BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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第79話 復讐

「なるほどね……」

 

田中君から話を聞いた僕は、静かにそう呟いた。

 

「あいつらは悪くないさ。俺が言い方を間違えたんだ」

「確かに、一樹の言葉を完コピしたのは問題だけどさ、あの言いようはひどいわ」

 

必死にフォローをしようとする啓介に頷きながらも、怒っているのかいつにもまして言葉にとげのようなものが見られた。

 

「それに、俺全然気にしてないから。平気だ」

 

(んなわけあるか)

 

啓介の言葉が嘘であることはすぐにわかった。

啓介の右手の小指だけが上に上がっているのを見て。

啓介は嘘を吐くと必ず右手の小指が上に上がるのだ。

 

「嘘ついても、俺達にはお見通しだ」

 

落ちらに振り向いた啓介は、苦笑しながら一言”叶わないな”とつぶやく。

 

「一樹も許せないだろ!? あいつら、絶対に許さねえ」

「うん。そうだね」

「そうだねって……どうして一樹は、そんなに冷静なんだよっ!」

 

怒り狂う田中君は、普段通りに相槌を打つ僕の様子がきに食わないようだ。

 

「これでも、ものすごく怒ってるんだけどね」

 

確かに、啓介の言葉のチョイスなどの問題はあったかもしれないが、だからと言って啓介の人格を否定したばかりか音楽までもを否定するのは筋違いだ。

 

(それに、啓介の本当の姿も知らない)

 

紗夜さんたちは、当然啓介の過去を知らない。

啓介は、いい加減でチャラい性格だが、それは仮の姿。

本当は、優しくてまじめな青年なのだ。

それをチャラい性格にいつも自分の性格を偽っている。

 

「何も知りもしないくせに、幼馴染を馬鹿にするような奴らを、どのようにして締め上げようかって考えているんだよ? これでも」

「……一樹」

 

僕の言葉に、啓介はうれしいのか表情に笑みのようなものが出ていた。

 

「啓介、余計なお世話かもしれないけど、これをいい機会としてその演技もうやめにしないか?」

 

これから先、啓介が同じような誤解を受けるのを見るのは僕は嫌だったので、そう提案するが

 

「いや、これでいいんだ。俺は別に、慣れっこだからな」

 

というばかりで取り合おうとはしなかった。

啓介が頑なに自分の性格を偽るその理由は、小学生のころのことだった。

小学生の時、啓介は僕たちとは別の小学校に通っていた。

理由は知らないが、おそらくはおじさんたちの都合によるものだろう。

そんな小学生時代、おとなしめの性格だった啓介は、『馬鹿な、がり勉君』と蔑まれていじめられていた。

どうしてなのかは本人もわからないらしい。

当時の学力は、平均点だったらしい。

その時のいじめがひどいこともあり、僕たちと同じ学校に転校してからというものの、チャラい性格に自分を偽るようになってしまった。

僕が小学生の時にカンニングを疑われ、クラスの面前で怒られたときに、啓介が”カンニングじゃない”と率先して声を上げていたのも、その名残なのかもしれない。

 

「だったら、Roseliaを潰そっか」

『っ!?』

 

僕が何気なくつぶやいた言葉にみんなが息をのむ。

 

「か、一樹君。さすがにそれはやりすぎだよ」

「そ、そうよ。やめときなって」

「ああ、悪いことは言わねえから」

「……いや、冗談なんだけど」

 

それまで黙っていた中井さんや森本さんだけでなく、怒り狂っていた田中君までもが止めようとする光景は、僕の予想外だった。

 

「よかったぁ」

「なんだか傷つくんだけど。その反応」

 

しかも本気で安心しているし。

 

「いやいや。一樹の計画を聞いた後だと、シャレになんないから」

「あー、あれか」

 

Pastel*Palettesの今回の計画のことを言っているのだろう。

確かに、我ながらとんでもない博打に出ていると思う。

何せ、成功すれば大きく目標に向けて前進する突破口になるが、失敗すれば終了の計画なのだから。

 

「まあ、冗談は置いといて、潰すまではいかなくても復讐はさせてもらうけど」

 

ちょうど一つ僕の中でいい妙案がひらめいた。

 

「……内容は?」

「彼女たちと同じステージに立つ」

「それだけ?」

「それだけだ」

 

僕が思いついたのはとても単純なものだった。

バンドを結成してステージでライブを行うものにとって、一番ダメージがでかいのは同じステージで、そのバンドよりも観客を惹きつける演奏をしてそのバンドに対する関心を奪い取ることだ。

