「よう、待たせたな。久しぶりのドライブだ、お前達、ひとっ走りつき合えよ!」
「もちろんだ!」
「進兄さんとならどこまでも!」
「さて、そろそろ本気を出そうか。行くよ怪条アラタ」
「はい!」
進ノ介が来たことで俺達の中で士気が上がる。俺はWライドキーでタイプWへ、フィリップはライディングブレスを使いグリスライドキーでタイプグリスへ、アラタはギャレンライドキーでタイプギャレンへ変身した。剛もドライバーのシグナルチェイサーを引き抜き、「シフトライドクロッサー」に入れ換える。
[シグナルバイク!シフトカー!]
「レッツ、変身!」
[ライダー!マッハ!チェイサー!]
チェイサーマッハの全身が青くなり、目のバイザーは繋がっていた形状から分離し、オレンジ色に変化し、体に入っていた赤い二本の縦線の色は紫と赤に変化し、「仮面ライダーマッハチェイサー」となった。
「追跡!撲滅!いずれもマッハ!仮面ライダ~、マッハチェイサー!!」
「チィッ······!行け我がしもべ達よ!仮面ライダー共を殲滅しろ!」
俺達はこちらに向かってくるハーフインベイダーを迎撃する。俺は右腰からゲートガイアメモリを取りだし、それを起動する。
[ゲート!]
起動と共に空中に召喚されたゲートガイアソードを左手に持つ。右手にガンブレードキーを持ち、もはやお馴染みとなった二刀流の戦闘スタイルに切り換える。ガンブレードキーにサイクロンの力を、ゲートガイアソードにジョーカーの力をまとってハーフインベイダー達を一掃する。ある程度数が減ったところでゲートガイアソードの持ち手部分に着いたホルダー部分にゲートガイアメモリを挿入し、マキシマムドライブを発動する。
[ゲート!マキシマムドライブ!]
二本の剣を交差させ、しばらく溜めの動作を行ってから二本同時にハーフインベイダー達を一切りする。俺の視界に映るハーフインベイダーは全滅した。フィリップとアラタもそれぞれ必殺技を発動する。
[Grease!Muximum Finish!]
[Ine!Garren!Burning World Finish!]
フィリップが全てのハーフインベイダーを黒い嵐で拘束し、アラタがそれら全てをギャレンラウザーで撃ち抜く。フィリップが嵐を解除し、ハーフインベイダー達が地面に落下したところで大爆発が起こり、ハーフインベイダー達は全滅する。そして剛。
[ヒッサツ!フルスロットル!]
ドライバーのホルダー部分の上に着いたボタンを力強く何度も押し、ハーフインベイダーの群れのほぼ真上まで飛翔し、ライダーキックの体勢をとる。右足から白と紫の二色のエネルギーを大放出し、そのままハーフインベイダー達に向かって滑空していく。
[マッハ!チェイサー!]
ハーフインベイダー達はマッハチェイサーの右足から発せられるエネルギーに潰されるようにして倒され、そして消滅する。そして今回の主役である進ノ介。
[HISSATSU!Full Throttle!Speed!]
進ノ介が相手にしていたインベイダー、ハーフインベイダーの周りをトライドロンが目に見えない程のスピードで何周も走る。もはやトライドロンはただの赤い帯となり、進ノ介はトライドロンのフレームめがけてライダーキックをする。やがてそのライダーキックは進化し、進ノ介は当たっては弾かれ、当たっては弾かれを繰り返すピンボール玉の如く何度もハートインベイダーに喰らわせる。そう、「スピードロップ」だ。そして最後の一撃、ハートインベイダーの周りを走り回っていたトライドロンの赤い帯は消え、正真正銘のライダーキックだ。しかしハートインベイダーもやられまいと、腕をクロスさせて防御の体勢をとる。進ノ介のライダーキックはクロスした腕で止められるが、シフトブレスのレバーを三回起こしてシフトアップする。
[Speed!Speed!Speed!]
しかし流石は記憶と想像からハートロイミュードの力をコピーしただけはあるということか、それでも持ちこたえ、ハートインベイダーは進ノ介のライダーキックを食い止める。
「この程度で······!」
「なら更にシフトアップだ!」
「進ノ介、これ以上この加速状態でシフトアップするのは危険だ!」
「大丈夫だよベルトさん!それに、こいつのこの姿を見てると、大切な友人を馬鹿にされているみたいで腹がたつんだ!」
「······分かった、君にその覚悟があるなら私もそれに付き合おう!更にシフトアップだ!」
何回もレバーを起こしてシフトアップし、徐々にハートインベイダーのガードを崩していき、完全に崩してハートインベイダーを破った。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ぐぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ハートインベイダーは爆散し、その世界を終わらせた。過度なシフトアップをしたためか、進ノ介は変身が強制解除され、その場で地面に膝をついた。
「進兄さん!」
「おい大丈夫か進ノ介!」
「いや、問題ない。しかし、久しぶりのドライブの乗り心地、やっぱり最高だ······!」
「そうか。Nice Driveだ進ノ介!そうだ君、確か鍵と言う名前だったな?」
「そうですけど、なんですか?」
「君に渡したい物がある。受け取りたまえ」
「ほい、これ」
スーツのズボンの右ポケットに突っ込んだ進ノ介の手の中から出てきたもの、それはライドキーだった。
「お前達の呼び方にならってよぶならドライブライドキーってところだな」
「あ、それ!俺も似たようなものあるよ!」
剛もポケットに手を突っ込み、あるものを取り出した。
「これもライドキーって奴っしょ?マッハライドキーとチェイサーライドキーだ!」
俺達はそれぞれライドキーを受け取り、それを手に取る。
「ドライブライドキー、か」
「じゃぁな進ノ介、剛」
「あぁ、気をつけろよ」
「頑張れよパパさん刑事ライダー!」
「よせって」
「ではまたどこかの世界で」
「おう!じゃぁまたな!」
アラタとフィリップは異空間を開いてその中へ入り、そしてその中へ消えた。俺もマシンゲーターに跨がり、ゲートライドキーでエンジンをかけ、目の前に扉を開いてその中へ消えた。
「仮面ライダーゲートか······。また一人、俺の背中を後押ししてくれた恩人が増えちまったな」
「なら、その分仕事で答えなければならないな?」
「そうだぜ進兄さん!」
「あぁ!今の俺は、脳細胞がトップギアなんだ!」