BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

37 / 302
第37話 始まる準備とハプニング

出しものが喫茶店に決まってしまえば、あとはもうとんとん拍子で事は進む。

その後数回開かれたクラスでの話し合いの末、メニューはお菓子(主にクッキー)を出すことになった。

料理を作るのは、真っ先に立候補した今井さんら数人の女子だ。

何でも今井さんはお菓子(特にクッキー)作りが得意らしく、よく作っているのだとか。

調理に関しては家庭科室を使うことになった。

ストックを教室内に作成した簡易式のバックヤードで保管し、注文が入り次第クッキーを紙皿の上において持っていくという仕組みだ。

衣装についてだが、僕の案通り、男女共通で基本的には制服の上にエプロン姿。

ただし、男子の希望者のみはスーツ、女子は希望者のみがメイド服を着用することとなった。

他にレイアウトなども決まり、準備は万端ともいえた。

 

「それにしても、どうして普通の喫茶店に賛成したんだ?」

 

僕は、メイド喫茶に賛成していた日菜さんにそんな疑問を投げかける。

それに対しての答えは

 

「だって、そっちもるんっ♪てしたから。一君の意見だから絶対に面白いって思ったんだー」

「そ、そう」

 

ある意味日菜さんらしい答えであった。

そんなわけで、ついに文化祭の準備期間を迎えることになるのであった。

 

 

 

 

 

「それでは、連絡事項は以上です。今日から文化祭の準備期間となります。怪我などにはくれぐれも気を付けるように」

 

文化祭までの一週間、授業は午前中のみとなり、午後は文化祭の準備に充てられる。

とはいっても、レイアウト変更は前日に行えばいいので、装飾のほうの作成と、メニューをさらに具体的に詰めていくだけなのだから、それほど厳しくはない。

いつの間にか役割分担もしっかりと決められており、男子は主に力仕事担当だ。

そして、僕はというと

 

「ねーねー、あの人たちがもっと装飾用の資材が欲しいって」

「うーん。お菓子の材料費を70%はほしいからな。メニューのほうが確定次第再検討するって伝えてくれる?」

「わかった」

「ちょっといいか?」

 

どういうわけか、予算係にさせられていた。

文化祭で各教室などに割り振られる予算には限りがある。

他の学園はどうかは知らないが、ここでは訪れた人にお金を頂き、その売り上げで予算を増させる仕組みが認められている。

つまり、たくさんの売り上げが出れば、その分お菓子などの予算に補填ができるということだ。

また、余った予算については全額返金だが、売り上げに関しては各クラスに委ねられているので、文化祭終了後の打ち上げにでも当てようというのが一つの案として持ち上がっている。

それはともかくとして、売り上げがこちらに入るとなった場合、どうしても予算が少なくされてしまうのはしょうがないことでもある。

世の中、そんなにうまくはできてないということだろう。

よってしっかりとした予算の配当を決めておかないと、予算不足にも陥りかねない。

 

「だから、な。頼むよ」

 

と肩に手を置かれて啓介に言いくるめられてこの役割になったのだ。

 

(まあ、いいか)

 

基本的にやることがない僕のために啓介が用意してくれたのだから、ここは甘んじて予算の管理係を引き受けよう。

そう割り切った僕は、メニューの考案をする今井さんたちのグループのほうに向かう。

 

「今井さん、メニューのほうは決まった?」

「こんな感じにしてみました☆」

 

今井さんに見せてもらったメニューは、オーソドックスなクッキーに、バターやレーズンなどの味を加えているクッキーにホットケーキなどがあった。

 

「これなら、うまくいくかも。ありがとう今井さん」

「いえいえー。アタシもいい練習になるから」

 

両手でガッツポーズをとるほど気合を入れる今井さんに、僕は苦笑しつつも”それじゃ、後はお願い”と言ってその場を後にする。

こうして、僕たちの文化祭の準備は始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭まで残り3日。

クラスの何人かで、今井さんが作ったクッキーの味見をして一発でOKが出たため、メニューのほうに関しては準備万端だ。

ちなみに、誰が今井さんの作ったクッキーを味見するかで男子たちがじゃんけんをしていたりもしたが、それはどうでもいいことだろう。

 

「当日は、たぶん家庭科室に詰め込んでもらうことになると思うけど、大丈夫か?」

 

クッキーは数人の担当者が作ることになるが、それでも要になるのは今井さんのため、どうしても今井さんに負担がかかってしまう。

 

「大丈夫! いや、ものすごく燃えてきたからっ」

「そ、そう」

 

なんだか今井さんの背後に燃え盛る炎のようなものが見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。

そんな錯覚を持たせるほどに今井さんは燃え上がっていた。

 

(どれだけお菓子作りが得意なんだろう?)

 

今井さんとの話を終えて、僕の持ち場である飾りつけの作成に戻ろうとした時だった。

 

「きゃ!?」

「リサっ!」

 

後ろのほうから聞こえた何かが崩れる音と、今井さんの物と思われる悲鳴に振り返ると、そこには床に倒れこむ今井さんの姿があった。

周囲に散らばっているのは実行委員から支給された資材だ。

僕もあわてて彼女のもとに駆け寄る。

 

「何やってんのよ男子っ!」

「わ、悪い」

 

どうやら、申し訳なさそうな表情をして立っている短髪の男子が誤って彼女のほうに落としてしまったようだ。

落とした資材は、どれも軽い感じなのが幸いして、目立った怪我はない。

 

「大丈夫? 立てるか?」

「大丈夫……っつ」

 

僕の問いかけに立ち上がろうとする今井さんの表情に、苦痛の色が見える。

 

(足を挫いた? いや、勝手に判断するのは危険だ)

 

落ちてきたのが軽い資材だからと言って、ねん挫で済むという確証もないのに、決めつけるのはまずい。

 

(保健室に連れて行くしかないか。こういう時は保健委員である僕が連れて行くべきだけど……女子の保健委員がいいよね。常識的に)

 

力のある男が運んでいくのが筋ではあるが、さすがに女子をおぶっていくのは憚られるため、女子の保健委員に頼もうとしたのだが、

 

(保健委員……って、今井さんだった)

 

女子の保健委員が今足を抑えている今井さんだったことを思い出した。

 

(仕方ない、覚悟を決めよう)

 

ものすごく恥ずかしいが、致し方ない。

 

「日菜さん、今井さんを背中に乗っけてくれる?」

「わかったっ!」

 

そばにいた日菜さんにお願いして背負っていくことにした。

 

「え?! そ、そんな悪いよ」

「そういうのは気にしなくていいから」

 

今井さんが乗りやすくするためかがみながら言うと、しばらくためらったものの

 

「うー、わかったよ」

「それじゃ、行くよっ。それー!」

「っと!」

 

今井さんが頷いたのを聞いた日菜さんが、今井さんを僕の背中に乗せた。

背中に伝わる重みに、一瞬意識が向かいそうになるが僕はそれを振り払って静かに立ち上がると、啓介にあとのことを任せて、そのまま教室を後にするのであった。




書いている自分でもだれがヒロインかわからなかったり(汗)

というのは冗談ですけど、ヒロインについては一応決め手はおりまして、あとは細かい部分を肉付けするだけでございます。

とはいえ、色々と寄り道をしたくなってしまうのが、私の悪いところなんですが。

まだまだ文化祭は始まりません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。