BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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検証という名の説明回です。


第52話 入院と検証と

日菜と一緒に見たいと思っていたパレードライブに無事に行くことができた僕は、新しい朝を迎えていた。

……病院のベッドの上で。

 

 

 

 

 

「一樹!」

「一君っ!」

 

夕方4時ごろ、病室に慌てた様子で入ってきたのは田中君に日菜、そして白鷺さんの三人だった。

 

「消え貰っておいていうのもあれだけど病院ではお静かに。じゃないと、ほら」

 

やや大きな声で病室に入ってきた三人に注意をしながら、みんなの後ろのほうに視線を向ける。

 

「何だ……う゛っ!?」

 

その方角を見た田中君が言葉を詰まらせるのも無理はない。

何せ、鬼とも恐れられている看護師長が、こちらを厳しい目で見ているのだから。

今いる病室は、どういうわけか小部屋で、ナースステーションの真ん前というこの部屋しか開いていなかったらしく、僕はここで入院をすることとなった。

 

「どこが悪いんだよ。何の連絡もしないで入院しやがって。氷川妹なんかずっと、心配してたんだからな」

 

田中君の言葉に日菜のほうを見ると、彼女は心の底から安心しているような表情を浮かべていた。

 

「……ごめん。なんだかいうタイミングを逃しちゃって、ちょっとここがね」

 

そんな彼女に罪悪感が芽生えた僕は、日菜に謝りつつも田中君の疑問に、自分の胸の部分に手を当てながら答えた。

 

「ここって……心臓!?」

「……まさか、あの時の」

「先送りにしていたツケが回ってきた」

 

簡単に答えてはいるが、色々と大変だった。

あの日、日菜たちと別れた後に向かった病院で即入院を告げられた際に、行きたいところがあるので入院まで数時間待ってほしいとお願いをしたのだが、医者はなかなか首を縦に振らず、僕は粘り強く交渉を行って、ようやく猶予をもらう許しを得られたのだ。

その際に、命の保証はでき兼ねるという脅し文句までいただいてしまったのは余談だが。

そんなわけで、今現在ペースメーカーのようなものを埋め込む手術をするために入院しているのだ。

 

「一応、退院はライブの5日ほど前らしいからそっちのほうには支障はないけどね」

「そんなことより、一君大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。手術を受ければいつもみたいに生活できるらしいから」

 

本当に心配しているのか、悲しげな表情を浮かべている日菜を元気づけようと、僕は明るく答えた。

実際のところ、医者からはあと少し遅ければ助からなかったギリギリのラインであったと言われていたのだが、今はあえてそれを言う必要はないだろう。

 

「そ、そうだ。一樹からこの一件についての話を聞きたいんだ。俺たちの仮説と合わせて、さ」

「……そうだね、外で話そっか」

 

病室内が、暗い雰囲気に包まれるのを避けようと、田中君がわざとらしい口調で話題を変えてきたので、僕もそれに乗じるように相槌を打つと、病室の外で話をすることにした。

そこは、病室を出て少しだけ歩いた場所にあるロビーだ。

ナースステーションからも見える場所なので、歩行が可能な入院患者と見舞いに来た人たちが、話をするのにうってつけの場所だったりする。

そんなロビーの適当な席に腰かける。

テーブルをはさんでお互いが向き合うような位置取りだ。

席順として、僕の隣が日菜、僕の正面が田中君でその横が白鷺さんとなっている。

 

「それじゃ、まずは俺から話すぞ」

 

席に着くや否や、田中君は問答無用と言わんばかりに彼の立てた仮説を僕に話し始める。

それを僕は静かに聞いていた。

 

「―――というわけだが、どうだ?」

「どうと言われても……大体正しいかな」

「大体?」

 

僕の返した言葉のフレーズに、田中君が目を細めながら首を傾げる。

そう、田中君の立てた筋書き……白鷺さんに呼び出され、自重するようにという意味の言葉を別れろという意味と勘違いし、ちょうど何度も演技を教えてほしいと言ってきた後輩と共に日菜と別れられるように芝居を打った……というのは半分正解なのだ。

 

「前提条件から色々と細かい部分で間違えてるんだよ」

「前提……ちょっと待って。それだと美竹君、あなた」

 

僕の言葉に、正解を導き出せたのか、驚きに目を見開かせてこちらを見る白鷺さんに、僕は頷くことで答える。

 

「知ってたよ。白鷺さんのあの言葉が”自重しなさい”という意味合いだってね」

「だったら、どうしてこんなことをしたんだよ?」

「僕が兼ねてより抱えていた問題を解決するため」

「問題って………まさか!?」

 

もうすでにヒントは出されまくっている。

なので、僕の何気ない言葉でもみんなは僕の言わんとすることを察してくれた。

 

「日菜は、どういうわけか奥寺一樹……僕に恨みを抱いていた。いじめていたって言うけど、僕には皆目見当もつかないし、紗夜さんに聞いても同じだった。日菜に直接聞くのも考えたんだけど、ミイラ取りがミイラになる可能性もあったからできなかった。それでも、日菜と付き合う以上、この問題は避けては通れない」

