シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也

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推敲も大事だけど、勢いって、もっと大事だと思うんだ。

日刊、継続! 頑張った、俺!!



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「はい。ナザリックへ侵入者がおりました」

 

 

 

「は?」

 

 アインズは一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「どういうことだ?」

 今度はシャルティアの方が、意味が分からなかったようで、こてんと首をかしげた。

 そのシャルティアの様子に、イラッとする。…いや、ついカッとなる。

 

 

「誇り高きこのナザリック地下大墳墓への侵入を許し、どうしてそんなヘラヘラとしているんだと聞いているんだ!!」

 

 

 怒りと共に言葉を発し、そしていつものように沈静化する。ただ、ぐすぐすと燻る怒りの炎は消えはしない。

「あ、いえ、ちが、…その、確か、作戦の一環で…」

 アインズの怒りに触れ、シャルティアが涙目で言い訳を始める。

「誰の作戦だ?」

「え、えっと、アインズ様? …いや、デミウルゴス?」

 そのシャルティアの様子…適当に言い訳をしているように見える…が、アインズを更に苛立たせる。

 

「…シャルティア、その作戦の意図…目的はなんですか?」

 

 アインズが再び怒りを爆発させる前に、デミウルゴスがそっと助け舟を出した。

 そのデミウルゴスの意図を感じ、アインズも怒りを静める。

「…確か、帝国へのアプローチの一環だったはず…です」

「なぜ、帝国へアプローチする必要があるのですか?」

「…どこかの国に所属しようという話になって、それで王国と帝国の両方にアプローチしたはず…です」

「なぜ、どこかの国に所属しようという話になったのですか?」

「…どこかの国に所属していたら、何かの時にその国のせいにできる…とか、あと、情報が集めやすいということだったはず…です」

 

「なるほど」

 

 デミウルゴスはポンポンと質問を重ねることで、シャルティアに下手な言い訳をする間を与えなかった。そしてそれは、下手な言い訳をしてアインズの怒りを買わないようにする優しさでもあった。

 

「なんで、帝国へのアプローチが、ナザリックへの侵入者に繋がるんだ?」

 

 燻る怒りを抑えつつも、納得できないという色が残った質問をする。

 それに対し、シャルティアもビクッとはしながらも、上目遣いで答える。

「帝国からの侵入者があったことの詫びとして、皇帝を呼び寄せる目的があったと聞いてます。確かに…侵入者が来た後、皇帝も来ました」

 

「ふん、なるほど…な」

 

 理解はできた。だが、納得はできない。

 少なくとも、その作戦の立案は自分ではないはずだ。アルベドはいないという話だから、デミウルゴスの立案か?…腹立たしい作戦だが、じゃあ代案はと言われると厳しいな、くそっ!…理解はしたのに、アインズの怒りはくすぶったまま、消えない。

 

「…で、侵入者はもちろん全員始末したんだろうな?」

 

 質問というよりも確認。

 そこに色濃く見えるアインズの不機嫌に、シャルティアは身を縮こませる。

 もちろんです…と答えてしまいたい。ただ、アインズへの忠誠心ゆえに、シャルティアは嘘をつけなかった。

 

「…いえ、無理矢理連れて来られていた奴隷達と…あと、一人だけ、生かしたまま捕らえました」

 

「ほう…」

 

 室温が下がった気がした。

 

「なぜ、そいつは殺さなかった?」

「わかりません。アインズ様からの命令でした」

「…なぜだ?」

「わかりません。ただの戯れなのかもしれません」

 じっとこちらを見つめるシャルティアの視線に嘘はなく、アインズの怒りが徐々に収まり、代わりに疑問が生じる。

 

「私の命令だったことはわかった。ではなぜ殺さなかったのか、シャルティアはどう考えた?」

 

 その質問からは怒りや不機嫌といった色が見えなかった。故に少しホッとしながら、シャルティアは考える。

 

「もしかしたら、あの娘に何らかの利用価値を認めたのかもしれません」

 

 アルシェの姿を思い浮かべながら、シャルティアが答える。

「娘…若い女だったのか」

「はい。没落貴族の娘だったと聞いております」

「ふむ、貴族の娘か。その利用価値は、なんだと考える?」

 そう問いかけるアインズには、利用価値が思い浮かばない。

 

「えっと…そう、確か、ナザリックに貴族に対する知識を持つものが少ないから、その貴族としての知識や振る舞い、あとは技能といったところに価値があるのではないでしょうか?」

 

「ほほう」

 言われてみれば、確かにそうだと思った。

 貴族としての知識や振る舞いに技能、ナザリックには足りないと言われれば、確かにそうだ。少なくとも、間違いなくアインズにはない。

 

「そうかしら、そういった一通りのものは、私が身に着けているから、不要だと思うけれど」

 

 そのアルベドの言葉に、また再びなるほどと思った。

 アインズにはないが、アルベドにはあるだろう。そのように作成されたわけだし。

 それに、あちらのアインズがその貴族の娘に価値を見出したことにも、改めて理解できた。あちらにはアルベドがいないのだから、頼れる者がいないということだ。

 

「ふっ」

 

 そこまで考えて、あちらの自分をえらく高く評価している自分に笑ってしまう。…そこで、はてと考える。

 あちらの自分は、今の自分とは違うのだろうかと。

 あちらの世界とこちらの世界、似たところもあるが、異なるところもある。自分という存在は、どちらになるのだろうか。

 鈴木悟である自分は、必死で取り繕って、至高なる絶対の支配者、アインズ・ウール・ゴウンを演じているが、あちらのアインズはどうなのだろうか?

 

 

 ひょっとして、素で、完全完璧な存在であるかもしれない。

 

 

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。少なくとも、こちらの自分には到底判断のつかないことだった。

 

(向こうのアインズ・ウール・ゴウンが必要であると認めた存在、簡単に不要だと判断するのは駄目だな)

 

 下手したら、後で大いに困ることになるかもしれない。おお、怖い怖い。

「それで、その娘には、他に特徴はないのか?」

 残す方向へ判断をシフトすると、どんな娘なのかが気になってくる。

「えっと、確か、本人に聞いた話だと…うーんと、そう、確か異能(タレント)を持っていたはずです」

「ほう、ンフィーレアのようにか」

 アインズのレアコレクター魂が、更にその娘を残す方向へとシフトさせる。

「何でも、見るだけで相手の使える魔法の位階がわかると言っておりんした」

「ふむ」

 使えるか使えないか、判断の別れるタレントだった。

「あとは何かないか?」

 アインズとしては、もう一押し欲しいところだった。

「…んーと、そういえば、前に、なんでそんな依頼を受けたのか聞いたことがありんして、なんでも、借金を返すためだとか、妹がいるとか、…ああ、そうそう、妹は確かにいんした。確か双子でありんした」

「ふむ、家族の為か」

 正直言って、必要であるという理由の後一押しには少し弱い。

 ただ、そういった理由であったなら、殺さなくてもいいかなという気持ちが芽生えて来て、殺すこともないか…となった。

 だが、こちらとあちらでは色々と違うからな、機会があれば理由を聞いておくか…と、ぼんやりとそう思った。

 

「それで、侵入者の後には帝国の皇帝が来たんだったな、どうなった?」

 

 

 

「確か、帝国の辺境侯…とか言うのに、アインズ様がおなりになりました」




アルシェちゃん生存ルート確保!

アインズ様のお怒りがすごくて、途中駄目かと思ったw

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