シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる 作:須達龍也
なんとか完結までこぎつけたいと思います。
「これ、もらってもいいかしら?」
それは、見た目はただの小さな箱だった。
「は…はい。別に構いませんが…」
まだ何かあるんじゃないのかという、警戒する猫のようなアルシェのまなざしに少し笑ってしまう。
「そ、ありがと」
この後は、皇帝のところに文句を言いに行って、そして…建国となる。
そこから先は、わたしのまるで知らない話になっていくのだろう。
「…そろそろ、かしらね」
「どうしました?」
アルシェからもらった箱をアイテムストレージに入れると、答える。
「んーん、なんでも。さっさと戻るわよ」
「うわぁああぁあぁ!」
「なんで急に、悪魔が!」
眼下の光景は、まさに阿鼻叫喚というものだろう。
「我らは、ヤルダバオト様の親衛隊なり」
「ここの人間共を、祭壇への供物としようぞ」
デミウルゴス様よりお借りした悪魔達が…といっても、レベル六十手前が二体ばかりなんですが…法国の首都の中心部で、大暴れしている。
「これで”傾城傾国”を使って頂けたら楽なんですが、そこまでうまくはいかないでしょうね。それにしても、これで周辺国最強国家とは…もろいものですねえ」
「そうは思いませんか? お嬢さん」
「あらら、気づいてたか」
私の呼びかけに、ひょいと屋根の上に上ってきたお嬢さんが一人。印象は白と黒の小柄な少女。まあ巨大な鎌を軽々と背負っていることからも、見た目通りの少女ではないことは間違いないでしょう。
「それは私のセリフでしょうね。気づかれるとは思ってませんでしたが」
「イジャニーヤ…噂に聞いてた頭領ってのは女の子だって聞いてたけど…そんなレベルじゃあないよね?」
弐式炎雷様の姿を取っていた私に対して、怯むでもなく侮るでもなく、少女は自然体で笑った。
「まあ正直なところは、下の様子が見えやすいところを探していた時に、なんとなく偶然見つけただけなんだけどね」
「では、私の相手ではなく、早く下に行った方がいいんじゃないですか」
「冗談でしょ。下の相手はそろそろ来る漆黒聖典の他のメンツでなんとかなるけど、あなたの相手は私にしかできないでしょ?」
そう言うと、持っていた大鎌を構える。
「さて、相手になりますかな?」
「そうね、敗北を教えてくれるというなら、それは嬉しいわね」
「はっ!」
「……」
繰り出した戦鎌の一撃は、軽く傾げられたように躱される。
「ちっ…」
強いのは強い。そこは予想通り。…でも、あまりに噛み合わない。
「いいのかしら? 下の方はそろそろ決着が着きそうだけど」
下で暴れていた悪魔達もそれなりの強さだったようだが、隊長を含めた五人の漆黒聖典が完全に押していた。
「ですな」
戦況はこっちが完全に有利になっているというのに、焦る様子はまるでなかった。
「あなたが助けに行かないと、やられちゃうんじゃないの?」
「でしょうな」
のれんに腕押しとでもいうのか、こちらの攻撃にも、口撃の方にも、反応が薄い。
はっきり言ってしまえば、久方ぶりの…本当に久方ぶりの強者との戦闘だというのに、まるで楽しめない。
「そう言えば、”ケイ・セケ・コゥク”のことを口走ってたわね。ひょっとして例の吸血鬼とも知り合いなのかしら?」
「…どうでしょうかな」
「あなたに、吸血鬼、ヤルダバオト、それにモモンだったっけ? さすがに急に強者が出てきすぎでしょ」
攻撃の回転を上げていく。向こうが回避に全比重を置いているのだから、こちらも防御の比重を落として攻撃へと全振りすべきだ。
相手がそれを感じて攻撃に転じるならば、そこをこそ突く。
こちらの攻撃にあわせるかのように、向こうが前に出てくる。
…釣れた!
「はあああああぁぁぁ!!」
必中必殺の念を込めて、いざ”必殺技”を放つ。
「でりゃああぁぁぁ!!!」
見た感じはただ思いっきり振りかぶってから、思いっきり振り下ろしているようにしか見えないだろうけど…これは”必殺技”だから、必ず当たる。
必ず死ぬかはわからないけど…まあ、これまでの相手は必ず死んできたけどね。
「ぐっ…」
戦鎌が眼前のイジャニーヤを真っ二つに切り裂いた。
えっ? 一撃!?
さすがにそれは、紙装甲にも程があるだろう。
ボンッ!
軽い爆発音がしたかと思ったら、真っ二つに切られた丸太が転がった。ご丁寧にイジャニーヤの衣装を着せられていた。
…では、失礼しますよ、お嬢さん…
その言葉のみを残して、影も形も残さずにイジャニーヤは消え去っていた。
「…逃げられた…か」
番外席次”絶死絶命”さんのいろんなことは、ねつ造でございます。
弐式炎雷さんの戦闘スタイルも、ねつ造でございます。
この話で初めて書いた戦闘シーンが、よくわからない名前だけ知っているキャラ同士という…
はい、ねつ造でございます。