シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也

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そういえば、この話でようやくアインズ様がナザリックを出ます。
基本玉座で話を聞いていただけという。

…なんて動きのないSSなんだ…


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「次に連中が別の相手にアイテムを使用する。ただそれだけで、シャルティア嬢の精神支配は解かれると思われます」

 

 

 

「その条件が、一番緩そうだな」

 

 パンドラズ・アクターの推測は、アインズにも正しいと感じられた。

「外で動いてもらう守護者達用に世界級アイテムを持ち出したい。

 当初はあくまでも防御用の保険であったが、パンドラズ・アクターの推測から考えると、むしろ食いついてもらうほうがありがたいな」

「階層守護者の皆様方をエサにして、連中を釣り上げられようというお考えですね」

「ああ、シャルティアの話では、連中の隊長がプレアデスより強い程度ということだから、守護者達と接触したならば、使うか、逃げるか、の二択だろう」

「では、使用された場合に、精神支配されかかったが、なんとか耐えられた…というようなフリをして頂いたら、もう一度使用してもらえるかもしれませんね」

「なるほど、対象人数が二人だった場合に、それでクリアできるな」

 正直言って、パンドラズ・アクターとのアイテム談話は楽しい。かつては好きで作ったNPCなのだ。決して嫌いになったわけではない。

 

「Wie du willst(仰せの通りに)」

 

 フッと冷める。

 沈静化もする。

 

「そのドイツ語、ホント、やめような」

 

 

 

 その後、世界級アイテムのいくつかを持ち出し、パンドラズ・アクターを連れて玉座の間へと舞い戻る。

 さっき解散したばかりで申し訳ないが、再び全守護者を招集し、パンドラズ・アクターの紹介及び、外へ出る守護者に世界級アイテムを貸し出す。

 

 セバスにちょっと人間の女を拾ったか聞いてみたい好奇心に駆られたが、自重してぐっと我慢する。

 

 後は、細々としたことがあるだけで、コキュートスのリザードマンとのイベントまでは大きなものはない状態だ。

 

 

 

 …その後、マーレ渾身の戦場跡を見て、うわーっと思いつつも、頑張りました褒めてくださいと子犬のように見上げてくるマーレの頭を撫でてあげたり。

 

 ミスリル級冒険者「クラルグラ」が全滅しつつも、吸血鬼ホニョペニョコを討伐した功績により、モモンとナーベのチーム「漆黒」がアダマンタイト級へと二階級昇格を果たしたり。

 

 ああ、アダマンタイト級になって、入る金が増えるようになったと思ったら、出る金の方がもっと増えている気がするんだよなあ。

 

 大体、定宿に「黄金の輝き亭」は無駄なんだよなあ。食べないし、眠らないし、そもそも、居もしない。

 

 

 

「…モモンさー…ん」

 

 ナーベラルの声に、思考の海から顔を上げる。

 

 ドドドドドド……!!

 

 砂煙を立てて、向こうから一匹のトカゲが姿を現す。

(こいつを倒したところで、そこまでの報酬じゃなかったよなあ)

 エ・ランテルで受けられる、一番高難度の依頼であり、一番高額な報酬が得られるものではあったが、消えていく経費を考えると、雀の涙程度だよな…と思いながら、ノソリと動き出す。

 そして、トカゲと目があった。

 

「悪いが、普通に無効化した」

 

 その目にやっと警戒の光が混じったことを感じたが、こちらは警戒する部分が見当たらないので、のんびりとグレートソードを抜き放って…

 

 …ザンっ!

 

「…冒険者っていうのも、つまらん仕事だな」

 基本的にはモンスター専門の傭兵で、そのモンスターの中でも強いと言われているのが、この程度の雑魚。

「名前負けにも程がある。夢のない商売だ」

 

 

 

 ガランガラン…

 

 いつものように、冒険者組合の扉を開く。

 一斉に向けられる視線と、ザワザワと聞こえ出す喧騒の中、特に気にしてませんよという体でカウンターへと向かう。まあ、最初はいい気分にもなったが、流石に毎回だと慣れてきたというのが正しいか。

「請け負っていた仕事は終わらせてきた。次の仕事をしたいから、何か見繕ってくれ」

 仕事だ。とにかく仕事をしないと。

 まとまった外貨を得られるのは自分だけしかいないという思いが、アインズを一心不乱の仕事魔にしていた。

「あ、そのモモン様。申し訳ありません。いま、モモン様にご依頼できるほどの仕事は入っておりません。悪しからずご容赦下さい」

 立ち上がり、受付嬢が深々と頭を下げる。

「そう…」

 そこに<伝言>が入る。

 

「…そうか。それはちょうど良かった。急用を思い出したので、宿屋に帰る。私に至急の用事があれば宿屋まで来てくれ。場所はどこか知っているな?」

 

 仕事を請けられなかったのは残念だが、ようやく待ちに待っていたイベントの実施だ。アインズのテンションも知らずに上がる。

 

 

 

「ガルガンチュアに起動を命じろ。ヴィクティムも呼び出せ。コキュートスが戻り次第、折角だ、全階層守護者で行くとしよう」




書籍版2巻の最後からスタートしたこの作品
この10話で3巻が終わりました。

早いのか、遅いのか…

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