夏といえば?
そんな問いかけをされれば、返ってくる答えはいくつもある。
暑い、海、休み、恋愛、花火等々例を挙げればきりがない。
では僕にとって夏とは何か。
それは……
(暑い)
今の気持ちでは、一番最初になるだろう。
年々暑さを増していくこの季節、今年は暑くはないという天気予報もあるが、今だけはそれが外れだと言いたい。
そんな僕が今いるのは真っ暗闇な空間だ。
ちなみに、今は完全に昼間だ。
完全に密閉されているので、外の様子は全く分からないが、間違いないはずだ。
そう、僕は箱の中に軟禁状態になっているのだ。
(どうして僕がこんな目に)
僕は、過去の出来事を遡ることにした。
それは、二日前のこと。
僕は相原さんに仕事の件で説明があるので、指定された事務所のミーティングルームを訪れていた。
「おはようございます……って、あれ?」
中に入ると、なぜかこちらを撮影しているカメラが出迎えてきた。
何の撮影なのかはわからないが、部屋を見渡しても僕とスタッフの人以外の姿が見当たらないのが不思議だった。
「あの、他のメンバーは?」
「今日は一樹さんだけです」
相原さんの答えも、さらに僕の困惑を加速させる。
(僕はMoonlight Gloryのギターだぞ? 一体仕事ってなんだろう)
考えられるのはPastel*Palettesに関することだ。
作曲の依頼などであれば、僕一人が呼び出されても不思議ではない。
(何だろう、この何とも言えない胸騒ぎは?)
「実は、一樹さんにソロでのお仕事のオファーがありました。内容は無人島での撮影です。一緒に出演する方々と一緒に我々から出されるミッションに挑戦していただく物になります」
(何だ、ほかにも人がいるんだ)
僕一人でサバイバル生活を送れと言われたらどうしようかと思ったが、一応一安心だ。
「こちらが企画の概要になります」
「ありがとうございます」
相原さんに手渡された資料を見て見るが、概要に記されている内容は先ほど説明に合った通りのものだ。
ミッションにすべてクリアすれば、新曲の発売が決まるらしい。
(新曲?)
ここでふと違和感を感じた。
僕たちはまだ、新曲に関する相談は一切行っていない。
いや、そもそも新曲はライブでのお披露目だ。
ならば、ライブの告知と書いていなければおかしい。
「あの、他に出演される方の名前がないんですけど?」
「そ、そちらはシークレットゲストです。当日までのお楽しみということで」
なんだか、色々と不安が募る。
「持ち物ですが、どのような法律や常識に反するようなものでなければ、どのようなものでも一つのみ持ち込めますので、出発の日までご用意を」
「わかりました。ところで、出発というのはいつぐらいに?」
「二日後です」
「二日!?」
祝日とはいえ、あまりにも短すぎる日数は悪意すら感じさせる。
とはいえ、追及することもできぬまま解散となってしまったため、僕は急ピッチで準備に追われた。
義父さんたちへの説明も苦労した。
何せ、僕自身どう説明すればいいのかがわからないのだ。
結局、義父さんたちには無人島での撮影とだけ言っておいた。
そんなわけで二日後の朝。
「おはようございます」
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないです」
いつもの場所で、相原さんと合流した僕は、質問に答えながら相原さんの車に乗り込むと、そのまま移動することとなった。
そして到着したのは船乗り場であった。
そこには数人のスタッフの人と思われる人たちの姿があった。
「一樹さん、おはようございます」
「おはようございます。本日はよろしくお願いします」
なんだか撮影している様子だが、とりあえず挨拶だけはしておいた。
「それでは、こちらの中に入ってください」
「へ?」
スタッフの人が示しているのは、何の変哲もない木箱だ。
隙間が全くなく、安全面に不安があるような気がするのだが……。
「安全面には十分配慮しておりますので、ご安心ください」
「は、はぁ……」
どうやら僕の思っていることが表情に出ていたようで、スタッフの人にお墨付きをもらえたが、果たしてそれを信じていいのだろうか?
「どうして私が?」
「実は一樹さんがシークレットゲストなんです。そろそろ時間ですので」
一体何のことだと思いながらも、僕は木箱の中に入ると、蓋が閉じられた。
それから間もなく僕が入った木箱は船に積み込まれ、そのまま船が出たのか、体が揺れた。
(いったいこれは何? ドッキリ?)
そんな中僕はこの状況が呑み込めずに、困惑し続けることになった。
というか、シークレットゲストになるほど、僕は大物ではないような気もするのだが……。
そんなわけで、しばらく船に揺られた僕は目的地に到着したのか、船から降ろされた。
「一樹さん、もう間もなく撮影が始まります。我々が合図をしましたら蓋をあけて出てきてください。蓋はこちら側です」
「わ、わかりました」
意味不明すぎるこの状況に、不安が強くなってきたところに聞こえた相原さんの言葉は、不思議と安心感を覚える。
まあ、錯覚だろうけど。
そんなわけで今に至る。
思い返してみても、意味不明だった。
だが、落ち着きを取り戻すことはできたようで、そうなってくると先ほどから聞こえてくる他の出演者と思われる人物たちの声が気になり始めてきた。
(何だろう? さっきから、知り合いの声が聞こえるような気がするんだけど)
しかも、日菜さんの声のような気がする。
(あはは、とうとう幻聴が聞こえだしたか)
この話を笑い話で日菜さんにするべきか否か……。
いや、しよう。
そう自分の中で完結させた時だった。
「はい、カメラ回りました!」
どうやら撮影が始まったようだ。
周辺に人の気配がするのでこの付近に集まっているのだろう。
「”パスパレ”の皆さん、おはようございます!」
(………は?)
外から聞こえたスタッフの人の言葉に、僕は思いっきり固まる。
(今”パスパレ”って言った?)
今度ばかりは幻聴ではない。
ちゃんとこの耳で聞いた。
「最初のミッションに入る前に、ここでスペシャルゲストの方に登場していただきます!」
「え? スペシャルゲスト?」
「もしかして、ブシですか!?」
「イヴさん、さすがに違うと思いますよ」
「だ、誰なんだろう……うぅ、怖い人じゃなければいいな」
「あたし、なんだかるんっ♪てしてきたよ!」
それに間違いない。
スタッフの言葉のリアクションは紛れもなく彼女たちの物だ。
突然のゲストの説明に驚く白鷺さん、なぜか武士がいると思っているイヴさんに、彼女にやんわりとツッコミを入れる大和さん、そしてゲストが誰なのかに不安そうな声を上げる丸山さんと、謎の直感を働かしているのかテンションを上げている日菜さんの声なども。
「では、どうぞ!」
(これが合図かな?)
とりあえず、同じ姿勢でいるのもつかれるので、僕は先ほど教えられた場所を押し上げる。
蓋が外れて、そのまま立ち上がった僕が見たのは、僕たち以外に人の気配のない砂浜と、
『えぇ!?』
僕の登場に、驚きの声を上げる彼女たちの姿だった。
元ネタは原作のイベントです。
基本的には、原作沿いですが、ところどころでオリジナルを入れていきたいと思います。
読みたい作品は?
-
1:ほかのヒロインとの話
-
2:いっそのことハーレムを
-
3:その他