波打ち際のオルタちゃん   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

なんだか早い投稿ですね(お前が言うな)






炎の系譜

 

 

 姫島朱乃は自身を庇って事切れた母の側で失意の中、何度も周りにいる襲撃してきた人間たちの言葉を心の中で繰り返していた。

 

 自分のせいで、母が死んだ。堕天使のせいで母が死んだ。そして、父親のせいで母が死んだと帰結するのは必然と言えよう。

 

 そして、怒りに任せたひとりの人間が朱乃を殺さんと動いた――。

 

 

 

「おうおう、なんだ? 人様のダチの家族に寄って集ってなにしてんだ?」

 

 

 

 直後、出現した圧倒的な威圧感と、背後から感じる照り付ける太陽のような異常な熱量に朱乃を除く全員が止まる。

 

 それはカラスのような一対の翼を持った男性の姿だった。脇には男性によく似た少年を引き連れており、親子だということが見て取れる。

 

「"太郎坊"おじちゃん……」

 

「太郎坊だと……?」

 

 いつも子供みたいに笑いながら一緒に遊んでくれる父親の友人は、まるで獰猛な獣のような笑みを浮かべており、朱乃ですら見ているだけで恐怖を覚える程だった。

 

 朱乃から呟かれた言葉に刺客たちは騒然となる。カラスのような翼を持つ太郎坊という存在が事実ならば、目の前にいるのは日本でも五本の指に入り、姫島家が信仰する最高神に他ならないからだ。何より、目の前の存在が放つ人間から掛け離れた神性がそれを表していた。

 

「火之迦具土神さ――」

 

「うるせえ」

 

 口を開いたひとりの人間が突然火だるまになる。

 

 人間は地に倒れ、叫びながら転げ回る。しかし、全く炎が消える様子は無かった。更にその炎を消火しようと近づいた3人の人間に火の粉が飛び、炎は瞬く間に燃え広がった。

 

 如何に叩こうと、術を使おうと決して消えず、衰えるどころか更に勢いを増し続け、3人の全身を包むに飽きたらず、辺りは地獄のような光景に変わる。

 

 しかし、焼け死んだ4人以外の刺客たちは灼熱に身を強張らせているが、朱乃は全く炎の熱を感じず、辺りの建築物どころか草木の一本すらその炎によって焼かれていないことに気がつく。

 

「面白そうだな。俺も混ぜてくれよ……」

 

 次の瞬間、熱に悶える朱乃の目の前にいた人間たちが地面から噴き上げられた火柱に呑まれ、彼女の視界は真っ赤に染まった。

 

 そして、炎が晴れると人間たちは、最も朱乃を罵倒していたひとりを除いて、全てが灰すら残さずに焼失しており、驚き止まった最後の刺客だけが残される。

 

「冥土の土産に俺の名前を覚えておけ、愛宕山の太郎坊天狗とは俺のことだ」

 

「な、何故!? 我が姫島家が信仰する火之迦具土神様ともあろうお方が堕天使の味方など――」

 

 そこまで言ったところで刺客の片腕と片足が業火に呑まれ、焼失した。痛みすら無く消えたことに刺客は間を開けて驚愕し、バランスを崩して地面に倒れ込む。

 

「ヒヒヒ……! 面白いなお前! 人間だってダチをコケにされてキレないわけないだろ? それに――」

 

 その瞬間、太郎坊の黒鉄のような黒髪は、地獄の業火のような紅蓮に染まる。

 

「人風情が頭に乗んな。誰に信仰されようが知ったことじゃねーんだよ。嫁と子と酒を飲み交わした相手より大切なモンが居てたまるか」

 

 その様は軍神というよりも鬼神のように見える。

 

 そのまま太郎坊は刺客の顔を掴む。今の太郎坊の手は想像絶する温度を持っており、掴んだ形に刺客の顔は焼け爛れた。

 

「でもまあ、お前に免じて"半殺し"で許してやるよ」

 

 突如、辺りを覆っていた炎が、まるで始めから何もなかったかのように消え失せる。そして、太郎坊の髪も元の黒髪に戻っていた。

 

「"マモル"後、頼むぞ」

 

「わかったよ、親父」

 

 そして、それだけ言うと太郎坊は最後のひとりの刺客を抱えて、戦闘機のような速度で何処かへと飛んで行った。

 

「こんにちは、朱乃さん」

 

 太郎坊の息子――愛宕葵はそう言いながら朱乃に笑い掛ける。

 

「少し待ってて」

 

 泣き張らしながら母の亡骸の側で言葉を失っている朱乃に葵は近付いてしゃがみこむ。そして、両手に淡く暖かな炎を灯らせた。

 

「大丈夫、これぐらいなら直ぐに生き返らせるから」

 

