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簡単な食事も終わり、焚き火も消してようやく、エイミーの言っていた野営場所に向かうことにした。といっても、もう日は完全に落ちており、星と月明かりのみという非常に視界が遮られた状態の行軍は、精神をギリギリとすり減らし、危険が付き纏う……筈なのだが。
「へぇ~、便利な魔道具ですね、それ!」
Pipboyのライトを指差し、エイミーは軽く興奮した口調で褒め称えている。先程まで、「暗いよぉ、怖いよぉ」と泣き言を零していたとは思えない変わりっぷりだ。
あまりのギャップの差にため息を零しつつ、こうなった経過を思い出すのだった。
エイミーは最初、この暗闇の中を強行軍する、と聞いて猛烈に反対した。夜になると、昼間とは比べ物にならないほど危険な獣や魔獣(ゴブリンのようなもの)が出るらしい。
が、カルマはそれを一蹴した。ウェストランドでは夜に行動するなど当たり前で、逆に敵に見つかりにくくなり奇襲をかけ易くなる夜の強行軍はカルマにとって得意中の得意であったからだ。
結局、反対しようにもカルマについて行くしかないエイミーは泣き言を言いながら…ついでにコンをぬいぐるみ代わりにだきしめながら…トボトボとついてくることとなった。
「ふぇぇぇ……暗いよぉ」
「…………」
「怖いよぉぉぉ……」
流石に何度も同じようなことを聞かされては溜まったものではない。あのブライアン・ウィルクスでさえ、リベットシティに向かう間は大人しくしていたというのに……と心の中で悪態を吐きつつ、少しでも依頼主(エイミー)の不安を和らげようと会話をすることにした。
「そんなに怖いのか?」
「怖いですよ!? 何時魔獣や獣が襲ってくるか分からないんですから!」
「なんだ、そんなことか。安心しろ。獣に関しては俺と一緒に居る限り絶対に手出しはされない」
「なんで!?」
「なんでって……好かれてるから?」
コンを指差し、そう言うしかなかった。実際、ドッグミートと出会ってから暫くすると、何故か動物達が敵対しなくなったのだ。あのヤオ・グアイでさえ、近づいても威嚇すらせず、逆に甘えてくることもあった。そのことに関して不思議に思ったものの、ウェストランドでの危険が一つ減ったぐらいしか当時は考えていなかった。
改めて、エイミーに質問されると不思議なことだと思う。ゆえに、好かれているから、としか答えようがなかったのだ。
「うぅ…。それでも、この暗いのがその次につらいです。足元が見えないし、カルマさんだって時々見えなくなりそうだし…」
「……はぁ。依頼主のご要望とあらば、少しは改善するか…」
このままではエイミーが保たない。そう判断したカルマは、Pipboyのとあるボタンを押した。
「きゃっ、眩しい…!!」
突如、真っ暗だった草原に光りが生まれた。それは松明なんかよりも圧倒的に明るく、広い範囲を照らし出している。そう、Pipboyのライトだ。
「大丈夫か? 少しずつ目を開けて慣れさせろ。そうすれば直ぐに見えるようになる」
「ま、魔道具なんて持ってたんですか!?しかも貴族みたいなお金持ちしか買えない様な高価なものを…」
折角環境を改善したというのにわがままな依頼主だな、と心中で零しながら、早速Pipboyに反応した敵に対して迎撃体勢を取る。
「え、あれ? カルマさん、急に杖なんて構えてどうしたんですか?」
「敵が来る。どうやら魔獣のようだな。数は…大体3,4体程度」
「えぇぇ!? って、そうか、この光りのせい………ごめんなさい」
エイミーも、自分のわがままで魔獣を呼び寄せてしまったと気付いたのか、謝ってきた。それに対しカルマは軽く方をすくめると飄々と返した。
「なぁに、この程度の敵、そんなに大したことはない。ただ、万が一流れ弾が来る可能性があるから、なるべく地面に伏せて隠れてろ。コン、もし敵がエイミーに向かったら、絶対に守り通せよ」
「クォン!!」
エイミーの腕から抜け出したコンは嬉しそうに一声鳴くと地面に降り立ち戦闘態勢に移る。やけに気合が入っているようだが、そういえば初めて指示を出したからだろうか?
