BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第206話 頼みと恋人と

男たちの襲撃から数日経ったある日の放課後、僕はファミレスである人物を待っていた。

 

「お待たせ~☆」

「すみません、遅くなりました」

「遅れてしまって、ごめんなさいね」

 

やってきたのは、リサさんに大和さん、そして白鷺さんの三人だ。

 

「いや、こっちこそ急に呼び出してごめんね」

 

三人とも遅くなったことを謝ってくるが、元々はこっちが無理を言って集まってもらっているような状況なのだから、文句を言う資格はない。

むしろ、来てくれたことに感謝するべきだろう。

 

「で、私たちを呼び出した用事っていったい何かしら?」

「皆に頼みたいことがあるんだ」

 

前置きはいいから早く穴しなさいと言わんばかりに、白鷺さんが本題を聞いてきたので、僕は単刀直入にそう答えた。

 

「頼みたいこと? それっていったい何?」

「日菜さんと紗夜……さんの警護みたいなのをしてほしいんだ」

 

リサさんの疑問に、僕は一瞬紗夜のことを呼び捨てにしそうになるのを、無理やり修正しながらも頼みたい内容を言う。

 

「日菜ちゃんと紗夜ちゃんの? それってどういう――――」

「これから話すことは二人には他言しないでほしいんだけど」

 

僕のお願いする内容が、あまりにも不穏な予感を感じさせるものだったためか、詳しく聞いてこようとする白鷺さんに、僕はそう釘を刺したうえで事の仔細を三人に話した。

 

「なるほど、つまり美竹君は怖い人に狙われていて、それに日菜さんたちが巻き込まれないようにしたいと、そう言うことですね?」

「そう言うこと」

 

僕の説明に、大和さんなりに要約した内容に頷く。

流石に個人名までは口にしていないが、それでも三人には事の深刻さを伝えることができた。

 

「本当なら、無関係な皆を危険に巻き込むことはしたくないんだけど、そうも言ってられなくなったんだ」

 

本当は、できる限りやりたくなかったのだが、この間の襲撃で僕は、紗夜たちにまで被害が及ぶ可能性を恐れたのだ。

話には聞いていたが、僕の予想よりも相手の動きが大胆だったのが原因だと思っている。

 

「警護っていうけど、私たちはそういうのは……」

「いや、一緒にいてもらえるだけで十分なはずだから、それだけでいい」

 

これは先の襲撃の時に、田中君たちが助太刀に入ったことで、向こうのほうが分が悪くなり退散したことを踏まえての策だ。

もちろん、根拠なんて全くない。

むしろリスクが大きい。

それでも、僕はお願いしようとしているのだ。

 

「でも、どうしてあたしたち? ほら、他にも適任者がいそうだと思うんだけど」

「リサさんは、彼女に余計な不安を与えずに一緒に行動できると思ったんだ。大和さんは性格柄、日菜さんに違和感を感じさせずらいし、白鷺さんは有名人というステータスと冷静な状況分析ができる点からお願いしたんだ」

 

ぶっちゃけ返り討ちにすることは、期待もしていなければ望んでもいない。

リサさんや大和さん達なら、もし紗夜たちに何かあってもいち早く連絡をもらえる可能性がある。

早ければ早いほど、二人が無事でいられる可能性も高まるのだ。

白鷺さんに関しては、根拠のないことだがテレビで有名な人がいれば、少しばかりの牽制にもなるし、万が一の時の判断も的確なはずだ。

 

「私たちのことを高く評価してもらうのはありがたいけど、ほかの人に話したほうがいいと思うわ。例えば彩ちゃ……イヴちゃんとか」

「丸山さんは置いとくとしても、若宮さんの場合は何かあった時が怖いのもある」

 

白鷺さんも自分で名前を出しておいて、無理であることに気づいたのか、露骨に言い直してきた。

まあ、確かに丸山さんの場合は期待しないほうがいいかもしれない。

 

「……わかったわ」

「千聖さん!? ほんとに誰にも言わなくてもいいんですか?」

「ええ。美竹くんは一度こうだと決めると、なかなか意見を変えない頑固者だから、何を言っても無駄よ」

「失礼な……そのとおりだけど」

 

黒い笑みを浮かべながら大和さんに答える白鷺さんに、軽く文句を言うが当の本人は全く気にも留めてなかった。

そんなこんなで、見事に見三人の協力を取り付けることに成功した僕は、まだ気づいていなかった。

話し合いをしている僕たちを見ている人物がいたという事実に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにち……は?」

 

