BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第154話 一つの課題、一つのミス

ついにGlitter*greenとのジョイントライブを翌日に控えたこの日。

Roseliaのメンバーは、セトリの楽曲の最後の仕上げに取り掛かっていた。

 

「あこ、リズムが走ってるわ」

「は、はい!」

「今井さん、もう少し宇田川さんの音を意識してください」

「りょーかい!」

 

皆も、ライブ前日だからか、練習に気合が入っている。

 

(曲のほうもいい感じに仕上がっている。ものすごく細かい指摘箇所は山のようにあるけど、それを抜きにしてもいい仕上がりだ)

 

この調子で行けばライブの成功は約束されたようなものだろう。

……何もなければ、の話だが。

ライブは一種の魔物だ。

何が起こるか予想ができない。

だからこそ、それに対応できるように練習をしていくわけだが。

 

「美竹君、どうかしら?」

「一樹さんの率直な感想を聞かせてください」

 

演奏が終わり湊さんと紗夜さんの問いかけに、全員の視線が僕に集まる。

 

「あこさんのドラムのリズムが時折ぶれるところがあるけど、悪くはなかったよ。全体的にまとまり感も出てきているから」

「やったぁー! 一樹さんに褒められたよ! りんりん、リサ姉っ」

「良かったね、あこ」

 

僕の総評に喜びの声を上げるあこさんの声を遮るように、僕は続きの言葉を口にする。

 

「そこで、皆に一つ課題を与えたいと思うんだ」

「課題?」

 

何よそれと言いたげに首をかしげる湊さんに、僕は頷きつつ説明を続ける。

 

「各自で考えて、出した答えを明日のライブで見せてほしいんだ」

「その課題とは何ですか?」

「それは……」

 

真剣な面持ちの紗夜さんの問いかけに、僕はいったん間をおいてそれを口にする。

 

「『観客が僕たちミュージシャンに求めていることは何か』それが、僕からの課題。この答えを導き出してほしい」

 

その課題は昔、父さんが僕に出した課題でもあった。

正直に言うと、彼女たちにこの課題を出すのはまだ早いのではと思っていたりもした。

だが、あの時出された課題と向き合ったからこそ、今の僕があるのではと考え、思い切って出すことにしたのだ。

 

「求めることって……答えのヒントとかってない?」

「ヒントと言われても……あえて説明する必要がないほどに当たり前のこと……ぐらいかな」

 

少しだけ抽象的だったのか、全員の顔色はあまりぱっとしない。

それでも、悩めば悩んだだけ彼女たちの糧となるのだ。

たまにはしっかり考えてみるのもいい機会なのかもしれない。

こうして、ついに僕たちはジョイントライブの日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、美竹先輩っ!」

 

翌日、ライブ会場でもある『SPACE』を訪れた僕を出迎えたのは、聞いたことのある少女の声だった。

 

「えっと、戸山さん? いったい何をして」

「お手伝いです!」

 

ものすごくいい笑顔ではっきりと言われた内容は、服装を見ればわかるものだった。

よく見ると、周りには結成したばかりのバンド『Poppin'Party』のメンバーの姿があった。

 

「美竹先輩はどうして?」

「ライブを見に来たからに決まってんだ―――じゃないですか、おほほ」

 

ライブハウスに来た人に聴く質問ではない問いかけをする戸山さんにツッコミを入れる市ヶ谷さんは僕がいるからか、慌てて語尾を直すが、どこぞのお嬢様風な笑い方も相まって不自然だった。

 

「あ、そっか!」

 

そして戸山さんも、指摘されて気づいた様子なので、この二人でコントでもやれば大方ウケがいいのではなどと関係ない感想を抱いてしまった。

 

「そこっ、油を売ってないでちゃんとしなっ」

「「は、はい!」」

 

そんなことをしていると、オーナーから激が飛び、慌てて会計を済ませた僕は、渡されたドリンクチケットで飲み物を頼んだ。

 

「スタッフの人は?」

「全員アウト」

 

ドリンクを片手にロビーにいるオーナーに事情を聴いたところ、ここで働いているスタッフの人たちがインフルエンザを患ってしまったため、彼女たちが急きょヘルプに入ってくれたらしい。

 

「なんだか、前来た時よりも心なしか明るいですね」

「……そうかい」

 

ぶっきらぼうにオーナーは相槌を打つが、それでも表情は穏やかだった。

 

「それはそうと、今回のライブ。あんたの差し金かい?」

「……ノーコメントで」

 

否定しても肯定してもあと後面倒になりそうなので、僕はあえてとぼけることを選んだ。

 

「まあ、楽しんでいきな」

 

