BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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今回は、海水浴編です。

水着のタイプは原作の通りにしてあります。
判明していない人物に関しては、私の妄想です。


第48話 海水浴

「義父さん」

「なんだ?」

 

夜、お風呂に入りあとは寝るだけとなった僕は、リビングでソファーに腰かけて何かの雑誌を読んでいる父さんに声をかけた。

 

「来週蘭と蘭の友人と一緒に海に行こうと思うんだけど、ダメかな?」

「……約束さえ守るのであれば問題はない。遊んでくるといい」

「ありがとう」

 

断られるかもと思っていたが、すんなりと許可がでた。

僕は義父さんにお礼を言ってリビングを後にすると、そのままの足で自室の隣……蘭の部屋に向かう。

もちろんノックをすることを忘れない。

漫画とかでは、ノックせずに入って……という展開がベターらしいが、そんな展開にはなりたくない。

 

「……何?」

「義父さんからOK出たよ。門限は守るようにだって」

 

部屋のドアを開けて出てくる蘭に僕は義父さんからOKが出たことを伝える。

 

「そう……ありがとう」

「どういたしまして。それじゃ、お休み」

「うん、おやすみ」

 

ぶっきらぼうな口調だが、その表情はうれしいのか微笑んでいるようにも見えた。

最近、蘭は表情を緩ませることが多くなったような気がする。

この前までは、ずっと無表情だったので、これはいいことなのかもしれない。

 

(できれば、蘭がもっと素直になってくれるように、頑張らないとね)

 

まだまだ道のりは遠いけど、地道にやっていこう。

そう思いながら、僕は自室に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、海に行く当日。

 

「兄さん、暑い」

「夏だしね」

 

僕たちはそんなやり取りをしながら、集合場所である駅前の広場で他のメンバーが来るのを待っていた。

 

(集合時間より前に来たのはいいけど、さすがに速すぎたかな)

 

「蘭ちゃん! 一樹さん!」

 

最初に来たのはつぐだった。

 

「おはよう……蘭ちゃん、一樹さん」

 

僕たちの前まで走ってくると、つぐは肩で息をしながら

 

「おはよう、つぐ。大丈夫?」

「別に集合時間前なんだから走らなくてもよかったのに」

 

息を切らしているつぐに蘭と僕が声をかける。

つぐは息を整えたところで

 

「実は海に行くのが楽しみで……その」

「なるほどね」

「納得」

 

恥ずかしげに伏せられた目から、どれだけこの日を楽しみにしていたのかが分かったような気がした。

 

「おはよう蘭、一樹さん。待たせて悪いな」

 

そのあとに現れたのは巴さんだった。

 

「おー、もうみんな集まってる~。関心関心―」

「そういうモカさんも、時間前に来てるよ」

 

巴さんより少し遅れてきたモカさんに、ツッコミを入れた。

 

「これで、来ていないのは……」

「ひまりだね」

 

(提案者が一番最後って……)

 

「皆―、おっはよう―!」

 

複雑な心境な僕をよそに、一番最後にやってきたひまりさんが挨拶をしてきた。

いつもよりハイテンションで。

 

「お、ひまり今日はテンション高いな」

「えへへー。だって海だよ! 海が待ってるんだよ! もうワクワクしちゃうよー」

 

(周囲の視線が痛い)

 

周囲にいる人たちの”何、この集団”という目に、僕は全然落ち着いていられない。

 

「それはいいから、とりあえず移動しよ」

「そうだね。ワクワクするのは移動中の電車の中にしてほしいね」

 

その視線に気づいているのかどうかはわからないが、蘭の提案に乗るような形で、僕も続いた。

 

「そうだね。それじゃ、しゅっぱーつ!」

『おー!(……おー)』

 

やっぱり、このテンションは続くんだねと思いながら、僕はこれでもかというぐらいに照り付ける日差しの下で手を上げると、駅のほうに向かうのであった。

 

 

 

 

 

目的地である海に着いた僕たちは、早速水着に着替えていったん別れた。

 

「……早すぎた」

 

やはりというべきか、男である僕が先に待ち合わせ場所に来ていた。

夏ということもあり海水浴客は多かった。

とはいえ、そこまで人が多いというわけでもなく、僕たちが遊べるのに十分すぎるほどスペースに余裕がある状況だった。

 

(啓介の言っていた、女性は着替えるのに時間がかかるのもあながち間違いではないのかも)

 

「一樹さん。お待たせしました」

 

そんなくだらないことを考えている僕の背後から、ひまりさんの声がしたので振り返ると、そこには蘭達の姿がった

 

「……」

 

その光景に僕は固まってしまう。

 

「あ、あの……どうかしたんですか?」

「もしかして、似合ってませんか?」

 

固まっている僕の様子に、つぐとひまりさんが不安そうに尋ねてきたところで、はっと正気に戻る。

 