それは、三人に紗夜たちの護衛をお願いした数日後のことだった。

この日、Roseliaのバンド練習に付き合うことになっていた僕がスタジオを訪れると、その場にいた全員が一斉にこちらに視線を向けてくる。

しかも、空気がものすごく重苦しい感じがする。

 

「えっと……どうしたの?」

 

何が何だかわからない僕に、最初に口を開いたのは

 

「一樹君。私の質問に正直に答えて」

 

紗夜だった。

 

「わかった」

 

紗夜の心の奥まで見透かすかのような鋭い視線に、体をこわばらせながらも彼女の質問を待つ。

 

「一樹君、何か私に隠し事してますよね?」

「ッ! な、何のこと?」

 

紗夜の直球な問いかけに、僕は一瞬動揺しそうになるのを何とかこらえて答える。

 

「そうですか……やっぱり、あなたはそう言うのね。宇田川さん」

 

そんな僕の答えを最初から予想できていたのか、悲しげな表情でつぶやくとあこさんの名前を口にする。

 

「は、はい! あこ、見ちゃったんです。その……リサ姉とちさ先輩とまやさんの三人と一樹さんが密会しているのを」

 

(僕としたことがッ)

 

あこさんのその言葉で、僕はあの時のことをあこさんに目撃されていたのを初めて知った。

もし、これが敵ならば一巻の終わりだったかもしれない重大なミスだった。

 

「一樹君、そんなに私が信用できませんか?」

「そ、そんなことは……」

 

いったいどこまで知っているのか。

そんな疑問と、紗夜に悲しい表情をさせている自分への不甲斐なさに対する怒り咎め着やに混ざり合って、うまく考えがまとまらない。

そして、そんな状況でもリサさんは何も言おうとはせずに、湊さんたちと一緒に静観している。

いや、もしかしたら僕の頼みごとを話したのかもしれない。

 

「だったらどうして言ってくれないのよ!」

「っ!?」

 

僕の思考を止めたのは、紗夜の叫び声にも近い声だった。

 

「私は、あなたの恋人なのよ? その恋人が何者かに狙われているって知らなくて平気だって思ってるの? 全部自分で背負い込めばいいって思ってるの?」

 

紗夜の言葉は、僕の心を鋭い刃のように切り刻んでいく。

 

「どうして……私にも……」

「紗夜……」

 

俯きながらも、僕の体を叩く紗夜に、僕は何も言えなかった。

叩かれた痛みは全くなくても、心がとても痛んだ。

それは、紗夜を泣かせたことへの罪悪感からなのかもしれない。

 

「……ごめん。僕は紗夜を怖がらせたくなくて……でも恋人……なんだよね。だったら、二人で力を合わせようとするべきだったね」

 

恋人というのは、お互いにお互いを大事に思いあって力を合わせることが大事なのだ。

僕のやっていたことが、ただのひとりよがりだったのだ。

 

「………約束してください」

 

しばらく俯いて何も言わな型紗夜だが、顔を上げた。

その目には涙が浮かんでいた。

 

「もう、私に隠し事をしないって……約束してください」

「約束するよ……絶対に」

 

そういいながら、僕は紗夜の涙をぬぐうと優しく抱きしめる。

それに応えるように、紗夜も僕の背中に手を回した。

 

「一樹君」

「紗夜」

 

そして、一度体を話した僕たちは、お互いに見つめ合いながら顔を近づけ―――

 

「えー、ごほんごほんっ」

「「ッ!?!?」」

 

ようとしたところで聞えてきた咳払いに、僕たちは慌てて離れた。

 

(そ、そうだった。ついつい流れるようにやってたけど、今僕たちがいるところって……)

 

紗夜しか見えていなかった視界が、一気に広がる。

そう、ここには”皆”がいたのだ。

 

「あの、構わないとは言ったけど、さすがにとこ度構わずはいかがなものかしら?」

「あ、あはは……アタシまで恥ずかしくなってくるよ」

「うわぁ……」

「ふ、ふふふふふ、二人が……き、キキキキ――――」

 

湊さんは、冷静に・……でも顔が真っ赤になって視線をそらしながら咎め、リサさんは顔を真っ赤にして顔を手で扇ぎ、あこさんは目を輝かしてみているし、白金さんに至ってはあまりにも刺激的な光景に目を回していた。

まさに、この場はカオスと化してしまった。

 

「一樹君の……馬鹿」

 

そんな状況で、僕は紗夜から上目遣いで怒られるのであった。




二人、バカップルの道に進むの巻でした(嘘です)
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