大和さんを始めとした若宮さんと日菜さんの三人が食材探しに出掛け、僕と白鷺さんに丸山さんの三人で小屋の中で待機することになったのだが……
「うぅ……麻弥ちゃん、イヴちゃん、日菜ちゃん大丈夫かな……ケガとかしてないかな」
「彩ちゃん、気持ちは分かるけど少し落ち着きましょ。ずっとうろうろされてると、気になって仕方ないの」
みんなが出ていってからというものの、みんなの様子が心配なのか丸山さんは小屋の中をうろうろと歩き続けていた。
「だって、万が一にも熊とか出ちゃったら……」
(無人島に熊……ねえ)
どちらかというと虎とかヒョウとかのほうが出そうではあるけど。
「万が一にもないわよ。それに、これはテレビの収録なのだから、そこまで危険はないはずよ」
「いや、ありえなくもないよ。だって……ねえ?」
ここのスタッフ、救いようがないほどに無能だし。
とは、流石に言わなかった。
なんせ、この小屋にもどういうわけかカメラがセッティングされているのだ。
不用意なことを言うと、後が怖いのだ。
「ほらぁっ! 美竹くんだってこういうんだよっ」
「美竹くん、お願いだから彩ちゃんをたきつけないで頂戴」
「そのつもりはなかったんだけど……ごめん」
なぜか丸山さんの中では、僕の言葉が何らかの根拠的な扱いをされているようなので、僕はとりあえず何も言わないことにした。
「彩ちゃん、信じて待つのも立派な仕事よ」
「う、うん……そうだよね………」
白鷺さんの一言は、丸山さんにとっては落ち着けるきっかけになったようで、丸山さんは白鷺さんの隣に腰かけた。
「で、貴方はいつまで黄昏てるの?」
「放っておいて……心理戦を使って勝負を挑んだら思いっきりストレートにこられて負けたショックを消し去ってるんだから」
僕は、さっきからずっと窓から空を眺めて、軽く現実逃避をしていた。
そんな僕にしら麻木さんの呆れたような口調は、ものすごくグサリと来た。
「イヴちゃんは、まっすぐな子よ。だからあなたの宣言を信じただけよ」
「わかってるから言わないで……」
若宮さんが心がまっすぐな人だというのは、今の一戦でよくわかった。
ただ、それに比べて自分の姑息さにショックを受けているのだ。
「でも、どうしてそこまでして待機組から変えようとしたの?」
「いや……だって、助っ人みたいな紹介をされて蓋を開けてみれば、やっているのは大和さんを先頭に行かせて自分は話をしたりしているだけ。今はそれに女性陣に食材探しをさせて、自分も一緒に行こうとして姑息な心理戦を使ったけど、見事に惨敗したっていうのも付け加えられるけどね」
軽く自虐が混じっているけど、まさしくその通りのことだ。
「そんなことないよ、美竹君がいてくれてよかったて思うよ。今だって、待っていて怖く感じてないよ」
「ええ。それに、美竹君は麻弥ちゃんと同じように何があっても落ち着いて行動ができるって、私は信じてるわ」
「ふたりとも……ありがと、一応二人の言葉受け取っておくよ」
慰められている僕だが、役に立てることはあるのだろうかという疑問は残る。
正直大和さんがいれば大方問題は解決できそうだし。
(まあ、僕は日菜さんのストッパーにでもなるか)
彼女の暴走を止めることくらいしか、僕には思い浮かばなかったのだ。
「うーん、信じて待つって決めたけど、やっぱり心配だよ~」
あれからさらに時間が経つが、外の様子に異変もなく、静かで穏やかな時間が過ぎていた。
時々聞こえる鳥の鳴き声も、なかなかにして通なものだ。
「私は、日菜ちゃんが変なものを持ってくるんじゃないかって、ちょっと心配になってきたわ」
(あー。あいつならやりそう。というかやるな絶対)
『見て見て! これ、とってもるんっ♪ってくるでしょ!』
そう言ってこちらに満面の笑みを浮かべて、とんでもないものを片手にこちらに見せてくる日菜さんの姿が。
(いや……何も言うまい)
大和さんもついているのだから、さすがに大丈夫だろうと思うことにした。
「ひっ」
