BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第64話を、読みやすくする処理をしていない状態で投稿しておりました。
現在は処理をしたものに差し替えております。

このたびは、大変失礼いたしました。

それでは、本篇のほうをどうぞ


第65話 収録

「それでは、こちらでお待ちください」

「わかりました」

 

テレビ局に到着後、関係者用の入り口から内部に入り、そのままスタッフん人に誘導されるままに楽屋に入った僕たちは、私服からいつもの衣装に着替えて、始まりの時を待っていた。

 

「それじゃ、段取りの確認しておこうか」

 

着替えも終わりまだ時間もありそうなので、この後の段取りの確認をすることにした。

 

「まず、最初にトークの収録。次にライブの収録。で、最後がエンディングの収録って感じかな」

「啓介、それは端折りすぎだ」

 

確かに、それであってるけど。

正確には、まず最初にトークの撮影を行い、そのあとにライブの収録を行った後に、またエンディングの収録をするとのこと。

相原さんの話によれば、撮影スタジオ内にはトークを行う区画と演奏を行う区画の二つのセットがあるらしい。

MCの人の合図で、ライブを行う区画に移動して演奏をするらしい。

 

(それを編集で別の場所で演奏をしているように見せるんだから、すごいよな)

 

そういった裏事情は一般の人は早々知ることができないため、自分たちがそれほどすごいところにいるんだということを感じてしまう。

 

「ライブも何度もやり直せるらしいけど」

「とはいえ、一発で決めないと意味がないだろ」

 

田中君の言うとおりだ。

スタジオには撮影の様子を一般の人が見に来るのだ。

一発で成功させなければ意味がない。

スタジオに来ている人たちが全員僕たちのファンなのかといえばそうではない。

 

「一般の観客や見ている人たちをどれだけ多く演奏に引き込めるのかが重要だな」

「そう言うこと。僕たちの目標を成し遂げるためにも、ファンを増やしていくことが重要。そうしていけば、次の演奏の機会は必ず得られるはずなんだ」

 

田中君の言葉を受けて、僕は再び方針を説明した。

僕たちはとにかく演奏をする機会を多く獲得しなければいけない。

そうでなければ目標を成就させることなど到底できないのだ。

 

「ま、演奏に関しては練習を積んで完璧な状態にさせたから、問題はないだろうが」

「あるとすれば、やはりトークか」

 

田中君の言葉を引き継ぐ形で啓介がつぶやいた言葉こそ、僕が今日一番危惧していることだったりもする。

他に出演する人たちは、こういった場に出慣れているある種のベテランだ。

トークなども問題はないだろう。

対する僕たちは、少し前まで普通の学生だった身。

力の差など歴然だろう。

 

「特に心配なのは裕美だな。あいつ人見知りだったりするからな」

 

田中君の危惧する通りだ。

初対面の人と話すのが苦手な中井さんが、ちゃんとできるのかが心配だった。

 

(幸いなのは、トークをおまけ程度に考えている番組っていうことぐらいか)

 

そのおかげで、トークでミスをしても十分に挽回できるのだ。

 

(なら、ここでとる策は)

 

「まあ、今回のトークは一種の練習として頑張ろう。後は追々直していく形にすればいい」

「ま、そういう風になるか」

「だな」

 

あえてトークの部分を捨てて練習という形にさせる。

それしかなかった。

 

「Moonlight Gloryの皆さん、そろそろ撮影ですので、移動をお願いします」

「わかりました!」

 

そんな時、ノックと共に呼び出しがかかる。

ついにこの時がやってきた。

僕は緊張で高鳴る鼓動を落ち着かせるべく一度深呼吸をする。

 

「よし。それじゃ頑張りましょうか!」

『おう!』

 

こうして、僕たちの撮影は幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

「あー。疲れた」

「全くだ……」

 

前半の収録を終え、休憩時間となった僕たちは、一度楽屋のほうに戻ることにした。

休憩時間は30分ほどらしい。

 

「トークでなんて言ったのか覚えてねえぞ」

「えっと、確か……」

 

地面にうつぶせに横になる田中君の様子を見ながら、僕はその時のことを思い出す。

 

「Moonlight Gloryの皆さんです!」

『よろしくお願いします』

 

収録の時、MCの人の紹介によって、僕たちは軽くお辞儀をしながら挨拶をする。

一応視線はMCの人のほうにしておいた。

カメラ目線……はちょっと恥ずかしかったからという理由もあるけど、一番の理由は人と話しているからだろう。

 

