本章も、次回か次々回あたりで完結となります
それでは、本編をどうぞ!
(いやいや、ないない)
今パーティーを組んでいる『聖堕天使あこ姫』と『RinRin』の二人が、あこさんと白金さんではないかという考えを、僕はすぐさま否定する。
あこさんは分かるが、ただでさえ一対一ではまともに会話もできない白金さんが、不特定多数の人がいるこういった場でたくさん話している姿が想像できない。
(他人の空似ともいうし、あまり考えないようにしよう)
例え、あこ姫の言動があこさんのとほぼ同じだったとしても、それはただの偶然だ。
「おぉ……よく来てくださりました、旅の方。実は折り入ってお頼みしたいことがあるのですが、この手紙を鉱山のリンダというものに届けていただけませんか?」
二人が先導する形で、村内に立っていた『ジェイク』という人物に話しかけたところ、そのようなメッセージと共にクエスト画面なる者が表示された。
クエスト名は『手紙を届ける』と書かれている。
『”クエストを受注する”ボタンを押してください』
『わかりました』
RinRinさんの指示に従う形で、受注ボタンを押す。
「ありがとうございます! リンダは村を出て西に進んだ先の鉱山にいるはずです。どうぞ、よろしく願いします」
『これでいいんですよね?』
『『はい!』』
どうやら、無事にクエストを始めることができたようだ。
『基本的には、こういう形でクエストを受注するか、ギルドという団体に加入してそこに出されているクエストを受注できます。まずは、このクエストを頑張りましょう(^_-)-☆』
『はい。お願いします』
こうして、僕たちの旅は始まった。
道中、アイテムの使い方や、攻撃の仕方などを教えてもらいながら、今回のクエストの舞台でもある『ロゴロ鉱山』を目指していった。
そして、今に至るということだ。
『今のように、魔法で敵を倒すのが私たち、ウィザードの特徴です。最初は大変だと思いますけど、頑張りましょうね』
『私もフォローするよ』
何気なく選んだ職業だが、何気なく自分に合っているように思えてきた。
何よりも、目の前にこれ以上ないほどのお手本的な存在がいるのだ。
色々と学ぶことが多い。
しかも、RinRinさんの教え方は同じウィザードだからなのかはわからないが、一つ一つが的確で分かりやすい。
おかげで、ある程度は立ち回り方もわかってきた。
(ただ、やっぱりチャットをしながらは難しいかな)
不器用なのかはわからないが、どうもチャットをしながらキャラクターを動かすというのに慣れない。
一応、『はい』や『ええ』といった簡単な返事程度であればできるようになったが、二人のようになるにはやはり時間がかかりそうだなと感じてしまう。
そんな時、鉱山内の十字路の通路から、一体の大きなモンスターが姿を現した。
先ほど倒したモンスターよりも一回りも二回りも大きいそれは、何も知らない僕ですら、タダのモンスターではないことが分かるほどの威圧感を持っていた。
『って、リンリン、あれって……』
『っ!? KAZUさん。気を付けてください! あれは、フィールドボス……この地を収めている主のような存在です』
あこ姫さんから言われたRinRinさんの動揺は、顔文字を使用していないことで分かった。
そして、やはりあのモンスターはただのそれではなかった。
『一応聞きますけど、あれと闘うのは自殺行為ですか?』
『はい。今のKAZUさんでしたら、一撃で……』
予想はできていたが、一応念のためにと聞いた問いかけに、予想よりも恐ろしいニュアンスで返ってきた。
『と、とりあえず。足元を通れば見つからないでやり過ごせるからっ』
『はい。ですので、KAZUさんは私たちの後ろに続いてください(>_<)』
僕は二人に言われた通り、フィールドボスの足元を通ることで、見つからずに先に進むことができた。
(しょ、初心者用のクエストだよね? これ)
一瞬、理不尽にも思えたが、そういう物なんだと思うことにした。
もし二人がいなければ間違いなく、僕は戦闘を始めていただろう。
『ありがとうございます。二人のおかげで助かりました』
だから、僕は二人にお礼を言う。
そして、僕たちはさらに鉱山を進んでいくのであった。
「あなた達は……え、これはジェイクからの手紙。ありがとうございます」
しばらく進んだところにいたキャラクターに手紙を渡すことに成功した。
「申し訳ありませんが、この手紙をジェイクに渡してほしいの。私はまだ……帰れそうにないから」
(なんだか、伝書バトにされてない?)
