BanG Dream!~隣の天才~   作:TRcrant

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先日は、大変お騒がせしました。
何とか完成したため、投稿いたします。


第94話 初練習

Pastel*Palettesに演奏のレッスンをする初日であるこの日、僕は一足早く集合場所であるミーティングルームに来ていた。

 

(早く来すぎた)

 

来たのはいいのだが、少し早めに来てしまっていた。

朝早くに目が覚めてしまい、二度寝をすれば遅刻の状態という微妙な状況となっていたので、早めに行くことにしたのだ。

 

「うーん。何かをしようにも、何もできないし」

 

ファンレターへの返信も一時ストップになっている(まあ、当然だけど)ので、そうなってしまう取れできることは整理整頓塗装時ぐらいしかなくなってしまう。

 

「整理整頓……の必要はないか」

 

僕たちは意外(ものすごく失礼な言い方だけど)にも思うかもしれないが、整理整頓はこまめにやっているようで、僕が手を加える必要はあまりなかったりもする。

そんなこんなで、時間は過ぎ去っていき

 

「あれ、もう来てたんだ」

 

という言葉と共にミーティングルームに入ってくる啓介たち。

 

「ちょっと早く来ちゃってね」

「別にいいけど、体調には気をつけろよ」

 

なぜか田中君に体調のことを心配されてしまった。

 

(昨日の立ち眩み、続くようならこの一件が終わってから病院で見てもらうか)

 

ただの立ち眩みだとは思うが、田中君の心配している様子に、僕はそう決めるのであった。

その後、みんなと今日の練習の方針を話し合い、集合時間になったため楽器の練習指導をするべく、レッスンスタジオへと向かうのであった、

 

 

 

 

 

レッスンスタジオ。

そこは数十人の人が入っても練習が可能なほどの広さを持つ場所で、フォーメーションを確認するための鏡や、映像を流すためのモニター類に楽器を演奏する多に必要な装置類も完備されている場所だ。

僕たちも使えることは使えるのだが、あまり利用したことはないような気がする。

そもそも練習用のスタジオはCiRCLEで十分だというのが理由だったりするが。

それはともかくとして、レッスンスタジオに入った時には、すでに練習着と思われる軽装で全員そろっていた。

僕たちは横一列に並んで立っている彼女たちから少し離れて対面に、同じく横一列に並んで立った。

 

「えーっと、皆さんおはようございます」

『おはようございます』

 

バンドリーダーということで、この練習を仕切るのは田中君だ。

もっとも、練習内容についてはあらかじめ決めてあるので、ある意味台本通りに進めていくような感じだが。

 

「まずはお互いに自己紹介でもしようと思う。一応初めてのレッスンにもなるから、一番重要だからな。んじゃ、最初は明美から」

 

田中君に指名された森本さんは、一歩前に出る。

 

「Moonlight Gloryの、ギター兼ボーカルの森本 明美です。よろしくね」

 

と担当するパートと名前を告げて一礼する。

それを受けた彼女たちの中から、日菜さんが前に出る。

 

「ギターの氷川日菜! よろしくねっ」

 

日菜さんの場合は全員知っているが、いつものような感じだった。

 

「皆のアイ――「啓介?」――……キーボードの佐久間 啓介です」

 

受けを狙ってか、珍妙なキャッチフレーズをつけようとした啓介を田中君がけん制する。

 

「これのように、珍妙なフレーズはつけなくていいから」

 

日菜さんの話から微妙に不安になった僕は、くぎを刺しておくことにした。

横から”渾身の出来だったのに”という声が聞こえるが、放っておくことにした。

というより、どうでもいいし。

 

「えっと、キーボードの若宮イヴです。よろしくお願いします!」

 

続いて自己紹介をしたのは若宮さんだった。

活発で元気のいい感じの少女だった。

 

「べ、ベースの中井裕美です。よろしくお願いします」

「ベースを担当している、白鷺千聖といいます。よろしくお願いします」

 

中井さんに続いて白鷺さんも自己紹介をして、残るのはお互いに二人ずつだった。

田中君に視線で促され、僕は一歩前に出る。

 

「ギター担当の美竹一樹です。どうぞ、よろしく」

 

我ながら、もう少しましな自己紹介はないのかと思うが、このくらいで十分だろう。

 

「ボーカル担当の丸山彩です。よろしくお願いします」

「ドラムをやっている田中聡志だ。よろしく頼む」

 

丸山さんに続いて田中君も自己紹介を終え、残すのはあと一人だけだ。

 

「わ、私はドラムを担当している大和麻弥と言います。上から読んでも下から読んでも『やまとまや』。よろしくお願いしますっ」

 

(ん? あ、本当だ)

 

茶髪の少女の自己紹介を聞いて、頭の中で確認してみると、確かに上から読んでも下から読んでも同じだった。

だから何という話なんだが。

 

「それじゃ、練習はそれぞれのメンバーで個別にやろうと思う。丸山さん、あなたは明美に。白鷺さんは裕美に、若宮さんは啓介に、氷川さんは一樹に、大和さんは俺が担当する形だが……異論等はあるか?」

 

田中君の問いかけ絵に、誰も答えないので、誰も異論はない様子だ。

 

「よしそれじゃ、始めようか」

 

田中君の号令で、練習が開始された。

それぞれのメンバーたちは各々の方法で練習をしていく。

基本的に、経験者の場合はさらなるレベルアップへ、そうでないものは楽器の演奏ができるようにしていく。

気を付けなければいけないのは、全体のバランスだ。

バンドというのは、演奏がうまければいいというものではない。

上手であることに越したことはないが、バランスよくレベルを上げていく必要がある。

一か所だけが抜きんでて上手い状態だと、音が歪になってしまう。

それを防ぐには全体的にバランスよくレベルを向上させていく必要がある。

バンドを結成した時は、全体練習から入り徐々に個人練習という形式に移していくグループもあるらしい。

聞いた話では、楽器経験者が日菜さんと大和さんの二人という状況だとのこと。

要するに、僕に求められるのはいかにこの”Pastel*Palettes”内で彼女の音色とそのほかのメンバーの音色のバランスをとるかだ。

 

「それで、あたしはどーするの?」

「日菜さんには、僕が知りうるすべてのギターテクを叩き込んでもらう。そのうえで”回りと合わせる”力をつけてもらうよ」

 

一件、バランスをとっていないようにも見えるが、テクというのは一種の引き出しのようなもの。

引き出しが多ければいかなる状況にも対応することができる。

日菜さんの性格上、周りに合わせるというのが苦手そうな感じがするので、そこを重点的に練習していこうというのが僕の考えだ。

 

「うーん。周りに合わせるかー……やってみるっ」

 

若干微妙な反応が返ってきたが、僕たちは練習を開始するのであった。

……色々不安だけど


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