 そう言って葵は手の中の炎を朱乃の母に溢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、姫島家に向かった太郎坊は文字通り姫島家を"半殺し"にした。

 

 男も、女も、老人も、子供も等しく丁度半分の数になるように焼き殺したのである。一切の慈悲も容赦もなく、小虫を踏み殺して遊ぶ童のようにケラケラと笑いながら。

 

 

『お前ら顔と家の名前。覚えたからな? 次、誰かひとりでも手の者を寄越してみろ――』

 

 

 そして、当主すら焼き殺し、姫島家からの去り際、太郎坊は生き残りに対して気軽な様子でこう言い放った。

 

 

『今度は五大宗家ごと何もかも蒸発させてやるよ』

 

 

 その様はまるで荒れ狂う炎のような災害そのもの。炎を扱えようと、朱雀を持とうと所詮人間には神の怒りが静まるように祈りながら震える以外どうすることも出来なかったのである。

 

 己の信じた最高神に直接処断された彼らはきっと幸いだったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございます」

 

「ハァ……」

 

 合宿二日目の早朝。筋肉痛の痛みを感じつつ起きて朝食を食べ終わったタイミングで、いつも通りニコニコと笑顔を浮かべている葵と、ものすごく面倒臭そうな表情で溜め息を吐いているジャンヌがいた。

 

「じゃあ、修行を始めましょうか?」

 

 今日の午前中は勉強会の予定だったが、外で葵を講師として修行をする内容に変更になった。俺としては勉強が無くなって嬉しいかな。

 

 羽団扇を持ってカラスみたいな天狗の翼を出している葵。なんというか……本当に天狗だったんだな。

 

羽団扇(コレ)持ってた方が天狗っぽいだろ? 折角だから持って来たんだ」

 

「そうだな……」

 

 理由が形から入るっていうあたりやっぱり葵なのは変わってないな。

 

 しかし、普通にクラスメイトだと思ってた葵に教えられるとなるとなんだか不思議な気分だな。未だに葵が無茶苦茶強い奴だなんて信じられない。

 

「まず、何か疑問があるなら答えますよ?」

 

「そうね……」

 

 部長は葵に問われて考え込んでから葵に質問を投げ掛けた。

 

「あなたから見て率直に私たちのことどう思うかしら?」

 

「率直にですか? そうですね」

 

 葵は特に気にするような素振りもなく、当然のように口を開く。

 

「ライザーさん1人で全員倒されると思いますよ?」

 

 その言葉に俺は驚いた。そこまで言い切られるとは思ってもみなかったからだ。

 

「理由を聞こうかしら……?」

 

「そうですね。一番の理由は有効打がないことです。普通にフェニックスを相手にしても暖簾に腕押し。にも関わらず、グレモリーさんを含めても眷属(コチラ)には普通に相手を出来る者しかいないじゃないですか?」

 

「け、けれど……フェニックスだって最上級悪魔や魔王クラスの一撃を当てれば倒せるわ」

 

「いや、そんなところで意地を張ってゴリ押しても仕方ないでしょう? 無い物ねだりとは言いませんが、あまりにもやり方がお粗末ですよ」

 

「ちょっと待てよ、マモル……」

 

 なんだか、昨日の修行が全否定されているように感じて、俺は口を出した。

 

「イッセー」

 

 だが、葵はそれだけ呟いて俺を止める。そして、小さく溜め息を吐きながら小さく言葉を吐いた。

 

「わからせた方が早いか……」

 

 葵は手を大袈裟に二度三度叩いてから口を開く。

 

「よろしい、四の五の言わずにとりあえず一度、最上級悪魔クラスを体験してみましょうか。戦いたくない方は動かないでください。行きますよ。321――」

 

 次の瞬間、俺の視界から葵が消え、天と地が逆になった。

 

「え……?」

 

 呟けたのはそれだけ。俺は脇腹をハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けたと同時に地面に叩き付けられた。

 

「がはっ!? あが……」

 

 身体の痛みと頭がチカチカする感覚に襲われながら、どうにか身体を起こして辺りを見回すと、そこにいたのは俺と同じように地面に転がっている小猫ちゃん。

 

「うッ!?」

 

「はい、終わり」

 

 そして、片手で木場の魔剣の刃の部分を掴んで握り潰しながら、もう片方の手で木場の首を掴んで持ち上げている葵の姿だった。

 

 葵は木場を地面に下ろし、手の中の魔剣の破片を地面に落とすと、驚いた表情で固まっている部長を見据え、口を開いた。

 

「魔王クラスの実演も必要ですか?」

 

「い、いえ……いらないわ」

 

 あまりにも一瞬で反応すら出来なかった。ここまで部長との会話を含めても20秒も経っていない。あまりにも隔絶した実力の違いに唖然とする。

 

