釣り好きの高校生の少年・愛宕葵は、波打ち際の防波堤で釣りをしていたところ、かかったのは聖女っぽいものだった。その聖女っぽいものはジャンヌと名乗り、葵は戸惑うこともなくジャンヌと交友関係を作る。また、原初の海の女神、無限な龍神、全てを超越した天使、神話に当時した生物、海にまつわるもの、葵のクラスメイトたちなどを巻き込み、奇妙な付き合いを得ていくことになる。
※本作とはガワ以外はあんまり関係ないけど、波打ち際のむろみさんはクッソ面白いからみんな買ってね!(ダイレクトマーケティング
※よくよく考えると作者の小説にしてはあらすじが長すぎると感じ、むろみさん要素マジで皆無なのでこっちに移動しました。
俺とジャンヌが通っている学校は駒王学園という私立高校である。
自宅からは電車の乗り換え一回を挟み、1時間と30分ぐらいで着くまあまあの距離にある学校だ。まあ、家の周りに小・中学校を出るどころか戸籍すら無かったジャンヌが入れる学校なんてあるわけもなく、父親の伝を頼って悪魔が経営してるこの学校に入学した次第だ。
まさか裏口入学というものを実際に目にするどころか、己も当事者になるとは思いもしなかったがな。日本の夜明けは遠いぜよ。
ちなみに無理矢理作った戸籍上のジャンヌの名前は、愛宕ジャンヌである。心の片隅で自分と同じ苗字を持つジャンヌを嬉しく思ったりしなくもない。ジャンヌと結婚できた男は幸せだろうなあ……。
「おはようございます」
「おはよー」
ジャンヌと俺は挨拶をしながら自分たちのクラスに入る。ちなみに学年は2年生だ。
クラスメイトとそれとなく挨拶を交わしつつ、俺は窓際後方2番目という中々の席に着いた。ちなみにジャンヌは俺の更に後ろのVIP席である。
それはそうと、家から遠いためか小・中学校まででいた俺の知り合いはクラスどころか学年全体でも特におらず、顔だけは微妙に見たことがあるような同じ中学校出身の方が数名いる程度なので、実質的にこの学校での友達は皆新しい友達と考えていい。
それで、なんだが――――。
「葵! 俺、彼女ができました!」
クラスメイトで友人のひとりの"兵藤一誠"にどうやら彼女が出来たらしい。非常に嬉しそうな様子で俺の机に来るなり報告してきたのである。アダ名はそのままイッセー。
まあ、イッセーはおっぱい星人やらエロの三馬鹿などと言われているが、DRAG-ON DRAGOONでいえばレオナールぐらい好い人であり、ゴルベーザ四天王であればルビカンテぐらい紳士であり、デビルガンダム四天王でいえばマスターガンダムぐらい印象に残り、ブラッククロス四天王でいえばメタルアルカイザーぐらい間違った奴なのである。
とんでもない方向に全力疾走しているだけで別に悪い奴ではないのだ。
後、イッセーは神器を保有している。ドライグだっけな、神器の中の人。覚醒していないからまだ眠っているのだが、寝言で自分の名前を呟いていたのを何度か聞いたことがあるから多分間違いない。俺の神器も話せたら楽しいのにな。
「…………お赤飯いる?」
「やっぱりまともに祝福してくれるのは葵だけだぜ……!」
そんなことないだろと思っていたら周りのクラスメイトはかなりイッセーの話題でざわついており、クラスの隅を見れば残りのエロの三馬鹿の松田と元浜が血涙を流さんばかりの形相でイッセーを睨んでいた。
「いやいや、イッセーに彼女のひとりできたぐらいそんな――」
なあ、ジャンヌと声を掛けようと後ろを向くと、ジャンヌは学校に持ってきた携帯ゲーム機から顔を上げて、口を開いたまま固まっていた。
ブルータス、お前もか。
「これが
「いや、俺彼女いないし」
そういうとイッセーは苦虫を噛み潰したような絶妙な表情をしながら後ろの席のジャンヌを見た。もしそうなら嬉しいんだけどなー。
「それよりどんな娘よ?」
「おう、天野夕麻ちゃんだ」
そういってイッセーが見せてきた携帯のアルバムの写真には黒髪の美少女の姿があった。
はーん。
「"堕天使"か」
「ちょ……人の彼女を勝手に堕とさないでくれよ!?」
「…………天使っていうより堕天使っぽいかなって」
「そ、そうか? うん、そうかもなぁ……」
イッセーはよほどに嬉しいのかニヤニヤと愉快な顔をしている。
まあ、俺としては人の趣味にとやかくいう気はないので、堕天使と人間の恋というものは珍しいなあ程度に思っていた。お幸せに。