というよりも、バンドをしている人たちにしてみれば、自分たちよりも格下だと思っているグループに自分たちよりも上の演奏をされた時点で、相当な衝撃だと思うけど。

 

「穏便でよかった……でも、Roseliaの人たちがどのライブに出るかなんて予想できないよ?」

「いや、そこは非常に簡単だ」

 

とりあえず、中井さんの最初のつぶやきは聞いていないことにしておいた。

 

「彼女たちはFUTURE WORLD FES.の話をしていたんだよね?」

「ええ。そこに出場するって言ってたわ」

「ならば、この後に絶対に出るライブは一つしかない」

 

そこまで言ったところで、みんなの顔がはっとする。

 

「フェスに出場するためのコンテストか」

「そう。そこに僕たちも出場する。むろん、フェスに出るつもりもないから、アンコール的なものとしてだけど」

 

まさか、自分が最初にライブをやった大舞台を復讐の道具にするとは思ってもいなかったが、まあ、喧嘩を売ってきたのは向こうなのだから構わないだろう。

 

「そのライブをやって、向こうが”誠意ある対応”をするのであれば、そこで話は終わり。まあ、今後とも仲良く協力をと言ったところかな」

 

(まあ、それをせずにさらに火に油を注ぐようなことを言ったら本気潰すけど)

 

バンドをつぶすというのは思いのほか簡単だ。

特に、啓介たちの話を聞いた限りではRoseliaをつぶすのにそれほど苦労しないことは容易に想像ができる。

 

「仲良く? どういうことだ?」

 

そんな時、僕の口にした単語に、田中君が食いつく。

 

「彼女たちの演奏、まだまだ粗削りで分かりにくいけど、僕の心を惹きつける何かがあった。彼女たちは磨き方さえ間違わなければ、僕たちの領域にまで来るかもしれない存在だよ」

「……まじかよ」

 

僕のその返答に、驚きに言葉も出ないとはまさにこのことを言うのではないかと思うほど、全員が目を見開かせて固まっていた。

 

「だからこそ許せない部分もあるんだけどね。で、どうする? やるからには全力でしかも曲のジャンルも同じのにする必要があるけど」

 

同じ曲のジャンルのほうがよりダメージがでかくなる傾向があったりもする。

僕の問いかけに、田中君たちはお互いに顔を見合わせて

 

「それで行こう」

 

と頷いたので、僕たちはRoseliaに対する復讐(というより完全に嫌がらせだけど)を実行することにした。

 

『はい、相原です』

「夜分遅くにすみません。ちょっとライブを行いたいイベントがありまして、出演交渉をお願いしたいんですけど」

 

僕はその場で相原さんに電話をかけると、出演交渉をお願いする。

 

『出演交渉ですか? 構いませんけど、どのイベントに?』

「FUTURE WORLD FES.の出場を決めるイベントです。そこの特別出演という形にしたいんですけど」

『FUTURE WORLD FES.ですか!?』

 

やはり、驚きに満ちた声が返ってきた。

まあ、それも当然だと思うけど。

 

「できそうですか?」

『少々時間はかかりますが、フェスに出場する資格をなしにするのであれば可能ではあります』

 

(あ、できるんだ)

 

改めて相原さんのすごさを知ったような気がした。

 

「無理言ってすみませんが、お願いしてもいいですか?」

『承りました。ただ、一つお伺いしたいことが』

「はい。なんですか?」

 

僕は真剣な声色に変わる相原さんの次の言葉を静かに待つ。

 

『どうしてそのライブに?』

「………昔そのコンテストにお世話になったので、お礼とまではいきませんけど盛り上げたいと思ったんですよ」

 

嘘ではない。

最初の大舞台に立たせてくれた思い出深いコンテストなのだから、そのライブを盛り上げられればいいなと思っているのは本当だ。

復讐はある意味口実である。

 

(まあ、その口実のほうが大きいんだけどね)

 

我ながら性格悪いなと思うけど。

 

『わかりました。それでは二,三日ほどお時間をいただいてもよろしいですか? 結果については追ってご連絡しますので』

「よろしくお願いします」

 

そういって僕は電話を切った。

 

「一樹、本当にえげつねえな」

「俺、隊員に一樹を怒らせないように言っておく」

「……皆、それひどくない?」

 

さっきよりもドン引きしている皆の様子に、僕はなんだかむなしくなるのであった。




今回より、ヒロインの話に向けて進み始めます。
ちなみに、ルート分岐の内容は、仕返しのえげつなさだったりします。
これが、別の人物がヒロインの場合は、さらにえげつなくなります。
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