BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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お待たせしました、第128話です。
今回でライブは終わります。


……イベントを走りながら執筆するのは、いろいろとハードだなと思う今日この頃です(汗)


第128話 そしてライブの幕は下りる

休憩中の出来事の後、予定通りに再開されたライブは順調に進んでいき、いよいよ最後の曲となっていた。

 

「それでは、これがラストの曲になります」

 

一樹の言葉に終わりを惜しむ声が上がる。

それは、開演前の時には予想もつかなかった光景だった。

 

(すごかったな、特にカオスティック……だっけ。あれは)

 

第2幕で行われた、セオリーを無視した演奏の数々は、リサ達の脳裏にはっきりと刻み付けられるほどの衝撃を与えるのには十分だった。

ボーカルがいないのは当たり前で、BPMが400を超える楽曲、テンポが速まったり遅くなったりする楽曲、オーケストラ風の楽曲などあげればきりがないほどのボリュームと勢いで駆け抜けていった。

 

「それでは聞いてください――――」

 

一樹のMCが終わるのと同時に、演奏が始まった。

 

(やっぱりすごいな)

 

聡志の正確なテンポで力強いドラムと、目立たないようで全員の演奏を支援するベースの音、そして彼らの曲に彩をつける啓介のキーボード、さらに一樹の独特なギターのスパイスの音に、明美の力強い歌声が命を吹き込んでいるのだ。

そこからは流れるようにあっという間に曲は終わりを迎えていた。

 

「ありがとうございましたっ」

 

演奏を終えたということは、このライブの幕が下りるということでもある。

 

(なんだかあっという間だったな)

 

リサは、その日のライブを振り返る。

彼女にとって、その日の一樹たちの演奏はどれもが驚きで、刺激的なものだった。

それは彼女だけではなく、その場にいた紗夜たちにも言えることだ。

 

「アンコール! アンコール!」

 

(な、何!?)

 

そんな時、終わるのを惜しむ観客達が、アンコールを求める声を上げ始める。

最初は小さかった声が、だんだんと大きくなり、その声がは会場中にいる観客たち全員が上げ始めるものとなった。

 

(ここまでは予想通り)

 

そして、一樹はそうなるであろうことを予想していたので、この状況はまさしく彼の思い通りの展開だった。

一樹は明美と頷き合う。

 

「皆―、アンコールありがとー!」

 

明美の明るい声に、観客たちはざわめく。

 

「アンコールにお応えして、もう一曲やっちゃうよー!」

 

明美のその言葉に、会場中に歓声と拍手の音が響き渡る。

 

「アンコールは、久々のカバー曲!」

 

明美の言葉に、観客たちは”おぉ”とざわつく。

 

「へぇ、カバー楽曲も演るんだ」

 

初めて来た者たちが思ったであろうことを代弁するように、リサがつぶやく。

 

「そうなんだよ! しかもね、噂だとそのバンドの人が本当にここで演奏しているかのような感じなんだってっ」

「へー」

 

前もって調べていたのであろう、彼らの演奏について若干興奮気味に解説するあこに、リサは相槌を打ちながら、どんな楽曲なのかと明美のMCに耳を傾ける。

 

「皆は、Roseliaっていうバンド知ってるー?」

 

(あー、Roseliaね。……って)

 

「あたし達のバンドじゃん!?」

 

明美の口から出たバンド名に、一瞬聞き流しかけたリサは自分たちのバンドであることを知って驚きの声を上げる。

 

「今流行り始め……てるのかはわからないけど、ガールズバンドなんだけど、プロ顔負けの演奏をして色々とすごいバンドなんだよね」

「な、なんだか恥ずかしい……ですね」

 

明美のその言葉に、横の席に座っている燐子が恥ずかしげに頬を染めるのも無理はない。

雑誌などで何度か取り上げられたことはあれど、ほかのバンドの……しかもその場で言われるのとはわけが違うのだ。

 

「今回は、そんなバンドのデビュー曲。『BLACK SHOUT』を最後に弾かせてもらうね。皆、最後まで聴いていってねー!」

 

(聞いてない、聞いてないよっ)

 

サプライズのごとく告げられたその言葉に、リサは心の中でツッコむ。

それは他のメンバーも例外ではなく、紗夜は驚きに目を見開かせ、日菜はこれから始まる演奏に目を輝かせ、あこは驚きと自分たちの曲を演奏されることへの喜びで玉の中が混乱し、燐子は驚きのあまり固まっていた。

唯一違っていたのは、一樹によって事前に知らされていた友希那だけだった。

 

(……お手並み拝見……ね)

 

友希那は、これから始まる演奏を聞き洩らさまいと集中していた。

そして観客たちが静かになった時、キーボードの音から演奏が始まった。

 

(ここにギターのフレーズはない……アレンジね)

 

キーボードの音と共に一樹のギターの音が合わさるのを聞いた紗夜は、すぐにそれがアレンジによるものだと理解する。

この曲では明美のパートはボーカルになる。

 

「~♪」

 

(私以外の人が歌うとこうなるのね。でも、悪くないわ)

 

明美の歌声に、友希那は冷静に心の中で評価をしている。

そんな中、前奏の終わりの部分で、一気に音が膨れ上がる。

 

「うわっ!?」

 

その勢いに、思わずリサが声を上げるが、そんなことはおかまいなしとばかりに曲は進んでいき曲は間奏に入る。

 

(やっぱりすごいな~。ベースのリズムも安定してるし)

 

間奏でのベースの音の安定さに、リサは舌を巻くしかなかった。

 

(一樹さんのパート、私以上に正確で、圧倒的ね……私なんかが足元にも及ばないくらいに)

 

そして紗夜は一樹のギターソロでの演奏に圧倒されていた。

そして、ラストのサビを演奏して、彼女たちの楽曲の演奏は幕を閉じた。

それと引き換えに、会場中が割れんばかりの拍手の音に包まれる。

 

「皆―、ありがとー!」

 

その拍手に明美たちは手を振りながら応え、ステージを後にする。

それが、このライブの閉幕を告げるものだと観客たちが理解するのに、そう時間もかからなかった。

 

(すごい、みんなずっと拍手をし続けている。アタシもだけど)

 

それでも続く拍手に、リサは改めてMoonlight Gloryのライブのすごさを知ることになった。

こうして、もう一つの逆転劇は大成功という最高の形で幕を閉じるのであった。

メインヒロインは誰?

  • 紗夜
  • 日菜

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