その後、初デートでどうしたらいいのかわからないというので、チャイムがなるまでイッセーと会話に興じていた。
◆◇◆◇◆◇
愛宕葵と愛宕ジャンヌといえば、駒王学園の生徒ならば知らぬ者はいない程、有名なカップルである。
まず、ふたりは常に一緒にいる。
どれほどかといえば、同じ家に住み、同じ電車で登校し、同じクラスに入るまでは男子生徒から羨望の眼差しで見られるぐらいでまだいいだろう。問題はここからである。
「ジャンヌこれどうやって解くの?」
「仕方ないわね、特別ですよ? 貸しなさい」
まず、席が近いこともあり、数学など理系科目でわからないことがあると葵がジャンヌに助けを求め――。
「何よ漢文古文って……日本語だってわかんないっての……!」
「どうどうジャンヌ」
現国や古文などでは逆にジャンヌを葵が助けるため、いい具合に相性補完されており、互いの成績は学年でもかなり高いのである。
そして休み時間――。
「よっと……」
「どこ行くのよ?」
「自販機」
「はーん。じゃあ、行きましょうか。勿論、奢りね」
「おうふ」
基本的にどこかに軽く行く場合は一緒に行くのである。ジュースを買いに、他のクラスに、気分転換にと理由はともあれ、トイレと男女分けの移動以外は全て行動を共にしている。
食事時ともなれば当たり前のように同じ中身の弁当を2つ広げて机を横にくっつけ――。
「ん…………唐揚げの味付け変えた?」
「……よくわかったわね。大した違いじゃないですけど」
「いつも食べさせて貰ってますからねえ」
「それもそうね。あっ――まったくもう……」
「んー?」
「ほっぺにご飯粒ついてたわ」
「ありがとう」
「フフン、いつまでも子供なんですから」
なんかもう恋人の遥か先の関係の会話なのである。クラスメイトはお腹が膨れる前に胸がいっぱいになる者が続出するレベルである。
他にも――。
「粉塵」
「おう」
「罠」
「へい」
「飛んだ閃光」
「あいよ」
こんな小声の会話が机の下に顔を向けている二人の間で繰り広げられたりもしている。ちなみに授業中の出来事である。
そんな奇妙なカップルは、両者とも話してみれば、他方向に面倒な性格をしているが、意外にも気さくで面倒見が良いのでクラスでは人気者でもある。こんなところも一緒だ。
兎に角、この学園で何をするにしてもいつも二人は共にいるのである。趣味まで合うオシドリカップルのくせに、これで付き合ってすらいないと本人達は言っているのだから、回りから見れば逆にむず痒い気持ちになるものだ。もう、お前ら結婚しろよと言えたらどんなによいものだろうか。そういうところに気を使う日本人の性の弱点であろう。
そんなこんなで二人はいつも無自覚に生徒に砂糖を吐かせているのだった。
◆◇◆◇◆◇
空は既に大分傾いているが、雲ひとつない青空。眼前を見れば地平線の見える海原。下を向けば防波堤の汚いコンクリート。
『Aaaaa――』
さてお楽しみの放課後の釣りである。俺の左隣にはマイ箸を持ったティアマトさんもいる。気が早いにも程があるが、本人は楽しそうなのでそっとしておこう。
「ホントにいつもいつも飽きないわねえ……」
俺の右隣にはとても珍しいことにジャンヌもいた。
いつもならジャンヌは学校が疲れたという理由で絶対に来ないで、家でゲームでもしているのだがな。
そんなことを考えていると口に出していたようで、ジャンヌは髪を指で弄りながら俺の方を見ずに呟いた。
「別に……なんとなくよなんとなく。意味なんてないわ」
『Aaaaa――?』
「別に取らないよってティアマトさんどういう意味?」
「いっ、いい……いいから早く釣りに戻りなさい!」
『Aa――Aa――』
何故かティアマトさんがジャンヌに対してまた口笛を吹こうとしていたが、やはり相変わらず吹けていない。
まあ、ジャンヌがそういうのならばと、釣り竿に意識を戻したその直後である。
「んお……?」
『Aa――!』
そんなことを考えていると竿が揺れて、海面に垂らされた糸が最近で一番と言えるほど激しく引き、それと同じくして糸を中心に巨大な水紋が巻き起こり防波堤にまで波が打ち付けた。
明らかな大物の予感からティアマトさんも興奮気味である。
「ちょ、ちょっと……クジラでも釣れるんじゃないでしょうね……?」
「それで済むなら儲けもんだな」
