BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第182話 始まった計画

突然だが、最近の僕の悩みの種を聞いてほしい。

この間のライブで告知をした結果、ネットニュースなどで瞬く間に記事が掲載され、かなりの注目を集める結果になってしまった。

別に、それが悪いことではない。

いや、むしろ注目されればされるほどありがたい。

だが、その弊害も生じているのも事実だ。

 

「おねーちゃんと一緒に演奏できていーなー、一君」

「……日菜さん、もうすでに三日ぐらい同じこと言ってない?」

 

改めて言う必要はないが、つまりそういうことだ。

 

「だって、あたしだっておねーちゃんと一緒にぎゅいーんって、演奏したいんだもんっ」

 

日菜さんの言いたいことはわかる。

つまり、僕が紗夜さんと一緒のライブに出ることがうらやましいということだ。

 

「しょうがないでしょ。そっちのほうがスケジュールの都合を付けられなかったんだから」

「むーーーっ」

 

頬を膨らませて恨めしそうにこちらを見ながら唸ったところで、結論は変わらない。

そもそも、このライブを行える日は、会場を確保する関係上その日しか選べないという事情もある。

つまり、こちらでパスパレのスケジュールに合わせてというのは不可能に近いのだ。

かといって、季節的にも興行収入が多くなると見込める時期に、ライブを行わないというのも事務所的にはよろしくないわけで、外部のバンド……つまりRoseliaとの合同ライブとなったのだ。

 

「それじゃ、今度ライブをやる時は一君とおねーちゃんとあたしと一緒にやってくれるって約束してくれたら、許してあげるっ」

「はい!? 三人一緒に演奏しようというのか!?」

 

ギタが2本というのは聞いたことがあるが3本となると、僕が知っている限りでは聞いたことがない。

というか、ありえない。

 

「うんっ! アタシとおねーちゃんと一君の三人で演奏したら、るるるんってなるよ!」

「いつもより”る”が多いな~。……まあ、考えてみるよ」

 

日菜さんの言うとおり、面白そうな発想だ。

考えてみても損はないだろう。

……実現できるかどうかは別としてだが。

 

「約束だよ!」

「ああ、約束だ」

 

それでも一回、二人が一緒に演奏している姿を見て見たいという思いもあったので、僕は彼女と約束を交わす。

 

(そのためにも、”あの計画”を早くできるようにしないと)

 

僕は日菜さんと別れ、一人計画の細かいところを考えるのであった。

 

 

 

 

 

「あ、美竹君おはよっ」

「おはよう丸山さん。相変わらず元気でいいねー」

「えへへ、ありがと♪」

 

(褒め言葉じゃないんだけどな)

 

 

皮肉を込めて言ったのだが、どうやら丸山さんには通じなかったようだ。

丸山さんのように毎日が元気いっぱいで、ルンルン状態だったらどれだけ幸せかと思う。

 

「それにしても合同ライブって、すごいよねっ。もうかなり噂になってるよ」

「だろうね」

 

告知をしてからの弊害の一つが、学校生活への影響だ。

羽丘では、いくらニュースになろうがライブを開こうが、平穏(表面上では)だったのがここではうわさ話として広がっていき、ざわめいているのだ。

面と向かって声をかけてくるというのはないにしても、遠巻きでざわつかれるのはかなり精神的にもつかれる。

 

(なんだか、前にも同じことがなかったか?)

 

なんとなく、デジャヴを感じた僕だったが、考えたところで何もいいことはないので、とりあえず遠巻きの存在は気にしないようにすることにした。

 

(今度、白鷺さんに対処法とか聞いておこ)

 

そんなことを考えながら。

 

 

 

 

 

それから数日後のこと。

 

「今日の練習はここまで」

「っはぁ~。疲れた~。今日もハードだった~」

 

Roseliaのバンド練習を終えた瞬間あこさんがドラムに突っ伏す。

その様子からも疲れているのは十分に伝わってくる。

 

「この程度で弱音を吐いていては先が思いやられるわ」

 

そんなあこさんにやはりというべきか、湊さんからの檄が飛ぶ。

 

「特にドラムは体力の消費が激しいのよ。それに、『Rush!』まで時間もない」

 

ちなみに、ライブの名前は湊さんたちとの話し合いの結果、『Rushu!』に決まりました。

案を出したのは湊さんだったが、このライブがゴールではなく、まだまだ先があることをにおわせる意味と、目的のために走り続けていく決意の表れという意味の二つ意味合いがあり、僕は非常にこの名前が気に入っている。

 

(いや、本当に『間と闇が融和せし宴』とかにならなくてよかった)

 

某ドラマーが出した案を却下してくれた田中君と湊さんには本当に頭が上がらない。

流石に、この名前は痛すぎる。

 

「うぅ」

「まあまあ。あこお疲れ。はい、クッキー。食べて食べて」

 

絶妙なタイミングで仲裁に入ったリサさんは、あこさんにクッキーを手渡す。

 

「今日はあこのリクエストにお応えしまして、キャラメルクッキーを作ってみました☆」

「わーい! リサ姉ありがと~。んーっ、おいし~」

 

先ほどまでの疲れはどこへやら、あこさんは嬉しそうにクッキーをほおばっていた。

 

「リサ、片付けのほうも進めないと―――」

「わかってるって。それにあまり急いでやるとまた転ぶよ? はい、友希那もこれ食べてリラックスリラックス♪」

 

いつの日にかリードに足をとられて転んでいたことがあることから、湊さんは無言でリサさんに渡されたクッキーを一口食べ出す。

 

