旧年中はお世話になりました。
今年もよろしくお願いします。
ということで、第222話になります。
第222話 そして始まる過去語り
「えっと……」
一昔前のスタントマンが爆発する建物から無事生存して脱出することができたというレベルのことをした僕は、今非常に戸惑っていた。
今いるのは毎度おなじみの羽沢珈琲店。
いつも休日にはケーキセットに舌鼓を打ちつつのどかな一時を満喫するのにうってつけのお店だ。
違うのは、僕はなぜか立たされており、そして僕に向けて冷たい視線を向ける人たちがいることだったり。
「それじゃ、事情を話してもらえるかしら?」
「これ、尋問?」
「何か、文句でも?」
「私もだけど、紗夜ちゃんに日菜ちゃんすごく心配してたんだよ」
「ちゃんと説明くらいはしてほしいかな」
義妹の蘭を始め、紗夜に日菜さん、花音さんになぜか白鷺さん、そして湊さんにリサさん、ここのお店の娘でもあるつぐに、啓介と田中君、中井さんに森本さんの12人がいた。
ここはつぐの家の人の計らいで貸し切りになっており、それだけでいろいろと申し訳なく感じてしまう。
(いきなり来るように呼び出されたから来てみれば……)
12人も集まっているのだから驚きだ。
しかも、これでも抑えめにしているというのだから末恐ろしい。
もし抑えなければこの倍は来ていただろう、というのが白鷺さんの話だ。
全員の視線は、冷たかったりやや厳しい物だったりと様々だが、全員が一貫して感じているのは、説明しろということだろう。
「わかったわかった。ちゃんと説明するから」
僕は両手を上げて降参のポーズをしながら、言ったものの
「とはいえ、話せる範囲になるけどそれでいい?」
「それは、そういう意味だ?」
「色々と守秘義務とかで話せる内容が制約されてるっていう意味」
田中君の問いに、僕は簡潔に答える。
実際、ここにいること自体が向こうからすれば好ましいことでは無いことらしく、ものすごく色々なことを注意されていた。
話すことの危険性、また話していい範囲など様々だ。
「それでいいから、話して」
「……わかった。話すよ」
最後は紗夜の言葉が後押しだった。
そして、僕は話を始めたのだ。
この、ある意味茶番にも近い一連の出来事の真実を。
BanG Dream!~隣の天才~ 最終章『隣の秀才』
すべての始まりは、工場で閉じ込められた時にさかのぼる。
「はは。携帯はバッテリー切れになって終わり、僕は命が終わる、か」
あの時の僕は、完全に絶望していた。
何せ、唯一ある出入口は瓦礫でふさがれ、建物には爆弾が仕掛けられ、しかもあと1分弱で爆発するときた。
そうなれば、誰だってそうなるだろう。
ましてや、この時は満身創痍で、活発的に身動きが取れるような状態でもなかったのだ。
「紗夜と遊園地……行きたかったな」
そう、その言葉を口にするまでは。
(……いや、待てよ)
そこで、僕はふとした疑問を抱く。
(そうだよ……紗夜と遊園地に行くんだ)
それはたぶん、誰が聴いてもあきれるようなきっかけだたと思う。
(というか、なんで僕がこんな目にあわないといけないんだ? むしろあうのは向こうだろうが)
それは至極当然の考えだ。
だが、それを考え出したことで、ふつふつと心の底から怒りがこみ上げてくる。
「あいつらのせいで死んでたまるかっ!!」
口から出た言葉とともに、一気に視界が開けてきたような気がした。
人というのは不思議なもので、その時の気分で見え方が大きく変わってくるというのを聞いたことがある。
(とはいえ、どうすれば……)
「あ……」
周囲を見渡した時、僕はそれを見つけたのだ。
少し離れた場所にあるそれは、注意深く見なければ見逃してしまう、取っ手のようなものだった。
サビついているのか赤っぽい色のそれに、僕は痛む体に鞭を打つように移動する。
近くで観察すると、取っ手と思われるそれの周りには溝があった。
しかも正方形のだ。
「よいしょ……っと」
もしやと思い、辛うじて動く左手でその取っ手部分を引っ張ると、僕の予想通り、それが開いたのだ。
つまり、金属製のとって付近の地面は、扉のようなものでもあったのだ。
そして、それを開けた僕が見たのは、何かに映し出される自分の顔だった。
(これって……水?)
どうやら何らかの用途で使う水が地下に溜められていたようで、水があった。
波紋のようなものも見えたので、鏡ではないのは確かだ。
(ここに飛び込めば……)
あの爆弾がどれほどの威力なのかはわからない。
もしかしたら、地下にも影響が及ぶ可能性がある。
ましてや、ここの水深が分からない以上、溺れる可能性だってある。
それでも
「このまま死ぬよりは……ッ」
マシだと思った僕は、意を決して飛び込もうとしたのとほぼ同時に、僕は意識を失った。
最後に聞こえたのは、けたたましい爆発音と冷たい感覚だった。
「ぁ……れ?」
そして、次に目を覚ました場所は、とても薄暗い場所だった。
聞えてくるのは一定間隔に聞こえる電子音。
その音は、よくドラマでも見聞きする心電図のようなものと似ていた。
周囲を見渡してみると、今いる場所が妙員であることがはっきりとわかった。
(生きてる……のか?)
これは夢かそれとも現実か。
その判断ができない僕は、ただただ困惑するしかなかった。
「意識がっ……。すぐに医者と――に連絡をしてくる。お前は、見張ってろ」
「はっ」
そんな僕の横で交わされる会話をぼんやりと聞きながら、僕は自分が実際に生きていることを実感するのであった。
ここにきて、ようやくの章のタイトルが明かされるという展開になります。
ここからは、説明会という名の、一樹の約二か月ほどの出来事の話になります。
章に関しては、紗夜ルート完結後に追加の予定です。