そして、UAがついに10万を超えました。
これもひとえに読者の皆様のおかげです。
これからも、本作ともどもよろしくお願いします。
それでは、本篇をどうぞ!
日曜日。
この日、僕はRoseliaのみんなと共に、SPACEに向かっていた。
「いよいよですね」
「頑張って、応援してるよ」
目的は、ここのオーディションを受けるためだ。
「それにしても、オーディションを受けるのには向かない空模様だね~」
リサさんが空を見上げながら口にする。
確かに、今日は曇りの天候で、あまり清々しさを感じない空模様だ。
「空模様なんて関係ないわ。私たちは常に最高の演奏をして見せる。それだけよ」
「わかってるってば、友希那」
相変わらず湊さんはドライだ。
メンバーたちには、緊張の色は全く見られない。
(変ってきてるんだね。色々と)
それは決して悪い意味ではない。
このオーディションも、僕が提案したものなのだが、最初は却下されるものだと思っていた。
だが、
『そうね。もう一度あそこでライブをするのも、悪くないかもしれないわね』
『ええ。私もです』
という二人の前向きな発言によって、オーディションを受けることとなったのだ。
そして、SPACEまであと少しというところで、一組の少女たちがSPACEから出てくるのが見えた。
(あれって……)
僕の見間違いでなければ、あれはPoppin'Partyのメンバーだ。
表情までは分からないが、雰囲気が暗いような印象を受ける。
(だから、言ったのに)
あの時、彼女たち演奏にAfterglowの時と同じ感覚を覚えていた。
特に、戸山さんからはつぐのと同じ感覚を強く感じていた。
あの後、彼女はどうなった?
そんなの思い出すまでもない。
皆に追いつこうと無理をして練習をし、その疲れで倒れて入院したのだ。
その時期にいろいろな要素が重なって空中分解の危機を迎えるに至ったのだ。
あの時は、何とか元通りに修復することができた。
それと同じのを戸山さんから感じ取った。
(あの時は、抽象的過ぎた)
もっとはっきりと言っていれば、彼女が倒れることはなかったかもしれない。
その失敗から学び、今度こそはと思って脅すくらいの勢いで忠告したのだが、結果はどうだろうか。
「結局、こうなるわけか」
やるせない気持ちからか、思わずそれを口にしてしまった。
「一樹君、どうかしたの?」
「いや、何でもない」
僕のつぶやきが聞こえたのか、不思議そうに聞いてくるリサさんにそう返しつつ、僕は彼女たちに続くようにSPACEに足を踏み入れるのであった。
ちなみに、オーディションの結果は文句なしの合格だった。
「ねーねー、一君」
「なに? 日菜さん」
昼休み、昼食をとるべくお弁当の準備をしていると、日菜さんが話しかけてきた。
いや、話しかけてくることなどしょっちゅうなので、珍しがる要素などどこにもない。
ただ、あげるとすれば、心なしか目を輝かせているような気がするところくらいだ。
「おねーちゃんたちのバンドのライブっていつ?」
「……誰から聞いたんだ?」
僕の記憶が間違っていなければ、日菜さんにはそのことは言ってないはず。
紗夜さんから伝わったという可能性も捨てきれないが、これもほぼ違うだろう。
「リサちーから!」
意外と身近な情報源だった。
「ちょっとー、アタシのことは言わないって約束したじゃんっ」
僕たちの会話が聞こえていたのか、リサさんが軽く攻めるような感じで話に入ってくる。
「でも、一君だったらいいでしょ? ね?」
「ねって……まあ、言うつもりはないけど」
下手に言ったらこちらに飛び火しかねないし、そもそも告げ口をして人が困るのを見て楽しむようなことをするほど、僕は性格が悪くはない。
……たぶん。
「それよりも、ライブはいつなの?」
「それは―――っと、電話だ」
何時なのかを答えようとした矢先に、着信を告げるように携帯が震えだしたので、携帯を取り出して相手を確認する。
(中井さん? いったいどうしたんだろう)
相手は中井さんだった。
何かなければ連絡をよこすことがないだけに、どういう用件なのかが気になった。
「……ごめんリサさんから聞いて」
僕は答えをリサさんに頼んで、電話に出るべく教室を後にする。
「ちょっと! 結局アタシが全部言うの!?」
そんなリサさんからの抗議の声を聴きながら。