「あ、い、いや……その、しっかり似合っててかわいいですよ」

「あぅぅ……ありがとうございます」

「えへへー、ありがとうございます!」

 

僕の感想に、つぐは恥ずかしげに頬を赤らめ、ひまりさんはうれしそうに微笑みながらお礼を言う。

水着も個性が出ているのか、ひまりさんは花柄のビキニタイプ、巴さんは黒色のビキニタイプ、モカさんは巴さんと同じタイプの水着に黒のパーカーを羽織っている。

つぐは黒色のワンピースタイプの水着、蘭はつぐと同じタイプの水着だが、ジャケットを羽織っている。

正直に言おう、完全に見惚れていた。

仕方がないじゃないか。

これまでこういう場所に家族旅行で言ったことはあれど、同年代の女子と泳ぎに来たことなど一度もないのだ。

であるならば、僕が見惚れてしまうのもしょうがない!

 

(って、僕は誰に言い訳をしてるんだ?)

 

なんだか自分がみじめに思えてきた。

 

(全部この暑さが悪いんだ!)

 

そして最終的にはそういう結論に至るあたり、もはや笑えない状況だった。

 

「それじゃ、いっくぞー」

「ひまり、その前に準備運動しないとだめだぞー」

 

巴さんの指揮のもと、僕たちは準備運動をする。

……あまり、ひまりさんたちのほうは見ないようにしよう。

いろんな意味で彼女は危険だ。

 

「……? 一樹さん、私に何か用ですか?」

「へ?! あ、いや。何でもないよ。うん」

 

僕の答えにひまりさんは首をかしげながらも納得したのか、僕から視線を外す。

 

(見ないようにすればするほど、見てしまう……自分を制御できないとは)

 

「いやー、一樹さんも男ですなー」

「っ!?」

 

そんな僕にささやきかける悪魔。

 

「えー、あたし的には、天使だと思うんですけど~」

「あの、モカさん。さりげなく心を読むのはやめてください」

 

小悪魔のような身を浮かべるモカさんにお願いする。

 

「え~、そんなこと言っていいんですかー。一樹さんがひーちゃんの胸を――「お願いだから、それ以上は言わないで」――それじゃー、チョココロネ5個で手打ちにしましょう~」

「先輩を脅す後輩って……」

「ふっふっふ~、一樹さんもひ―ちゃんみたいで面白くてついー」

 

色々と突っ込みたいことはあるが、これ以上深入りすると確実に僕のほうにダメージが入るので話を切り上げる。

 

「よーし。それじゃ皆、海に飛び込め―!」

 

ひまりさんの号令と共に僕と蘭を除く全員が海に向かって駆けて行った。

 

「蘭、僕たちも泳ぎに行くか」

「……うん」

 

しばらく四人が海辺ではしゃいでいるのを見ていた僕は、隣で同じように見ていた蘭に促すと、海辺のほうに向かって走っていく。

 

「蘭―、とりゃ!」

「うわ!? いきなり何を―――わぷ!?」

 

海辺に来た蘭をひまりさんと、モカさんの水鉄砲が襲い掛かる。

 

「やったー! これで同て―――きゃ!?」

「はい、一本」

 

大はしゃぎしているひまりさんに、僕は妹の仇と言わんばかりに水鉄砲を浴びせる。

 

「このっ!」

「あはは、アタシも混ざろうかな」

 

蘭と巴さんが加わったことで、本格的な遊びとなるのであった。

 

 

 

 

 

「はあ~。遊んだらお腹すいちゃったな」

「じゃあ、昼食にでもしようか。あそこに海の家があるみたいだし」

 

しばらく遊んだところで、僕たちは昼食をとることにした。

 

「荷物はどうするの?」

「二手に分かれよう。アタシとひまりと、申し訳ないけど一樹さんの三人が買い出し。後のメンバーが荷物番っていうのでどうだ?」

 

僕が買い出しのメンバーに入っているのは、男手が欲しいからだろう。

 

「あたしはさんせーい」

「私もいいよ」

「あたしも」

 

モカさんたちも特に異論がないようで、巴さんの提案通りに僕たち三人で買い出しに行くことになった。

 

「はい、焼きそばお待たせ―!」

「うわー、おいしそうだね」

 

海の家の定番と言えばやはり焼きそばと言っても過言ではないだろう。

普通の場所で食べる値段より少し割り増しだが、そういうことを気にしたら負けだ。

 

「そういえば、うわさで聞いたんですけど一樹さん文化祭でライブをやったんですか?」

「あー、そういえば一緒の系列だったっけ」

 

巴さんの疑問で、僕は軽く頭を抱えたくなった。

正直、あのライブは失敗だったと僕は思っている。

弦が切れたこともしかり、僕の納得いく演奏ができていないように感じたことも理由になる。

それ以前に、知り合いに僕がライブをやったことを知られるのは少し嫌でもあった。

 

「あの、もしかして聞いたらまずかったですか? アタシ的には一樹さん()バンドやってるんだなって、思ったらちょっと嬉しくなったんで聞いたんですけど」

「あ、いや。全然気にしないで。ただちょっとばかり色々あったことを思い出しただけだから」

 

(も?)

