BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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ついに始まりました、Roselia編(という名の嫌がらせ作戦)
最近、一樹がクズ化してきているような気が(汗)
あまりやりすぎると、色々なところから怒られるので、自嘲しなければ。


そんなこんなで、本篇をどうぞ!


第86話 リベンジ

ガルジャムから少しだけ日が経った今日、僕たち”Moonlight Glory”はライブの日を迎えた。

それは、Roseliaの出演するイベントで、一番最後のアンコール的なものとして演奏する。

どうやら、Roseliaは湊さんの誠意ある対応により、うまく解決できたようで、結束力が強くなったというのが今井さんの話だ。

 

「まずは、彼女たちの演奏を聞きたい」

 

僕のそんな我儘の真意がわかっているからこそ、スタッフに指定された時間まで少し余裕がありもう少しゆっくりできたのにもかかわらずに、みんなも賛同してくれたのかもしれない。

 

「お、次がRoseliaだな」

 

横で見ていた田中君のその言葉を裏付けるように、ステージにはRoseliaのメンバーたちの姿があった。

どこか幻想的な感じのステージ衣装を身に纏った姿で。

それだけで、会場から歓声が聞こえる。

 

(さあ、聴かせて。あなたたちの演奏を)

 

そして、彼女たちの演奏が始まった。

 

(っ!? すごい。一瞬で僕を引き寄せるようなこのサウンド……)

 

演奏が始まったのと同時に、空気が一変する。

それは彼女たちが演奏する曲調と同じものだった。

湊さんの歌声は前よりもすんなりと頭に入っていく。

ギターもドラムも前に聞いた時よりも格段に研ぎ澄まされていた。

 

(間違いない。彼女たちは成長している。それもすさまじい勢いで)

 

やはり、彼女たちには十分な素質がある。

僕と同じ領域に突入する素質が。

僕は彼女の演奏を聞いてそう感じるのであった。

 

 

 

 

 

「それでは、こちらのほうでお待ちください」

 

Roseliaの演奏を聞き終えた僕たちは、スタッフの人のもとに向かい、男女別の楽屋でいつもの衣装に着替えて出番を待つ。

 

「Roseliaの演奏、めちゃくちゃよかったなぁ」

「ああ、悔しいがあれはいい演奏だった。特にドラムには熱を感じた」

 

出番が来るまでの間、僕たちは先ほど聞いたRoseliaの演奏についての感想を言い合っていた。

 

「一樹と聡志はあれで、フェスに出れると思う?」

「五分五分といったところかな?」

「そうだな、五分五分だな」

 

啓介からの問いかけへの僕たちの答えは同じだった。

彼女たちのレベルなら、フェスのステージに立つのに問題はない。

だが、まだ粗削りな面がある。

演奏もそれぞれがさらに磨いていけばもっと化ける可能性もある。

 

「さらなる成長の可能性を無視して出すか、それとも成長の可能性を考慮して落選させるかのどちらかかな」

「前者であれば、俺たちのところまで行く可能性はない。だが、後者の場合は」

「来る可能性があるということ」

 

要するに、さらなる成長をさせるかどうかという二択であった。

それ故に、今回の結果は予想ができない。

 

「Moonlight Gloryの皆さん、そろそろステージへの移動をお願いします」

「わかりました」

 

そんな時、ドアの外からかけられたスタッフの声に、田中君が返事をする。

 

「んじゃ、行くか」

 

田中君の言葉に、僕たちは頷いて楽屋を後にした。

 

 

 

 

 

「あれ、美竹君に田中君?」

 

ステージに向かう途中で偶然Roseliaのメンバーたちと鉢合わせになった。

 

(まあ、そうなるように仕向けたんだけどね)

 

彼女たちの控室に戻る際に必ず通る道はすでに把握済み。

よって、そのルートを経由するようにしたのだ。

尤も、このルートのほうが少し近道になっていたりもするわけだけど。

 

「あなた達も、このコンテストに参加していたのね」

「まあ、そんなところですね」

 

本当に違うが、いちいち言うまでもないだろう。

 

「話は聞かせてもらいました。この間は、うちのメンバーの馬鹿垂れが、皆さんに失礼な物言いをしてしまい大変申し訳ない。この通り、お詫び申し上げます」

「っ!?」

 