「待ってそれどういう意――」
俺はジャンヌが言い切る前に神器の糸で獲物を絡め取ると、急速に縮め、海面まで浮上したところで竿を立てて勢いよく釣り上げた。
ジャンヌはあまり俺の釣りを見ないから知らないかも知れないが、どうもこうも文字通りの意味である。この神器はあらゆる"水"に関わりのある全ての存在が釣れる可能性があるのだ。現に海で溺れていたジャンヌも、原初の海の女神も、淡水でも海水でも生きれる鮎だって釣れる。クジラなんてまだマシな方で、酷ければ大航海時代の沈没船とか、沈んだ潜水艦やら、果ては言葉では言い表せないような造形の生き物まで釣れる。
まあ、そのわりにおよそ全ての生物の体内に水があるのに全ての生物は釣れないのだから意味がわからないが、そういうものなのである。
そして、海中から姿を現した獲物は――――。
黒紫色のフリフリのカチューシャ、ピンクの大きなリボン、女の子の上の大事なふたつの場所に張り付く黒いバッテンのテープ、何故か前が全開にも関わらず丈の長い黒服、白いドロワ。
それらを全て身に付け、死んだ魚のような目でこちらを見つめてくる、黒い長髪で耳のとがった幼女であった。
そして、それを見た俺は条件反射的に呟いてしまった。
「なんだ、オーフィスさんか……」
『Aaaaa……』
オーフィスさんといえば次元の狭間、無の空間より生まれ出た、無限を司るドラゴンであり、神によってこの世界が創られた時より最強の座に君臨するそれはそれはスゴいお方である。後、テロリストの首領をしてる。
が、釣りをしている身としては、ゴム長靴でも釣ったような気分になるのは仕方あるまい。食べられないのでティアマトさんもガッカリである。
とりあえず、神器の糸に巻かれて海面で微動だにしないオーフィスさんをそのままにしておくのも忍びないので、陸地に引き揚げて糸を解く。
するとオーフィスさんは水から上がった犬のようにぷるぷる身体を震わせ、少し水を飛ばしてから俺をじっと見て呟いた。
「久しい、マモル」
「久しぶりオーフィスさん」
一言挨拶を交わすとオーフィスさんはトコトコ歩き、俺の前まで来ると、膝の上に座った。今のオーフィスさんは小さいので俺の膝の中にすっぽりと収まる。
うわ、オーフィスさん濡れてて冷たい。
「…………ねえ? 今オーフィスって言ったわよね?」
「ん……我、オーフィス」
「オーフィスさん飴ちゃん食べる?」
「食べる」
俺はオーフィスさんにべっこう飴を渡した。すると小さい口でコロコロ転がしていてとても可愛らしい。飴とスルメは鉄板の釣りのお供である。
「待ってください、待ちなさい、待て。私の話を聞きなさい」
「はい」
ジャンヌが凄い剣幕で迫ってきたので、俺はジャンヌに向き合うことにした。その前にオーフィスさんを抱え上げて、ティアマトさんのお膝に乗せておく。
その結果、青い竜っぽい女性のお膝に半裸の幼女が乗っているというものすごい絵面になってしまった。
『Aaa――?』
「……?」
どうしたものかと考えていると、ティアマトさんの星のような桃色の瞳と、オーフィスさんの死んだ魚のような灰色の瞳による視線が交錯した。
「我、オーフィス」
『Aaaaa――』
「ん……ティアマト、おぼえた。ティアマト、どこから来た?」
『AaaaAaaaaa――Aaaaa――』
「そう、知らない。少し気になる」
あら、意外にも会話に花が咲いている。ティアマトさんのコミュ力が思ったよりも高かったようだ。流石は元最高神といったところだろうか。
「言いたいことは色々増えましたけど……まずなんで釣れんのよ!?」
「オーフィスさんならたまに釣れるよ? 月一ぐらいで」
「ん……今月3回目」
「全然久しくもないじゃないッ!?」
本人の自己申告によると、今月はいつもより多く水揚げされているらしい。大漁だな。
ちなみにオーフィスさんが釣れる理由としては、人間がまだ地球の形を認識しておらず、海の果ては滝になっていると思っていた時代ぐらい大昔の一部の人間の認識で、世界の外周つまりは海の周りをぐるっと囲んでいたものはウロボロスな訳であるが、オーフィスさんと同一視されたからじゃないかと思う。
「なんで理由はまあまあマトモなのよ……」
「理由ないと釣れないもの」
「…………そうだけど納得いかない」