 

日菜と付き合うようになってから、僕が不安に感じていたのはそのことだった。

 

「一君……」

「確かに、そうだがな……」

「現に、今回の一件も、そのことが原因のようだしね」

 

三人の表情は、どこか複雑そうなものだった。

 

「どうせ、いつかはそうなるんだったら、早めにそうなったほうがいい。ダメージも少ないからね。そんな時にちょうど白鷺さんの呼び出しがあったから、それを利用させてもらったんだ」

 

要するに、白鷺さんの一件は僕にとってはただの目くらましにしか過ぎなかったのだ。

僕の本当の目的を果たすための。

 

「僕の目的は、日菜と別れてパスパレを守ることじゃない。奥寺一樹に対しての恨みの理由を明らかにすることだったんだ」

「だったら、氷川妹を脅してまでいつものようにふるまわせたのはどういう魂胆なんだよ?」

 

慌てたように聞いてくる田中君の疑問に、僕は考えるまでもなくすぐに答えを口にする。

 

「あれは、半分は田中君の考察通り。後の半分は、反日菜グループへの牽制」

「牽制?」

「この計画は、一度僕たちが別れる必要がある。そうなれば、虎視眈々と報復の機会をうかがっていた連中が動かないわけがない。もし動きだせば、取り返しのつかない事態にもなりかねない。だから、それを防ぐためにいつも通りにふるまわせようとしたんだ……まあ、あまり意味はなかったみたいだけど」

 

僕が一番懸念していたのはそのことだった。

反日菜グループを壊滅させれば、僕の知らないところに波紋を広げる可能性もあったことから、生き証人を用意しておき、僕が牽制をし続けることで、連中の動きを封じさせようとしていた。

 

(あいつの勘を侮っていたな)

 

元木の直感が、再び反日菜グループを活動させようとさせていたのだから、恐るべきといったところだろう。

 

(まあ、そんなあいつも動けばどうなるかという部分に対する勘は、働かなかったみたいだけど)

 

そういう意味では、連中の動きを察することができたのはある意味奇跡だったともいえる。

まさか、たまたま忘れ物を取りに、学園に戻った時に動き出すのを知ることができるとは、自分でも予想していなかった。

 

「……だったら、最初から俺たちに相談してくれればよかったじゃねえか」

「そうよ、そうすればこんなことにはならなかったはずよ」

「それじゃダメなんだよ。僕主導になったら」

 

田中君たちからの意見は一理あるが、それを僕は首を横に振って答える。

 

「どういうこと?」

「僕が主導になれば、田中君たちは”僕がそんな事をするはずがない”という前提で動くでしょ?」

「そうだな。ていうか、どうあってもそういう前提で動くだろうな」

 

田中君の答えは、僕の予想通りだった。

幼馴染であるみんなは、確実に僕は無実だという前提で動く。

 

「もし、僕主導で動きだせば日菜は間違いなく反発する。そうなれば本当に取り返しがつかなくなる」

「俺達が動けばどっちみち一樹主導になるはずじゃねえか?」

「いや、今回の入り口はあくまでも、僕と日菜の様子がおかしいという部分が始まりだから、反発は起こりにくい」

 

それこそが僕の狙いだ。

僕が相談したことで、日菜に対してアクションを起こせば、彼女からしたら僕側ということで、反発は大きい。

でも、この計画では奥寺に関することはきっかけではなく、途中から明らかになるので、日菜の反発はそれほど大きくはならない。

それどころか、事情を聞き出せるチャンスにもなるのだ。

 

「じゃあ、彩ちゃんに対してのあれもあなたの計画のうち、かしら?」

「それはない。あれは僕にとっても予想外の事態だった」

 

目を細めて鋭い視線で聞いてくる白鷺さんに僕は首を横に振りながら否定する。

 

「あれは、この計画が失敗したらバンドしか自分にないって思って……」

「で、ライブを成功させようとついつい熱が入りすぎたってことか」

 

幼馴染ということもあって、僕の言わんとすることを察したのか代弁してくれた。

 

「丸山さんには、また改めて謝るつもり。さすがにあれだけじゃ謝った内に入らないから」

「彩ちゃんは、もうそのことを気にはしていないと思うわよ」

 

白鷺さんはそういうが、これは僕の気持ちの問題だ。

 

「もう一つの予想外が花音さんの存在」

「花音の?」

「彼女は本来、僕の計画には登場しないはずの人物だった」

 

彼女の介入は、僕にとってはよくもあり予測不能の事態を招く一因にもなってしまったのだ。

 

「ああ。俺もそれだけが気になってたんだ。どう考えても松原の件になると、すべてが破綻しちまったからな」

「彼女の存在が、僕の目的を思いっきりぼかしてしまった……その結果、僕の筋書きよりも大幅な遅れを招いたんだ」

 