僕の丁寧な口調と演技かかった話し方に、その真意を見抜いたのか、田中君が息をのんでいた。

 

「頭を上げて。私は別に謝ってほしいなんて思ってないわ」

「ええ。一樹さんに謝られても、こちらがつらいです」

 

面白いことに、湊さんと紗夜さんは罵倒せずに、頭を上げるよう促してくる。

 

(ここで罵倒したら、徹底的につぶそうと思ったんだけど、さすがにそれはないか)

 

「お二人の寛大なお言葉、胸にしみます」

 

”さて”と前置きを置いて、僕は言葉を続ける。

 

「皆さんの演奏拝聴いたしました。大変素晴らしいものでしたよ。よく解散寸前の悲惨な状況からうまく終息し、さらなるレベルアップができました。非常に感心しております」

「あ、ありがとうございます!」

 

ドラムを担当している紫色のツインテールの少女がお礼を言ってくるが、この子は本当に純粋な子なのだろう。

そうでなければ、僕が見下す(・・・)感じで言っているこの言葉にお礼を言うわけがない。

 

「……美竹君、いったいあなたは何者かしら?」

「おやおや、ようやくそれを聞きますか。それでは、お答えいたしましょう」

 

どうやら、今の一言で湊さんは薄々と僕たちがただのバンドではないことに感づいたようだ。

湊さんの冷たい視線を無視して、僕は仰々しい素振りで名乗り上げる。

 

「私は、”Moonlight Glory”のギターボーカルで、作戦参謀を担当しております、美竹一樹と申します。以後、お見知りおきを」

 

そういって軽くお辞儀をすると、Roseliaのメンバーたちの様子は一変した。

 

「あなた達が、あのMoonlight Glory!?」

 

湊さんは目を丸くさせながら声を出せただけでもまだましだった。

他のメンバーは驚きのあまり化、声すら出せない様子だったからだ。

紗夜さんは口をパクパクさせ、今井さんはあちゃーと言わんばかりの表情を浮かべ、ドラムの少女は目を見開かせて固まっていた。

 

「あの、えっと……友希那さん」

 

そして、一人僕たちのことをよく知らない様子の腰元まで伸びた黒髪の少女は困惑していた。

 

「一回のライブで一気にトップバンドのクラスまで駆け上がったバンド……一度その音を聞けば、虜になる演奏をすることで有名なバンドよ」

 

湊さんの説明に、黒髪の少女は声にならない驚愕の声を上げた。

 

「さて、それでは無礼のお詫びに私のライブでもどうぞご覧ください。これからサプライズ演奏を行いますので。では、失礼します」

 

驚きに固まる彼女たちを放って、僕たちはステージのほうへと足を進める。

 

(あー、とても気分がいい。清々しいな)

 

まずはこれで僕の彼女たちに対する復讐はほとんど終わった。

後は、演奏をして啓介に対して口にした無礼な言葉を取り消させるだけだ。

 

「一樹、お前性格悪すぎ」

「わざとやってるし」

 

そんな僕に、田中君が口にした言葉は少しぐさりと心に突き刺さる。

そういう風になるように演技をしたとはいえ、さすがに直球で言われると応えるのだ。

 

「まあ、あれくらいはいいんじゃないか」

「そうだね。最初にケンカを売ったのは向こうだし」

 

メンバーも賛否両論といったところだろう。

 

「でも、あまり事を荒立てないほうが……」

「もちろんだよ。だから、ここで終わらせる」

 

中井さんの心配そうな言葉に、僕は安心させるようにそう告げる。

これ以上長引かせるのは、お互いのためにならない。

だから、ここで全部終わり。

すべてを水に流すのが、この嫌がらせのもう一つの理由だ。

 

(まあ、向こうが火に油を注がなければ、だけど)

 

もし仮に、喧嘩を吹っかけてきたときは、それなりに買うつもりだ。

 

「さあ行こう。僕達のステージに」

 

そして、僕たちはステージに向かうのであった。

ついに、Roseliaのメンバーたちに対する嫌がらせのライブが、幕を開けようとしていた。


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