まあ、戦闘に支障がないのなら問題ない、と判断しPipboyからハンティングライフルのユニーク武器、オルペインレスを取り出す。ジェファーソン記念館での戦闘以降、威力不足な上連射もきかない、スナイパーライフルのようにスコープが無いせいで狙撃ができないと、性能不足が目立ったせいで全く使わなくなり、メガトンのコンテナの肥やしになっていた銃だが、今の状況では非常に有り難い銃の一つとなっている。大量に有り余っている32.口径弾をそこそこの精度で撃てるからだ。それに加え、整備に使うハンティングライフルはPipboyの中に大量に眠っているため、修理に困ることは殆ど無い。
銃弾の補充の目処が立たない今、主兵装の銃弾の消費はなるべく抑えたい現状では使い勝手がいいのである。
「グルルルルルルルルル……!!」
「ナ、ナイトウルフ…!?」
「知っているのか、エイミー?」
凶暴な野犬を一回りほど大きくした、黒い毛皮を持つ狼を見た途端、エイミーは腰を抜かして涙目になってしまった。そんなに危険な生物なのだろうか?と疑問に思ってしまう。どうせ、こんなの凶暴な犬に毛が生えた程度のものだろうとウェイストランドを旅して培った勘と観察眼がそう告げていたからだ。
「う、うん! ナイトウルフは狼が魔力に汚染された魔獣で、常に群れで動いていて夜が一番強くなる魔獣なんだ! それにすばしっこくて、爪がすっごく鋭いってお父さんが…」
「なるほど…」
Pipboyの反応は四つあったのに対し、見える範囲には三体のナイトウルフしか見当たらない。どこかに隠れているのだろう。だが…
「まあ、所詮は獣だ。俺の目の前で止まったことを後悔しろ」
カルマは腕に接続されたPipboyにとある信号を送る。それに反応したPipboyはあるシステムを発動させた。
〔V.A.T.S System...Start〕
突如、カルマを取り残し周囲の時が停止した。いや、正確には少し、ほんの少しずつだが動いている。これは、V.A.T.S(The Vault-Tec Assisted Targetting system)というPipboy装備者の神経に直接働きかけ、思考を高速化させるシステムである。同時に、視界に収まる範囲のナイトウルフ達が浮かび上がり、各部位の命中率が表示される。
数値を確認し、一番命中率が高い部位を選択していく。そして全てを選択し終え、決定と念じる。
途端、いきなりカルマがオルペインレスを機械的に、かつ正確に撃ち始めた。突出していた一匹は額を撃ち抜かれ即死し、その少し後ろで控えていた二体の内、右側が同じように頭を、左側は脚を撃ち抜かれ悲鳴を上げる。
「え? え? ええぇ?」
一瞬にして目の前のナイトウルフ達が死ぬ、若しくは怪我を負うという謎の事態に、エイミーは驚くばかりだ。コンも少しだけ驚いたようで、耳と尻尾がピクピクっと動いている。
一瞬、V.A.T.Sシステムの負荷が襲い掛かり眩暈に似た症状に襲われるが、そこは気合で抑え意識を周囲に向ける。Pipboyのレーダーには、まだ一体反応が残っているからだ。
「ふぅ……。 さて、あと一体か……どこに隠れているのやら」
「カ、カルマ…さん? いま、一体何をしたんですか!?ナイトウルフ達が一斉に「クォン!!」キャッ!」
「コイツ、速い!?」
コンがエイミーを突き飛ばし、次の瞬間にはエイミーが居た場所を小柄な個体のナイトウルフが駆け抜けていった。余りの速度に対応が間に合わず、咄嗟に振り抜いた拳が宙を切り、コンがエイミーを押し倒していなかったらエイミーは鋭い爪で切り裂かれ物言わぬ骸の仲間入りを果たしていただろう。コンはなかなかに出来た相棒だったらしい。
「よくやった、コン!」
「クォン!!」
奇襲が外れたと言うのに、仲間を殺された怒りからだろうか、ナイトウルフの最後の一匹は息を荒く吐き、四肢には力が入っており何時でも跳びかかれる状態を維持していた。
「コ、コンちゃん…ありがとう…」
「クォン!」
エイミーの言ったすばしっこいというのは誇張ではなかった様だ。だが、それは初見だったから奇襲を許してしまっただけに過ぎない。あの程度の速度、デスクローの突進と薙ぎ払いを合わせた攻撃に比べれば天と地ほどの差がある。対応するのは…容易い。
「早ければ良いというものでもあるまい。動きが…単調すぎるんだよ!」
「ギャウン!?」
バカの一つ覚えのような単調な突撃。それに合わせるよう、カルマは拳を放った。
確かに、あの速度で突っ込まれ、あの鋭い爪で引っ掻かれればレザーアーマーなど容易く切り裂かれるだろう。だが、今カルマが纏っているのはT45dアウトキャスト・パワーアーマーと呼ばれる強化装甲服だ。動きは鈍っても、フレーム内部に込められた液化ジェルを油圧装置で動かすことでより力が上がっている状態だ。そんな状態の拳を受ければ、ただではすまない。
拳を受けたナイトウルフは首をあらぬ方向に曲げ数メートル地面を滑るとそのまま動かなくなった。
「さて、最後はお前だな」
運良く…と言えるのかは謎だが…V.A.T.Sの攻撃が外れ脚に当たり動けなくなっていたナイトウルフに向かう。どうやら奴も、自分達が決して相手にしてはいけない存在に手を出したことに今更ながら気付いたようで、無事に動く足を必死に動かし逃げようともがいていた。
「ま、運が悪かっと思え。これが…現実だ」
そう呟き、カルマはナイトウルフを踏み付け動けないように、眉間に10mmピストルを押し付けて引き金を引いた。
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