僕たちの処分が確定となり、1月末を以て無期限の活動停止となることが決まった。
「あ、美竹君」
こちらにはこちらの思惑もあるので、大した騒ぎにもならずに済んだ。
「あの……私たちのせい……だよね?」
とはいえ、そうでもない人はいるようで、事務所の通路でばったりと鉢合わせになった丸山さんは申し訳なさそうな表情で聞いてきた。
「そんなことはないよ。僕たちも最近休みがなかったから、これをいい機会に休めるんだから気にしなくていいよ」
「でも……」
なんだか今にも泣きそうな雰囲気の丸山さんに、軽く言ってみるが、当の本人の表情は変わることはなかった。
(こういう時に限って啓介はいないからな)
「彩ちゃん? それに、美竹君。二人とも通路の真ん中で何をしてるのかしら?」
もし啓介がいれば、重い雰囲気を吹き飛ばせるのにと心底彼がいないことを恨めしく思っていると、良く知る人物の声が聞こえた。
「白鷺さん」
「千聖ちゃん」
「……美竹君、彩ちゃんに何をしたのかしら?」
丸山さんの表情を見た白鷺さんが、何かがあったと悟ったのかこちらに満面の笑みを浮かべて聞いてきた。
確かに、表情は笑みを浮かべているけど、僕にはそれが般若のごとく怒り狂っているような表情にも思えた。
「「ち、ちがうよ!? そういうのじゃないからっ」」
慌てて否定しようとすると、どういうわけか丸山さんと同じタイミングで声を上げてしまった。
「二人で声をそろえなくていいわよ……説明してくれるかしら?」
息ピッタリに否定した僕たちに、呆れたように言うと改めて説明を求めてきたので、僕は先ほどのことを包み隠すことなく白鷺さんに話した。
「彩ちゃん。今回の一件はスタッフの人が悪いのよ。彩ちゃんには責任はないわ」
「でも……」
話を聞いた白鷺さんの言葉になっというが行かない様子の丸山さんに、白鷺さんはさらに言葉を続けた。
「それに、彩ちゃんが謝ってたら、美竹君たちも困るんじゃないかしら?」
白鷺さんが同意を求めるようにこちらに視線を向けてくるので、僕は頷くことで返した。
「だから、彩ちゃんはいつも通りでいいのよ」
「………うん、そうだよね。困らせちゃってごめんね、美竹君」
最後は笑顔に戻った丸山さんに、気にしないでと答え、仕事があるのか二人が一緒に去って行くのを見送る。
(彼女たちも十分被害者……何だよな)
その背中を見ながら思い出すのは、今回の一件に対しての世間の反応だった。
僕たちに同情的な意見が多くみられる中、それとは反対に批判の声が上がっているのが『Pastel*Palettes』なのだ。
確かに、パスパレのスタッフが起こした不祥事なので、批判が出るというのも理解できる。
『あんな女どものせいでムングロは襲われたのかよっ』
『うはwwwwまじで犯罪グループ過ぎて笑えねえ』
これは、彼女たちに対するネット上の批判コメントだ。
批判が出るのは理解できるが、全く関係のないメンバーへの批判は、見ていて非常に不愉快だった。
(なんとか収まってくれればいいんだけど)
今はまだ、ネット上で心無い批判に収まっているが、これ以上悪化すれば彼女たちにも目に見える形での被害が生じる可能性だってある。
それだけは、起こらないでほしかった。
だが、僕のそんな願いとは裏肌にそれは起こったのだ。
「一樹!」
「うわ!?」
教室に入るや否や、いきなり殴りこむように入ってきた啓介に、僕は思わず驚きの声を上げてしまった。
「啓介は入るんなら静かに入れ」
「いや、それはいいんだって。これ、これ!」
何やら興奮……というより慌てた様子で僕たちに何かの本を突き付けてくるので、それを僕は受け取った。
「また週刊誌?」
「それの折り目のついてるページ、見て見ろって!」
啓介に言われるがまま、折り目のついたページを開く。
「「なっ!?」」
今度の驚きの声は田中君と同時だった。
そのページは見開き2ページ丸々使っており、掲載されている写真は事務所の外観だった。
そして、その下には大きな字で『大スクープ! 事務所が、Moonlight Gloryに活動停止処分!!』と見出しが書かれていた。
(活動停止処分の件が外に漏れてる?)
「今日発売された週刊誌だけど、びっくりしたから買ってきたんだ」
この雑誌を見つけた時の啓介の驚く姿は、想像に難くない。
「おい、一樹」
「うん………嫌な予感がする」
確信に近い予感はしていた。
そして、その予感はまたもや現実のものになった。
次の日には様々なテレビなどで一斉にこの件が報じられ始めたのだ。
「一樹君、ヒナ。大丈夫?」
「え、何が?」
「何となく想像はつくけど、何かあった?」
休み時間、次の授業の準備をしている中、心配そうな表情で声をかけてきたリサさんに何のことかがわからないのか、日菜さんはキョトンと首を傾げるが、僕にはなんとなく何を意味しているのかが分かった。
「うん。雑誌に一樹君のバンドの記事が載ってたから、ちょっと気になっちゃって……ほら」
僕の返しにスマホの画面を見せてきた。
「何々……え」
それを僕の隣の席にいた日菜さんも見るが、その瞬間に言葉を失った。
それは僕も同じだ。
リサさんが見せてきたのは、週刊誌の電子版のプレビューのようなもので、そこに掲載されていたのは僕たちが活動停止処分になったことを報じているものだった。
最初に啓介に見せてもらったのは、どちらかと言うとあったことを淡々と書いているような印象を受けるような記事だった。
だが、今見せてもらっている記事からは、面白おかしく読んでいる者を煽っているとしか思えないような内容だった。
『同事務所所属のアイドルバンド”P”の陰謀』、『バンドメンバーS・Tが事務所に指示を出した』、『アイドルバンドPに忖度か?』
記事内で非常に目につくだけでも、バッシングを受けていた。
その対象は、事務所ではなくPastel*Palettesに対してであり、記事に掲載されているPastel*Palettesのメンバーが写っている写真には、モザイクはかけられているものの、誰なのかがすぐにわかるような状態になっている。
「名前はぼかしているようだけど、完全にPastel*Palettesだって言ってるようなもんだな」
「流石に、ひどすぎだよ」
リサさんの言葉に尽きるのだ。
今の時点で、事務所に対するバッシングよりもパスパレのメンバーに対するバッシングが非常に目立っている。
これでは、パスパレのメンバーが意図的に僕たちを陥れたと捉えるような人が出てきてもおかしくはない。
「日菜さん」
「な、何? 一君」
「今日からしばらくは、僕かムングロのメンバーと一緒に帰るようにして」
記事を読んだ僕は、今の状態がどうなのかを悟った。
だからこその処置だ。
「でも……」
「そうだよ、そうしたほうがいいって」
「………うん、お願い一君」
最初は躊躇していた日菜さんだったが、心配している様子のリサさんの言葉に圧されるようにして、受け入れた。
同時に、僕はメールで啓介たちに一斉にメールを送信する。
内容は、『パスパレのメンバーに危害を加えられる可能性あり。全員、できる限りリスクから守るべし』だ。
(とりあえず、これで何とかなるか……)
だが、この時の僕はまだ知らなかった。
これは、事件のほんの序章にも過ぎなかったということに。
なんとなく終わりが見え始めました。
大体3~5話ほどで本章は完結となります。
新作で、読みたいバンドは、どれでしょうか?
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Poppin'Party
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Pastel*Palettes
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Roselia
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After glow
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ハロー、ハッピーワールド