「うわ、水浸し」
誰の邪魔にもならなさそうな場所として屋上に向かうことにしたが、朝から降っている雨の影響で屋上は使うことは無理だ。
とりあえず、僕は屋上に続くドアの前で、いまだになり続けている着信に出る。
『あ、出た出た。いきなりごめんね一樹君』
「それはいいけど、いきなり何の用?」
僕は単刀直入に中井さんに用件を聞く。
『えっとね、Poppin'Partyのことなんだけど……』
どうやら用件はPoppin'Partyのことに関するものだったようだ。
確かに前に彼女たちを見守るようにお願いしておいたので、連絡をしてくることは当然のことだ。
気になる内容は、要約すると、この間のオーディションの時に戸山さんが歌うことができなくなったらしい。
その結果、オーディションは棄権となったらしく、今日も病院に行くために午前中はお休みらしい。
「それで?」
『え?』
僕の相槌が予想外だったのか、中井さんが聴き返してくるので、僕は直球でもう一度言うことにした。
「それで、電話をしてきた本当の理由は? まさか、それだけというわけはないよね?」
『……あはは、一樹君には全部お見通しなんだね』
「当たり前だ。どれほど一緒にいたと思ってるんだよ」
これ以上とぼけても無駄だと悟ったのか、それとも端からとぼけるつもりなどなかったのか、苦笑交じりに言われた言葉に、僕は言い返す。
『実はね、今ここに市ヶ谷さんたちがいるの。それで、彼女たちに何かアドバイスとかしてほしいなって』
「はぁ……そんなことだろうと思った」
どうやら僕が予想していた通りの用件だったようだ。
彼女たちが、中井さんと僕が幼馴染であることをいいことに、頼みごとを聞かせようとしたとは考えていないが、なんだか複雑な心境だ。
「ない」
『っ!』
僕が口にしたのは、無慈悲な一言だった。
「同情はするが、僕から言わせてもらうと、その結果は自業自得なんだけど」
『ふざけんじゃねえ…ください! 声が出なくなった香澄のことをそんな風に言って、何とも思わないんですか!』
僕の言葉で火が付いたのか、市ヶ谷さんの罵声が電話口から響き渡ってくる。
『あの、いくら何でも自業自得っていうのは言いすぎだと思います』
「……確かに、自業自得は言いすぎた。申し訳ない」
山吹さんの感情的でもなく、諭すような口調の言葉に、僕は一言謝った。
確かに、今の言葉は言いすぎだった。
「……ただ、そもそも僕はあの時に忠告をしたはずだ。『次のオーディションには出ずに一度休養をとって最後のオーディションを受けたほうがいい』ってね。それを思いっきり無視した挙句にこのありさまだ。悪いけど、人の忠告を無視されてまで手助けするほど、僕はお人よしじゃない」
僕はそう言って切り捨てた。
後は電話を切ってしまえばいい。
これ以上通話していても、どうにもならないんだ。
(なんだけどなぁ)
そうは思っても放っておけないという気持ちもある。
(どっちをとるべきか)
合理的な選択をするか、それとも気持ちに任せた行動をするのか。
「バンド内の問題は、バンド内で解決するのが原則。だから、僕にできるアドバイスは”よく考えること”でしかない」
僕は、自分の気持ちに従って行動することにした。
これはもしかしたら間違いなのかもしれない。
でも、打算など関係なく、力になりたいと思うのも事実だ。
「もう次はない。行動を誤ればPoppin'Partyは完全に空中分解する。だから」
最後に”ちゃんと考えて”と付け加えた。
「僕から言えるのはこれだけ」
『ありがとうございました!』
それでも、彼女たちの口にしたお礼の言葉に、僕はこの行動が正しかったと思えた。
根拠はない。
それでもそういう風に感じさせる何かを、僕は感じ取っていたのかもしれない。
(今度こそ、間違えないで)
僕は通話を切り、窓から見える曇り空を見ながら、彼女たちに心の中でそう言うのであった。
来週はさすがにここまでの連続投稿はできないです。
そして、個人買いに入るのに200話ほどかかるのがほぼ確定しました。
……もしかしたら早めに行けるかもしれないですが(汗)
読みたい話はどれ?
-
1:『昼と夜のChange記録』
-
2:『6人目の天文部員』
-
3:『イヴの”ブシドー”な仲良し大作戦』
-
4:『追想、幻の初ライブ』
-
5:一つと言わず全部