まあ、本当のところは知らないので案外オーフィスさんが海中でぼーっとしてたとか、そんな理由かも知れないが言わぬが花だろう。
「なんでそんな親しげなのよ……」
「ん……」
オーフィスさんはティアマトさんのお膝の上でビシッと俺を指差してから呟いた。
「"まぶだち"」
「マブいぜ」
「いえーい」
「イエーイ」
無表情のオーフィスさんの手と、俺の手でハイタッチが行われ、見た目とは裏腹に炸裂音のような爆音が響き渡る。あんまり加減してくれなかったので、俺の肩が吹き飛ばんばかりの衝撃を受けたがなんとか耐えた。
「釣る度にオーフィスさんのお話聞いて、色々教えてたらこんな感じになっちゃった」
最初にあった頃は純粋無垢な感じだったのだが、今では随分言葉やら人間の概念やらを覚えた結果だいぶ世俗に染まった気がする。相変わらず、俺以外友達はいないらしいけど。
「…………そういやアンタ、ティアマトとも話したって言ってたわよね?」
『Aaaaa――』
勿論である。というかティアマトさんに家に気が済むまで居候しないかという話を持ち掛けたの俺だし。
「オマエノシワザダッタノカ……」
「なんて人聞きの悪いことをいうんだ」
可哀想じゃないか、美人なのに帰る家がないんだぞ。美人なのに帰る家がないんだぞ! 美人なのに!
「家……?」
すると何故かオーフィスさんがその単語に反応したので俺とジャンヌはそちらを向く。
「我、家ない」
「にゃんて……?」
気が動転したのかジャンヌは奇妙なニュアンスで言葉を呟いていた。だいぶ可愛い。
それにしても聞き捨てならないことを聞いた。そこそこ長い付き合いになるが、まさか無限の龍神に帰る家がないだなんて考えもしなかった。
「あれ、そうだったの? なら家くる?」
「ん……」
オーフィスさんが唇を震わせて考える素振りをしていると、突然オーフィスさんが宙に浮いた。
まあ、ティアマトさんがオーフィスさんの脇に手を入れて猫か何かのように抱え上げただけなんだが。
『Aaaaa――Aaa――』
ティアマトさんは腕の中でくるりとオーフィスさんを半回転させて向き合うと、そう問い掛けた。その言葉にオーフィスさんの表情が驚きに変わる。
「ティアマト……我、もう……ともだち?」
『Aaa――』
「わかった、行く」
無表情で死んだ魚のような目のまま、キラリと星を浮かべたような表情をするという器用なことをしたオーフィスさんは、地面に下ろさせるとトコトコ歩いて俺の前に来て口を開いた。
「世話になる」
「やったなジャンヌ。お前も家族だ」
「死ね!」
管理大変なレベルで無駄にデカい家なので部屋には事欠かない。
部屋の片付けも手伝うし、もっと増えるであろう食材などの買い物も手伝う、拾った以上最後まで責任を持つ所存である。
両親が帰って来た時に、母親が俺を拳で叩き伏せる可能性が非常に高いが、それぐらい安いもんだ。
そんなことを考えながら、両親不在の我が家で家計を支えているジャンヌの振り上げられた足を尻目に、次の瞬間には俺の脛へと突き刺さるビジョンを想像しながら甘んじて受け入れた。
◇釣果
◆オーフィス
この作品のマスコット枠兼リヴァイアさん枠。無限の龍神でお馴染みオーフィスちゃん。葵のふれんず、なんとなく性格が似ているのがポイントらしい。
◇愛宕葵のスキル
◆動物会話:A+++
父親譲りの能力。言葉を持たない動物との意思疎通が可能。動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。
A+++というのは対象とする動物の範囲と、葵の動物に対するコミュ力の高さであり、葵の場合は凡そ全ての動物を対象とし、最高位の幻獣種である竜種であろうと10分も話せれば敵対を解き、30分もあれば勝手に背中に乗っても何も言われない程度の扱いとなり、2時間もあれば友達になれる。更に例え言葉を持っていても精神構造が動物に近いのならば対象内。最早異能の類い。
ただし、デメリットとして、あまりにも高過ぎる動物会話スキルは葵の精神構造にまで影響を及ぼしており、人間に対しても同じように接するため、人間からすると異様にマイペースな人間に見える。後、空気とかあんまり読めない。
ゲーム内での効果:
自身のNPをものすごく増やす(150~200%)+自身を除く味方全体のNPを30%減らす【デメリット】(5~7T)