BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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これからも読者の皆様に楽しんでいただけるよう、頑張っていきたいと思います。

それでは、本編をどうぞ


第106話 先手必勝

「それにしても、まさか一樹があんなことを言ってくるなんてな」

「本当に、びっくりしたよ」

 

翌日、学園に向かっている道中、いつも一緒に来る日菜さんは『部室にるんっ♪てきそうなものがあったから先に行くね!』というメッセージをよこしてきたので、珍しく幼馴染メンバーでの登校となった。

そんな時に話題になったのが、先日皆に話したチケットの手売りのことだった。

結論を言えば、みんなも快く手伝ってくれることになった。

これには感謝をしてもしきれない。

だが、皆にはとても驚かれてしまった。

というのも

 

「あの一樹が、こういうことをやるなんて……信じられない」

 

と啓介が言っていた内容が理由だけど。

 

「それ、どういう意味?」

「だって、絶対零度な一樹が、不確かな根拠の方法を手伝うなんて信じられなかったからさ」

「啓介、言いすぎだ」

 

啓介の言葉に、目を細めて注意する田中君だけど、否定はしなかった。

 

(なんとなく、みんなにどういう風に見られてるのかが分かってきたような気がするよ……わかりたくなかったけど)

 

「で、実際のところはどうなんだ?」

「実は自分でもよくわかってないんだ」

 

あれからどうして自分が、このようなことを手伝うと言ったのかと考えてはいたが、その答えが出てくることはなかった。

 

「でも」

「でも?」

 

続きを促してくる森本さんの言葉に後押しをされるように、僕は今一つだけある理由らしきものを口にする。

 

「丸山さんを見てると、どうも手を貸したくなるんだよね」

「……確かに、言えるな」

 

もしかしたら、それは丸山さんの力なのかもしれない。

 

「それに、どうあがいてもこちらへのダメージは残るんだし、Pastel*Palettesだけでもうまくいくようにしたって罰は当たらないと思うんだよね」

「あの一樹にそんな風に思わせるとは………なんだか、俺は丸山がものすごい人に見えたぞ」

「同じところでミスしっぱなしだけどな」

 

田中君の言うとおり、丸山さんはひょっとするとすごいところにまで上り詰めることができるかもしれない。

啓介の言う問題が玉に瑕ではあるが。

 

「だから、本人の前でそういうことを言うのやめてほしいんだけど。地味に傷つくから」

「「「「あははははっ」」」」

 

僕の懇願に、みんなが笑う。

それもまた、いつもの光景だった。

 

「そういえば、まだ通り魔事件の犯人捕まってねえみたいだな」

「あー、あれか」

 

ひとしきり笑い終えたところで、話題を変えるように話す田中君の言葉に、僕は相槌を打ちながらその事件のことを思い出した。

ここ1,2か月ほど前から夕方から夜にかけて学生が暴行を受ける事件が頻発していた。

犯人はいずれも黒のパーカーにマスクとサングラスを着用して顔を隠したうえで、学生を殴るけるの暴行を加えている。

まだ犠牲者が出ていないのが幸いだが、最近はどんどんと暴行がエスカレートし始めているらしい。

 

「そうね。私たちも仕事から帰りが遅くなることだってあるし……防犯ブザーを携帯しておいたほうがいいかもしれないわね」

「後は、複数人で帰るようにするとかかな」

 

被害にあった人物は、いずれも一人のところを襲われているので、遅くなる人は二人で一組になって帰るようにというのは、この間のHRで担任の先生から言われている。

 

(噂だと連続通り魔事件だとか言われてるけど……僕たちに被害が出ないことを祈るばかりだ)

 

こういう時、犯人を捕まえる……といったことをすればいいのではないかと思うかもしれないが、何の力もない僕たちが動いたところで、結果などたかが知れている。

それならば、自分たちが被害にあわないようにすることに全力を注ぐほうが、何倍もましだ。

とりあえず僕は、犯人が早く捕まることを祈りながら、学園に向かうのであった。

……のちにこの事件が僕たちと大きく関わってくることになるとも知らずに。

 

 

 

 

 

学園自体はいつものように平和だ。

ただ、違うのは

 

「ほら見て見て……クスクス」

「クスクスクス」

 

クラスの一部学生たちが僕(というよりは僕の隣の席の人物だけど)に不快な笑い声を上げながら見てくることくらいだろう。

とはいえ、最初のころはそれだけだったのでそんなに気にも留めていなかった。

だが、

 

「彼女が、”あの”ニュースになったパステル何とかのメンバーなんですって」

「人をだますなんて、人として恥ずかしくないのかしらね~」

「ほんっと、同じ空気吸ってるだけで吐き気するんだけど。試験で満点とか、どうせカンニングでもしてんでしょ」

 

(……)

 

振り返って顔を見るのが嫌だった僕は、スマホのカメラを動画モードにして、インカメラに切り替えてから、一番後ろにいるであろう学生のほうを映し出す。

そこには複数の学生たちがたむろしていたが、その中心で女王のごとく立っている、細目で橙色のロン毛の女子学生と、その横にいる鳥牧野青髪の女子学生の姿があった。

 

(にしても、少しひどくないか?)

 

「一君、顔怖いよ?」

 

一言暴言を吐いている女子学生たちに行ってやろうかと思っている僕に、暴言を吐かれている張本人である日菜さんが、心配そうな表情で声をかけてきた。

 

「してるかな? 全く自覚がないんだけど」

「してるよ。こう、”ぐぬぬー”みたいな感じだよ」

 

日菜さんが僕の表情の真似をしてくる。

どうやら、気づかないうちになっていたようだ。

 

「日菜さんは、なんとも思わないわけ。あの暴言」

「まあね。カンニングとかは違うけど、それ以外はほんとだし」

 

そういって”ニヒヒ”と笑みを浮かべる日菜さんの表情は、見ていてとても心苦しくなる。

それよりも一番困るのが、こちらに何かを言いたげな表情を浮かべながら見てくる今井さんだったりもする。

 

(今井さんから『ちゃんとフォローしなよ』っていう目で見てくるし)

 

「それならいいんだけど。ただ一つだけいい言葉を送っておくよ」

 

僕に今井さんクラスのフォロー力を求められても困るんだが、まあやってみるかと思い僕は日菜さんにその言葉を告げた。

 

「『言いたい奴には言わせておけ』下手に反論すればああいうのは調子に乗るから無視するに限るよ」

「一君……ありがと」

 

そういってほほ笑む日菜さんの表情は、少し前よりは幾分か気が楽になっているようにも思えた。

 

(しかし、こいつらのこれはエスカレートしそうだな)

 

日菜さんにはああ言ったが、こういうのはいずれエスカレートしていくのが世の常というものだ。

今はまだ暴言で済んでいるが、実力行使になるのも時間の問題だろう。

 

(であるならば……早々に動くほうがよさそうだな)

 

パスパレのため、そして親友のため、僕は行動に移すことに決めた。

何事も、先手必勝だ。

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