オーナーもそれ以上は深入りすることもせず、そう言うと僕の前から去っていく。

きっと、オーナーは確信しているはずだ。

それでも、あえて何も言わないのは、もしかしたらオーナーの優しさなのかもしれない。

 

(混雑した状態で受け付けとか済ませるのが嫌だったから早く来たけど、ちょっと大げさだったか)

 

開店して間もないからか、混雑はしていないようだ。

とはいえ、もう少し遅く来ても良かった気がするが、とりあえず僕は開演時間まで待つことにするのだが、しばらくして僕の予想通りというべきか、次々に訪れる客で混雑し始めるのをしり目に、僕は早めに来ていてよかったことを改めて実感することになるのであった。

 

 

 

 

 

薄暗いライブ会場に移動した僕は、中間の位置を陣取り、ライブが始まる瞬間を今か今かと待っていた。

それはこの場にいるすべての観客たちも同じことだ。

やがて、ステージに照明があたる。

ステージに立っているのはゆり先輩たちが所属するバンド『Glitter*green』だ。

 

『SPACE! 遊ぶ準備はできてますかー!』

 

ゆり先輩の呼びかけに答えるように僕たちは声を上げる。

そして、ついにライブが始まる。

 

(なるほど、中々に悪くない)

 

アップテンポな曲調を奏でる彼女たちの技術が、群を抜いてすごいわけではないが、彼女たちの演奏は十分に聞き入ってしまうほど素晴らしい演奏だった。

それは、ある種の安定感があるということなのかもしれない。

 

『皆ありがとう! まだまだライブは続くよー!』

 

彼女たちの演奏も終わり、会場のボルテージは最高潮ともいえるだろう。

 

(この後は……)

 

ステージから去っていくゆり先輩たちを見ながら、僕は次のバンドのほうに意識を集中させる。

今回のライブに置いて一番のメインディッシュと言っても過言ではないそのバンドに。

そして、ゆり先輩たちが去って行ったステージ脇から現れたのは、ゴシック風(もしくはゴスロリ?)なステージ衣装を身に纏った湊さんたち、Roseliaのメンバーだった。

 

『Roseliaです。まずは一曲聴いてください。”BLACK SHOUT!”』

 

そして、いよいよRoseliaのライブが始まる。

迫力のあるサウンドと世界観に、会場にいる観客たちは魅入られていた。

 

(うん、悪くはない。いつものように全力を出してる)

 

彼女たちの演奏にはブレなどもなく堂々とした気品のようなものを感じるほどに安定している。

流石はRoselliaといったところだろう。

そして、彼女たちのライブもついに終盤に差し掛かる。

残すのはあと1曲のみ。

 

『それでは最後の曲です。聴いてください』

 

その言葉と共に、最後の曲の演奏が始まる。

 

(今度は幻想的な世界観で来るか)

 

まるでこれから始まる大冒険の入り口にいるかのような幻想的な世界観のその曲に、僕は解析をすることを忘れて聞き入ってしまう。

ここにきて彼女たちの、新たな可能性というものを狭間見たような気がする。

そんな時だった。

 

(ん?)

 

それは、一番盛り上がるサビに入った一瞬の出来事だった。

それまで安定していた曲が綻びが生じたのだ。

 

(ベースがとちったか)

 

原因はベース担当であるリサさんのベースの音がずれたからだ。

とはいえ、そのずれは致命的なものではなく、彼女の実力であれば十分にリカバリーできるものだ。

だが……

 

(まずいな。リサさん動揺してるな)

 

よっぽど先ほどのミスがショックだったのか、リサさんは動揺を隠せない様子だ。

”心の乱れは音に出る”

それを証明するように、ベースの音もぶれ始めていた。

このままではさらに大きなミスを誘発してしまう危険な状態だ。

だが、ここで幸運が訪れた。

キーボードとボーカル以外のパートがブレイク状態になったのだ。

それはこの後の盛り上げに必要な溜めであると同時に、リサさんに精神的な余裕を取り戻させる役割も果たしていた。

その後、ラストに向けて平静を取り戻したリサさんは何とか演奏をし終えることができた。

こうして、Glitter*greeとのジョイントライブは、成功という結果を残して幕を閉じるのであった。




私的にはRoseliaの曲はどれもすごすぎて”一番おすすめ”な曲を選べなかったりします(汗)

読みたい話はどれ?

  • 1:『昼と夜のChange記録』
  • 2:『6人目の天文部員』
  • 3:『イヴの”ブシドー”な仲良し大作戦』
  • 4:『追想、幻の初ライブ』
  • 5:一つと言わず全部
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