「今日はとっても楽しかったねー!」
「うん。悪くないライブだった」
夕暮れ時、ライブも大成功という結果で終わり、僕と日菜は一緒に帰っていた。
啓介達は用事があるということで、その場で解散になったのだが、おそらくは気を使ってくれたのかもしれない。
そんなわけで、一緒に帰ってきたわけだが早いもので日菜の家の前に着いてしまった。
「それじゃ、また明日」
「ぁ……」
つないでいた手を離すと、とたんに日菜は寂しげな表情をする。
だが、いつまでも一緒というわけにはいかない。
ここは心を鬼にして、僕は日菜に背を向ける。
「ねえ、今日あたし一人なんだ」
「え?」
日菜の言葉がかけられるまでは。
日菜によると、紗夜さんはおじさんたちと一緒に出かけてしまっており、今日は帰らないとのことだった。
理由までは知らない(というか興味がないので覚えていないみたい)らしい。
「だから、ね。泊まってく?」
日菜のその言葉に、僕は言葉に甘えることになった。
「はい完成!」
「うわー! おいしそうっ」
あの後、家のほうに電話して泊まることの許しと、夕食の買い出しを済ませて氷川家に訪れた僕は、夕食を作った。
とはいえ、料理自体得意でもないので、簡単な料理(肉じゃがだけど)にはなったが、日菜には好評のようだった。
「今度はあたしも一緒に料理作れるようにするね」
「うん。楽しみにしてる」
多分日菜だったら、一瞬で僕を追い抜くような気もするが、いつの日にか彼女の手料理を食べれるのを楽しみにしておく。
「それじゃ」
『いただきます』
どういうわけか僕の隣に座った日菜と一緒に夕食を食べ終えた僕たちは、台所の流しに並んで立って洗い物をしていた。
料理が苦手な日菜でも洗い物だったらできるらしく、二人で一緒にやることができた。
「なんだか、こうしていると、新婚さんみたいだね」
「ッ!? そ、そうだね」
意識しないようにしていたのに、隣で食器を乾拭きしていた日菜の言葉に意識せざるを得なくなってしまった。
「でも、そういう関係は早いよ。まだ学生だし」
「っていうことは、卒業したら?」
僕は無言で頷くことで日菜の予想を肯定する。
日菜の顔は、これでもかというほどに真っ赤だったが
「そっか……えへへ」
その表情は幸せに満ちているようにも見えた。
その後お風呂も済ませ、後は寝るだけとなった。
(お風呂は大変だった)
一緒にお風呂に入ると言って日菜が聞かなかったという意味で。
前にも同じことがあたような気もするが、今回は『どうせ、将来そうなるんだったら変んなくない?』という言葉まで加わっていた。
確かにそうだが、それでも僕は懸命に断り続けて、何とか諦めさせることができた。
一緒に寝るという条件付きで。
「それじゃ、明かり消すよ」
「うん」
日菜に告げてから、明かりを落とした僕は、記憶を頼りにベッドの元まで向かうと、ベッドの中に入った。「「……」」
明かりが消え、窓のカーテンの隙間から差し込む月明かりだけが、部屋の中をうっすらと照らしている中、僕と日菜は同じベッドに横になっていた。
(前もだけど、やっぱり緊張する)
それは、僕と日菜が付き合うようになって二度目だが、慣れる気がしない。
隣には最愛の人がいるのだ。
これが緊張せずにいられないだろう。
「ねえ、一君」
「何?」
隣から静かに呼びかけてくる日菜の言葉に、僕もまた静かに返す。
「あたしとずっと一緒にいて。わがまま言うのが嫌だったらもう言わない、一君が嫌がることもしない……だから、あたしを一人にしないで」
「……日菜」
悲し気な日菜のお願い……懇願は、聞いていてとてもつらかった。
「あたし、とっても寂しかった……ひっく」
「……ごめん」
嗚咽交じりに、言葉を口にする日菜に、僕は彼女の頭をやさしくなでながら謝ることしかできなかった。
僕の企てた計画は、自分のみに被害が及ぶので問題ないとは思っていたが、日菜自身にもダメージを与えてしまっていたのかもしれない。
(そう思うと、僕の罪は重い、かな)
「約束する……もう、日菜さんを一人にはしないよ」
「ほんと?」
暗闇になれたということもあって、日菜の表情がなんとなくではあるが見えるようになってきた。
上目遣いでこちらを見ながら聞いてくる彼女に、僕は頷く気ながら答える。
それから日菜は何も言わなかった。
長い長い沈黙が続き、聞えるのは時計の秒針が時間を刻む音ぐらいだ。
「……じゃあ、証明してよ」
「……え?」
そんな長い沈黙の後に聞こえてきた日菜の言葉に、僕は思わず日菜のほうに顔を向ける。
隣で横になっている日菜の表情は、どこか頬を赤らめているようにも見えた。
「えっと……キスとか?」
「それもだけど……言わせないでよ、馬鹿ッ」
もしかしてと思って聞いてみた僕の言葉に、日菜から非難の声が返ってきた。
それが意味することは一つしかなかった。
日菜が何を望んでいるのか。
「本気……なの?」
僕の問いに、日菜は無言で頷く。
いやでも心臓の鼓動の音がうるさく聞こえてくる。
「………わかった」
「一君……お願い」
僕はすべての覚悟を決めた。
星は見えなくても満月の月明かりが部屋の中をっすらと差し込む中、僕は日菜と一つの誓いを結んだ。
これから先、絶対に約束を破らないという思いを込めて。
今回は、私の中ではかなりやばめの内容でした。
もし問題がありましたら、教えていただけると幸いです。
色々な作品を調べて、アウトラインにならないようにはしてあるつもりですが、あまり自信はないので(汗)
この話の続きは、皆様の想像にお任せします。
ちなみに、書く予定は一切ございません。
というより、書ける自信がないです。
→急きょ執筆が決定しました。
投稿しましたら、あらすじにてお知らせいたします。(9/12)
そして、いよいよ次回が日菜ルートの最終話です。
楽しみにしていただければ幸いです。
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ハロー、ハッピーワールド