「はい、一樹君も」

「ありがと」

 

いつの日か、僕にも普通に渡すようになったクッキーだが、これがまた馬鹿にならないレベルですごいのだ。

 

「うん、おいしい」

 

リサさんの手作りクッキーはどれも絶品で、はずれがないのだ。

今日のも彼女はキャラメルクッキーにしたと言っていたが、甘すぎず荷が過ぎずという絶妙な味加減を実現していることが、彼女のお菓子作りで腕前を物語っている。

正直、このクッキーを食べたらコンビニで販売されているクッキーは食べられなくなるのではないかとすら思っているくらいだ。

……まあ、今でも食べてるけど。

 

「よし。それじゃ、精算と次の練習の予約を取ってくるから、皆は原状復帰お願いね」

 

そう言うと、リサさんは清算をするためにスタジオを後にする。

 

「それにしても、今日はハードだったけど、その分良い感じだった気がするっ。りんりんと一樹さんはどう思う?」

「うん、私も……うまくできた、と思う」

「右に同じく。まあ、悪くはないよ。この調子でどんどん上達していってくれると助かるかな」

 

あこさんの悪い癖は相変わらずだし、白金さんももう少し表現力を出してくれればいいのにというのも、言ってしまえば細かい問題だ。

あまり畳みかけるように指摘するのがいいことではないことは、僕が一番わかっているつもりだ。

だからこそ、順番に彼女たちに指摘をしていくと決めているのだ。

 

「やったぁ、一樹さんに褒められちゃったよ、りんりんっ」

「うん、よかったね。あこちゃん」

 

とりあえずは、嬉しそうに喜ぶ二人を見て、僕はいったんそのことを頭の片隅に置いておくことにして、原状復帰に取り掛かることにした。

 

「紗夜さんも、今日はリズムもテンポも正確で、とってもカッコよかったよねっ」

「そうね。紗夜、貴女の正確なリズムとテンポはよかったと思っているわ。これからも、正確な演奏ができるように精進して頂戴」

「正確さ……」

 

湊さんの評価に、紗夜さんの反応は喜ぶわけでもなく、微妙なものだった。

 

「紗夜?」

「何でもありません。これからもそのつもりです」

 

湊さんも紗夜さんの様子に違和感を感じたようだが、すぐに紗夜さんはいつもの感じに戻っていた。

 

(というより、片付けを手伝ってほしいんだけどな)

 

1人で片づけをしているので、あまりはかどってない。

これでリサさんが戻ってきたら、間違いなく一言言われる。

 

「精算と次の予約が終わったよー。って、全然片付け進んでないじゃん、もう~」

 

そして僕の予想通り、受付を終えて戻ってきて、全く進んでいない状態を見たリサさんに怒られてしまった。

 

「すみません。つい……お話が、弾んでしまって」

「……まあ、会話が弾むのはいいことなんだけどね」

 

リサさんは会話が弾んでいることを喜ぶべきなのか、それとも片付けが進んでいないことを注意するべきなのか、複雑な気持ちだったのかもしれない。

このバンドが結成時の状態が、僕の想像通りだとするならば、その気持ちはものすごくわかる。

 

「それじゃ、アタシ達も一樹君と一緒に片付けを―――」

「すみません。私、気になるフレーズがあったので残って練習していきます」

 

いざ、片付けをというところで、いきなり紗夜さんがそれを遮るように言いだしたのだ。

 

「そう? それじゃ、ギター周りはそのままにしておくから、あとはよろしくね」

 

(別に、特段気にすべきポイントはなかったような気がするんだけど)

 

細かなところはあれど、特に残ってまで練習しなければいけないところはなかったはずだ。

 

「それなら僕も付き合うよ」

「え?」

 

僕の申し出が予想外だったらしく、紗夜さんは驚いた様子で僕の顔を見る。

 

「僕も同じギターだし、”気になるフレーズ”に対して何かアドバイスができるかもしれないでしょ」

「ですが………いえ、お願いします」

 

一瞬断ろうとしたみたいだが、僕が譲らないと悟ったのか、紗夜さんは申し出を受け入れてくれた。

こうして、僕と紗夜さんの個人練が始まったのだが……

 

 

 

 

 

「どうでしょう?」

「……さっきと同じ、特におかしなところはないけど」

 

これで何度目のやり取りだろうか?

紗夜さんの演奏に、特に問題視するような個所もなくアドバイスのしようもない状態が続いていた。

僕から見た紗夜さんは、少しだけ思い悩んでいるような気もする。

 

(これはどうしたものだか)

 

細かなところを言っていけばいいのだろうか?

それとも別のアプローチで行ってみるかなどといろいろと考えを巡らせる。

 

「とても、つまらないわ」

「ん? 紗夜さん、今何か言った?」

 

そんな時、紗夜さんの口から言葉が漏れたのだが、考えを巡らせていた僕は、確認のため紗夜さんに何と言ったのかを聞くのだが。

 

「いえ、別に何も言ってません」

「……そう。それで、どうする? もう少し続ける」

「すみませんが、お願いします」

 

(今のって……間違いなく”つまらない”って言ってたよな?)

 

再び始まる紗夜さんのギターの演奏に耳を傾けながらも、僕は紗夜さんが漏らした言葉の内容に、心なしか嫌な予感を感じざるにはいられなかった。




この章は原作のイベントストーリーに多少のアレンジを行っている話になります。
基本的な流れは原作と同じです。
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