BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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修一と言いながらなぜか三日連続投稿をしているというこの謎……誰か溶ける人はいないのかなと思う今日この頃です。


第2章『理解者』
第9話 見学


徐々に暑さも増すこの頃。

 

「ふんふーん♪」

 

僕は天文部部長と共に、部活動に励んでいた。

……とはいえ、やっているのは謎の活動日誌の読みこむことだけど。

 

「この謎の物体は?」

「あー、それはね。この間あたしが作った渾身の衛星の模型だよ!」

「これが?」

 

テーブルの上に置かれていたのは、僕には破片の山が積み上げられたごみにしか見えないのだが。

 

「この間衛星が帰還したじゃん?」

「そういえばそんなニュースやってたっけ」

 

日菜さんに言われて思い出したのは、長期間通信が途絶え、帰還は絶望的と言われた衛星が無事に地球に帰還したニュースだった。

その出来事を映画にするといった話も出ていたのは記憶に新しい。

 

「それがうれしくってつい屋上から投げちゃったんだよねー。あーあ、もったいないことしちゃったなー」

「……」

 

色々とツッコむところがありすぎて困る。

 

(何で、屋上から投げたんだろう?)

 

日菜さんのことは何となく理解はしているが、それでも時々分からなくなることがある。

 

 

 

BanG Dream!~隣の天才~   第2章『理解者』

 

 

「すみません」

「はーい!」

 

天文部に、珍しく二名の訪問者が現れた。

見ると、どうやら一年生のようだ。

 

「ここって、天文部ですか?」

「うん、そうだよ!」

 

(これって、部活動の見学か)

 

時期的に少しずれてはいるが、まあ人にはいろいろと事情もあるのだろう。

 

「入部希望なんですけど―――」

「入部!? 一君、入部希望だって! もうるるんっ♪だねっ」

「日菜さん少し落ち着いて」

 

どうやら入部希望のようだが、日菜さんが大はしゃぎで喜びをあらわにするのを、何とか落ち着かせる。

別に部員勧誘やら人数の確保などにやる気も興味もないが、入部したいと言ってくれる人がいるのであれば入部してもらおうかなというスタンスだ。

 

「あ、あの……見学してもいいですか?」

 

そんな日菜さんのテンションに圧されたのか、二人の女子生徒はどこかよそよそしい様子で聞いてきた。

 

「いーよ! いーよ! ね、一君っ」

「僕は別に構わないけど……見学と言ってもねぇ……」

 

本来であれば部活動の風景でも見てもらえればいいのだろうが、生憎と彼女たちに見せられるようなことはしていないので、どうすればいいのかに悩んだ。

活動はしているが、それを理解してもらえるのかという意味的なことだけど。

 

「あの、この置物は何ですか?」

 

そんな僕の悩みも、1人の女子生徒の問いかけですべて無意味になってしまったが。

 

「あ、それはね! 宇宙衛星の模型だよ!」

「も、模型……」

 

(あーあ、もう知らない)

 

日菜さんの返事を受けて、テーブルの上に置かれた模型だったものを、目を瞬かせてみていたが、どう返事をすればいいのかがわからず困惑した様子だった。

確かに、あれを見て宇宙衛星の模型だと思えというほうが難しい。

 

「あ、そーだ! おもしろいものを見せてあげるね!」

「ちょっと、日菜さん。いったい何を……ってそれはもっとまずくない?」

 

日菜さんが手にした”活動日誌”を見た僕は、日菜さんを止めようとするが、日菜さんはそれを開いてしまった。

 

「ね、すっごく面白いでしょ!」

「そ、そうです……ね」

 

そこには、どう反応すればいいのか困るような容が記されており、それを読んだ女子生徒たちは完全に引いていた。

そんなことなどお構いなしと言わんばかりに、さらに日菜さんがおもしろいと思った場所を見せ続けていた。

 

(これは入部は絶望的かな)

 

その様子を見ていた僕は、新入部員の獲得をあきらめるのであった。

 

 

 

 

 

「むー」

「いい加減、現実を受け入れたら?」

 

天文部に入部を希望していた二人の女子生徒が部室を後にしてからというもの、日菜さんは唸り続けていた。

 

「だって、どうしてダメなのかがわからないんだもん」

「理由はちゃんと言ってたと思うけど」

 

入部希望の女子生徒たちだが、結局入部を辞めてしまった。

日菜さんにしてみれば、入部を断った理由がわからないらしいが、ちゃんと女子生徒たちは理由を言っていた。

 

「だって、”あたしのことがよくわからない”しか言ってないんだよ?」

「だけって……」

 

十分すぎる理由だと思う。

いや、むしろ良く長い時間彼女の話に付き合っていられたと思う。

それほどに、理解に苦しむような内容のことを言っていたのだ。

尤も、8割がたが活動日誌が原因だけど。

 

「ていうか、あたしのことがよくわからないっていうけど、あたしだって他人のことよくわかないよ」

「日菜さんってそういう人だもんね」

 

彼女は、天才で一度見たものはすぐに覚えてしまう。

その反面、他人の気持ちがわからないところがある。

それが原因で、ひと悶着があったのは記憶に新しい。

とはいえ、彼女には悪気は一切なく、またどちらかというと”他人自体がよくわからない”のではないかと思うようになっていた。

 

「一君も、あたしのことってわからないと思う?」

「まあ、”普通”という枠組みで言うのであれば理解不能だね」

 

日菜さんの問いに対して、僕は即答にも近い形で答えていた。

別に、その答えを用意していたわけではないのだが、自然と口が動いていた。

 

「でも、日菜さんの場合は”普通”の枠組みに収める必要はないと思うけどね」

「え? それって、どういう意味?」

「それは内緒。自分で考えてみな」

 

彼女は、”普通”という枠に収めてはいけないような気がしていた。

そうすると、彼女の才能が活かされないと思ったからだ。

 

(自分という枠にそれを当てはめるというのも、場合によってはありなんだよ)

 

「え~! ずるいよー!」

 

そんなことを思いながら、僕は頬を膨らませて不満そうに抗議してくる日菜さんの相手をするのであった。

それは、とある日の部活動の一コマだった。




元ネタは四コマ漫画だったりします。
そういえば、例の映画はどうなったのかが、今更ながらに気になっていたりします(汗)

それでは、また次回お会いしましょう。

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