「……? 彩ちゃん、固まったりしてどうしたの?」
いきなり体をこわばらせる丸山さんの様子を不審に思った白鷺さんが、彼女に声をかける。
「ち、千聖ちゃん。落ち着いて聞いて、ね」
声を震わせながら、丸山さんはさらに言葉をつづけた。
「千聖ちゃんの足元に………む、虫がいるのっ」
大きな声で言い切った丸山さんにつられて、白鷺さんの足元を見て見ると、確かに虫がいた。
どんな虫かはわからないけど。
「………」
その虫を白鷺さんも確認したのだろう。
彼女の動きがぴたりと止まる。
(あ、これはやばいやつかな)
先ほどまでの静けさとは違い、これは嵐の前の静けさのようなものだ。
僕は、無意識的に耳をふさぐ。
「きゃあああああ!!!」
その瞬間に響き渡る白鷺さんの悲鳴は、塞いだはずなのによく聞こえた。
そして、僕のいるほうにものすごい速さで逃げてくる白鷺さんの様子は、いつもの彼女からは想像ができないほど、慌てていた。
(なんだか、意外な一面を見れた気がする)
ここで待っていても悪くはないなと、この時までは他人事のように思っていた。
「ち、千聖ちゃん落ち着いてっ! わ、私が千聖ちゃんを、ま……守るからっ」
白鷺さんの悲鳴につられたのか、丸山さんは慌てたような表情を浮かべながら言い切ると、どうしてか壁に立てかけてあった木刀を手にすると、それを振り下ろしてきた。
……僕達に向かって。
「きゃ!?」
「うわ!? 誰だ! こんなところに木刀を持ってきてるのはっ」
しゃがむことで何とか木刀の一撃を受けずに済んだが、一体どうしてこんなものがここにあるんだ?
「あ、彩ちゃん? イヴちゃんが持ってきた木刀でどうするつもりなの!?」
(若宮さんかっ!!)
確かに武士は刀を持っているけど……まさかそれがこのような災いをもたらすとは、持ってきた本人も想像にもしていなかったと思う。
「えい、えいっ、えい!! ち、千聖ちゃんは私が守る!!」
言葉だけは頼もしいけど、木刀を振っている方向にいるのはその守るといった白鷺さんと、僕がいるのだ。
しかも、本人は恐怖からか目を閉じながら降り続けている。
「お、お願い彩ちゃん、落ち着いてっ。せめて、目を開けてっ」
「えい、えい、えいっ! 千聖ちゃんから離れてっ!」
「うお、こっちに来た!?」
いきなり白鷺さんのほうから、こちらの方向に向きを変えた丸山さんが振りかぶる木刀が僕を襲う。
真剣白刃取りのようなことができればいいのだろうが、僕にはそのような芸当など持っているわけもなく。
「うお!? のわぁ!?」
こちらに集中して振りかぶってくる木刀を紙一重で避け続けることしかできなかった
「えい、……えい……ええいっ! 虫なんて、あっち行け!!」
「誰が虫だ……って、あぶなっ!?」
ツッコミを入れる暇もないほどに、木刀が正確に僕に向かって振り下ろされてくる。
「お、お願い彩ちゃん。私の話を聞いーーーきゃああ!!?」
こうして僕たちはしばらくの間、丸山さんの木刀に逃げ惑うことになるのであった。
「む、虫は、どっかに逃げていったようね」
「よ、良かった……怖かったよ~」
(僕はむしろあんたのほうが怖かったよっ)
みんなが丸山さんをここに残そうとしたり、フォローを必要以上にする理由がなんとなくわかったような気がする。
「ま、また来たらどうしよう………その時は、この木刀でっ」
(お願いだから、勘弁してくれっ)
僕は心の中で、虫が出てこないことと、食材を探しに行ったみんな帰ってくるのを強く願い続けるのであった。
アンケートですが、現時刻を持ちまして終了となりました。
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皆様のご意見を参考にして、今後の小説に活かしていきたいと思います。
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そして、次の投稿は来週の日曜日となります。