ツッコんではいけないとはいえ、どうしてもツッコみたくなる。
どうしてここに彼女を一人でいさせるのだとか、この場所をアバウトな形でしか教えてくれないのかとか。
『えっと、今度はこれをジェイクさんに渡せばいいんですよね?』
『はい。あとちょっとですので、頑張りましょう(^^♪』
『それじゃ、しゅっぱーつ!』
そして今度はリンダからの手紙をジェイクに渡すべく旅立ちの村へと戻ることにしたのだが……
しばらく進んだところで、”それ”は現れたのだ。
『あの、あれって』
『フィールドボス!?』
そいつは少し前にやり過ごしたはずのフィールドボスだ。
(すごい遭遇率だな)
フィールドボスに二回も遭遇していることから、もしかしたら今日は悪運が強いのかもしれない。
とはいえ、先ほどよりは恐ろしくもない。
『とりあえず、さっきのように移動すればいいんですよね?』
『はい。このまま静かに足元を移動しましょう』
向こうがこちらに気づいていないのだから、そのすきに逃げてしまえばいいだけのことだ。
僕たちは先ほどと同様に、フィールドボスの足元を通ってやり過ごそうとする。
(よし、大丈夫だ)
何とかやり過ごせる。そう思った時だった。
『あっ!?』
僕はある致命的なミスをしてしまったのだ。
「グォォォォっ!!!」
『『KAZUさん!?』』
フィールドボスの咆哮が響き渡る。
あろうことか、僕は誤ってフィールドボスに攻撃魔法を使用してしまったのだ。
それによって、僕たちの存在に気づかれてしまったのだ。
フィールドボスが最初に攻撃をするとすれば、一番近くにいる僕だろう。
(えっと……どうすればいい!)
こういう時こそ、攻撃魔法でボスを倒してしまえばいいのだが、不運なことに始めて間もない状態で、使え得る魔法も多くない状態だ。
(もういいや。こうなったらやけくそだっ!)
どうせやられるんなら、一撃暗い攻撃してやろうと、僕はある魔法を使う。
それは、敵に微量のダメージを与え、低確率でスタン状態にさせるものだ。
「グォォォォ!?」
どうせ効かないとばかり思っていたそれだが、どうやらまだ運はまだ尽きてはいなかったようだ。
低確率のスタン状態にフィールドボスになったのだ。
『KAZUさん、速くこっちに!』
『走って逃げましょう!』
攻撃が通った喜びに浸る暇もなく、二人に促されるように、僕はその場を走って逃げた。
幸いなことに、その後フィールドボスに追いかけられることはなかった。
『今日は本当にありがとうございました』
無事にリンダからの手紙をジェイクさんに渡し終え、クエストを完了させた僕は、二人にお礼のメッセージを送る。
なにせ、二人がいなければ確実にクエストができていなかった可能性があるのだ。
『いえいえ(∩´∀`)∩ 私たちも欲しい素材を手にできましたし、楽しかったです』
『うん、私も! あ、そうだ!』
道中、色々迷惑をかけてしまったような気がするが、それでもいやそうなそぶりを見せない二人と現実で友人だったら、かなり気が合うんだろうなと思っていると、システムメッセージが送られてきた。
内容は『聖堕天使あこ姫から、フレンド申請がありました』というものだった。
それから少し遅れるように、RinRinさんからも同様の申請が届いた。
『また一緒に、クエストやろうね!』
「私も、今度一緒に冒険したいです」
そんなあこ姫さんとRinRinさんのメッセージに僕は
『こちらこそ。よろしくお願いします』
フレンド申請を受け入れた。
こうして僕はこの日、初めてのプレイで二人のプレイヤーとフレンドになることができたのであった。
今の時点で、大雑把ですが計算したところ、個人買いに行った時点で200話を超えている可能性が浮上しました。
色々と見直しをしつつ、プロットを構築していきたいと思います。
読みたい話はどれ?
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1:『昼と夜のChange記録』
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2:『6人目の天文部員』
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3:『イヴの”ブシドー”な仲良し大作戦』
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4:『追想、幻の初ライブ』
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5:一つと言わず全部