彼女の介入がなければ、この一件は白鷺さんの呼び出しから始まり、奥寺の一件に入ってそこで真実が白日のもとになるという筋書きをたどっていたのが、花音さんの介入によって『僕の浮気』という結果で収束される状態になっていたのだ。

 

「どうにかして、本来の道に戻す必要があったんだけど、なかなかその機会もなくって」

「あなたが行動を起こせば確実に不自然だものね」

 

おそらく、その不自然なことに気づくのは白鷺さんか田中君辺りだと思ったが、予想は当たっていたようだ。

 

「だから、啓介に話があるって呼び出されたときに、僕は一種の賭けに出たんだ」

「……まさか、あのメールは……」

「うん。僕が仕掛けた。第一おかしいと思わない? たまたま僕が席を立った時、置いてあったスマホにはロックもかかっておらず、受信メール一覧が表示されている状態になっているなんて。まるで、それを見ろって言ってるようじゃん」

 

目を瞬かせて固まる田中君の予想を肯定するように、僕はそう口にした。

あれは、一世一代の大博打だった。

でも、それが功を奏してうまく啓介にヒントを与えることができた。

そのおかげで、話の道筋は僕の筋書き通りに修正することができたのだ。

 

「もしかしたら、花音さんは計画が失敗に終わるのを望んでいたような気がするんだけど……まあ、いいか」

「………」

 

その時、日菜の表情に動揺の色が見えた。

きっと、彼女の中で何か思い当たることでもあったのかもしれないが、それを聞く気にはなれなかった、

 

「じゃあ、あたしが聴いた一君のうわさ話も?」

「僕が後輩に言わせたセリフ。日菜って部活動の日はよほどのことがないと、決まってあの廊下を通るからね。それを利用させてもらったよ」

 

普通であれば、聞き流すであろうそれも、僕のこととなれば彼女の足を止める可能性は高い。

しかも、当時の日菜は僕に一種の疑念を抱いていた節があるのもうまく作用してくれた。

おかげで日菜の疑念はさらに加速していった。

それがピークに達したと判断した僕は、彼女をデートに誘ったのだ。

この計画のスタートラインでもあるビッグイベントのために。

 

「後輩には、実習形式で教えると言って、セリフや設定とかもすべて僕が考えた。設定として。僕と日菜は恋人役。後輩は、それを邪魔する悪役っていう感じにね。無論、二人には『今回のために日菜に快く協力をしてもらったけど、出来ればこのことは誰にも言わないで』と言っておいたから、外部に漏れる心配もない」

「あー、それじゃ絞り上げても中々口を割らないわけだ」

 

(あ、やっぱりやったんだ)

 

後輩からメールで、田中君と思わしき人物に襲撃を受けた連絡をもらっていたので、まさかとは思ったが本当にそうだったのには驚きだった。

ちなみに、後輩にはお詫びを兼ねて食事をごちそうしておいたので、おそらく尾は引かないはずだけど。

 

「色々と面倒かけてごめんね」

「……まったくだ。なんだか疲れが一気に出たから帰るわ」

「私も」

 

僕の謝罪に、二人は本当に疲れ切った様子でそう言うと、席を立った。

僕は、帰る二人を見送ろうとするが、できなかった。

 

「日菜?」

 

それは日菜が僕の服の袖をつかんできたからだ。

 

「あたし、一君にいっぱいひどいこと言っちゃった……ごめんなさい」

「いや、もう誤解も解けたわけだし、終わったことだから」

 

先ほどから何も言わなかったのは、罪悪感によるものだったのかと思いつつも、僕は日菜を慰める。

 

「でもあたし、一君に嫌われちゃった……」

「日菜……」

 

僕を見る日菜の表情は、どこか絶望感のようなものに染まっていた。

 

「僕は日菜のことが好きだよ」

「ふぇ?」

 

突然の告白に、日菜は目を白黒させる。

 

「日菜はどう?」

「……本当に、あたしでいいの?」

 

日菜のその問いに、僕は即答で頷く。

 

「ッ! 一君っ」

 

それが嬉しかったのか、日菜は僕に勢いよく抱き着いてくる。

それを僕はただ無言で受け止めた。

そして、それは彼女が満足するまで続いた。

 

 

 

「じゃあね、一君」

「うん。また」

 

しばらくして、落ち着いた日菜ははにかみながら手を振って去っていった。

 

「さて……」

 

病室に戻ろうかと、元来た道を戻ろうとしたとき、ナースステーションの前に看護師長が立っていたので、僕は軽く会釈をしてやり過ごす。

 

「さっきの子、大事にするのよ」

「え?」

 

看護師長から掛けられた言葉に、反応して振り向いた時には、すでに看護師長は僕の反対側に向かって歩き始めていた。

 

(大事にしますよ。絶対に)

 

僕は看護師長の背中に向かって、そう心の中で返事をするのであった。




うまく切りどころがなかったので、かなり長くなりました。

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  • Poppin'Party
  • Pastel*Palettes
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