リサさんからあの記事を見せてもらってからさらに数日が経過した。
僕が予想してたようなトラブルもなく、平穏な毎日が繰り返されていた。
そう、
「マスコミの待ち伏せとかがなかったのは幸いね」
「うん。おかげでいつも通りに学校に通えるからね」
ここは、羽沢珈琲店。
放課後に僕と白鷺さんに丸山さんとで安全に話ができる場所として、そこに集まっていた。
僕たちも、今月末……後二週間弱は活動停止の執行日前なので、事務所内のミーティングルームを自由に利用してもいいのだが、あえてここにしているのには理由があった。
「事務所からは?」
「うん。まだ控えたほうがいいって」
僕の問いかけに丸山さんが答える。
現在、事務所前には大勢の報道関係者がいるらしい。
狙いは間違いなく僕たちMoonlight Gloryか、Pastel*Palettesのメンバーだろう。
それが分かっているからこそ、事務所側からは来ないようにと言われているのだ。
とはいえ、問題なのはそれだけではなかった。
「それで、仕事のほうは?」
「それが……」
「今月に予定していたイベントはほとんど全部キャンセルされたわ」
白鷺さんが、悔しそうな表情で丸山さんの言葉を引き継ぐように説明してくれた。
もう一つの問題が、パスパレのイベントへの出演のオファーがすべてキャンセルになっていることだった。
理由はいずれも『安全のため』だ。
活動停止処分の記事が出てから、ネットでの批判は留まるところを知らず、『パスパレが出たら会場を爆破する』といった殺害予告や爆破予告などが、パスパレが出演することになっているすべてのイベントの運営に対してされているらしい。
そのような経緯があって、ほとんどすべてがキャンセルという状況になっているのだというのは、白鷺さんの話だ。
「それに、千聖ちゃんのドラマの出演もなくなっちゃったし」
丸山さんの言葉通り、さらに影響は白鷺さん個人にまでも及んでいた。
別に、予告状が送られたというわけではなく、ドラマの監督が一方的に出演を白紙に戻したのだ。
『あのような記事が出ている状態の君を、私のドラマに出すわけにはいかない』
それが、白鷺さんが監督に言われた言葉だったらしい。
まさに白鷺さんにとってはまさにとばっちりもいいところな話だったと思う。
「これの犯人……あなたはどう見てるのかしら?」
「九分九厘、”やらかし連中”だろうな」
やらかしはこの間逮捕された女性だけではなく、まだまだいるのだ。
そういった人間が、今回の一件を引き起こしているのだろう。
おそらく連中の目的は『Pastel*Palettesを僕たちと同じ状態に追い込むこと』なのだ。
「今月末のリリイベ、大丈夫かな」
不安そうにつぶやく丸山さん。
今月末には、パスパレのリリイベが開かれるらしいが、果たして無事に開催されるのか。
「わからないわね……スタッフの人たちを信じましょ」
白鷺さんは、口ではそういう物のあまり期待していないような気がした。
だが、そんな僕たちの心境とは裏肌に、リリイベが開催されることになるのは、数日先のことだった。
リリイベの開催が決定して、少し経ったある日僕たちは食堂で昼食を食べていた。
「それにしても、リリイベ開催できるようになってよかったじゃねえか」
「うん。前にやったリリイベが楽しくてるんっ♪ てしたから、もう今から楽しみなんだー」
目を輝かせてリリイベを楽しみにしている日菜さんの様子に、僕たちは顔を見合わせて苦笑した。
ある意味彼女らしいと言えるかもしれない。
「ん、ちょっとごめん」
そんな一時を過ごしていると、携帯が着信を伝えるように震え始めた。
僕はみんなに一言断ってから電話に出る。
「はい、美竹です」
『お疲れ様です。相原です』
電話の相手は相原さんだった。
その声は、どこか疲れているようにも思えた。
『実は、一つお話がありまして……』
そこで言葉を区切る相原さんの様子に、僕はそこはかとなく嫌な予感を感じずにはいられなかった。
『新田さんから、”今回の一件は、あなた方にも責任があるので、手伝っていただきたい”と協力を要請されたのですが……』
申し訳なさげに言ってくる相原さんに、僕は思わず同情したくなった。
相も変わらず、新田という人物は本当の原因が自分にあることを理解してはいないようだ。
いや、理解はできているが、こちらに責任をかぶせてるだけと言ったほうが正確だろうか。
本来であれば、蹴り飛ばすところだが、その場合被害を受けるのはパスパレのメンバーである彼女たちだ。
とはいえ、新田の言うがままになるのもそれはそれで癪だ。
とりあえず、答えを保留にして僕は電話を切った。
「誰からだ?」
「相原さんからなんだけど……」
啓介の問いかけに、相原さんから聞いた内容を伝えようとしたところで、僕はこの場に日菜さんがいることを思い出した。
彼女もパスパレのメンバーだ。
であれば、この話は彼女に聞かせるのはどうなのだろうかと思ったのだ。
『2年A組の氷川日菜さん。至急職員室に来てください。繰り返します―――』
「あ、あたしだ。じゃ、ちょっと行ってくるね」
食器類を片付けてパタパタと駆けていく日菜さんの姿を見送る。
ある意味絶妙のタイミングだった。
「で、何言われたんだよ?」
「うん。それがね―――」
話すのを躊躇う理由もなくなったので、僕は先ほどの相原さんの電話でのことをみんなに説明した。
「さすがにこれは不愉快ね」
「あの野郎は、人を怒らせる天才だな」
案の定、みんなの表情には怒りに満ちていた。
「僕も同意見。だけど、新田とかはどうでもいいけど、被害を被るのは彼女たち。だから―――」
「それ以上は言わなくていい」
僕の言葉を遮ってきたみんなの表情から、何を言いたいのかが伝わってくるような感じだった。
「私たちも同じ気持ちよ」
きっと、この後口にするであろう言葉は一つしかない。
『私(俺)たちで、パスパレを守ろう』
こうして、僕たちは彼女たちを守るべく相原さんに返事の連絡をするのであった。
気が付けば、また毎日投稿になっていたりする今日この頃。
このまま最後まで突っ走って行きたいと思います。
新作で、読みたいバンドは、どれでしょうか?
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Poppin'Party
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Pastel*Palettes
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Roselia
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After glow
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ハロー、ハッピーワールド