BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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今回より、第3章が始まります。


第3章『Change』
第12話 葛藤


もうどのくらいで夏休みになるのだろうか?

僕は柄にもなく黄昏ていた。

 

(まさか、告白されるなんて……)

 

その理由は、ついこの間に花音さんにされた告白だった。

しかも、キスもセットで。

彼女の性格からして、それはかなり思い切った行動だったと思う。

それだけに、花音さんが本気なのだという思いはこれでもかというくらいに伝わってきた。

そんな彼女の告白を、僕は………………断ったのだ。

 

(どうして……)

 

あの時のことは、今でも鮮明に思い出せる。

 

 

BanG Dream!~隣の天才~   第3章『Change』

 

 

『ごめん……』

『ぇ………』

 

僕の謝罪の言葉で、花音さんはすべてを察した様子だった。

気が付けば、僕は彼女の告白を断っていたのだ。

 

『どうして……他に好きな人とか、いるのかな?』

『……わからない』

 

花音さんの問いかけに、僕はそう言うしかなかった。

結局、その後は気まずい雰囲気のまま、別れることになった。

 

 

 

 

 

あの時の花音さんの今にも泣きだしそうで、それを必死に我慢しながら浮かべる笑みは、思い出すだけで胸が締め付けられる気分になる。

 

『私、一樹君が思っているよりも悪い子だよ』

 

別れ際に言われたその言葉は、花音さんの気持ちをはっきりと告げているような気がする。

 

「あれ? まだいたのかよ」

「いたら悪いのか?」

 

長いこと考えこんでいたのだろう、教室にはすでに人の姿はあまりなかった。

残って勉強をしている人もいれば、友人と談笑している人しか教室にはいない。

後は家に帰ったか、部活動に勤しんでいるのかもしれない。

 

「悪いことはねえけど、今日も部活じゃなかったか?」

「あ……」

 

田中君に言われて、ようやく今日が天文部の活動日であることを思い出した僕が口にした言葉はそれだけだった。

 

「大丈夫か、一樹? 最近様子が変だぞ」

「うん、たぶん」

 

自分でも大丈夫とは言えずに、あいまいなことしか言えない。

 

(誰かに相談でもすれば、問題は解決できそうなんだけど……)

 

ぶっちゃけ、相談するのが少し恥ずかしいという気持ちが、それを邪魔していた。

相談できる相手もリサさんあたりに限られてしまうのもまた一つの要因だけど。

ちなみに啓介は、たぶん嫉妬で答えを得るのは難しそうだし、田中君もそういう方面の相談は不得意そうだ。

他にも森本さんは、さばさばした性格なので、単純明快な答えを出してくれるとは思うけど、それはそれで不安になってくるし、中井さんは花音さんの友人だったりもするので、できれば避けたい。

 

「部活で思い出したけど、お前ら喧嘩でもしたのか?」

「え?」

 

唐突に変わった話の内容に、僕は目を瞬かせる。

 

「いや、ここ最近氷川と話していないような気がしたんだが……」

 

田中君は”悪い、忘れてくれ”と最後に口にすると、忘れ物でもしたのか自分の机の中から何かを取り出してそのまま教室を後にしていった。

 

(そういえば、最近日菜さんと話をしていないな)

 

田中君に言われて、気付いたがここ最近日菜さんと話を全くしていない。

話と言っても、おはようとかのあいさつはちゃんとしている。

だが、いつものような会話のやり取りは全くと言っていいほどなくなっていた。

 

(何時からだっけ……)

 

思い返してみても、リリイベの日から先は分からない。

もしかしたらリリイベの日からかもしれないし、それ以降のどこかかもしれない。

 

「………とりあえず、部活に行くか」

 

これ以上ああだこうだ考えていても始まらないというより、これ以上遅れるとそれはそれで面倒なので、僕は考えもそこそこに天文部に向かうのであった。

 

 

 

 

 

「ごめん、遅れた」

「あ、うん」

 

遅れたからか、先に来ていた日菜さんの反応は淡々としていた。

 

「それで、今日はどうする?」

「……」

「日菜さん?」

「あ、ごめんね。えっと……」

 

日菜さんから反応がないことを不審に思った僕の声に、日菜さんは慌てながらも今日の部活動の内容を告げることで、何とか部活動が始まった。

だが………

 

「……」

 

部活動中、お互いに会話などなく、部室は静寂に包まれていた。

 

(おかしい)

 

田中君に指摘されたことで、はっきりとわかる。

何かがおかしいのだということが。

 

(何か怒っているのか? それとも悩み事?)

 

前者はともかく、後者はありえない。

日菜さんはあまり悩み事などがないようなイメージが強いからだ。

もちろん、これは僕個人が抱いた勝手な印象だ。

 

(何だろう、このもやもやした気持ち)

 

何もかもが分からないこの状況に、苛立ちのようなもやもやとした気持ちが心の中を埋め尽くしていく。

そんな状況で部活動など捗ることもなく、気が付けばいつもであれば進められている量の3分の1程度しか進めることができないでいた。

 

「ねえ、一君」

 

部室内に夕陽が差し込む中、沈黙を破ったのは日菜さんだった。

 

「もう、ここに来なくてもいいよ」

「………は?」

 

日菜さんの口から出たその言葉に、僕の頭の中は真っ白になる。

 

「ここ、辞めてもいいよ。だって、ここに入ったのもあたしが無理やり誘ったようなものだし」

「ち、ちょっと待って! いきなりどうしたんだ?」

 

日菜さんはこちらに背を向けているので、どういう表情をしているのかがわからない。

口調も淡々としていて、日菜さん言葉の意図が全く読み取れない。

 

「一君はここよりもいないといけない場所があるでしょ? だから、ここに来なくてもいいよ。あたしは一人で平気だから」

 

日菜さんが何を言いたいのかが僕にはさっぱりだった。

 

「一君、―――に優しくするんだよ?」

「日菜……さん?」

 

こちらに振り向いてかけられた言葉。

途中の部分が聞えなかったので、どういう意味かが全く分からないその言葉を口にした彼女の表情は、どうしてかあの日の花音さんを彷彿とさせる。

だからこそ、それ以上僕は何も言うこともできず、そのまま部活は終わってしまうのであった。




答えは出ているのに出ていないという矛盾のある状況です。

次回は来週になりそうです。
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