BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第132話 ライブへの誘い

「なあなあ一樹!」

「いきなりどうしたんだ? ものすごいテンションで」

 

それはある日の昼休みのこと。

あと十分もしないうちに、昼休みが終わるのでいつものように次の授業の準備を進めていた僕のもとを訪れたのは、違うクラスにいるはずの啓介だった。

 

「今週の日曜って暇か!」

「まずは落ち着いて、順序立てて話して」

 

あまりのテンションの高さに、話が見えなくなりそうな気がした僕は、啓介を落ち着かせることで話を把握しようとする。

 

「なになに、どうしたの?」

 

そんなことをしていると、先ほどまでどこかに行っていた日菜が僕の隣に戻ってきていた。

 

「実はな、今週の日曜日に裕美が通っている花女で有名なバンドがライブに出るんだよっ。しかも、ガールズバンド!」

「ガールズバンド、ねぇ」

 

どうして啓介が興奮しているのかは、何となくわからなくもないが、僕にはそんなことはどうでもいい。

 

(今注目されるガールズバンドという形式。僕たちの参考になるのか?)

 

ひとえにガールズバンドと言っても、志の低い低レベルなバンドもあれば、Roseliaのような志の高いハイレベルなバンドだっている。

啓介が推してくるのだから、そこまで低いとは思わないが。

 

「暇だったら二人も行こうぜ!」

「なんだかるん♪ってきたよ! あたし行く!」

「よし、一人決定っ」

 

日菜さんの中で何か感じるものがあったのか、即答に近い形で決めたのを見て、啓介は小さくガッツポーズをする。

 

「一樹も行くだろ?」

 

啓介はニヤリとからかいの意図を込めた笑みをこちらに向ける。

同時に日菜さんからの、”一緒に行こうよ”という言葉が込められた視線も。

 

「はぁ……行くよ」

 

間違いなく、啓介にはこうなることは予想できていたはずで、その通りになるのは少しあれだが、頷くしかなかった。

 

「よっしゃ! これで人数ゲットっ」

「というか、田中君たちは?」

「あー、聡志たちは予定があるんだよ。いやー、良かったぜ。二人が来てくれなかったら俺は一人寂しくライブハウスに行くことになってたから」

 

(なるほど、そういうことか)

 

どういう理屈かは知らないが、どうも一人でライブハウスなどに行くのは嫌らしい。

 

「あはは、啓介君って、寂しがり屋なんだねー」

「う゛っ!? 言いにくいことをズバッと言われた……」

 

軽く笑われながら指摘された啓介は、胸を抑えながらそのまま逃げるように教室を走り去って行く。

 

「って、集合場所と時間を教えてっ」

 

そんな啓介を見送っていた僕は、肝心の開催されるライブハウスの場所と、時間などを聞いていないことを思い出した。

 

「っとすまん。時間は……そうだな16時30分頃でいいかな。ライブハウスの場所は『SPACE』だ」

 

(なるほど、SPACEか)

 

そこのライブハウスの話は、よく聞いている。

何でも、ガールズバンドの聖地だとかで、そこに演奏するにはライブハウスのオーナーのオーディションに合格する必要があるらしい。

 

(Roseliaもそこでライブをやらせてみるのもいいかも)

 

彼女たちの腕であれば、オーディションを突破できる可能性は十分ある。

とはいえ、普通にやるのも何か違う。

 

(何か、いい感じの材料があればいいんだけど)

 

「一君?」

「ん? 何、日菜さん」

 

ふと考えを巡らせている僕に声をかけてくる日菜さんに、僕はいったん考えるのをやめる。

 

「なんか、一君がムムムってしてたから、気になって」

「あー、別に大したことじゃないから気にしないで」

 

僕の曖昧な説明に、日菜さんは食い下がることなく引き下がってくれた。

もしかしたら興味がないだけかもしれないが、さすがに助かった。

 

「さて、授業の準備でも――「美竹君、1年の宇田川さんが来てるよ」――って、今日はよく人が訪ねてくるな」

「行ってらっしゃい、一君」

 

日菜さんに見送られながら、僕は僕を訪ねてきた宇田川さんが待つ廊下に向かう。

 

 

 

 

 

「いきなりすみません、ちょっと聞きたいことがあって」

「構わないよ。……聞きたいことっていうのは、ずばり妹のことか?」

 

僕の問いかけに頷く巴さんの表情を見て、何となく用件がわかったような気がした。

 

「昨日、あこから話を聞きました。あの練習はやりすぎだと思います」

「それは知っている。その件に関しては、今後二度とやらない旨、話をしてあるはず」

 

妹であるあこちゃんのことが心配になったようで、僕に意見をしに来たのだ。

巴さんの表情は妹を心配する一人の姉そのものだった。

 

「それならいいんです」

「ただ、彼女たちが行こうとしている場所にたどり着くには、かなりの練習が必要だ。それこそ地獄のような練習が。僕はそれをする必要になった時には、迷わずそれを実行するだろうね」

 

言わなくてもいいことを言ってしまった。

今の言葉さえなければ、巴さんとの話は終わりになっていたはずだ。

でもそれは、彼女に隠し事をするようなものだ。

そのような汚いことは彼女に対してはしたくなかった。

なので、正々堂々と言うことにしたのだ。

 

「っ! そんなこと――「その代わり」――……」

 

僕の言葉を聞いて怒り出す巴さんの言葉を遮るように、僕は言葉を続ける。

 

「こちらでできる限りのフォローはしていくつもりだし、自分がしたことの責任もできる限りしっかりとるつもりだ。それが僕の誠意として受け取ってもらえると助かる」

「………」

 

暫く、巴さんは僕の目を無言で見続けるので、僕も視線をそらさずに見返す。

ここでそらしてしまったら、彼女の信頼を得ることはできないと思ったからだ。

やがて、巴さんは静かに息を吐きだすと、静かに口を開いた。

 

「わかりました。一樹さんのこと信じます」

「ありがとう」

 

どういう理由で、信頼を得たのか、自分にもよくわからないが、それでも僕は彼女からの信頼にこたえ得なければいけない。

 

「あこのこと、よろしくお願いします」

 

真剣な表情で言われたその言葉に、僕は

 

「こちらこそ」

 

と、同じくまじめな表情で返すのであった。




いよいよ次回から原作の話に入っていきます。

一応言っておくと、そんなに腰を据えてやる予定はないです。
多分、すんなりと速い展開で行くと思います。

読みたい話はどれ?

  • 1:『昼と夜のChange記録』
  • 2:『6人目の天文部員』
  • 3:『イヴの”ブシドー”な仲良し大作戦』
  • 4:『追想、幻の初ライブ』
  • 5:一つと言わず全部
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