「皆さんはそれぞれどのような楽器を弾かれていますか?」

「自分はギターを弾いてます」

「私はギターボーカルですけど、ボーカルをメインにしてますね」

「俺はドラムを」

「俺はキーボードを担当してます」

 

MCの質問に、皆はいい感じの返事ができていた。

……表情が緊張でぎこちない感じになっているのは、今後の課題だけど。

そして残すのは一番不安な中井さんだ。

 

「わ、私はベースを弾いて、ます」

 

(声が小さい)

 

ちゃんと返事はできているけど、声が小さかった。

幸いなことに、中井さんの音声は胸元にあるピン型マイクによってスタジオ内にいる人全員に聞こえるようになっていたことだろう。

 

「ありがとうございます。では、お次に――」

 

おかげで、次の人の紹介に進んでいったのだから、まあ大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

「――ッという感じかな」

「予想通りといえばそうなるか……」

「やっぱり、ライブで挽回するしかないか」

 

そもそも最初からトークの部分は捨てていたので、予定通りではあるけど

 

「にしても、なんだか出演している人たちの俺たちを見る目、なんだかきつくなかったか?」

「そういえば。なんだか嫌なものを見るような感じだったな」

 

スタジオに集まった時に、僕たちのほうを見ながら、ひそひそ話をしていたのを思い出した。

 

「なんか、”生意気”とか”無礼者”って言われてるけど、どうして?」

「しかも、俺達だけで森本たちは何も言われてないよな」

 

そう、悪口を言われているのは僕たち三人だけで、女性陣は全く言われていない。

その理由が全く分からなかった。

 

(そもそも、何も無礼なことしてないし)

 

「……まあ、言いたい奴には言わせてけばいいさ。俺たちは俺達、だろ」

「そうだな」

 

田中君の言葉に僕たちは頷いて、それ以上考えるのをやめた。

だが、僕たちはとんでもない失敗をしていたわけなのだが、それに気づくのは少し後のことである。

 

 

 

 

「以上、Marmaladeで――――」

 

五人組のアイドルユニットらしいグループの演奏が終わり、次はいよいよ僕たちの番となる。

 

「それでは、次はすい星のごとく現れたバンド『Moonlight Glory』です。準備のほうをお願いします」

「わかりました」

 

MCの人に促されるまま、僕たちは隣のほうにある演奏を行う区画に移動する。

 

「皆、気合は十分?」

「俺は十分だ」

「右に同じく」

「私も気合十分さ」

「私もです」

 

どうやら、皆もすでに最高の状態になっているようだ。

そんな中、演奏を行う区画にたどり着いた僕たちは、素早く楽器を準備する。

軽くピックをストロークさせて音を確認する。

 

(うん。異常なし)

 

僕のほうの準備は整った。

そして、森本さんに中井さん、啓介に田中君も準備を整えていく。

そして、僕たちはお互いに頷き合うと前方を見る。

 

「1,2,3,4!」

 

田中君のリズムコールを合図に、もりもとさんが演奏を始める。

そして僕たちも演奏に加わった。

的確なリズムで前奏の箇所を弾いていき、最後はチョーキングでAメロに入る。

 

「~♪」

 

今日は僕がボーカルだ。

というより、この曲のコンセプトだと僕か啓介か田中君の誰かが歌うことになるわけだが。

演奏を始めると、観客の人たちのコールが聞こえてくる。

それがまた僕にとっては最高の応援にも思えた。

そしてサビを終えると、田中君のドラムのソロになる。

だが、それはこの後に待ち受けるギターの速弾きの前座に過ぎない。

森本さんのギターを前面に押し出した僕たちの速弾きの部分に突入した。

その瞬間、『おぉー』という歓声が聞こえたような気がしたが、それにかまうことなく、僕たちはラストに向けて駆けていく。

最後は僕のギターを前面に出した速弾きで曲が終わる。

その瞬間、観客たちの拍手が沸き起こるので、僕たちは一礼をしてそれにこたえる。

 

「以上、Moonlight GloryでNB POWERでした」

 

MCの人の声を聴きながら、僕たちは隣の区画に歩いていく。

こうして、僕たちは無事に初めての収録を終えるのであった。




今回出てきた楽曲名は実際に実在する曲ですが、作曲者(アーティスト)は架空の物です。
正しくは下記の通りとなります。

『NB POWER』 アーティスト:NieN

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