BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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いつの間にかお気に入り件数が460を超えました。
色々と感慨深い中で、誤字を出していたり(汗)

何度も読み返しているにもかかわらずのこれなので、もう少し気を付けたいと思います。


第136話 対策

電話の相手に指定されたファミレスに向かい、その人物の座るボックス席のほうに向かう。

 

「ごめん、遅くなった」

「本当ね、呼ばれた私より後に来たものね」

 

電話の相手は表情は笑みを浮かべているが、目が全然笑っていなかった。

 

「本当に悪かったって。何せ今すぐとは思っていなかったから」

 

あの電話の時、相手は”これからすぐ”と指定してきたのだ。

 

「まあいいわ。私がたまたま近くにいただけだしね」

「………」

 

彼女……白鷺さんの中で何かが満足したのか、さらりとカミングアウトしていたがとりあえずそれは聞き流すことにした。

 

「それで、用件って何?」

「実は今日―――」

 

そして僕は彼女に今日のミーティングでの一件を彼女に伝える。

 

「―――というわけなんだ」

「『昼間の部屋』は確かに地上波で一番の人気番組。司会の方が大物だからというのも一因ね。そんな番組からオファーをもらえるなんてすごいじゃない」

 

話を聞き終えた白鷺さんは、まるで自分のことのようにお祝いの言葉を言ってくれた。

 

「問題なのは、これが”トーク番組”であることと、プライベートな話にまで深く話を掘り下げてくることなんだ」

「ええ。美竹君の言うとおりね。あまり話過ぎれば、変なところでぼろが出るわ。逆に何も言わなければ仕事はもうもらえなくなるわね。特にこの番組は司会の人が番組が調べた情報をもとにいろいろと掘り下げて聞くので有名よ」

 

僕の嫌な予感はある意味当たっていたようだ。

真剣な面持ちの白鷺さんの言葉から、僕が危惧していることがどれだけ重大なことなのかを、これ以上ない程に物語っていた。

 

「そこで聞きたいのが、こういった場合の対処法なんだ」

「………」

「僕たちはキャリアが足りない。この業界に関しては完全に素人。だからこそ、プロレベルの白鷺さんからアドバイスの一つでも貰おうと思うんだ」

 

無言で続きを促す白鷺さんに、僕はそう言い切った。

白鷺さんは子役時代から芸能界に飛び込んでいる。

それはいわばプロレベルと言っても過言ではないはず。

それならば、こういった番組の乗り切り方を知っていてもおかしくないはず。

そう思って彼女に聞いてみたのだ。

そんな白鷺さんは、暫くの間こちらを見たまま無言でいると、紅茶を一口飲む。

 

「結論から言ってしまうと、対処法なんてないに等しいわ」

 

それはある意味絶望的な答えだった。

 

「百人の人がいれば百通りの話し方があるわ。だから、ピンポイントにこうだっていう方法はないの。でもね、うまい切り抜け方の定番で、一つ言えるのは『困ったときは嘘と本当を混ぜて言う』よ」

「嘘と本当を混ぜる……つまり、嘘を言いつつも本当のことを言うってこと?」

 

白鷺さんは頷いて答える。

確かに、ものすごくオーソドックスな切り抜け方だ。

でも、僕からしてみれば何もないのよりはありがたい。

 

「ありがとう。わかったような気がするよ」

 

白鷺さんのおかげで、対策は練りだせそうだ。

 

「あ、そうだ。あと一つだけ聞いてもいい?」

 

これでお開きにしようと思った僕は、ふと脳裏にとある疑問がよぎったので、この機会に投げかけてみることにした。

 

「どうしてデビューライブの一件を話さなかったんだ?」

「……」

 

それは、あのライブの後から、ずっと気になっていたことだった。

 

「僕はてっきり白鷺さんがみんなに話したなだとばかり思ってたんだけど、そうでもない。どうして言わなかったのか……その理由を聞きたい」

「……美竹君は、言ってほしかったの?失敗するとわかっていたライブを止めずに、それを逆に利用しようと模索していたって言うことを」

 

まるでいたずらっ子のように笑みを浮かべながら片目だけ開いて聞いてくる彼女に僕は即答で違うと返す。

――これは推測よ、と前置きを置いたうえで、白鷺さんは言葉をつづけた。

 

「貴方が、この方法をとった理由。それは日菜ちゃんのため。日菜ちゃんと美竹君は同じクラスで友人。そんな彼女の一種の応援のため……と私は解釈したんだけど、違うかしら」

「……」

 

凄まじいくらいにドストライクな推測に、僕は目を瞬かる。

彼女の言っている通りの理由のため、どういえばいいのかがわからなかった。

そんな僕の出した結論は

 

「ご想像にお任せするよ」

 

という、どっちつかずの物だった。

対する白鷺さんも、僕のそんな答えなどお見通しだったようで”そう”、と一言だけつぶやくだけだった。

 

「どちらにしても、私たちのためを思っての行動だと私は判断したのだけど、違うのであればパスパレの皆に――「その通りなので、お願いですからやめてください」――ふふ、最初から素直に言えばいいのに」

 

(叶わないな、白鷺さんには)

 

くすくすと笑う白鷺さんの様子を見ながら、僕は改めて白鷺さんのすごさを思い知ることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、いよいよ明日が『昼間の部屋』の放送日だ。

それは僕たちが出演する日ということでもある。

義父さん達には番組に出ることを言ってない。

 

(言えば絶対に録画される。それで鑑賞会でも開かれたら……)

 

恥ずかしさのあまりに悶絶すること間違いない。

とはいえ、平日の人気番組なので、見られる可能性は十分にあり得るけど。

 

(一応対策は練った。不確定要素さえなければ大丈夫)

 

僕のほうは、ここ数日で明日の番組での質問の切り抜ける回答案をいくつも出していた。

どのように司会の人が話を振ってくるかはわからないが、これならある程度はうまくかわすことができるはずだ。

 

「まったく、ここまで頭を悩ませなければいけないなんて……気がめいりそうだ」

 

そう呟きながらも、心の中では楽しんでいたりもする。

要するに、僕も明日のテレビ出演を心待ちにしているのだ。

 

(まあ、明日は頑張ろう)

 

僕は自分にガッツを入れつつ、その日は早めに眠りに就くのであった。

読みたい話はどれ?

  • 1:『昼と夜のChange記録』
  • 2:『6人目の天文部員』
  • 3:『イヴの”ブシドー”な仲良し大作戦』
  • 4:『追想、幻の初ライブ』
  • 5:一つと言わず全部

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