「な、なんで美竹君がここに!?」
「わぁ、一君だ! もうるるるるんっだよっ」
箱から出た僕に浴びせられる疑問の数々は妥当なものだ。
日菜さんは、相変わらずハイテンションだったけど。
「スペシャルゲストは、Moonlight Gloryの作戦参謀でもあり、皆さんの作曲を担当されている一樹さんです! 今日は、作曲者としてパスパレの皆さんと共に新曲の発売を目指していただきます」
(あぁ、そう言うことね)
僕はPastel*Palettesの作曲担当でもある。
だとすれば、すべて合点がいく。
心当たりのない新曲の件や、シークレットゲストやらも。
「では、早速最初のミッションの―――」
そして、有無も言わさずに最初のミッションが始まろうとした時だった。
「ちょっとよろしいでしょうか? 最初のミッションの前に、島を一周させてもらってもいいですか? 地形などを知っておきたいので」
大和さんがスタッフに提案したのだ。
とはいえ、確かにその通りだ。
どのくらいの大きさの島なのかも知っておけば、万が一の時には有利になるだろう。
「そ、それって森の中にも入るの? き、危険じゃないかな……」
(確かに、いかにもな感じだしな……)
丸山さんの不安げな様子は当然の反応だ。
少し先にある森は、いかにも何かがいますという雰囲気をまとっているし。
「どこが危険なのかを把握しておくのも重要です。それにもしかしたらここが危険な場所なのかもしれませんし」
「なるほど……地の利を得るって言うことね」
(大和さんの判断能力はすごいな……これなら、僕もやることは最低限度で済みそうだ)
尤も、その”最低限度”が大変なんだけど。
そんなわけで、大和さん先導の元、僕たちは島を一周するのであった。
「でも、一君が来るなんてびっくりだよ!」
「それはこっちのセリフだよ」
その道中、僕の横を歩く日菜さんと話をしていた。
「美竹くんはどのように言われたの?」
「えっと……無人島で撮影をすることと、ミッションをクリアして新曲の告知をすること……くらいだったかな。出発二日前に言われたときはびっくりしたけど」
「貴方も同じ感じだったのね」
白鷺さんの疑問に答えると、何とも言えない表情で同情されてしまった。
もしかしたら、彼女たちも同じような感じだったのかもしれない。
そんなこんな話していると、先ほど歩き始めた場所に戻ってきていた。
どうやら、いつの間にか一周していたようだ。
(見た感じ、それほど危険な場所ではなさそうだ)
トラなどの野生動物が出てきたりすることもなく、危険性はほぼないとみてもよさそうだ。
「これで、島の外側は一周したので、今度は内側の方を見ていきましょう」
これまた大和さんの提案で、次は内側を見ていくことになった。
「小屋のようですね。中を調べて安全そうならここを拠点にしましょう」
それからしばらくして、開けた場所に建っている木造の小屋の前までたどり着くことができた。
「それじゃここは僕が――「あたしがいっちばーん! それーっ」――ですよねー」
なんとなく、日菜さんが特攻していくのは分かっていたので、僕は横に移動して彼女の通り場所を確保する。
日菜さんの怖いもの知らずもここまでくると恐ろしく感じられる。
「ま、待ってよ日菜ちゃん。危ないってば~」
そんな日菜さんに続くように丸山さんが小屋の中にはいって行き、僕と大和さんは苦笑しながらも中に足を踏み入れた。
小屋の中は6人でちょうどいい感じの広さだった。
「中は埃っぽいけど、テーブルとかもあるみたいね……少し前まで人が住んでいたのかもね」
中をぐるりと見渡して口を開いた白鷺さんの言う通り、少々埃っぽい感じはするが、危ないようなものもなく、ここならば拠点としては最適だろう。
(ん? そういえば、僕って……)
ほっとすると、ふとあることを感がてしまった。
(ここにきてまだ何もしてないような……)
僕がここにきてしたのはみんなにくっついておしゃべりをしながら歩くだけだ。
(これって、まずくない?)
やはり男たるもの、彼女たちを守ってなんぼだろう。
なのに、僕はそれができていない。
「それでは、少し休憩をしてから、今後のことを――「はい、そこまで!」――」
「ここで、第1のミッションです!」
僕が焦燥感を感じている中、大和さんの言葉を遮るように、スタッフの口からミッションが告げられようとしていた。
「最初のミッションは『食べ物を見つける』です!」
なんだかスタッフの人が生き生きしているような気もするが、それはひとまず置いとくとして、最初のミッションは食材探しのようだ。
「なるほど……兵糧攻めですねっ」
「それは少し違うかと」
「というより、いったい誰と闘ってるんだ?」
若宮さんの言葉に大和さんは苦笑交じりに言い、僕は脱力感を感じながらもツッコミを入れる。
(何となく察しはついていたけど、なんだか用意されているのは必要最低限の飲み水みたいだし、食材とかは自分たちで用意する必要があるってことか)
まさかここで一晩過ごせなんて言う馬鹿げたミッションはないだろうとは思うが、何が起こるかがわからないのが彼女たちなのだ。
「ふっふっふ~。そう言うことなら私に任せてっ。私が持ってきたこの図鑑にいろいろ書いてあるよっ」
何時にも増して自信ありげな丸山さんから、やや分厚い図鑑を受け取った大和さんが内容を確認する
「ちょっと失礼しますね……おぉ、ものすごくわかりやすく説明してあるので、これなら何が食べられて何が食べられないのかがよくわかりますね」
「あ、本当だ」
僕も少しだけ見せてもらったが、確かにこれなら素人でもある程度の見分けはつくと思う。
「彩ちゃん、ナイスプレ一」
「さすがアヤさんです」
「えへへ~、みんなの役に立ってよかった」
皆から送られる絶賛の言葉に、丸山さんも嬉しそうだ。
と、ここまでは順調だったのだが、ここで大きな問題が発生することになる。
「では、この図鑑をもって食材を探しに行くメンバーと待機するメンバーを決めましょう」
という大和さんの言葉によって。
ここにきてまだ何もしていない。
主人公の心境通りの惨状です。
次回は班分けの話になります。
……この無人島編、いつまでかかるのかが全く分からなかったりします(汗)
それでは、また次回お会いしましょう。
読みたい作品は?
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1:ほかのヒロインとの話
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2:いっそのことハーレムを
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3:その他