 

変な雰囲気になりそうだったのを、必死に止めようと相槌を打つ僕は、先ほどの巴さんの言葉に内心で首をひねる。

 

「え? 兄さんって楽器弾けるの?」

「……いやー、全然うまく弾けなかったよ」

 

蘭の少し馬鹿にしたような口調に、少しだけムッとするが、僕はそう答えてごまかす。

別に嘘はついていない。

あの演奏は、僕にとっては(・・・・)うまく弾けていないのは本当なのだから。

 

「そうなんですか。もしうまい人だったら私たちのバン――「ひまり、それ以上は言っちゃダメっ」――う、うん。わかった」

 

ひまりさんの言葉を遮って顔を赤くした蘭が止めるが、もう何を言おうとしたかは分かっていた。

 

(蘭達もバンドをやってるんだ)

 

しかも、ガールズバンドだろう。

ガールズバンド……文字通り女性のみで編成されたバンドで、バンド=男という音楽界に差し込む一筋の光のような存在だ。

女性のみで編成されたとはいえ、男性のみのバンドと同等かそれ以上の演奏をする者たちもいるほどで、最近注目を集めつつある。

彼女たちがどんなバンドかは知らないが、もし演奏を聴く機会でもあったら、聞いてみたいなと思いながら、僕は焼きそばを食べるのであった。

そのあとは、遠泳をしたり海辺で黄昏たりと、十分なほどん委海水浴を堪能した僕たちは夕陽の光が照らし出す中、帰路に就くこととなった。

 

「あの、一樹さん」

「何? ひまりさん」

 

海の近くの駅に向かって歩いている中、ひまりさんが落ち着かない様子で話しかけてくる。

なんだか顔が赤いような気もするが、これは夕陽によるものだろうか?

 

「私の胸を……その、じーっと見てたっていうのは本当……ですか?」

「え゛!?」

 

ひまりさんの口から出た思いもよらぬ言葉に、僕は何も答えられず、モカさんのほうを見る。

 

「いやー、すまんすまん。つい口が滑っちまったー」

 

(嘘だ! 絶対にワザと言ったな!?)

 

「一樹さんの、エッチ」

「変態」

「お、男の子……ですもんね……だから……その……気には……あぅぅ」

「エッチなのはだめだと思うぞ」

 

目を潤ませて頬を赤くするひまりさんと、冷たい目で蔑む蘭と、必死にフォローをしようも力尽きたつぐと、真顔で注意する巴さんの言葉はとても痛かった。

 

「エッチ~♪」

 

そして、この現況であるモカさんのその言葉には、一瞬怒りが沸き上がるが、それよりもまずは

 

「本当に申し訳ございませんでした」

 

と、僕は女子五名に向けて謝るのであった。

幸い、ひまりさんたちは笑って許してくれたが、暫く蘭が口をきいてくれなくなったのは、言うまでもない

 

(これって、妨害レンジャーの呪いじゃないか?)

 

不謹慎にもそんなことを考える7月末の出来事だった。

 

 

 

 

 

そんな日の夜のこと。

お風呂から上がった僕が自室に戻ると、机の上に置いてあったスマホがメッセージが来たことを告げるようにランプが光っていた。

 

「あ、日菜さんからだ」

 

それはRAINの日菜さんから送られてきたメッセージによるものだった。

僕はそれをさっそく確認してみる。

 

『やっほー! 一君、来週の週末大丈夫?』

「この流れからすると、いよいよか」

 

文化祭の時に、なぜか怒らせてしまった日菜さんに許してもらう条件として出された”一日日菜さんと一緒に出掛ける”という約束を、この日に行使するつもりだろう。

 

(そろそろ華道の集まりがあるんだけど……まあ、この日だったら何とかなりそうかな)

 

僕は、スケジュールを確認して日菜さんに大丈夫と返信を送る。

すると、数秒後に返事がきた。

 

(早いな、本当)

 

『やったー☆ それじゃ、来週の週末駅前で待ち合わせねー!』

 

こうして、急きょ来週末に日菜さんとのお出かけの予定ができるのであった。




バンドりのライブが終わった後tの編成されているメンバー2名の会話で、リサが笑うところがあるのですが、ものすごく怖く感じたのは、きっと直前にヤンデレ系の小説を読んでいたからですね。(汗)

それは置いとくとして、次回は日菜との話になります。

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