ブチッ 「ギャンっ」
痛みとともに帰還の光に包まれる。涙目になって振り返るとすごくいい笑顔の余所のマスターと、少し申し訳なさそうなサーヴァントたち。
いや君達ね。毛が欲しいなら欲しいって言いなよ。ちゃんとしたのあげるから!!
そんな思考を最後に拠点にしているカルデアに送還された。
酷い目に遭った、疲れた……。
そんなことを考えながらふらつきつつ自室を目指していると偶然ネフェルティティと遭遇する。
「お帰りなさい。ご飯もお湯も準備済みですが……。」
そんなふうに微笑むネフェルティティに安心したのか自然と全身の力が抜けていく。
「きゅうぅ……。」
慌てた様に駆け寄ってくるネフェルティティの姿を最後に小生は意識を手放した。
「ちょっこんなところで倒れないでください!というかいったい何が!?」
そんなことを言いながらウェウェコヨトルを抱えようとするイシスネフェルト。
しかし彼女の夫は現在動物型とは言え腐ってもコヨーテ。やはりというか……重い。
どう持とうかと試行錯誤してわき腹あたりに手を添えた時にそれを発見した。
スス……ス……ズボッ
「え……?」
思わず腹の方を見る。
「こ、これは!?」
***
【月夜ばかりと】うちの旦那をいじめないでください【思うなよ】
1名無しの英霊
スレッド……立ちました?
2名無しの英霊
大丈夫。立ってます。
3名無しの英霊
大丈夫です。
4拳系
ありがとうございます。
確かコテハン?とやらとスペックを書かなきゃなんですよね?
コテハンはこれで
5名無しの英霊
拳系……この丁寧な感じ……まさか。
6名無しの英霊
しっ!!わかっても言わない!!
7拳系
お待たせしました。
拳系
女。容姿は十代後半くらいかと……。
とある方の第三妃。
色々あって余所のカルデアの英霊とマスターへの不満が溜まっています。
うふふふふふふふふ、どうしてくれましょう。
お姉様
お師匠様、先生とも……。
生前の私の家庭教師で我が夫の第一妃にあたる方です。
このスレッドを立てる原因を発見された方でもあります。
現在何らかの術式を弄っています。
お兄様
私たちの旦那様です。
現在の見た目は黒いコヨーテですが……。
私やマスターのために出稼ぎに行ってくれています。
この方が今回の被害者です。
許すまじ、余所の英霊とマスター……。
8名無しの英霊
ち、違ったー!!
9名無しの英霊
盛大に滑った
10拳系
事は3日ほど前に遡ります……。
あれはそう、お兄様がいつもの様に出稼ぎに行ってくださったとき。
その日のお迎え係だったお姉様がいきなりお倒れになったお兄様を抱え上げた時です。
何やら不自然なまでに沈み込む手に違和感を感じた姉さまはそのままその部位を捲ってみました。
すると……
何という事でしょう。そこには点在するように4つのパゲが……。
私もお姉様もこんな扱いを受けていたのかと涙を溢しました。
此処にはいないマトゥル姉さまがいればきっと怒り狂って突撃していたことでしょう。
いくら私たちでもこのような所業許しておけません。
……という事でスレッドを立てるに至ります。
11名無しの英霊
お、おう……。
所変わってマスター掲示板
104名無しのぐだ
お願いです。うちのサーヴァントをいじめないでください。
105名無しのぐだ
ちょ!?いきなりどうした
106名無しのぐだ
鯖が可哀そうって……よくいる異常なまでの愛護精神からとかじゃないよな……腐っても俺たちだし……。
107帯
コテはこれで。突然すいません。
でも誰だかわかりませんが、妙な噂が流行ったせいでうちのカルデア内でストライキが起きてるんです。
お願いですから妙な噂を流すの止めてください!!
108名無しのぐだ
妙な噂?
109名無しのぐだ
2時教とか?アプリインスト教とか?
110名無しのぐだ
でも別段迷惑かけてるわけじゃ……。
111帯
URL張ります。
【幸運の黒いコヨーテ!これで私は金枠だした!!】
112名無しのぐだ
あーそう言えばそんなんあったわ
113名無しのぐだ
そもそもこの数多のマスターの中からそんなレアなサーヴァント探し出す方が無理って話……てまさか
114名無しのぐだ
ああ、あれね。
オジマンディアスが何故かアルターエゴ枠でいたから試しにフレで使ってきたのがコヨーテだった。
から始まるやつ。でもそんな奴何処にもいなかったから詐欺扱いされてたやつでしょ?
そいつの毛一本につき一体金枠かピッグアップ鯖が確定するとか
115名無しのぐだ
てっきり釣りかと……。
116帯
はい。そのコヨーテ()のマスターです。
あの……できるだけこのスレのことを拡散してください。
そのコヨーテうちの鯖の主力部隊で……すごく頼もしいんでフレ枠入れてたんですけど
この度奥さんたちから抗議の声がありまして……。
もうこの子の毛を毟ったりしないでほしいんです。
肉体は帰還したら治りますが精神的なものは治らないんです。
この子もうハゲが四つも……
117名無しのぐだ
ハゲ……
118名無しのぐだ
そりゃ深刻だ……
***
此処は某カルデア。
「さて、では今日も今日とて周回行きましょう!!」
そう言ってそこのマスターはフレンドのサーヴァントを指定する。
そう、例の真名の隠されたオジマンディアス絵のコヨーテのところを。
その光景を見ていると何名か……主にそのコヨーテと何度か戦場を共にしたサーヴァントが気まずそうにそれをちらちら見る。
このマスターはわかっているのだろうか。自分が毎度の様に頼っている存在が明らかに自分達英霊とは異なる強大な何かだという事に。実は何度もその首筋に刃を滑らせられる様な行いを見過ごされているという事実に。
それでも何も言わず何もせず、むしろお前たち大変だなと言わんばかりに気を使ってくれるコヨーテには感謝しっぱなしである。
取り敢えずこの破天荒マスターをどうにかしてくれ。
そんなことを思いながら召喚陣を見ると、立っていたのは怜悧な美貌の少女と、いつものコヨーテであった。
少女はその能面の様に無表情な顔でぺこりと一礼する。その表情は笑顔で挨拶をしに来たマスターを前にしても変わることはなかった。
戦闘に関してはすぐに終わった。
幾分か変質してはいたもののコヨーテのスキルに少女のスキルが合わさったのかクイック、アーツ両方の強化が出来割と頼もしい戦力ではあった。
そうして戦闘が終了した後に何故か杖を振り上げた少女がポツリと呟く。
「いつも夫がお世話になっています。とてもよくして頂いている様ですから……私からも何かお返しをさせていただきますね。」
言って思い切り杖を地面にたたきつける。
瞬間股のあたりが開放的になった。
顔を真っ赤にする一団に向かってクルリと振り返り更に一言。
「そうそう。今後も前回までの様な事が続くようでしたら今後の付き合いは控えさせていただくとマスターが申しておられました。では」
そう言って送還されていく。
この数日後。緊張しながらコヨーテを選んできたのがオジマンディアスそっくりの長髪イケメンだったことにマスターのメンタルがブレイクした。
因みにこの組み合わせは日替わりでマトゥルさんが入ったら加わると思う。
で、落ち着いたらまた元に戻すと。
更に言えば父子で一緒になっても某カルデアの人だったら「お兄様に意地悪するところのお父様は嫌いです。」みたいなことを言われてショックを受けたオジマンがぐだに抗議することがあったりなかったり……。