「そもそも最上級悪魔や、魔王は攻撃力もさることながらそれに準じたスピード、防御、身のこなし、戦闘技術等々あらゆることもそれ相応に磨かれているものです。少なくともグレモリーさんより格上の上級悪魔かそう易々と見え見えの攻撃に当たってくれるわけもありません。最上級悪魔クラスですら目で追うことも出来ないあなた方が、仮にフェニックスを殺し切れる火力を持っていたとしてもまず扱えないでしょうね。"豚に真珠"ですよ」

 

 ライザーが言ったことと全く同じ言葉で締められたのに、俺を含めて誰もその場で言い返せる者は居なかった。

 

「それで、ライザーを倒す作戦等があれば教えて欲しいのですが――」

 

「たった今、なくなったわ……」

 

 そう部長が返すと、葵は少し止まる。時間にして数秒後、再び動き出すと頭を手で掻いてから口を開いた。

 

「すみません。俺、ひょっとして何か悪いことしましたか?」

 

「アンタ、相変わらず空気とか全く読めないわね!?」

 

「ヒヒヒ……いやー、すいません」

 

 ジャンヌに突っ込まれた葵は非常に申し訳なさそうに謝る。

 

 すると姫島先輩が手を上げていた。そういえば姫島先輩は何故かさっきの戦いに参加していなかったな。

 

「はぁい、葵先生」

 

「なんかくすぐったいからその呼び方は止めて欲しいですね……姫島さん」

 

「要するに――」

 

 そう呟く姫島先輩の表情は俺が知るドSモードの時のそれだった。

 

「自分が持ちうる"全ての力"を出しきって戦えばいいのですわね?」

 

 次の瞬間、姫島先輩の背中から烏のような翼が生え、手には光の槍のようなものが握られていたため驚く。

 

 あれじゃあ、まるで――。

 

「ん? アンタ知らないの? 朱乃は転生悪魔だけど半堕天使よ。父親のことはまだ許してないし、力も普段使わないみたいだけど、堕天使の翼は天狗の翼に似ているから気に入っているらしいわ」

 

 困惑する俺にジャンヌがそう説明してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからライザーと戦う方向性が決まった。

 

 姫島先輩が本気で戦ってくれるのなら悪魔にとっては肉体と精神共に猛毒の光力を用いて攻撃を行い、ライザーの再生能力削ぐという戦法だ。

 

 そのためには姫島先輩を守る前衛が必要不可欠になるため、俺と木場と小猫ちゃんはそれを担当することになった。重要な役割だな。

 

 ちなみに俺たちとレーティングゲームに参加するジャンヌはと言えば――。

 

 

「私が向こうの女王とフェニックスの妹、ついでに目についた奴を落とすからアンタたちは他に専念しなさい」

 

 

 当たり前のようにそう言っていた。とても頼もしいけどやっぱり葵と同じように天狗とかだったりするのかな?

 

「ん? ジャンヌは人間だぞ?」

 

「ええ、そうなのか!?」

 

「ハンッ、下らない心配をする暇があるのでしたら自分の心配をしたらどうです?」

 

 そう鼻を鳴らしながらジャンヌは修行相手の木場と小猫ちゃんの元へと向かって行った。

 

「なあ、イッセー。これだけは言っておくぞ」

 

 葵は一本の細身の剣を片手に小猫ちゃんと対峙したジャンヌの背中を見ながらポツリと呟く。

 

 

「"英雄ってのは細胞レベルで英雄"なんだよ」

 

 

 次の瞬間、俺の目の前を凄い勢いで小猫ちゃんが弾き飛ばされて行った。

 

「へ……?」

 

「直球過ぎるわアンタ、そんなんじゃ格上に通用しないわよ?」

 

 小猫ちゃんを飛ばしたのは勿論、ジャンヌ。更に細身の剣の切っ先を木場に向け、心底人を見下したような笑みを浮かべる。

 

「面倒ですね。二人同時に相手してあげましょう」

 

 それを皮切りに木場と戻って来た小猫ちゃんは、二人でジャンヌと戦闘を始める。二人とも俺が見たこともない程素早く、力強く動いているように見えたが、ジャンヌが終始押しており、防戦一方だった。

 

「すげぇ……」

 

 あんなのに俺が並べるのかと愕然としていると俺の修行相手の葵は、俺の肩にそっと手を置く。

 

「安心しろよイッセー」

 

 "ヒヒヒ――"と葵特有の非常に特徴的な笑い声を上げてから口を開いた。

 

「ライザーなんて燃えカスでしたと思うぐらい稽古つけてやるから大丈夫だ」

 

 俺はいつもと変わらない葵の笑顔に嫌な予感しか感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 






次回は修行の回想を少し挟みつつライザー戦となります。
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